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早く早くここから逃げて
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どうしていいか分からなくて、自分の考えがまとまるまで会うのは控えようと決めて四日。
たった四日だけなのに、痺れを切らした紀広さんが遂に家に押しかけてきた。
なんでちゃんと確認する前にインターホンに反応しちゃったんだろうって、今更ながら後悔する。
こっちの姿なんて見えないはずなのにモニター越しに私を睨む紀広さんは凄く怒っていて、「早く開けて」と低い声で言われると怖くて逆らう事が出来なかった。
恐る恐る鍵を開けると、扉が開いた瞬間に勢いよく抱き締められて、久しぶりの匂いと体温にぎゅうっと胸が苦しくなる。
「あ、の……」
「……はぁ。久しぶりだ、触るの」
「き、紀広さ、」
「逃げようとしないで大人しくしてて。君に会えなくて死ぬかと思った」
まだ一週間も経ってないのに大袈裟だ。
そうは思うけど嘘をついて避けていた罪悪感から下手な事は言えなくて、大人しく口を噤みながらされるがままに苦しいくらいの強い抱擁を受け入れる。
暫くの時間それを続けて漸く満足したのか、少しだけ力が緩んで身動ぐ事が出来る程度には解放された。と、そう思った瞬間に。まだ話は終わってないとでも言いたげにぐっと顔を寄せられて、逃げられないように壁と紀広さんに挟まれての尋問タイムが始まった。
「家に居るのに用事あるなんて嘘までついてわざと避けてたよね? 理由は?」
「……体調、が、あんまり良くなくて」
「だったら尚更ちゃんと言ってくれるかな? 心配だし看病くらいするよ。……まあでも、それも嘘だろうけど」
驚く程に冷たい声に心臓が踏み潰されたみたいだ。
分かってる、今回のは私が悪い。紀広さんが私に会いたがってくれてた気持ちは本物で、だから今日来てくれた。嘘をついて避けてた事を謝れば、多分紀広さんは笑ってくれるし簡単に許してくれる。
でもそれは私が妊娠した事を正直に話すって事と同義だ。
本当に伝えてもいいのかって、会わなかった期間にいっぱいいっぱい考えた事。
それを聞いて紀広さんはどう思う? もし受け入れてくれたとしても、そこから先はどうなるの?
絶対に重荷になるし、アイドルがデキ婚しましたなんてバッシングの対象になってお仕事の邪魔になる。
伝えないで済む理由を探すために会うのを引き延ばしたりして、本当はその時点で、ずっと前から答えは出てた。
「……っ別れたい、と、思ってました……」
「は、」
ひゅっと、紀広さんの喉から息が震える音がする。
紀広さんの顔が見れない。自分が今どんな顔してるのか、分からないけど見せるのも嫌だ。
「会わないでいたら、自然消滅出来るかなって……、っ!」
言った瞬間、ぎちりと音を立てるくらいの力で腕を握られて言葉が詰まる。紀広さんはずっと優しかったから、こんな風に乱暴に扱われるの多分初めてだ。
「ふざけないで」
至近距離で聞こえる紀広さんの声が冷たくて、苦しい。
「思ってる事全部話して。何を言われても納得なんてしないけどこっちに非があるならちゃんと直すし謝るから。……納得出来ない理由だったらそんな風に言った事絶対に許さないけど」
「別れたいって思うのに……理由、とか、要りますか……?」
「言ってよ、納得させて。そうしなきゃ別れてなんかあげない」
納得なんかするわけない。私だって全然、吹っ切れてなんかいないんだから。
紀広さんの方を見てるだけでつらくて、視線を逸らして下を向く。
なんかこれ、凄い、初めて失敗した時なんかより心臓、ずっとずっと痛むなぁ。
たった四日だけなのに、痺れを切らした紀広さんが遂に家に押しかけてきた。
なんでちゃんと確認する前にインターホンに反応しちゃったんだろうって、今更ながら後悔する。
こっちの姿なんて見えないはずなのにモニター越しに私を睨む紀広さんは凄く怒っていて、「早く開けて」と低い声で言われると怖くて逆らう事が出来なかった。
恐る恐る鍵を開けると、扉が開いた瞬間に勢いよく抱き締められて、久しぶりの匂いと体温にぎゅうっと胸が苦しくなる。
「あ、の……」
「……はぁ。久しぶりだ、触るの」
「き、紀広さ、」
「逃げようとしないで大人しくしてて。君に会えなくて死ぬかと思った」
まだ一週間も経ってないのに大袈裟だ。
そうは思うけど嘘をついて避けていた罪悪感から下手な事は言えなくて、大人しく口を噤みながらされるがままに苦しいくらいの強い抱擁を受け入れる。
暫くの時間それを続けて漸く満足したのか、少しだけ力が緩んで身動ぐ事が出来る程度には解放された。と、そう思った瞬間に。まだ話は終わってないとでも言いたげにぐっと顔を寄せられて、逃げられないように壁と紀広さんに挟まれての尋問タイムが始まった。
「家に居るのに用事あるなんて嘘までついてわざと避けてたよね? 理由は?」
「……体調、が、あんまり良くなくて」
「だったら尚更ちゃんと言ってくれるかな? 心配だし看病くらいするよ。……まあでも、それも嘘だろうけど」
驚く程に冷たい声に心臓が踏み潰されたみたいだ。
分かってる、今回のは私が悪い。紀広さんが私に会いたがってくれてた気持ちは本物で、だから今日来てくれた。嘘をついて避けてた事を謝れば、多分紀広さんは笑ってくれるし簡単に許してくれる。
でもそれは私が妊娠した事を正直に話すって事と同義だ。
本当に伝えてもいいのかって、会わなかった期間にいっぱいいっぱい考えた事。
それを聞いて紀広さんはどう思う? もし受け入れてくれたとしても、そこから先はどうなるの?
絶対に重荷になるし、アイドルがデキ婚しましたなんてバッシングの対象になってお仕事の邪魔になる。
伝えないで済む理由を探すために会うのを引き延ばしたりして、本当はその時点で、ずっと前から答えは出てた。
「……っ別れたい、と、思ってました……」
「は、」
ひゅっと、紀広さんの喉から息が震える音がする。
紀広さんの顔が見れない。自分が今どんな顔してるのか、分からないけど見せるのも嫌だ。
「会わないでいたら、自然消滅出来るかなって……、っ!」
言った瞬間、ぎちりと音を立てるくらいの力で腕を握られて言葉が詰まる。紀広さんはずっと優しかったから、こんな風に乱暴に扱われるの多分初めてだ。
「ふざけないで」
至近距離で聞こえる紀広さんの声が冷たくて、苦しい。
「思ってる事全部話して。何を言われても納得なんてしないけどこっちに非があるならちゃんと直すし謝るから。……納得出来ない理由だったらそんな風に言った事絶対に許さないけど」
「別れたいって思うのに……理由、とか、要りますか……?」
「言ってよ、納得させて。そうしなきゃ別れてなんかあげない」
納得なんかするわけない。私だって全然、吹っ切れてなんかいないんだから。
紀広さんの方を見てるだけでつらくて、視線を逸らして下を向く。
なんかこれ、凄い、初めて失敗した時なんかより心臓、ずっとずっと痛むなぁ。
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