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第10章 恩と仇

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恩を仇で返すとはこのことか…。


後悔することしかない。


旅行の一件はもちろん。


なぜ今日楓に呼び出された時に気づかなかったんだ。


なぜもっと無理矢理にでも聞き出さなかったんだ。


自分の幸せ話をバカみたいにして…。


ちくしょう…。



ちくしょう!!



俺は最低だ!



なんでいつもこうなんだ!



人を裏切ることばかりして、一人で勝手に疑って!!



その上助けられた恩まで忘れて!!




ごめんな…楓…




本当に…ごめんっ…。




それから事情聴取が終わり、


いまにも倒れそうな沙希ちゃんをひとまず家に送った。


俺も恵を家に送り届けて家路についた。



誰もなにも話すことはなかった。



言葉がみつからない。



考えさせられることが多すぎる。



また俺の悪い癖なのか。



誰もなにも話さないことが、



俺を責めているように感じていた。



相談にちゃんとのってあげられていればあるいは…。


いや、そう思って少しでも俺は楽になろうとしているだけかもしれない。


責められていると思うことで、


少しでも自分の拭いきれない罪悪感をなくしたい。


もしくは誰かに慰められたいのかもしれない。




「歩のせいじゃないよ。

気にしないで。」




そう言われたいだけなんだろう。



自虐的に思うことで、逆に自分を守っているだけ。



それがわかるから尚更、自分の汚さに吐き気がする。


そして楓の葬儀が執り行われた。


葬儀の最中は自分が以外にも冷静なことに少し驚いた。


小さい時に親戚の人が亡くなった時には長く感じていた御経も短く感じられた。


飾られた遺影には満面の笑みで笑う楓がいた。


この写真は4人でいった旅行先で撮影したものだ。



「楓は貴方達といる時間が一番幸せだったと思うの。」



楓の母親からそう頼まれて写真は俺達3人で決めたんだ。


出棺の前に楓のまわりには花が飾られていく。


花を手にとり楓のもとへと向かう。


棺桶の中には楓が横になっている。


眠っているかのような綺麗な顔で…。




もう二度と目覚めることはないんだよな…。


話すことも…。


笑い合うことも…。


いつもの下らない冗談ももうきけないんだな…。




そんなことが急に頭の中を駆け回り、押さえていた感情が溢れ出した。


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