聖白薔薇少女 

平坂 静音

文字の大きさ
上 下
159 / 210

十一

しおりを挟む

 緒方裕佳子 2001年10月24日生まれ 岡山県岡山市

 病歴 登校拒否 多少ひきこもり傾向 アスペルガー症候群の報告もあるが、特に問題なし

 家系 母 忍 短大時代にコンパニオンのアルバイトをしており、そのときに裕佳子の父と会う 結婚まえに複数の異性と交遊 

 祖母 博美ひろみ 地元の企業で働いていたが、一時期父親の借金のためにスナックでアルバイトをしていた 後に自営業の男性と結婚  

●曽祖母 清子きよこ 西中島界隈で街娼 「マグダレン・ホーム」で客とのあいだに出来た博美を出産 後に梅毒にて死す

 家系的に淫乱であり病気の遺伝性も案じられるが、現在のところ問題なし 当人は聖ホワイト・ローズ学院の教育指導によって大変な進歩をとげ、ゆくゆくはシスターになることも

 タイプ Z




 読んでいて美波は背がふるえてきた。

 そしてあることを思いつき、どうしてもそうせずにいられなくなり、ページをめくっていた。

(駄目……、もう見ちゃ駄目……)

 こんなことをしている場合ではない。急いでここを出て戻らないと、雪葉のことを戸倉氏に連絡しなければ、と理性は怒鳴るように訴えてくるのだが、それでも美波は自分を止められなかった。

(あった……)




 近藤美波……東京都港区…… 




 美波は息を飲んで目をすすめた。 
 印字された文字を追い、内心で叫んでいた。



 文字がかすむのは涙があふれてきたせいだと気づいたのは数秒後だった。
 さらに書かれてある文章を追う。



 家系 母 鞠江まりえ 大学時代に赤坂のスナックでホステスをする。パトロンとの男性と交際しつつ、大学卒業後に見合いで企業経営者の息子と結婚

 祖母 あかね 元小劇団の女優だが無名で終わる 複数のパトロンをもつ 息子が一人(鞠江の弟)
一度結婚したが、夫の会社が倒産 離婚

 一時期立川で街娼となる 後に居酒屋を経営 

●曽祖母 佳恵かえ 元は新橋の芸者だが、当時は貿易商の男の妾となっていた 

「マグダレン・ホーム」にて茜を産むが貿易商は認知はせず 茜は非嫡出子 

 美波本人は従順 このままいけば更生の可能性あり 
 
 タイプ C




 いや、いや、いや!

 美波は声をあげずにわめいていた。

 そこには美波の家の秘密がまざまざと書かれているのだ。美波本人ですら知らなかったことだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

リモート刑事 笹本翔

雨垂 一滴
ミステリー
 『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。  主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。  それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。  物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。  翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?  翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!

白薔薇黒薔薇

平坂 静音
歴史・時代
女中のマルゴは田舎の屋敷で、同じ歳の令嬢クララと姉妹のように育った。あるとき、パリで働いていた主人のブルーム氏が怪我をし倒れ、心配したマルゴは家庭教師のヴァイオレットとともにパリへ行く。そこで彼女はある秘密を知る。

双珠楼秘話

平坂 静音
ミステリー
親を亡くして近所の家に引き取られて育った輪花は、自立してひとりで生きるため、呂家という大きな屋敷で働くことになった。 呂家には美しい未亡人や令嬢、年老いても威厳のある老女という女性たちがいた。 少しずつ屋敷の生活に慣れていく輪花だが、だんだん屋敷の奇妙な秘密に気づいていく。

神暴き

黒幕横丁
ミステリー
――この祭りは、全員死ぬまで終われない。 神託を受けた”狩り手”が一日毎に一人の生贄を神に捧げる奇祭『神暴き』。そんな狂気の祭りへと招かれた弐沙(つぐさ)と怜。閉じ込められた廃村の中で、彼らはこの奇祭の真の姿を目撃することとなる……。

パラダイス・ロスト

真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。 ※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

学園ミステリ~桐木純架

よなぷー
ミステリー
・絶世の美貌で探偵を自称する高校生、桐木純架。しかし彼は重度の奇行癖の持ち主だった! 相棒・朱雀楼路は彼に振り回されつつ毎日を過ごす。 そんな二人の前に立ち塞がる数々の謎。 血の涙を流す肖像画、何者かに折られるチョーク、喫茶店で奇怪な行動を示す老人……。 新感覚学園ミステリ風コメディ、ここに開幕。 『小説家になろう』でも公開されています――が、検索除外設定です。

アイリーンはホームズの夢を見たのか?

山田湖
ミステリー
一人の猟師が雪山にて死体で発見された。 熊に襲われたと思われるその死体は顔に引っ搔き傷のようなものができていた。 果たして事故かどうか確かめるために現場に向かったのは若手最強と言われ「ホームズ」の異名で呼ばれる刑事、神之目 透。 そこで彼が目にしたのは「アイリーン」と呼ばれる警察が威信をかけて開発を進める事件解決補助AIだった。 刑事 VS AIの推理対決が今幕を開ける。 このお話は、現在執筆させてもらっております、長編「半月の探偵」の時系列の少し先のお話です。とはいっても半月の探偵とは内容的な関連はほぼありません。 カクヨムweb小説短編賞 中間選考突破。読んでいただいた方、ありがとうございます。

処理中です...