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六
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「……こ、こんなの、思ってなかった。こ、こんなところだとは知らなかったわ。知っていたら絶対来ないわ」
「わかるわ」
想像していた私立のお嬢様校とは全然ちがう。それは美波もおなじで、同情をこめて雪葉の背を撫でてやった。
「……パ、パパはサナトリウムみたいなところだって言っていたのに……ひどい」
サナトリウム――。やや気になる言葉である。
「雪葉、どこか具合悪いの?」
「うう……。お願い、パパに連絡して。パパだって、ここがこんなひどい所だって知ったら、きっと帰ってくるように言うわ」
涙で濡れた目で雪葉がうったえる。初対面のときの取り澄ました彼女からは別人のようで、美波はいっそう同情心がわいてきた。
「してあげたいけれど……電話は使えないし、手紙も自由に出せないみたいだし……」
「駄目もとでシスターに頼んでみる?」
そう言う夕子の口調もどこか弱いが、それしか方法はないだろう。
「そうね……。シスター・グレイスに頼んでみようか? 無理かもしれないけれど、頼むだけ頼んでみるわ」
「お、おねがい。わ、私、こんなところで……、絶対いやよ」
すがりつかれて、美波はうなずいた。
「わ、わかったわ。わかったから」
その日の夕食後、シスター・グレイスに会おうと夕子と二人、舎監室へ向かおうとしたとき、背後から呼びとめる声が聞こえた。
「あなたたち、今日はカウンセリングの日です」
「え?」
びっくりして振り返ると、そこにいたのはレイチェルこと裕佳子だった。
「一階の端の部屋へ行きなさい。そこがカウンセリングルームです。シスター・マーガレットが待っています」
「えーと、それって今日じゃないと駄目なの?」
面倒くさそうに問う夕子にたいして、裕佳子は断然と答える。
「駄目です。すぐ行きなさい。命令違反はカード没収になります」
夕子の顔色が変わった。怒りに眉がしかめられている。美波は内心ハラハラしながらうなずくしかない。
「わかりました。すぐ行きます」
一階なら舎監室も近い。時間があれば、シスター・グレイスに会えるかもしれない。
「じゃ、行こう」
夕子をせっついて、美波は言われた場所へといそいだ。
廊下を歩いていくと、シスター・マーガレットが目当ての部屋のまえで見知らぬ男性と談笑していた。長身のその中年の人物は、黒い僧服をまとっていることから神父のようだ。
「わかるわ」
想像していた私立のお嬢様校とは全然ちがう。それは美波もおなじで、同情をこめて雪葉の背を撫でてやった。
「……パ、パパはサナトリウムみたいなところだって言っていたのに……ひどい」
サナトリウム――。やや気になる言葉である。
「雪葉、どこか具合悪いの?」
「うう……。お願い、パパに連絡して。パパだって、ここがこんなひどい所だって知ったら、きっと帰ってくるように言うわ」
涙で濡れた目で雪葉がうったえる。初対面のときの取り澄ました彼女からは別人のようで、美波はいっそう同情心がわいてきた。
「してあげたいけれど……電話は使えないし、手紙も自由に出せないみたいだし……」
「駄目もとでシスターに頼んでみる?」
そう言う夕子の口調もどこか弱いが、それしか方法はないだろう。
「そうね……。シスター・グレイスに頼んでみようか? 無理かもしれないけれど、頼むだけ頼んでみるわ」
「お、おねがい。わ、私、こんなところで……、絶対いやよ」
すがりつかれて、美波はうなずいた。
「わ、わかったわ。わかったから」
その日の夕食後、シスター・グレイスに会おうと夕子と二人、舎監室へ向かおうとしたとき、背後から呼びとめる声が聞こえた。
「あなたたち、今日はカウンセリングの日です」
「え?」
びっくりして振り返ると、そこにいたのはレイチェルこと裕佳子だった。
「一階の端の部屋へ行きなさい。そこがカウンセリングルームです。シスター・マーガレットが待っています」
「えーと、それって今日じゃないと駄目なの?」
面倒くさそうに問う夕子にたいして、裕佳子は断然と答える。
「駄目です。すぐ行きなさい。命令違反はカード没収になります」
夕子の顔色が変わった。怒りに眉がしかめられている。美波は内心ハラハラしながらうなずくしかない。
「わかりました。すぐ行きます」
一階なら舎監室も近い。時間があれば、シスター・グレイスに会えるかもしれない。
「じゃ、行こう」
夕子をせっついて、美波は言われた場所へといそいだ。
廊下を歩いていくと、シスター・マーガレットが目当ての部屋のまえで見知らぬ男性と談笑していた。長身のその中年の人物は、黒い僧服をまとっていることから神父のようだ。
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