ブレインダイブ

ユア教 教祖ユア

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弐章・選ばれし勇者編

2-22 54 緋色視点 美しい残酷を

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「本当にどこ行ったんだよ…!」

全く気配が見えないので何処にいるか見当がつかない。

「邪魔だよ!」

死線でモンスターを倒していく。

そうやって、雑く敵を倒し過ぎたせいでサルが大量に緋色を追いかけてきた。

血の匂いを嗅ぎつけて、一直線上の血の道になっていったせいだ。

「ちょっと待ってよ…この量は…!」

この大群には見覚えがある。

前回の世界線での始めてサルと遭遇したあの量と同じだ。

まず、前回はこの日では無く、次の日に出会った。

それに、場所が違う。

あれは5人も殺したときの血で集まってきたのだろうが、今回はそんなにモンスターを倒してない。

「…嗅覚いいの…?」

だとしたら、明日だろうが今日だろうが、サル自体はどこかに居るだろうしサル達とと遭遇する運命かもしれない。

「困ったなぁ…倒さないと…」

前回と違って1人だろうし、ミスると殺される。

「死線誘導・乱舞(大)!」

そこから、更に能力で倒していく。

「死線誘導・回帰(大)…!」

連続で使うとモンスターを倒す効率は良い。燃費は悪いのが少々痛いが。

「やっぱり………終わんない…!」

さっきの攻撃で30体倒したが、それでも残り150体位はいる。

「死線誘導・殺戮(大)!」

この攻撃はブーストの基礎的な攻撃なだけあって大分強いが連発出来るほど緋色は強くない。持久力が無いといってもいいが。

こんな所で時間は割きたくないが、数が多過ぎて逃げるのも困難だ。

「さっさと往ね!」

半分位倒したその時、サルの攻撃が止んだ。

(あれ?)

そして逃げる様に去っていった。

どうやら、怯えてくれたようだ。

「…助かった。…無駄に殺す時間無いし。」

橋本の事を思い出した。

前回は橋本が助けてくれたが、そもそも時間の問題上彼は居ない。

それに、彼が死なない方法としては、緋色を助けない事だ。

会わなければ、彼は大型モンスターと遭遇しないだろうし、仮に遭遇したとしても緋色を庇って死ぬ事は少なくとも無い。

(助けてくれなかったら、私が死んでた…皮肉だよ…)

空間認識していくと、急に人工物を認識した。とても丸い建物だ。

しかし、それを邪魔するかの様に大型モンスターが3体程立ち塞がる。

やけに連携が取れている。3人はまるで軍のように佇んでいる。

「もしかして……洗脳されてる?」

そう考えれば、大地の涙はこの建物の中にいるかもしれない。

物凄くトロいが攻撃が強い。

当たればワンパンだろう。

一撃で木が倒れるのは可笑し過ぎる。

「この!」

それに、しぶといので死線では上手く攻撃が通らない。

すると、途轍もないスピードでこちらにやってくる気配を感じた。

「氷帝の剣(大)!!」

1体を完全に凍らせた。

幾らなんでもこの冷気は大き過ぎる。

流石100年に1度の英雄だ。開眼する人が少ない分、火力も規格外なのだろうか。

更に、また気配がやって来る。

「棚見君、早過ぎだってば!正義の審判(大)!」

今度は大型モンスターに正義の槍を突き刺した。

「春斗、香露音…!それと…」

「…何でそんなに速いんですか…!?…黒の一閃(大)…」

脳天を貫く。

「鶴ちゃん!」

「何とか追い付きましたね。良かったです。」

「…はぁ…あの速度で余裕なのね…」

「………縮地(中)を持ってない棚見君がなんで一番速いの………」

「あれれ?夏希は?」

「仲間収集で後で来るって言ってましたよ。」

「へぇ…」

それにしても、洗脳はされていただろうし、洗脳が解除出来る緋色も居ないので、夏希に頼るしか無かったが、無事に残りも二人を洗脳を解いてくれたようだ。

それにしても早い気がするが。

きっと、緋色の移動が速いことを見越しての事だろう。丁度いいタイミングで来てくれたので本当に助かる。

「もしかして…此処ですかね?」

「そう考えれるよね。」

「うん。こいつら洗脳されてる様に見えたし、わざと教えてる感じあるよね。」

「………行きましょう。」

扉の中に入っていった。中に入ると、ここにいた全員が驚いた。

「………これは…」

「…………明らかに…見た目よりも中身広いですね。」

「ここ…どこ………ですか…?」

「………迷わない様にするしか…無いね…」

壁も床も天井も全て白い構造なせいで方向感覚を失いそうだ。

「まるで、迷宮の白城だねぇ…」

「都市伝説の類かと思ったけど……次元が滅茶苦茶だし…本当だったなんて…」

「行きましょう。大地の涙は慣れてますって。」

モンスターは1体も居ないが、空間認識が上手く機能しない。

なので、適当に行く。

香露音がきっと道を覚えてくれるだろうし、何とかなる筈だ。

そうやって人任せにしているから、何時まで経っても方向感覚なのだろう。

広い場所に辿り着く。

するとそこには大地の涙がいた。

「…あらあら~解除出来たのね~それに、ここまで辿り着いたのなら…合格よ~」

「ここまで、追いかけたんですから、教えて下さい。」

「…そうね~良いわよ~必殺型のブーストを使っても、緋色さんは勝ってしまったのだから、諦めるわ~…少なくとも今回はね。」

大地の涙は次の世界線もあると言いたいのか。

今回で終わらないと思っているのだろうか。

「…少なくとも…貴方達は、死神を倒したわね。…それは如何やって?」

「……緋色が、ブースト使ってじゃないの?」

「………そうなのね~…でも、それだけじゃあ…倒せないわよ~」

「…じゃあ…」

「…………夏希の魂の力を使って…?」

緋色は夏希の存在を代償にして力を得て死神を倒した。

もしかしたら、それに何か関係するのかもしれない。

「ええ、ええ。そうよ~死神は一種類の能力じゃ倒せないわ~だから、執行者とブレインダイブの力を持っていた緋色さんは倒せたのね~」

「……そんな条件が…」

「あれは、普通のモンスターじゃないわね~」

「…じゃあ、何で大地の涙が死神の事を知っているんですか?」

「………この建物は…願いが叶う事を知っているかしら~?」

「…?…まぁ、噂程度は。」

「…僕は知らないですが……」

よく分からないが、橋本に託された手帳で見たので知っている。

「…その噂は本当よ。」

「ええ!?…じゃあ、金が欲しいって思ったらくれるんですか!?」

流石春斗。

この中々のシリアスな空気をぶち壊してくれる。

「プッ…」

流石春斗。馬鹿馬鹿しすぎて大地の涙も笑っている。

「………はぁ…そうだったら簡単だけどね~…直接的じゃないの~間接的で、願いによっては横暴だったりするわ~」

「それが、理由と何に関係が…?」

「…私は、自身の願いを叶えるためにここの建物の中に入ったことがあるわ~その時に、此処はこんな白くなかった。…とても巨大な図書館だった。」

「ここが…!?」

「…最初は私も驚いたわ~」

「それで…モンスターの情報が…」

「えぇ…………そうゆうことよ~」

「じゃあ…もう一つ質問があります。」

「何かしら~?」

「じゃあ、ここに何故呼んだんですか?」

すると、大地の涙は笑う。

「…私がここに来た時は、図書館ともう一つあるわ~それは、中の世界に繋がってた。あの白い建物からどうやったら中の世界に繋がるのか…私にも分からないわ~」

あり得ないが嘘を言っているようにも見えない。

「それで分かると思うけど~…ここはなんでもありなの~時に貴方達はここに用があって来るかもしれない…その時に…私が敵になるかもね~」

「え…?」

「もしかしたら、貴方の知り合いかも。…フフフ…貴方の願いを叶える方法が…誰かを殺す事かもしれないのよ~?」

「そんな…馬鹿な話…!」

「…それが嘘だと誰が言えるのかしら?香露音さん…?少なくとも私は誰も殺してはないわね。…では。」

という事はやり直している間に何人か殺していることになる。

「それも私の話よ。私の知っている二つ名持ちで一度も殺してない人を探す方が難しいわね。朱の流星は何故世界をやり直したのか、私は見た事が無いから知らないけど…少なくとも、刹那の棺って人は白い建物に入った時、家族に会ったらしいわね~そして、自身の願いをそこで叶えたらしいわ~」

「家族を…」

「人によっては、過去に会った人かもしれない。…世界が、こんな単純にはならず、帰れなくなるかもしれない。世界が過去の何処かかもね。…世界をやり直すという事はそういう事よ。私はそれを教えたかった。…その先には地獄が待っているという事を。」

大地の涙は手を広げる。

「…貴方達は~…死神を倒したいのでしょう~?それに~あの子が消えた元凶だもの~切っても切れないわ~どんなに、あの子が戻って来たとしても~絶対に、死神と会う事になるわ~それが運命よ~行き着く先は、どの行き方だったとしても変わらない。」

「……。」

「…運命を変えてみなさい?あの子が死ぬ運命を変える程に貴方達が強いというのなら~」

そう言い大地の涙は消えていった。

「…言うだけ言って…消えた…」

「帰ろう…」

取り敢えず、何とか白い建物の脱出を試みる。

「……!ちょっと待ってよ…!構造変わってんだけど…!」

「それに困りましたねぇ…モンスターいるんですけど…」

「………頑張って…倒さないと…」

「全部倒していたらきりが無い…!逃げながら出口を探しましょ!」

そう言ってまた全速力で走る。
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