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あたらよ④

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「きょ、やくん……」
「はー……挿れたい」
「んっ」

 最後にもう一度ナカを軽く掻き混ぜられ、トロトロになってしまったそこから恭弥くんの指が抜かれる。
 もうすでに何回か達してしまっているのに、「足りない」と思うなんて初めてだ。
 ちらりと目だけを動かし、恭弥くんの下半身に目線をやってしまう。
 乱されていない衣服の下。布地に阻まれたそこが、服の上からでも形が分かるくらいに硬くなっている。窮屈そうに勃ち上がっていることが分かり、私の腹の奥がまたじわりといやらしく疼いた。
 恥ずかしいと思っていたはずなのに、恭弥くんが服を脱ぐ様を思わず目で追ってしまう。
 煩わしそうに上の服を脱ぐと、無駄なく筋肉の付いた恭弥くんの肌色が現れる。目を逸らせないでいるうちに恭弥くんの手が下に下がり、ずらして寛げられたその場所から、硬くなった性器がまろび出た。
 大きくて、硬くて、卑猥で、いやらしい。
 それを私の中に受け入れなければいけないのに、恐怖より興奮の方が勝ってしまう。

「見過ぎじゃない?」
「え? あ……」
「嘘。いいよ。嫌じゃないならちゃんと見て。……これが入るんだって、意識しててね」

 言い聞かせるような言葉に、私の喉が小さく息を漏らした。
 言われた通りにこれが私の中に入るのだと考えて、改めてすごいことをしているのだと脳が認識する。
 私からキスをして始まった行為なのに、結局は受け身になってしまった。何かした方がいいのかと考えるけれど、恭弥くんに触れられると、その瞬間に難しいことが考えらなくなってしまう。

「んっ……」

 具合を確かめるように再び割れ目を指でなぞられ、それだけで軽く達しそうになった。
 頭の中も、身体も、全部がグスグスに蕩けてしまっていて、今なら何をされても気持ち良くなってしまいそうだ。
 早く触って、恭弥くんも気持ち良いと思えることをして欲しい。
 小さく息を飲み、静かに恭弥くんの動きを待つ。

「そういう顔も、本当、全部可愛い」
「ふっ……」

 向けられる表情も、声も、触れ方も。恭弥くんが私にくれるすべてが、酷く甘くて愛おしい。
 唇同士が触れるだけで気持ち良くて、それと同時にもどかしくなる。
 無意識に擦り合わせていた足が恭弥くんに持ち上げられ、そのまま内腿へとキスが落とされた。
 わざわざ言わなくてもいいことなのに、いやらしいお願いが口から出てしまう。

「恭弥くんの、っも、はやく、いれてほしい……」
「は……堪らないね。そんな風に言ってくれるんだ」

 吐息ひとつにも恭弥くんの興奮が滲む。
 はしたないことを言ったのに、引かれたりしなかった。そのことに安心して息を吐くと、ギシリとスプリングを軋ませ恭弥くんが動いた。
 ベッドサイドに置かれた引き出し。そこから取り出されたものに、溶けかけていた私の思考が現実に引き戻される。

「え……」

 取り出された、正方形のパッケージに包まれた避妊具。
 その黒い袋を破ろうとする恭弥くんを見て、思わず声を上げてしまう。

「あ、待っ……あの、恭弥くん……」
「うん? どうしたの?」
「え、あ……ゴム、するみたいだったから……」

 思っていたよりも泣きそうな声になってしまい、自分のことなのに驚いてしまった。

「……若菜?」
「なんか、分からなくて……。恭弥くん、なんで避妊するの……?」
「うん?」
「こ、子供いらないって言われてるみたいで、それって簡単に私のこと捨てられるようにしてるのかなって、思って……」

 余計なことを言ってしまったのだと、言ってしまった後になって肌で感じた。
 恭弥くんの声に困惑と苛立ちが混じり、感じた冬の冷気に指先が冷たくなる。

「……捨てる? 僕が? ……若菜のことを?」
「あ……」
「若菜に何言われても離してやらないって僕言ったと思うけど、まだ分かってないの?」
「ち、ちがう……」

 ただ、避妊する理由を知りたかっただけなのだ。
 不安になってしまった原因を一つずつ解明していきたくて、今のままではまだ不安だから知りたいと、ただその一心だった。
 怒らせるつもりも、行為を中断させる可能性も、本当に考えていなかった。

「違わないよ。若菜のそういうのは、誰かの入れ知恵? 好きだって言ってた奴に何か吹き込まれた?」
「え……?」
「本当はあんまり聞きたくなかったんだけど、若菜って僕以外とこういうのしたことある?」

 問いかけの意味を理解すると同時に、私の心臓が一気に底冷えする。
 恭弥くんの言う「こういうの」とは、十中八九セックスのことだろう。
 こんなに恥ずかしいことを他の人としたいと思ったこともないのに、まさかとは思うが、私は浮気を疑われているのだろうか。
 だから避妊して誰の子供か分からなくなるのを防ぎたかったと、そういう話をされている気がしてしまう。
 先ほどまでの空気と落差が激しい。恭弥くんの醸す雰囲気が怖くて、弱くなった涙腺からじわりと涙が滲んでしまった。
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