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第11章 戦いの果てに

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 二度の電撃系最高呪文によって、オークオグル達の攻撃は怯んだ。その間にツカサはロコとモコに癒しのまじないを使って、ガンダルの《リンカーネーション》のアイテムを発動させた。うたには、苦痛を癒し、ケガも治療しようとしたが、首からのネックレスに手を触れた瞬間、ツカサの守護石が反応した。

『そのアイテムは、輪廻転生の魔法が封じられています』

「なら、ガンダルの魔法・・・?リンカーネーションなのか?」

 ツカサはロコの攻撃されている姿を見、一瞬たりとも時間がある訳では無いと感じると、すぐさま、癒しのまじないを掛け、死の呪文を唱えた。

「これで、君は現実世界へと戻れるよ・・・、さよなら」

 うたにそう話しかけたが、うたには指を動かす力さえ残っていなかった。すでに意識が遠のいていたのだ。

 静かにその場にうたの体を寝かす。そして、ツカサは周りにいるオークオグル達に向けて電撃系最高の呪文《ボルテッグス》を唱え、放った。

 電撃の呪文の効果は空を飛んでいるワイヴァーンには届かなかったものの、目の前にいるオークオグル達には効果があり、ほとんど、モコの周りまでのオークを殲滅した。

 その間に、ロコの心を癒す、うたにかけたまじないと同じものを使ってロコの心を癒した。そして、死の呪文を唱え、ロコを現実世界へと戻した。

 再度、電撃の呪文を唱え、最後の一団であろうオークオグル達を殲滅すると、モコにも同様の事を行った。

 3人を現実世界へと返したツカサ。多少、荒療治ではあったが、これで自分の使命を果たせたと思った。

 今、目の前にある災難は乗り越えられる。

 空を舞うワイヴァーンに向けて、攻撃を仕掛ける事にした。

 《浮く》呪文を唱え、自らの体を上空へと浮かせると、意識を集中しながらワイヴァーンに向けて《デス・インテグレイト》を唱えた。

 ワイヴァーンの体は粉々になり、消えていく。

 次のワイヴァーンはその魔法に恐れをなして、体の向きを変えると、どこかへと飛んで行ってしまった。

 ツカサは地面に降りる。そして、周りの凄まじい惨状を目の当たりにしながらも、3人の体を一人で聖堂へと運んだ。直に寝かせるのに多少、引け目を感じたが、今はガンダルや村の入り口での戦闘が気になった。

 3人の体を運ぶのに時間がかかってしまったが、ツカサは村の入口へと向かう。

 すでにガンダル達の姿を確認した場所は、村の入り口ではなく、村の中だった。

「戦況は・・・、推され気味か」

 その判断が正しいと思うと、ガンダルが相手する敵に目を向けた。それは洞窟で一瞬、見た闇の魔法使いの姿だった。

 ツカサはその周りを確認する。見慣れない僧侶と戦士が奮戦している姿を確認した。

 それが味方なのか、敵なのかはわからないが、状況からすると味方のようだった。

「この状況を一転させるには・・・?」

 ツカサは少し迷ってみたが、戦況を変えるには爆発系の呪文しかないと決めた。

 すぐさま、《バムド》を呪文を唱えた。そして、闇の魔法使いの後方、トロルたちの中に巨大な爆発を起こした。

 その巨大な爆発はトロルたちの体を吹き飛ばし、その威力は闇の魔法使いの体をも吹き飛ばした。

 村の建物に寄り掛かっていた二人の僧侶は、片手で顔を隠す。戦士は何かを感じ取ったのか、すぐにその場から引き下がった。

 ガンダルは戦いに集中していたのか、その爆風を体に浴びるも、幽霊の体が災いしてか何も感じなかった。

「ガンダル!」

 呪文を唱え終わったツカサが駆け寄る。その姿を見たガンダルは、「やっと来たか」と声を掛けた。

 プリーテスとプリートスの二人は、ツカサの姿を見て声を失った。

「死んだ人が生き返った・・・?」

 その言葉を離れた所で聞いたラムネは、『あれが・・・、運命の魔法使い?』と心の中で囁いた。

 ティスコフは、自分の体と入れ替え死んだ筈の男が、その場に現れた事に動揺した。

「マスター・・・。マスター!あれは?」

 その言葉は誰に向けられた言葉なのかは、ガンダル達にはわからない。が、ツカサの加勢で戦況が変化した事はわかった。

「数は少ない・・・。一気に行くぞ!」

「ぼちぼち・・・、本気出しましょう」

 ガンダルとツカサが言葉を交わす。二人は同時に呪文を唱えた。その呪文はトロルたちに向けられた。ティスコフは戦況が変わった事に気づくと、立ち上がってその身をここから引こうと考えた。が、次の瞬間、背中に痛みを感じたのだ。

「逃がさないよ!闇の魔法使い」

 それはラムネが手にしたロングスォードがティスコフの体に突き刺さったのだ。

「なに・・・?しかし、甘いな・・・」

 ティスコフは帰還の呪文を唱え、その場から離脱した。

 トロルオーガは退却を始めた。

 何とかツカサの加勢で、この戦いにガンダル達は勝利したのだ。
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