聖白薔薇少女 

平坂 静音

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 そこでまたも晃子は諦めを浮かべた苦笑を見せる。いったい彼女は日に何度ぐらいこの微苦笑を浮かべるのだろう。

(なんか変)

 美波はあらためて感じた。

 昨日来たばかりだが、どうもこの学院は通常の学校とはかなり違っている。背に虫が這いのぼってくるような気味悪いものを美波は感じてきた。




 昼休みのベルが鳴ると生徒たちはぞろぞろと食堂へ向かう。

 すでにテーブルに並べられた食事を見、あらためて美波は空腹を感じた。朝同様、素っ気ないロールパン一個と、刻んだキャベツがすこし。それにちいさなウィンナーが二本。そしてクリームシチューだが、これは美味しかった。他の生徒も目を輝かせてシチューを美味しそうにすすっている。残す生徒はほとんどいない。

 やや離れた席で食べている夕子も文句も不平顔もなく、食事に夢中になっているようだ。それでも食べ終わると、まだ物足りない気がするのは、昨日から間食というものをいっさい取っていないせいだと美波は気づく。

 思えば学院に来るまえには当たり前のように口に入れていたチョコレートやキャンディ、ガム、ジュースなどの糖分のあるものをいっさい口に入れていないのだ。そのせいで食事を美味しく感じるのかもしれない。

 食べ終えると、席をたつ生徒もいれば、そこに残ってぼんやりしている生徒もいる。図書室へ向かう生徒、視聴覚室に向かう生徒、中庭へ出る生徒とそれぞれだ。

 夕子は食事を終えたばかりでまだ席にいる。美波は気になって彼女のもとへ行ってみた。

「どうだった、授業?」

 たしか夕子はあの裕佳子とおなじクラスだ。

「最低。ここの教師……、シスターたちって、まるでやる気ないんじゃない?」

 やはり夕子の教室でも似たような授業だったらしい。

「まぁ、それでもシスター・マーガレットの国語の授業だけはちょっとマシだったけどさ」

「どんな授業だったの?」

「手紙書くのよ、両親にね」

 と言って夕子はまた不満そうに顔をゆがめた。

「でもね、全部シスターがチェックするのよ」

「え?」

「間違っていないか見るんだけれど、気に入らない所があると書き直させられるのよ。信じられる? 掃除が面倒だって書いたら駄目だって。今朝は楽しく掃除しました、って書きなおさせられるのよ」

「……」

 ドラマで見た昔の軍隊のようだ。美波はまた妙なものを感じてくる。

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