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序章・対の戦い編
1-26 26 緋色視点 理不尽の中で
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「はぁ…!はぁ………!」
理性を取り戻して、辺りを見渡すと全てが終わっていた。
大型モンスターはバラバラになっている。
「本当に……容赦ねぇなぁ…!明日は筋肉痛だよ…!」
限界を超える程に精神世界の緋色が戦ったので体の節々が既に痛い。
「……!」
橋本が倒れているのを見た。彼はもう息をしていない。
(私のせいで…!)
泣きたいところだが、今はそんな事していてはいけない。
「グスッ…………早く…移動しなきゃ………!」
橋本を引き摺っていく。
気配察知が以前より上手になったのか空間認識も出来るようになった。
やり続けると脳が焼けきれそうになったが。
空間認識が出来た事によって開けた崖を見つけた。
そこに簡易的な墓を作る。
「………。この手帳を少し見たよ。……外の世界で死体は残らないって…初めて知ったよ。…………本当に…ごめんなさい…………橋本の…死は絶対に…無駄にはしない。」
モンスターの所に戻り急いで素材を回収しそこを離れる。
新しいモンスターを呼ばない為だ。
「空がもう…暗い。」
そろそろ帰らなければ。
手帳をゆっくり見たい。簡単には見たがしっかりとは見ていない。
気配察知を使っているが、さっきからチカチカとしている。
(集中出来ない…!)
また別のモンスターが現れる。3体だ。
「もう…限界なんだよ…!こっちは!」
もう既に限界レベルに疲れている。
中の世界ではきっとありえない。3日位能力を撃ちっぱなしは簡単だ。
「死線誘導・乱舞(中)!」
2体が動けなくなる。
残りの1体はこちらにやってくる。
「輪廻(小)…!」
粗悪なナイフで首を斬る。刃こぼれし始め、この1体を倒しきったところで壊れてしまった。
(こいつももう終わりか…高かったのに!)
あと2体だ。
すると、地面とは違う感触の物を踏んだ。
布だ。
(これ…!)
どうやら5人のところに戻ってきたようだ。
「借りる。」
夜の騎士であろう何かの所の近くに落ちていた剣を拾う。
「短剣じゃないから分かんないけど…!」
これくらいの剣であれば、子供の緋色に繋がれば一番良いが、これ以上暴れられると、中の世界に帰れる気がしない。
「電光石火(小)…!」
一気に残りの2体を倒した。
この剣は切れ味が良くて助かった。
人間らしい何かが5つあったが、これに構う暇はない。
「早く…帰らなきゃ……!」
さっさと素材を回収し、更に行く。
この道通りを行けば帰れる。
縮地をしても全然進まない。何だったらずっと走っといたほうが速い。
「はぁ…はぁ………やっと……」
扉が目の前にある。
やっと帰れた。
撥水コートを脱ぎ捨てた。よく見れば同じ様な布が辺りに散らばっている。
外の世界ではやはり常識なのだろう。
扉を開いた。
「………!」
皆が居た。
泣きそうだ。子供の様に縋りついて泣きたかった。
でもそれは出来ない。弱者にはなってはいけない。知られてはいけない。
何事も無かったかのように笑わないといけない。
「………ただいま。」
笑顔で言う。
人を殺した事も。人を自分のせいで死なせた事も。
この人達の前では隠したかった。
「……皆、いるんだね。…試験、お疲れ様。」
きっと、何事も起きなかったとは思っていないだろう。
察しのいい人達だ。
「う、うん。そっちも…お疲れ様…」
空白の間を遮るようにして夏希は言った。
一番鈍そうな夏希でさえも気付いていそうだ。
でも、何も言わないで欲しかった。
何も無かったことにして欲しかった。
「春斗、鶴ちゃん。見てたよ、昨日。かっこよかったよ。」
「は、はい…」
鶴ちゃんは答える。
彼らはきっと今日も頑張った事だろう。
でも、それよりも疲れた。泣く前に早く帰りたかった。
「はい。頑張りました。…樫妻先輩も戻って来たことだし……帰りましょうか。」
春斗は優しく声をかけた。
その優しさが緋色の罪にグサグサと刺していく。
その優しさがとてつもなく辛い。
嬉しい気持ちもあるが、それでも辛い。
「…?私を待ってくれたの?」
「そうですよ。試験が終わった時に丁度、樫妻先輩の帰る予定だったので。」
帰る。この言葉で、地獄から抜け出したと言う事を確信する。
やっと……帰れる。
「そうなんだ。ありがとう。」
笑い続けなければ、おかしくなる。泣いてしまう。
心が痛い。
皆で帰る。
先に夏希が離れ、香露音が離れ、鶴ちゃんが離れ、春斗と二人きりになった。
「…先輩。」
「……何?」
言わないでくれ。
「…先輩の事ですから、僕は何も無かったとは思いません。」
「…………。」
「でも…もっと僕を、僕達を頼ってくれませんか?」
「…………。」
「一人で押し込まないで下さい。…先輩は重い物を抱え過ぎです。」
「…………………。」
「辛い時は…辛いって言ってください。」
緋色の目から雫が零れ落ちる。
1度、涙が出たら、もう…とまらない。
「グスッ…うぅ………」
春斗は緋色の背中にそっと手を置いた。
「もう、夜遅い事ですし…我慢しなくても大丈夫です。」
緋色が泣きやんだところは自分の家に近かった。
家まで送ってくれたようだ。
「…大丈夫ですか…?」
「うん………」
「ちょっとすっきりしました…?」
「……うん…」
「なら良かったです。おやすみなさい。樫妻先輩。」
「…おやすみ……」
家に帰り、お風呂に入る。
(この野郎…!泣くつもり無かったのに、泣いちゃったじゃん!コンチクショー!)
まあ、それはさておき、まだやる事がある。
手帳を見ると、沢山の事が細かく書かれていた。
モンスターの種類だけでも、数十種類ある。
「最初に死にかけたあれ……サルっていうんだ……………」
弱点等書かれていたが、大型のモンスターはあまり書いてない。
存在する事は書いてある。
(普通は…見つからないか。)
それに、外の世界の大体の地図もあった。
モンスターの出現率も書いてある。橋本は小学園の時、皆から優秀だと慕われてた事を思い出す。
(……あの野郎………全然、モンスターが出ない場所じゃないじゃん…!)
只々遠いだけという事らしい。
死ねば良いのに。……いや…柊死んだんだった。………殺したし。
「…ッチ……」
更にページを捲る。
そういえば、以前俺と同じ資格所持者が居た時に聞いた話だが、この世界にオカルトチックな建物がある…とのこと。
俺も面白そうで軽く探していたら、3回目の外の世界に行った時に見つけた。
明らかに、不自然なくらいに白いドーム。
直ぐに行った。扉を開けた。
………内装がないそうです……っつって………………
とまぁ、何も無かった。真っ白だった。
願いが叶うっていう噂を聞いたことがあるから、そういう人でも住んでるのかと思ったよ。
で、扉を閉めて帰ろうとした。ふと、建物を見る為に振り返ったんだ。
そしたら…建物はまるで最初から存在していなかった様に無かった。
ある人は図書館とか、過去に戻った…とか聞いてたから期待外れだったなぁ…
もしかしたら、建物を見つける事自体で願いが叶っちまったのかもな…
途中の下らないダジャレはおいといて、これに関しては興味がある。
………これが本当なら…………生き返る事も出来るのでは?
無理なら、別に良い。仕方無い。本来無理な話だからだ。
しかし、本当なら…?
緋色は決めた。
(また…………外の世界に行こう。)
今のままでは弱過ぎる。
もっと強くならねばならない。
本当にこの世界は理不尽極まりない。
初めて出た外の世界で、何故人を殺さねばならないのか。
自分を助けてくれた人を、何故目の前で殺されなければならなかったのか。
あまりにも酷い。あまりにも可笑しい。
時間なんて戻らない。だから進むしかない。
「緋色~…いつまで起きてるんよ~…眩しい……」
姉が殆ど寝ながら言う。時間を見ればもう遅い時刻だった。
明日は学園に行かなくてはならない。
布団の中に潜り、泥のように眠った。
理性を取り戻して、辺りを見渡すと全てが終わっていた。
大型モンスターはバラバラになっている。
「本当に……容赦ねぇなぁ…!明日は筋肉痛だよ…!」
限界を超える程に精神世界の緋色が戦ったので体の節々が既に痛い。
「……!」
橋本が倒れているのを見た。彼はもう息をしていない。
(私のせいで…!)
泣きたいところだが、今はそんな事していてはいけない。
「グスッ…………早く…移動しなきゃ………!」
橋本を引き摺っていく。
気配察知が以前より上手になったのか空間認識も出来るようになった。
やり続けると脳が焼けきれそうになったが。
空間認識が出来た事によって開けた崖を見つけた。
そこに簡易的な墓を作る。
「………。この手帳を少し見たよ。……外の世界で死体は残らないって…初めて知ったよ。…………本当に…ごめんなさい…………橋本の…死は絶対に…無駄にはしない。」
モンスターの所に戻り急いで素材を回収しそこを離れる。
新しいモンスターを呼ばない為だ。
「空がもう…暗い。」
そろそろ帰らなければ。
手帳をゆっくり見たい。簡単には見たがしっかりとは見ていない。
気配察知を使っているが、さっきからチカチカとしている。
(集中出来ない…!)
また別のモンスターが現れる。3体だ。
「もう…限界なんだよ…!こっちは!」
もう既に限界レベルに疲れている。
中の世界ではきっとありえない。3日位能力を撃ちっぱなしは簡単だ。
「死線誘導・乱舞(中)!」
2体が動けなくなる。
残りの1体はこちらにやってくる。
「輪廻(小)…!」
粗悪なナイフで首を斬る。刃こぼれし始め、この1体を倒しきったところで壊れてしまった。
(こいつももう終わりか…高かったのに!)
あと2体だ。
すると、地面とは違う感触の物を踏んだ。
布だ。
(これ…!)
どうやら5人のところに戻ってきたようだ。
「借りる。」
夜の騎士であろう何かの所の近くに落ちていた剣を拾う。
「短剣じゃないから分かんないけど…!」
これくらいの剣であれば、子供の緋色に繋がれば一番良いが、これ以上暴れられると、中の世界に帰れる気がしない。
「電光石火(小)…!」
一気に残りの2体を倒した。
この剣は切れ味が良くて助かった。
人間らしい何かが5つあったが、これに構う暇はない。
「早く…帰らなきゃ……!」
さっさと素材を回収し、更に行く。
この道通りを行けば帰れる。
縮地をしても全然進まない。何だったらずっと走っといたほうが速い。
「はぁ…はぁ………やっと……」
扉が目の前にある。
やっと帰れた。
撥水コートを脱ぎ捨てた。よく見れば同じ様な布が辺りに散らばっている。
外の世界ではやはり常識なのだろう。
扉を開いた。
「………!」
皆が居た。
泣きそうだ。子供の様に縋りついて泣きたかった。
でもそれは出来ない。弱者にはなってはいけない。知られてはいけない。
何事も無かったかのように笑わないといけない。
「………ただいま。」
笑顔で言う。
人を殺した事も。人を自分のせいで死なせた事も。
この人達の前では隠したかった。
「……皆、いるんだね。…試験、お疲れ様。」
きっと、何事も起きなかったとは思っていないだろう。
察しのいい人達だ。
「う、うん。そっちも…お疲れ様…」
空白の間を遮るようにして夏希は言った。
一番鈍そうな夏希でさえも気付いていそうだ。
でも、何も言わないで欲しかった。
何も無かったことにして欲しかった。
「春斗、鶴ちゃん。見てたよ、昨日。かっこよかったよ。」
「は、はい…」
鶴ちゃんは答える。
彼らはきっと今日も頑張った事だろう。
でも、それよりも疲れた。泣く前に早く帰りたかった。
「はい。頑張りました。…樫妻先輩も戻って来たことだし……帰りましょうか。」
春斗は優しく声をかけた。
その優しさが緋色の罪にグサグサと刺していく。
その優しさがとてつもなく辛い。
嬉しい気持ちもあるが、それでも辛い。
「…?私を待ってくれたの?」
「そうですよ。試験が終わった時に丁度、樫妻先輩の帰る予定だったので。」
帰る。この言葉で、地獄から抜け出したと言う事を確信する。
やっと……帰れる。
「そうなんだ。ありがとう。」
笑い続けなければ、おかしくなる。泣いてしまう。
心が痛い。
皆で帰る。
先に夏希が離れ、香露音が離れ、鶴ちゃんが離れ、春斗と二人きりになった。
「…先輩。」
「……何?」
言わないでくれ。
「…先輩の事ですから、僕は何も無かったとは思いません。」
「…………。」
「でも…もっと僕を、僕達を頼ってくれませんか?」
「…………。」
「一人で押し込まないで下さい。…先輩は重い物を抱え過ぎです。」
「…………………。」
「辛い時は…辛いって言ってください。」
緋色の目から雫が零れ落ちる。
1度、涙が出たら、もう…とまらない。
「グスッ…うぅ………」
春斗は緋色の背中にそっと手を置いた。
「もう、夜遅い事ですし…我慢しなくても大丈夫です。」
緋色が泣きやんだところは自分の家に近かった。
家まで送ってくれたようだ。
「…大丈夫ですか…?」
「うん………」
「ちょっとすっきりしました…?」
「……うん…」
「なら良かったです。おやすみなさい。樫妻先輩。」
「…おやすみ……」
家に帰り、お風呂に入る。
(この野郎…!泣くつもり無かったのに、泣いちゃったじゃん!コンチクショー!)
まあ、それはさておき、まだやる事がある。
手帳を見ると、沢山の事が細かく書かれていた。
モンスターの種類だけでも、数十種類ある。
「最初に死にかけたあれ……サルっていうんだ……………」
弱点等書かれていたが、大型のモンスターはあまり書いてない。
存在する事は書いてある。
(普通は…見つからないか。)
それに、外の世界の大体の地図もあった。
モンスターの出現率も書いてある。橋本は小学園の時、皆から優秀だと慕われてた事を思い出す。
(……あの野郎………全然、モンスターが出ない場所じゃないじゃん…!)
只々遠いだけという事らしい。
死ねば良いのに。……いや…柊死んだんだった。………殺したし。
「…ッチ……」
更にページを捲る。
そういえば、以前俺と同じ資格所持者が居た時に聞いた話だが、この世界にオカルトチックな建物がある…とのこと。
俺も面白そうで軽く探していたら、3回目の外の世界に行った時に見つけた。
明らかに、不自然なくらいに白いドーム。
直ぐに行った。扉を開けた。
………内装がないそうです……っつって………………
とまぁ、何も無かった。真っ白だった。
願いが叶うっていう噂を聞いたことがあるから、そういう人でも住んでるのかと思ったよ。
で、扉を閉めて帰ろうとした。ふと、建物を見る為に振り返ったんだ。
そしたら…建物はまるで最初から存在していなかった様に無かった。
ある人は図書館とか、過去に戻った…とか聞いてたから期待外れだったなぁ…
もしかしたら、建物を見つける事自体で願いが叶っちまったのかもな…
途中の下らないダジャレはおいといて、これに関しては興味がある。
………これが本当なら…………生き返る事も出来るのでは?
無理なら、別に良い。仕方無い。本来無理な話だからだ。
しかし、本当なら…?
緋色は決めた。
(また…………外の世界に行こう。)
今のままでは弱過ぎる。
もっと強くならねばならない。
本当にこの世界は理不尽極まりない。
初めて出た外の世界で、何故人を殺さねばならないのか。
自分を助けてくれた人を、何故目の前で殺されなければならなかったのか。
あまりにも酷い。あまりにも可笑しい。
時間なんて戻らない。だから進むしかない。
「緋色~…いつまで起きてるんよ~…眩しい……」
姉が殆ど寝ながら言う。時間を見ればもう遅い時刻だった。
明日は学園に行かなくてはならない。
布団の中に潜り、泥のように眠った。
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