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第2章 旅の始まり
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翌朝、ツカサは目覚めると、普段と違う光景に一瞬戸惑ってしまった。激しい焦りは無かったものの、今、自分が置かれている現状を把握するのに時間を要した。
さすがに宿屋である。就寝用の寝間着としてアロハシャツが準備されていた。昨夜はこのアロハシャツを着て眠ったが、どこかしっくりとせいで、今朝は寝不足である。
壁に掛けてある時計を見ると、まだ6時30分である。食事にはまだ早いなと思い、寝間着のまま窓へと寄り、思い切り窓を開けた。
眼下からは賑やかな声が聞こえる。夜間は窓を閉めていたせいか、全く外の様子や音が聞こえなかったが、こうして窓を開けると外の様子がよくわかる。
ツカサはベランダに出て、外の空気と雰囲気を感じた。普段と違う景色が目に入る。
所々から立ち上る黒い煙。それが一本や二本なら現実世界と変わらないが、ここは数えきれない程の煙が上っている。その風景はまさに、現代人が忘れた過去の暮らしの風景であった。
ツカサは部屋に戻り、寝間着から昨日購入した服に着替えると、階下に降りていった。
階段を降りながら、ふと、自分が生活してきた環境との違いを改めて認識したのだ。
部屋には電気が通っていない。その為、ランタンや蝋燭で灯りをとっていた。
『では、あのシャワーの仕組みはどうなっているんだろう?』と疑問が湧いた。
部屋のランタンも、ボンヤリと明るいという訳ではなく、電気の灯り並みに部屋中が明るかった。
これら疑問をフロントの前を通った時に聞こうと思いながら、階段を降りていた。階段を降り、フロントの前を通って、その先を左に曲がると喫茶ルームがある。普段は別の入口から入って利用できる喫茶店となっている。
フロントには、タケシが立っていた。
「おはようございます」とツカサが挨拶をすると、タケシも「おはようございます、ツカサ様」と挨拶を返してくれた。
「ツカサ様。防具屋より、預かり物があります。お食事が終わりましたら、一度、フロントにお寄りいただけますか」とタケシが言った。
「防具屋から?」と、ツカサが不思議そうな表情を作ったのを見て、タケシは、「昨日、防具等旅支度の準備をされませんでしたか?」と聞いてきたので、ツカサは「あぁ」と思い出した。
「では後程」とタケシが言うと、階段を降りて来た旅支度をした男性二人の対応に入った。
ツカサは喫茶ルームに入った。まだ誰も来ていないようで、ツカサが一番手のお客だった。
「おはようございます。ツカサ様」とミサが挨拶をしてくれた。
「おはようございます」とツカサも挨拶を返す。
「朝食はバイキング方式となっております。お好きなものを選んで、お皿に取ってお召し上がりください」
そう説明をしてミサはトレーと皿を渡してくれた。そんな会話のやり取りの間にも、宿泊客が順々にやって来る。ツカサはミサとのんびり話をしている場合じゃないなと思い、食材を見て回ってから、食べたいものを選んで皿に盛り付けた。
朝食を終え、フロントに寄ってから部屋に戻ろうとしたところ、ロコモコの二人とすれ違った。
「おはよう、おっさん」と元気なロコに、ペコリと頭を下げただけのモコ。昨日の出会った時のモコとは大違いである。
「おはようござい・・・」と、モコの様子が違うことに気にかかったツカサだが、それ察知したのか、ロコが「あぁ、コイツ?コイツね、朝は低血圧で弱くてさ、テンションいつもと低めなの」と苦笑いしながら教えてくれた。
そんなロコを睨むような目付きでモコは、「うるさい」と肘鉄をロコのお腹にいれた。
「イテェなぁ」と言いながら、ロコは「後で部屋に迎えに行くんで準備して待っていて。そうね、時間は8時30分頃で」と言って、手を振りながら階段を降りていった。
三階にあがると、ちょうど部屋から出てきたうたと出会った。
「おはよう」と優しい声で挨拶をすると、うたも「おはようございます」と小さい声で挨拶を返してくれた。
どうも、女性陣二人は低血圧で朝は弱いようだ。
「ロコモコの二人は喫茶ルームにいるよ。8時30分頃に出発だって」と一言伝えると、うたはペコリと頭を下げて、「わかりました」と小さい声で返した。
部屋に戻ったツカサは、受け取った防具の全てをベッドの上に出してまじまじと見まわした。
光り輝くエルフの鎖帷子にミスリル銀の胸当て、そしてモスグリーンの魔力が備わったローブ。今まで着ていたオレンジ色のTシャツの上に鎖帷子、その上に胸当てを着けて最後にローブを着れば立派な魔法使いだとスナックに教わった。今日はこの後、武器屋に行って、ルーン文字が入った杖を購入し、旅の荷物を入れるバックパックを買えば準備は終わるという。
バックパックはカバンのような物だと聞いた。
『俺が好きなメーカーのカバンはあるかな・・・』と、考えながら時間が来るまでの間、ツカサはベッドに横になった。
8時を少し回った頃を見計らって、ツカサは準備を始めた。窓から差し込む太陽の光を浴びながら、ここに来る前から着ていたオレンジ色のTシャツを着て、その上に光り輝く鎖帷子を着る。そして、その上に銀色の光を帯びた胸当てを首から通して、脇の下のベルトで止める。そして、その上からモスグリーンのローブを着た。全てを着て準備が整った自分を鏡の前で見てみる。その格好はどこか、仮装大会にでも出場するような何も知らない初心者が初めてコスプレをした様だった。
時間になろうとした。部屋の扉がノックされ、廊下からロコの声が聞こえた。
「おっさん。準備は出来たかい?そろそろ、出掛けようぜ」
「今、出るよ」とツカサが声を掛けて、扉に手を掛けた。一瞬、忘れ物は無いかと後ろを振り向いてから、部屋に別れを告げて扉を開けた。
廊下にはロコだけじゃなく、モコとうたもいた。
「俺が最後?」と声を掛けると、3人とも首を縦に振った。
「なら、ぼちぼち行きますか?」とツカサが声を掛けると、ロコが、「おっさん。どこへ行くか分かっているのかい?」と質問してきた。
「いや、わからない。けど、武器屋だよね」と聞き返した。
「そっ!まずは武器屋に行って、それから雑貨屋でカバンを購入して、スーパーに寄って食料や水を買って、それから、大魔導士ガンダルさんの住んでいる屋敷へ向かう」
そういうと、ロコが先頭切って歩き出した。それに女性陣二人が続く。ツカサは最後を歩いた。
宿屋を後にした一行は、まずは街の中央を目指して歩いた。宿屋ハワイアンがあるのは街の西南地区だ。スナックの防具屋があるのはほぼ街の中央の北側。武器屋は中央と西南地区の間にある。看板には何と書かれているかわからないが、ロコが「ここだよ。チップスの武器屋」と教えてくれた。
店内に入ると、すでに客がいて、手にロングスォードを持ち、いろんな角度から見て何かを確かめていた。
「チップスはいる?」とロコが愛想よく尋ねると、カウンターの奥にいた店員が出てきて、「あっ、これはロコさん。旦那様はまだ来ていないんですよ」と答えた。それを聞いた先客が、「また来るわ」と言って、武器をカウンターの上に置くと店から出て行った。
「なんだ、あの客?」とロコが言うと、店の店員は、「旦那様が居れば、ツケで武器が買えると聞いてきた客ですよ。誰がそんな嘘を流しているのか・・・」と困り顔を見せた。
「へぇ・・・。良い事を聞いた。じゃあ、今度から俺達もチップスがいる時にお邪魔しようかな」とロコが言うと、裏から「そんな事はさせねよ。第一、俺が居たってツケで商品を買わす訳ないだろう」といい、体格の良い男が出て来た。
「なんだぁ、チップス。いたのか」とロコが屈託のない挨拶をすると、「ガキが、何しにきた」と愛想悪い言い方をしながらカウンターの前に出て来た。
「客を連れて来た。この世界に初めて来たばかりで何も武器は持っていない。おっさんが魔法使いで、後ろの彼女が僧侶だ」とロコが紹介しすると、チップスは一瞥してから、「スナックから聞いているよ。値段は勉強しておいた。その代り、俺の依頼を受けてくれ」といって、奥から杖とメイス、短い剣を出してきた。
ロコがそれぞれを手にして見る。
「何でショートスォードを?僧侶の彼女に?」とロコが聞くと、チップスは呆れ顔を見せて「それは魔法使いのおっさんにだ」と言った。
「えっ?魔法使いでも剣は扱えるのか?」とロコは驚いて聞くと、チップスは、「装備する武器に区切りは無いぜ!要は、武器の扱いに長けているかどうか。まぁ、戦士のお前らはどんな武器でも扱えないとな。馬鹿とハサミは使いようだというだろう」と返した。
「それと・・・」と言って、チップスはバックパックも二つ、カウンターの上に並べてくれた。
「これはオマケだ」と言ってくれた。
ツカサはローブの上からショートスォードの鞘をつけ、背中にバックパックを背負った。うたも、手にメイスを持つと、背中にバックパックを背負う。メイスは腰から下げられるように、それ専用のベルトも一緒に購入した。
チップスの店を出ると、街の中央のスーパーに寄った。そこで食料と水を買った。
最後に、魔法雑貨屋に寄って、傷薬と魔法のアイテムを幾つか購入して、旅の支度は整った。
「もうこんな時間か・・・」とロコが街の公園にある時計を見て呟いた。すでに昼の11時になろうとしている。
「街で昼飯を食べていたら、どこまで行けるか計算が出来ない。ここは街を出てガンダルの屋敷へ向かう。途中で、何か食べれば良いとして・・・。とにかく、急いで行こう」とロコが言うと、3人は静かに頷いた。
4人は街の西門から外へ出た。街の外は広く広大だ。幾つか煙が立ち上っている。どうやら野焼きをしているようだ。
「おっさん。昨日の地図を見せてくれ」とロコが言って来たので、ツカサはポケットから昨日渡された手書きの地図を出して、ロコに手渡した。
「この地図によると・・・」と言って、ロコが方角を合わせながら地図を見て、「あっちの方だな・・・。あの先は、たしか・・・。迷いの森があったな」と思い出しながら言った。
「迷いの森って・・・、誰も入らない森でしょう・・。あっ、でも聞いたことあるよ。とても解決できない問題や悩みを持った者は、迷いの森へ行け。さすれば解決するだろう・・・って」
「それだ!迷いの森に大魔導士ガンダルがいるんだ」
そう結論付けしたロコは、「さっ、行こう」と先頭を切って歩き出した。
さすがに宿屋である。就寝用の寝間着としてアロハシャツが準備されていた。昨夜はこのアロハシャツを着て眠ったが、どこかしっくりとせいで、今朝は寝不足である。
壁に掛けてある時計を見ると、まだ6時30分である。食事にはまだ早いなと思い、寝間着のまま窓へと寄り、思い切り窓を開けた。
眼下からは賑やかな声が聞こえる。夜間は窓を閉めていたせいか、全く外の様子や音が聞こえなかったが、こうして窓を開けると外の様子がよくわかる。
ツカサはベランダに出て、外の空気と雰囲気を感じた。普段と違う景色が目に入る。
所々から立ち上る黒い煙。それが一本や二本なら現実世界と変わらないが、ここは数えきれない程の煙が上っている。その風景はまさに、現代人が忘れた過去の暮らしの風景であった。
ツカサは部屋に戻り、寝間着から昨日購入した服に着替えると、階下に降りていった。
階段を降りながら、ふと、自分が生活してきた環境との違いを改めて認識したのだ。
部屋には電気が通っていない。その為、ランタンや蝋燭で灯りをとっていた。
『では、あのシャワーの仕組みはどうなっているんだろう?』と疑問が湧いた。
部屋のランタンも、ボンヤリと明るいという訳ではなく、電気の灯り並みに部屋中が明るかった。
これら疑問をフロントの前を通った時に聞こうと思いながら、階段を降りていた。階段を降り、フロントの前を通って、その先を左に曲がると喫茶ルームがある。普段は別の入口から入って利用できる喫茶店となっている。
フロントには、タケシが立っていた。
「おはようございます」とツカサが挨拶をすると、タケシも「おはようございます、ツカサ様」と挨拶を返してくれた。
「ツカサ様。防具屋より、預かり物があります。お食事が終わりましたら、一度、フロントにお寄りいただけますか」とタケシが言った。
「防具屋から?」と、ツカサが不思議そうな表情を作ったのを見て、タケシは、「昨日、防具等旅支度の準備をされませんでしたか?」と聞いてきたので、ツカサは「あぁ」と思い出した。
「では後程」とタケシが言うと、階段を降りて来た旅支度をした男性二人の対応に入った。
ツカサは喫茶ルームに入った。まだ誰も来ていないようで、ツカサが一番手のお客だった。
「おはようございます。ツカサ様」とミサが挨拶をしてくれた。
「おはようございます」とツカサも挨拶を返す。
「朝食はバイキング方式となっております。お好きなものを選んで、お皿に取ってお召し上がりください」
そう説明をしてミサはトレーと皿を渡してくれた。そんな会話のやり取りの間にも、宿泊客が順々にやって来る。ツカサはミサとのんびり話をしている場合じゃないなと思い、食材を見て回ってから、食べたいものを選んで皿に盛り付けた。
朝食を終え、フロントに寄ってから部屋に戻ろうとしたところ、ロコモコの二人とすれ違った。
「おはよう、おっさん」と元気なロコに、ペコリと頭を下げただけのモコ。昨日の出会った時のモコとは大違いである。
「おはようござい・・・」と、モコの様子が違うことに気にかかったツカサだが、それ察知したのか、ロコが「あぁ、コイツ?コイツね、朝は低血圧で弱くてさ、テンションいつもと低めなの」と苦笑いしながら教えてくれた。
そんなロコを睨むような目付きでモコは、「うるさい」と肘鉄をロコのお腹にいれた。
「イテェなぁ」と言いながら、ロコは「後で部屋に迎えに行くんで準備して待っていて。そうね、時間は8時30分頃で」と言って、手を振りながら階段を降りていった。
三階にあがると、ちょうど部屋から出てきたうたと出会った。
「おはよう」と優しい声で挨拶をすると、うたも「おはようございます」と小さい声で挨拶を返してくれた。
どうも、女性陣二人は低血圧で朝は弱いようだ。
「ロコモコの二人は喫茶ルームにいるよ。8時30分頃に出発だって」と一言伝えると、うたはペコリと頭を下げて、「わかりました」と小さい声で返した。
部屋に戻ったツカサは、受け取った防具の全てをベッドの上に出してまじまじと見まわした。
光り輝くエルフの鎖帷子にミスリル銀の胸当て、そしてモスグリーンの魔力が備わったローブ。今まで着ていたオレンジ色のTシャツの上に鎖帷子、その上に胸当てを着けて最後にローブを着れば立派な魔法使いだとスナックに教わった。今日はこの後、武器屋に行って、ルーン文字が入った杖を購入し、旅の荷物を入れるバックパックを買えば準備は終わるという。
バックパックはカバンのような物だと聞いた。
『俺が好きなメーカーのカバンはあるかな・・・』と、考えながら時間が来るまでの間、ツカサはベッドに横になった。
8時を少し回った頃を見計らって、ツカサは準備を始めた。窓から差し込む太陽の光を浴びながら、ここに来る前から着ていたオレンジ色のTシャツを着て、その上に光り輝く鎖帷子を着る。そして、その上に銀色の光を帯びた胸当てを首から通して、脇の下のベルトで止める。そして、その上からモスグリーンのローブを着た。全てを着て準備が整った自分を鏡の前で見てみる。その格好はどこか、仮装大会にでも出場するような何も知らない初心者が初めてコスプレをした様だった。
時間になろうとした。部屋の扉がノックされ、廊下からロコの声が聞こえた。
「おっさん。準備は出来たかい?そろそろ、出掛けようぜ」
「今、出るよ」とツカサが声を掛けて、扉に手を掛けた。一瞬、忘れ物は無いかと後ろを振り向いてから、部屋に別れを告げて扉を開けた。
廊下にはロコだけじゃなく、モコとうたもいた。
「俺が最後?」と声を掛けると、3人とも首を縦に振った。
「なら、ぼちぼち行きますか?」とツカサが声を掛けると、ロコが、「おっさん。どこへ行くか分かっているのかい?」と質問してきた。
「いや、わからない。けど、武器屋だよね」と聞き返した。
「そっ!まずは武器屋に行って、それから雑貨屋でカバンを購入して、スーパーに寄って食料や水を買って、それから、大魔導士ガンダルさんの住んでいる屋敷へ向かう」
そういうと、ロコが先頭切って歩き出した。それに女性陣二人が続く。ツカサは最後を歩いた。
宿屋を後にした一行は、まずは街の中央を目指して歩いた。宿屋ハワイアンがあるのは街の西南地区だ。スナックの防具屋があるのはほぼ街の中央の北側。武器屋は中央と西南地区の間にある。看板には何と書かれているかわからないが、ロコが「ここだよ。チップスの武器屋」と教えてくれた。
店内に入ると、すでに客がいて、手にロングスォードを持ち、いろんな角度から見て何かを確かめていた。
「チップスはいる?」とロコが愛想よく尋ねると、カウンターの奥にいた店員が出てきて、「あっ、これはロコさん。旦那様はまだ来ていないんですよ」と答えた。それを聞いた先客が、「また来るわ」と言って、武器をカウンターの上に置くと店から出て行った。
「なんだ、あの客?」とロコが言うと、店の店員は、「旦那様が居れば、ツケで武器が買えると聞いてきた客ですよ。誰がそんな嘘を流しているのか・・・」と困り顔を見せた。
「へぇ・・・。良い事を聞いた。じゃあ、今度から俺達もチップスがいる時にお邪魔しようかな」とロコが言うと、裏から「そんな事はさせねよ。第一、俺が居たってツケで商品を買わす訳ないだろう」といい、体格の良い男が出て来た。
「なんだぁ、チップス。いたのか」とロコが屈託のない挨拶をすると、「ガキが、何しにきた」と愛想悪い言い方をしながらカウンターの前に出て来た。
「客を連れて来た。この世界に初めて来たばかりで何も武器は持っていない。おっさんが魔法使いで、後ろの彼女が僧侶だ」とロコが紹介しすると、チップスは一瞥してから、「スナックから聞いているよ。値段は勉強しておいた。その代り、俺の依頼を受けてくれ」といって、奥から杖とメイス、短い剣を出してきた。
ロコがそれぞれを手にして見る。
「何でショートスォードを?僧侶の彼女に?」とロコが聞くと、チップスは呆れ顔を見せて「それは魔法使いのおっさんにだ」と言った。
「えっ?魔法使いでも剣は扱えるのか?」とロコは驚いて聞くと、チップスは、「装備する武器に区切りは無いぜ!要は、武器の扱いに長けているかどうか。まぁ、戦士のお前らはどんな武器でも扱えないとな。馬鹿とハサミは使いようだというだろう」と返した。
「それと・・・」と言って、チップスはバックパックも二つ、カウンターの上に並べてくれた。
「これはオマケだ」と言ってくれた。
ツカサはローブの上からショートスォードの鞘をつけ、背中にバックパックを背負った。うたも、手にメイスを持つと、背中にバックパックを背負う。メイスは腰から下げられるように、それ専用のベルトも一緒に購入した。
チップスの店を出ると、街の中央のスーパーに寄った。そこで食料と水を買った。
最後に、魔法雑貨屋に寄って、傷薬と魔法のアイテムを幾つか購入して、旅の支度は整った。
「もうこんな時間か・・・」とロコが街の公園にある時計を見て呟いた。すでに昼の11時になろうとしている。
「街で昼飯を食べていたら、どこまで行けるか計算が出来ない。ここは街を出てガンダルの屋敷へ向かう。途中で、何か食べれば良いとして・・・。とにかく、急いで行こう」とロコが言うと、3人は静かに頷いた。
4人は街の西門から外へ出た。街の外は広く広大だ。幾つか煙が立ち上っている。どうやら野焼きをしているようだ。
「おっさん。昨日の地図を見せてくれ」とロコが言って来たので、ツカサはポケットから昨日渡された手書きの地図を出して、ロコに手渡した。
「この地図によると・・・」と言って、ロコが方角を合わせながら地図を見て、「あっちの方だな・・・。あの先は、たしか・・・。迷いの森があったな」と思い出しながら言った。
「迷いの森って・・・、誰も入らない森でしょう・・。あっ、でも聞いたことあるよ。とても解決できない問題や悩みを持った者は、迷いの森へ行け。さすれば解決するだろう・・・って」
「それだ!迷いの森に大魔導士ガンダルがいるんだ」
そう結論付けしたロコは、「さっ、行こう」と先頭を切って歩き出した。
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