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弐章・選ばれし勇者編
2-1 33 緋色視点 日常は無常となりて
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「ねぇー!香露音ー!」
「何ー?」
「聞いてよー今日彼氏がぁ…!」
今日も平和だ。
ちゃんと自分の素性は隠せているし、誰かがブレインダイブに開眼するまではこの日常を守れるだろう。
「ふぁ~…」
緋色は退屈そうにあくびをした。
(あーあ…私ってどんな能力に、というかいつ開眼するんだろう。)
暇潰しに色んな人にアナライズをかける。
夜の騎士…アーチャー…隣は…………
(あれ………?あの子…鶴ちゃんじゃない…?え?暗殺者だったの!?知らなかった………)
覗いてはいけないものを覗いてしまった気がする。
覗いているとバレると面倒なので解除した。
最近とても暇だ。
空虚な日々と言っても過言では無い。
何か、大切な物を失くしたような、そんなものを感じた。
部活の時間になった。
あまり仲良くはないが、香露音にそんな事を言ってみる。
「…何か暇だね~………」
「そうだね…」
「何か…足りないね~………」
「そうかな?………そう…かな……?」
何故かはにかみながら言った。
もしかしたら、香露音も同じ気持ちなのだろうか。
部活も終わり、家に帰る。
何にもない日常。
随分マシな生活になった。
(考えるだけ無駄なのかな…?)
杞憂なんじゃないか、
ただ、小学園の時の様に苦しい日常がまた来るんじゃないか。
そんな不安を抱えているだけなんじゃないか。
そう緋色は思っていても引っかかりが取れない。
喉に刺さった魚の小骨の様に、何度噎せても、何度水を飲んでも、何度ご飯を食べても。
しつこく取れない。
そして、痛い。
「っ……!」
急に左眼が痛くなった。
(痛い…痛い痛い…痛い痛い痛い痛い………!)
激痛のあまり、フラついた。
机の上の物が色々倒れた。
「はぁ………はぁ………!!」
何故こんなに痛むのか。分からない。
実際に抉られたかのようだ。
確かに、小学園の時に決闘中に腕を切断されるのは日常茶飯事だ。
決闘中も痛いが、終わった後も繋がっているのに痛い。
立てない程に激痛が走り、痛みが終わってから学校をあとにする。
そんな日常をよく送っていた。
(だったら…………いつ抉られたんだよ………!)
眼だけじゃない。
何か………心臓が…痛い。締め付けられるように痛い。
心が…痛い。
「……何で…………うう……!」
数十分後にやっと痛みが引いた。
机の上はごちゃごちゃになり、床に物が転がった。
「ッチ…直さないと………」
せっかく、第二学年になったばかりで1年年を重ねるついでに片付けたのにも関わらず、こんなに汚くなってしまった。
カラン。
「え?」
そこには、白と黒の翼がついた鍵が落ちていた。
身に覚えの無い鍵だった。
しかし、左眼がまた疼く。この鍵を知っていると教えているように。
それ…失くさないでね。私の…大事な物なの。預けるよ。この3日間、これで、緋色が死ぬ事は無くなるね!
ある声が聞こえた。
「誰…?………いや…知らない訳じゃ………無い……?」
また…思い出す様に聞こえる。
………分かった。戻って来たら返す。
(これを…私が言った?……約束したって事?)
ふと…自分の能力に疑問を感じた。
「あれ……私って…まだ…無能力者だったっけ?」
その疑問すら、疑問になる。
「何で…そんな事を思いつい………て……………………」
蜘蛛の巣(大)!
緋色…!眼が…!
痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
こんな事って…………酷いよ……………………
また溢れだす。
まさかのね~開眼しました!
おめでとう御座います!
止まらない。記憶が滝のように溢れていく。
ごめんな………………あの時…助けてやれ………無くて……………俺は………あの時…………良心と…正義に従えば……………良かったのに……自分の…弱さで……………
なんで…………!やっと…この世界で…殺さなくていい人が、味方がいたのに!!!何で!殺したんだ!!!!!!
思い出した。あの絶望を。
「私は…5人殺して……橋本を自分の弱さで殺して……!」
涙が溢れていく。
一気に悲しみや、怒りや、絶望が湧き上がってきて緋色自身がおかしくなりそうだ。
「うぐっ………うう…!」
…駄目だ。泣いてはいけない。
思い出した。だから何だという話だ。
そこじゃない。……問題はそこじゃない…!
「何で………忘れていたの………!何で………壊れた筈の世界が壊れていないの………!何で………時が戻っているの………!」
そして、最大の疑問とこの世界の矛盾。
「何で…!夏希が存在してないの…!」
そう。………この世界に…夏希は居ない。
そして、誰もそれを不思議に思っている人が居ない。
大切な物を…繋がりを…犠牲にするよ?
この言葉を強く思い出す。誰だろうか。きっと声の主は知る必要はきっと無い。
それよりも…その言葉は世界が壊れるという意味じゃないのだろう。
「…私は…あの時…夏希を助ける為に…夏希を代償に…力を得たっていうの…?」
だったら…あの戦いは何の意味があったのだろう?
「…ア…ハハハハ……助けた代償は………助けた子の……存在…そんな事って……本当に…糞みたいな世界だよ…!本当にさ…!」
物に当たり冷静さを取り戻す。
夏希を取り戻さなければ。
やり方は分からないが、やるしかない。
自分の出来る事をやらなければ…
この世界を認めてはいけないのだから。
まず…何をすればいいのだろうか。
緋色は微かにある脳味噌で考える。
(う~~ん…今は前の世界のどの位…?)
カレンダーを見る。
(これ………もしかして…夏希が開眼した日じゃない?)
そして、1週間後に夏希に緋色の精神世界に入られ、資格所持者のブレイカーのおっさんにボコボコにされかけて………
(本当にあの時、朱の流星さんに助けて貰って……あれ?)
同じ時に同じ場所で同じ状況になれば、もう一度、この世界線でも関わりを持つ事が出来るのではないだろうか。
外の世界の事をもっと詳しく教えてくれるかもしれない。
あの死神の事ももしかしたら……という希望もある。
二つ名と言えば…
そう。大地の涙だ。
味方になってくれれば心強いが、緋色を洗脳出来ないとまた知ればとても面倒この上ない。
もしかしたら、洗脳されるかもしれない。
そんな時は既に自決しているが。
そんな事よりも問題は周りも巻き込んだときが、嫌になる程に大変だろう。
今回の世界線は平和な人であって欲しい。
「……で…?何で持ってんのかなぁ…鍵。」
本来なら今、鍵は渡されていないので、持っていることはありえない。
何だったら存在している時点でおかしい。
それに、さっきまで無かったものが思い出してからある。
「ほら、しかもさ……何で前作った死線があるんだか…まあ…あるよね…資格…」
記憶が思い出してから、認識出来るようになったと言い換えても良いかもしれない。
一々、資格を取り直すのも面倒過ぎる。
その上、個人の資格なら春斗と当たる。それも嫌だ。
何故、引き継ぎされているか分からないが嬉しい誤算かもしれない。
「………私一人思い出したところで…何にも出来ない。」
誰かの助けが必要だ。
その上、夏希の事を簡単に思い出せる人という条件もある。
「……春斗と香露音。」
一番最初に思いついたのが、この二人だった。
春斗は多分思い出せないはずだ。そんな繋がりがあると思えない。
しかし、ある程度の協力はしてくれるに違いない。
香露音は能力的にも優秀だ、夏希と仲が良い。
絶対に思い出す。そんな確証があった。
「…後輩達にも…思い出さそう…夏希の事を。」
協力とは全くさせようと微塵も思っていないが、少なくとも夏希の事を思い出さそうと緋色は思った。
この世界が当たり前では無いと。この世界はおかしいと。
分かって欲しかった。
緋色は1週間後を待つ。その間に、香露音に説明しよう…そう決めた。
「何ー?」
「聞いてよー今日彼氏がぁ…!」
今日も平和だ。
ちゃんと自分の素性は隠せているし、誰かがブレインダイブに開眼するまではこの日常を守れるだろう。
「ふぁ~…」
緋色は退屈そうにあくびをした。
(あーあ…私ってどんな能力に、というかいつ開眼するんだろう。)
暇潰しに色んな人にアナライズをかける。
夜の騎士…アーチャー…隣は…………
(あれ………?あの子…鶴ちゃんじゃない…?え?暗殺者だったの!?知らなかった………)
覗いてはいけないものを覗いてしまった気がする。
覗いているとバレると面倒なので解除した。
最近とても暇だ。
空虚な日々と言っても過言では無い。
何か、大切な物を失くしたような、そんなものを感じた。
部活の時間になった。
あまり仲良くはないが、香露音にそんな事を言ってみる。
「…何か暇だね~………」
「そうだね…」
「何か…足りないね~………」
「そうかな?………そう…かな……?」
何故かはにかみながら言った。
もしかしたら、香露音も同じ気持ちなのだろうか。
部活も終わり、家に帰る。
何にもない日常。
随分マシな生活になった。
(考えるだけ無駄なのかな…?)
杞憂なんじゃないか、
ただ、小学園の時の様に苦しい日常がまた来るんじゃないか。
そんな不安を抱えているだけなんじゃないか。
そう緋色は思っていても引っかかりが取れない。
喉に刺さった魚の小骨の様に、何度噎せても、何度水を飲んでも、何度ご飯を食べても。
しつこく取れない。
そして、痛い。
「っ……!」
急に左眼が痛くなった。
(痛い…痛い痛い…痛い痛い痛い痛い………!)
激痛のあまり、フラついた。
机の上の物が色々倒れた。
「はぁ………はぁ………!!」
何故こんなに痛むのか。分からない。
実際に抉られたかのようだ。
確かに、小学園の時に決闘中に腕を切断されるのは日常茶飯事だ。
決闘中も痛いが、終わった後も繋がっているのに痛い。
立てない程に激痛が走り、痛みが終わってから学校をあとにする。
そんな日常をよく送っていた。
(だったら…………いつ抉られたんだよ………!)
眼だけじゃない。
何か………心臓が…痛い。締め付けられるように痛い。
心が…痛い。
「……何で…………うう……!」
数十分後にやっと痛みが引いた。
机の上はごちゃごちゃになり、床に物が転がった。
「ッチ…直さないと………」
せっかく、第二学年になったばかりで1年年を重ねるついでに片付けたのにも関わらず、こんなに汚くなってしまった。
カラン。
「え?」
そこには、白と黒の翼がついた鍵が落ちていた。
身に覚えの無い鍵だった。
しかし、左眼がまた疼く。この鍵を知っていると教えているように。
それ…失くさないでね。私の…大事な物なの。預けるよ。この3日間、これで、緋色が死ぬ事は無くなるね!
ある声が聞こえた。
「誰…?………いや…知らない訳じゃ………無い……?」
また…思い出す様に聞こえる。
………分かった。戻って来たら返す。
(これを…私が言った?……約束したって事?)
ふと…自分の能力に疑問を感じた。
「あれ……私って…まだ…無能力者だったっけ?」
その疑問すら、疑問になる。
「何で…そんな事を思いつい………て……………………」
蜘蛛の巣(大)!
緋色…!眼が…!
痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
こんな事って…………酷いよ……………………
また溢れだす。
まさかのね~開眼しました!
おめでとう御座います!
止まらない。記憶が滝のように溢れていく。
ごめんな………………あの時…助けてやれ………無くて……………俺は………あの時…………良心と…正義に従えば……………良かったのに……自分の…弱さで……………
なんで…………!やっと…この世界で…殺さなくていい人が、味方がいたのに!!!何で!殺したんだ!!!!!!
思い出した。あの絶望を。
「私は…5人殺して……橋本を自分の弱さで殺して……!」
涙が溢れていく。
一気に悲しみや、怒りや、絶望が湧き上がってきて緋色自身がおかしくなりそうだ。
「うぐっ………うう…!」
…駄目だ。泣いてはいけない。
思い出した。だから何だという話だ。
そこじゃない。……問題はそこじゃない…!
「何で………忘れていたの………!何で………壊れた筈の世界が壊れていないの………!何で………時が戻っているの………!」
そして、最大の疑問とこの世界の矛盾。
「何で…!夏希が存在してないの…!」
そう。………この世界に…夏希は居ない。
そして、誰もそれを不思議に思っている人が居ない。
大切な物を…繋がりを…犠牲にするよ?
この言葉を強く思い出す。誰だろうか。きっと声の主は知る必要はきっと無い。
それよりも…その言葉は世界が壊れるという意味じゃないのだろう。
「…私は…あの時…夏希を助ける為に…夏希を代償に…力を得たっていうの…?」
だったら…あの戦いは何の意味があったのだろう?
「…ア…ハハハハ……助けた代償は………助けた子の……存在…そんな事って……本当に…糞みたいな世界だよ…!本当にさ…!」
物に当たり冷静さを取り戻す。
夏希を取り戻さなければ。
やり方は分からないが、やるしかない。
自分の出来る事をやらなければ…
この世界を認めてはいけないのだから。
まず…何をすればいいのだろうか。
緋色は微かにある脳味噌で考える。
(う~~ん…今は前の世界のどの位…?)
カレンダーを見る。
(これ………もしかして…夏希が開眼した日じゃない?)
そして、1週間後に夏希に緋色の精神世界に入られ、資格所持者のブレイカーのおっさんにボコボコにされかけて………
(本当にあの時、朱の流星さんに助けて貰って……あれ?)
同じ時に同じ場所で同じ状況になれば、もう一度、この世界線でも関わりを持つ事が出来るのではないだろうか。
外の世界の事をもっと詳しく教えてくれるかもしれない。
あの死神の事ももしかしたら……という希望もある。
二つ名と言えば…
そう。大地の涙だ。
味方になってくれれば心強いが、緋色を洗脳出来ないとまた知ればとても面倒この上ない。
もしかしたら、洗脳されるかもしれない。
そんな時は既に自決しているが。
そんな事よりも問題は周りも巻き込んだときが、嫌になる程に大変だろう。
今回の世界線は平和な人であって欲しい。
「……で…?何で持ってんのかなぁ…鍵。」
本来なら今、鍵は渡されていないので、持っていることはありえない。
何だったら存在している時点でおかしい。
それに、さっきまで無かったものが思い出してからある。
「ほら、しかもさ……何で前作った死線があるんだか…まあ…あるよね…資格…」
記憶が思い出してから、認識出来るようになったと言い換えても良いかもしれない。
一々、資格を取り直すのも面倒過ぎる。
その上、個人の資格なら春斗と当たる。それも嫌だ。
何故、引き継ぎされているか分からないが嬉しい誤算かもしれない。
「………私一人思い出したところで…何にも出来ない。」
誰かの助けが必要だ。
その上、夏希の事を簡単に思い出せる人という条件もある。
「……春斗と香露音。」
一番最初に思いついたのが、この二人だった。
春斗は多分思い出せないはずだ。そんな繋がりがあると思えない。
しかし、ある程度の協力はしてくれるに違いない。
香露音は能力的にも優秀だ、夏希と仲が良い。
絶対に思い出す。そんな確証があった。
「…後輩達にも…思い出さそう…夏希の事を。」
協力とは全くさせようと微塵も思っていないが、少なくとも夏希の事を思い出さそうと緋色は思った。
この世界が当たり前では無いと。この世界はおかしいと。
分かって欲しかった。
緋色は1週間後を待つ。その間に、香露音に説明しよう…そう決めた。
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