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薊という名の加護で呪い

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 三組目に見つけた彼らも、同意の無い性処理を強要しているように見えた。

 未遂ではあったが、魔光石を欲しがる部下に班長が性処理をするべきと迫っていたのだが。

 それにしても勤務中である隊員が、こんなに抜けていてまともに業務が遂行出来ているのだろうか。

 うんざりを通り越して、呆れ果てていたフェンガリは、雑にノックをすると無造作に扉を開けて、気づけば避けるべき彼とまともに対面してしまっていた。

 少年期を抜けて青年期に差し掛かった、伸びやかな肢体は、細身ながら隊服の下の鍛えられた体をうかがわせる、凛とした立ち姿。

 あの頃はフェンガリの方が発育が良かったのに、会わない間にすっかり追い越されて、今は見上げないといけなくなってしまっている。

 最後にあったのは五つの時。
 マグワイヤの父親と同じ色の、彼の深い黄金の髪と碧眼に、あの頃のフェンガリは耐えられなかった。

 激しく嘔吐して己の吐瀉物の中に倒れ込んだフェンガリに伸ばされた幼い手を、触るな! と叫んで拒んだのを覚えている。絶望を浮かべ凍りついた新緑の瞳からこぼれた雫も。

 二度と会わないと誓っていたのに。

 そんな覚悟も知らず、あっさり再会させられてしまった。

 反射のように喉の奥から込み上げてきた昼食が、フェンガリの頸に女神の神璽薊の紋様が浮かび上がらせる。そしてその権能で空気に触れる前に浄化された。

ーー 認識阻害の眼鏡を渡された意味のメインな理由はこれかー。

 やけにしつこく注意されると思った。
 もちろん姉上もご存知の事なのだな。
 まあ姉上がそう判断したのなら、なんらかの必然があるのだろう。フェンガリは誰よりも信頼する姉が承知している事ならば、仕方ない。

 それでも戸惑いに揺れそうになる表情筋を引き締め、内心の葛藤を抑え込んだフェンガリに「使用中だ」と上官らしい熊のような大男が不機嫌に睨んできた。

「失礼、こちらの設備に点検の命令が出ておりましてー」

 じっと見つめてくる碧眼を避けて、大男と対峙する。

 わざとへらりと緩く笑って見せて頭を下げれば、下手に出たフェンガリに勤務時間中の自覚があるのか、男はそれ以上絡んで来なかった。

 また後にしますと礼をする傍ら「試作品ですが良かったら」と魔光石を渡す。

 それでフェンガリが聖魔術師だと気づいたらしい熊男は、差し出された魔石を仏頂面で受け取った。

 こちらが認識を阻害してるとは言え魔法士として感度が悪すぎる。目先の欲望で目が眩んでいるせいなのか、どちらにしても班長を名乗るには能力を疑う。

 おまけに目の前の美丈夫である部下を、性処理に持ち込みたいのに余計な事を、と言いたいのがあからさま過ぎで、そんなもの、もう処理でも何でもないだろと、苦笑いを堪えるのが一苦労だった。
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