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序章・対の戦い編
1-28 28 香露音視点 今度は皆で
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あの日から、部活ではなく特訓の日になった。
だから、部室でやるのではなく、練習場を申し込んで借りた。
そして、たまに棚見君を緋色が呼んで来てくれるときもあった。
しかし、最初に棚見君と緋色が決闘しているのを見て引いた。
初めて香露音が引いた。
「今日はどうします?誰とも繋がらないんですか?」
「人格変わるし、良い人格なんていないしね。」
「多重人格ですか~?」
「違うけど違い無いね。」
「僕と戦って勝てますか?誰とも繋がらずに。」
「無能力者の時は何時も私が勝ってたし~!…でもいいよ。子供と繋がってやるさ。丁度、アレが出来る昇華も出来るようになりたいし。」
昇華…簡単に言えば、生成した武器が進化する事だ。
何時もは薄黄色い半透明な武器。
しかし、ある境界を超えると色が完全に変わる。
ある境界は人によって様々だ。そして、大半がまぐれに起きる。
しかし、昇華を極めた者は意図的に起こせる。
「簡単に出来ませんよ。」
「知ってるよ。実際、アレは出来るけど、繋がっている状態では出来ない。朱の流星は出来るらしいね。」
二人は雑談し、構えた。一気に雰囲気が重く変わる。
「舐めんなよってね。」
「そっちこそね。」
緋色はまるで別人の様に雰囲気が変わる。
「武器生成(中)………さあ、遊ぼ。」
長剣になる。緋色が長剣を使いのは初めてだ。
ここから先は、本当の殺し合いが始まった。
遠慮なく首を狙い、脚を潰しにかかり、手を潰しにかかり…
「電光石火(小)…!」
「アハハ!やっぱり強くなったね!」
何の能力も使わずに攻撃を防ぎ、流してカウンターを仕掛ける。
「輪廻(小)…!」
流した体勢からそのまま攻撃に入る。重い武器で美しく、舞っている。
「油断しないで下さいね。」
しかし、いつの間にか銃を持ち、弾丸を放った。防御をして地面に落ちようとしている間でさえ、攻撃を止めない。
そしてこの距離の弾丸に反応した。
「してないよ!」
一瞬で反応し、弾丸を叩き割る。刃こぼれを一瞬で武器生成で直して、次の攻撃に転換する。
こんな事をされては斬鉄剣の名が泣いてしまう。
斬鉄剣を使わなくても武器が壊せてしまうのであれば必要無いと思ってしまう。
「本当、銃を使ってるのに何でダメージが入らないんですかね!」
そう言いながら、瞬き一回のうちに緋色に近付いて既に攻撃していた。
「ちょっと遅くなったんじゃないですか?」
笑っている。そんな余裕が普通にあるのが恐ろしい。
しかし、緋色も同じく早い。
「閃律(小)…」
「せ」の字を言っている時点で放ち終わっている。
しかしこのままでは、一生終わらない。
それに、基礎能力だけでこんなにも争っていては日が暮れる。
「終わり!もう終わりにして!」
香露音が叫んだ。
「ええ~!つまんな~い!」
「でも、このままじゃ日が暮れますよ。」
二人はそんな事を言ってもずっと剣を振っている。
「そんなの日常茶飯事じゃーん。」
「確かに、最長3日でしたねぇ…」
「あの時は、ずっと銃をパカパカ撃って、縮地で避けただけじゃーん!」
銃を撃ち合いするのにパカパカという擬音語は少し可笑しい気がする。
そんな軽いノリでするものじゃない。
「休憩も一切してない状況で中々鬼畜だったと思いますけど~」
休憩無しで3日も出来るのは可笑しい。
「と・に・か・く!終わって!」
「ええ~~~~…」
「仕方無いですね。今回は諦めましょう。」
すると、緋色は自分の腕を思いきり叩いた。もう殴ると言っても過言では無いくらい。
「そうだね。諦めよ。」
「元に戻ったんです?」
「そだよ~戻るのが少々面倒臭いんだよね。やっぱり子供だからしつこい、しつこい…」
二人が戻ってきた。夏希は聞いた。
「二人って、どれぐらい能力連発できるの?」
「僕ですか?縮地だけなら……………丸3日が限界ですね。最近やりましたが…」
何故試すのか。
「ん~~?私、最近やってないしなぁ…まぁ小学園のとき春斗と、やった時は……3日位?多分。」
何故そこまで出来るのか。
しかも、あれから一年以上経ってるのでもっと出来るということか。
「まあ…うん………特訓しようか。」
「そうだね~さっきのは不完全燃焼で終わっちゃったし。」
「そうですね。準備運動にもならなかったですね。基礎能力だけってのも…」
「あ、分かる?能力者になると基礎能力を打つだけじゃ疲れなくなるよね~」
「あるあるですね。」
勿論あるあるではない。
「じゃあ、取り敢えず…ずっと最高火力で能力を撃ち続けて。倒れない程度にね。勿論決闘の世界じゃなくて、ここで。」
「おお!やっぱりそれが一番効率いいよね~」
「派手にやると壊れてしまいますので、やって来なかったんですよね~」
「ああ…そうかぁ~…まあ、私も対象がいて始めて発動する能力が大半だから…私も何だよね。だから、やっぱり…」
「縮地と武器生成。やっぱりこれをやり続けるのが一番いいですよね。やっぱり最初に通る道ですよね~」
決して通る道では無い。会話が狂っている。
「皆ってどんな能力が疲れる?」
「えっと………私は聖なる光ですかね………開眼したばっかりでまだ、(中)レベルですけど…」
「奏恵ちゃんは、それの特訓が優先だね。」
「はい。頑張ります!」
可愛い。狂っている会話を聞いたせいで、すり減ったメンタルを癒やしてくれる。
「私は…………魔法剣を付与した人をアタック、ガード、スピードアップを付与する事ですね。」
「そういえば、アップ系全部使えるのか~魔法剣も使えるみたいだし、それが一番だね~」
緋色はワクワクしながら言う。何故そんなに楽しそうなのか。
「私は朧月ですね。」
「私は………基本、低燃費なので…」
「そういえば、鶴ちゃんは能力的にそうだもんね。」
「基礎能力の(中)のやつを順番にクルクルやっていったら?」
緋色は鬼畜な事を言った。同じ物をするのが、低燃費なやり方だ。
言い換えれば一つ一つ能力を発動するたびに違う能力に変えればそれ程燃費な悪くなる。
「じゃあ…それでやります。」
普通にし始めた。鶴ちゃんもこの二人と同じなにかを感じる。
「で、夏希は…」
「じゃあ…私とやろっか。」
緋色が夏希の手首を掴む。
「怪我しない程度に攻撃するから、全力で攻撃してきてね。」
「ちなみに…そっちが全力でしたら………?」
「死ぬ。多分。洗脳されないし。」
「えぇ…」
「大丈夫、大丈夫。精神掌握はちゃんとかかるから。」
「えぇ……」
「あ、それで香露音、良い?」
「うん。頑張れ…」
そのまま、ズルズルと連れて行かれた。
「あ、ついでに、春斗も。」
「え、ええ!?」
同じ様にズルズルと連れて行かれた。
「ああ…頑張れ…」
香露音は後輩達に教える事に徹した。
「うぐぅぇ~~~~……………………」
30分後に夏希を見ると、変な声を出して倒れていた。
「いやぁ~こんなにもスタミナが無いとは…やれやれ。」
「それでも、僕も疲れましたよ。」
「じゃあ、さっきのあとどれくらいできる?」
「このまま全力でやり続けたら……あと五時間?位ですかね?」
「ええ!!!!何でできるのぉ…?」
「出来るから出来るんです。」
理由にはなっていない。
「まぁまぁ…頑張れ。夏希。休憩もしたし、もう一回やろうか。」
やはり鬼畜だ。すると、香露音に気付いた。
「一緒に…する?」
迷わずに答えた。
「私は違う事しないといけないから。」
本当に嫌過ぎて、一瞬で答えた。
「そうとは言わずにちょっとだけでも!」
「あ、ちょっ………………」
緋色は楽しそうだ。そして香露音は地獄に引き摺られた。
1時間して、もうヘトヘトになってしまった。
チャイムが鳴り1日が終わる。
「良い運動だった~…あれくらいが丁度良い。」
意味分からない。緋色は血の海を温かいお風呂と言えるらしい。。
「そうですか…?僕は疲れるのでそう思いませんけどねぇ…」
やっと棚見君は常識的な事を言った。
「まあ…昔から樫妻先輩と遊ぶ様にしてたので、別に苦痛では無いですけどね。結局は楽しいですし。」
前言撤回だ。棚見君は真冬の持久走を楽しい運動会と言えるらしい。
「明日…筋肉痛………だよぉ…既に痛いよぉ…」
「夏希は脆すぎ…」
「じゃあ…お疲れ様でした~!」
光ちゃんはさっさと帰って行く。それにつられて後輩達が帰っていった。
「………………さようなら。」
「さようならー!」
「お疲れ様でしたー!」
可愛い。この世の可愛いを集めた可愛さだ。
「バイバーイ。」
「さよならぁ………」
「お疲れ!また明日ね!」
4人が残る。緋色を残し三人で少し会話をして、緋色に話しかける。
「???」
不思議そうに見つめる緋色に香露音が話す。
「次は…………外の世界はいつ行くの?」
あんな事が起きながらどうせこの人は行く。
楽しそうに喋るが、目の奥の闇は晴れない。ずっと、暗い。
「…………何で…そんな事を?」
「きになるなぁ…ってさ。武器は新調できた?」
「まだ素材は売ってない。だから分からないよ。」
「じゃあ、今行こう!さあ、行こ行こ!」
「その鞄の中の鞄に入ってるんでしょ!隠すならもっと上手く隠す事ねー」
「僕も知りたいですねぇ…」
「春斗まで…………」
警戒度がMAXの緋色の背中を押して、鍛冶屋に行った。
「………………ぁ…」
緋色は凄い小さい声で何かを言う。その後何も無かったかの様に、
「何か…良い物あります?」
と聞いていた。
「う~ん…良いのあるか言われても…これサルのモンスターじゃねぇか?」
「ああ…小型の四足の…」
「ああ。まぁ…こんだけありゃあ…全身装備に居る革は三人分くらいはあるなぁ…」
「やっぱり…それくらいですかねぇ…」
「大丈夫、大丈夫。あんた、これが最初の外の世界だったんだろう?十分だよ。」
「……………そうですか。」
「あ、あと…これは良いなぁ…イヌか。こいつの革とか、牙とか…割と丈夫なんだよ。クッソ扱いづらいけどな。……武器は…鋼糸か。いや、死線って言った方が良いか。…………作った事ねえが…出来ねぇことはねぇ。」
「…牙で?」
「ああ…鍛冶屋舐めんなよって話だな。普通は、粉末状にして、エビフライの衣みたいに纏わせて作る。まあ…俺はちょっと特殊だから違うが…」
鍛冶屋は更に中身を漁る。
「………!上等だな。これ…倒せたのか。」
「……筋肉痛と引き換えにね。まぁ…それだけじゃないけど。」
「そうか。これ位の大きさがありゃあ…軽装備一式作れるぞ。」
「本当!?」
「ちょいと待っといてくれ。30分で終わらせてやるよ。」
そう言って、鍛冶場に入って行った。見習いぽい人が代わりに出てきた。
「…見ない顔ですけど…お得意様ですか?」
「初めて来ましたけど…?」
「じゃあ、余程気に入られたんですかね。普通のお客様は順番通りにするんで。」
「……………へぇ…そんなんですね…」
ピッタリ30分後に終わらせて来た。
「ふぅ…仕事した感じがするぜ。」
とても、ピカピカな装備と切れ味の良さそうな鋼糸を渡された。
「…どうも。」
「金は大体このくらいだな。次も来てくれよ。」
緋色はどうやらプラスになっていたようで、微かだが金を貰っていた。
「……………一つ質問が。」
「じゃあ…俺もそれを答える代わりに、一ついいか?」
「勿論。………あの時と比べて、性格がびっくりするほど違うから、人違いかと思う程だったけど……初瀬?」
どうやら知り合いだったようだ。
「…………夕陽の約束を…守れない人だよ。俺は。」
意味が分からないが、分かる人だけには伝わっている。
「そう。じゃあ…そっちの質問は?」
「…俺の客に、赤色の花がいた。それと、俺のお得意様に、自由の旅人が居たんだ。……花はこれが花と呼べるのかって言いたくなるほどに醜い花だ。だから、お得意様にさせたくなかった。」
「間違ってないよ。」
「言うと思ったよ。俺もそう思う。……花と自由人は偶々、旅行の日がダブってた。花の方は更に醜くして、狼を馬鹿にしてたよ。仔犬だってさ。どっちも…本来ならもう……こっちに来てくるんだよ。今日の午前に来るって言ってたから。」
「…………それが来ないと。」
「ああ…………知らねぇのか?」
「…………………………花なら狼に踏まれた。……自由人は私の分までどっかに流離っていったよ。」
「…!そりゃあ…居ねぇよなぁ…花に水やりくらいすれば良かった。まぁ…あんたが誰かは、聞かずとも分かる。…値段も軽くまけといた。悪いな。次も待ってるから、ヘマすんなよ。」
「うん。分かったよ。じゃあ………どうも。」
そう言って、緋色の用事は終わった。
「あんまり稼げてないね。…ちゃんと最低限の装備はしっかり出来たけど。」
香露音は口を開く。
「次…次は私達も一緒に行く。」
「……………!何で。」
「このままじゃ…緋色が死ぬから。」
「……個人の資格を持ってるのに?」
「どうせ、無理したんでしょ。また、無理をするつもりで行こうとしてるんでしょ。」
「もう、僕達は弱くないですよ。今日一日使ってないので知らないと思いますが僕は英雄に開眼しましたし。」
そういえば、言ってなかった気がする。それにしても棚見君は淡々と言う。
「………マジ?」
「はい。マジです。」
「能力者?」
「はい。能力者です。」
「おめでとーーーーーーーー!!!!!!」
緋色は自分の時よりも嬉しそうにして、頭を撫でたくった。
「知らなかったよ…!!それにしても…英雄かぁ…!良かったね!」
「はい…そうです……ちょ………そんな…ガシガシしないで………僕のセットした髪が…」
「ああ…ごめんごめん。…で?私が死ぬの?」
また、本題に戻る。
「物凄い極端になってしまいますけどね。でも、樫妻先輩は無理するので。それに、僕達も外の世界に行くつもりなんですけど、僕達ほっとけますぅ?」
流石、付き合いの長い緋色の後輩だ。煽り慣れている。
「…………無理だね。」
「じゃあ、行こ!」
「…2週間。私は2週間後に行くから。それまで、ちゃんとした用意と、ちゃんとした実力。その2つがあるんだったら、私は何も反対しないよ。」
緋色は先に折れたようだ。
と言う事で、2週間後は4人で行く事になった。
「ついでに期間は?」
「私は基本日帰りだよ。先ず、家族は私が資格持ってる事どころか、私が能力者である事自体知らないから。外の世界は日帰りだけ。」
「ん~?お止まりに行く…とかは?」
「私の事友達なんて居ないと思ってるから。」
「じゃあ、作ろう。はい、私友達。じゃあ、友達だし家泊まる?」
「おぅ………早い……じゃあ、2週間後の…三日間。私、外の世界で探したい物があるから。」
「探したい物…?」
「正確に言えば建物。何か…オカルトチックなよく分からない建物があるらしく…」
「へぇ~…取り敢えず、親にお泊り会するって言っといて~」
「ぼ、僕すっごい…気まずいですが…?」
「大丈夫。私の彼氏を呼ぶって事にしとくね~建前上は仲良し五人でお泊り会ね~」
「…えぇ……」
色々問題はあるが、これで夏希が望んでいた通りになった。
あとは、この四人が強くなるだけだ。
だから、部室でやるのではなく、練習場を申し込んで借りた。
そして、たまに棚見君を緋色が呼んで来てくれるときもあった。
しかし、最初に棚見君と緋色が決闘しているのを見て引いた。
初めて香露音が引いた。
「今日はどうします?誰とも繋がらないんですか?」
「人格変わるし、良い人格なんていないしね。」
「多重人格ですか~?」
「違うけど違い無いね。」
「僕と戦って勝てますか?誰とも繋がらずに。」
「無能力者の時は何時も私が勝ってたし~!…でもいいよ。子供と繋がってやるさ。丁度、アレが出来る昇華も出来るようになりたいし。」
昇華…簡単に言えば、生成した武器が進化する事だ。
何時もは薄黄色い半透明な武器。
しかし、ある境界を超えると色が完全に変わる。
ある境界は人によって様々だ。そして、大半がまぐれに起きる。
しかし、昇華を極めた者は意図的に起こせる。
「簡単に出来ませんよ。」
「知ってるよ。実際、アレは出来るけど、繋がっている状態では出来ない。朱の流星は出来るらしいね。」
二人は雑談し、構えた。一気に雰囲気が重く変わる。
「舐めんなよってね。」
「そっちこそね。」
緋色はまるで別人の様に雰囲気が変わる。
「武器生成(中)………さあ、遊ぼ。」
長剣になる。緋色が長剣を使いのは初めてだ。
ここから先は、本当の殺し合いが始まった。
遠慮なく首を狙い、脚を潰しにかかり、手を潰しにかかり…
「電光石火(小)…!」
「アハハ!やっぱり強くなったね!」
何の能力も使わずに攻撃を防ぎ、流してカウンターを仕掛ける。
「輪廻(小)…!」
流した体勢からそのまま攻撃に入る。重い武器で美しく、舞っている。
「油断しないで下さいね。」
しかし、いつの間にか銃を持ち、弾丸を放った。防御をして地面に落ちようとしている間でさえ、攻撃を止めない。
そしてこの距離の弾丸に反応した。
「してないよ!」
一瞬で反応し、弾丸を叩き割る。刃こぼれを一瞬で武器生成で直して、次の攻撃に転換する。
こんな事をされては斬鉄剣の名が泣いてしまう。
斬鉄剣を使わなくても武器が壊せてしまうのであれば必要無いと思ってしまう。
「本当、銃を使ってるのに何でダメージが入らないんですかね!」
そう言いながら、瞬き一回のうちに緋色に近付いて既に攻撃していた。
「ちょっと遅くなったんじゃないですか?」
笑っている。そんな余裕が普通にあるのが恐ろしい。
しかし、緋色も同じく早い。
「閃律(小)…」
「せ」の字を言っている時点で放ち終わっている。
しかしこのままでは、一生終わらない。
それに、基礎能力だけでこんなにも争っていては日が暮れる。
「終わり!もう終わりにして!」
香露音が叫んだ。
「ええ~!つまんな~い!」
「でも、このままじゃ日が暮れますよ。」
二人はそんな事を言ってもずっと剣を振っている。
「そんなの日常茶飯事じゃーん。」
「確かに、最長3日でしたねぇ…」
「あの時は、ずっと銃をパカパカ撃って、縮地で避けただけじゃーん!」
銃を撃ち合いするのにパカパカという擬音語は少し可笑しい気がする。
そんな軽いノリでするものじゃない。
「休憩も一切してない状況で中々鬼畜だったと思いますけど~」
休憩無しで3日も出来るのは可笑しい。
「と・に・か・く!終わって!」
「ええ~~~~…」
「仕方無いですね。今回は諦めましょう。」
すると、緋色は自分の腕を思いきり叩いた。もう殴ると言っても過言では無いくらい。
「そうだね。諦めよ。」
「元に戻ったんです?」
「そだよ~戻るのが少々面倒臭いんだよね。やっぱり子供だからしつこい、しつこい…」
二人が戻ってきた。夏希は聞いた。
「二人って、どれぐらい能力連発できるの?」
「僕ですか?縮地だけなら……………丸3日が限界ですね。最近やりましたが…」
何故試すのか。
「ん~~?私、最近やってないしなぁ…まぁ小学園のとき春斗と、やった時は……3日位?多分。」
何故そこまで出来るのか。
しかも、あれから一年以上経ってるのでもっと出来るということか。
「まあ…うん………特訓しようか。」
「そうだね~さっきのは不完全燃焼で終わっちゃったし。」
「そうですね。準備運動にもならなかったですね。基礎能力だけってのも…」
「あ、分かる?能力者になると基礎能力を打つだけじゃ疲れなくなるよね~」
「あるあるですね。」
勿論あるあるではない。
「じゃあ、取り敢えず…ずっと最高火力で能力を撃ち続けて。倒れない程度にね。勿論決闘の世界じゃなくて、ここで。」
「おお!やっぱりそれが一番効率いいよね~」
「派手にやると壊れてしまいますので、やって来なかったんですよね~」
「ああ…そうかぁ~…まあ、私も対象がいて始めて発動する能力が大半だから…私も何だよね。だから、やっぱり…」
「縮地と武器生成。やっぱりこれをやり続けるのが一番いいですよね。やっぱり最初に通る道ですよね~」
決して通る道では無い。会話が狂っている。
「皆ってどんな能力が疲れる?」
「えっと………私は聖なる光ですかね………開眼したばっかりでまだ、(中)レベルですけど…」
「奏恵ちゃんは、それの特訓が優先だね。」
「はい。頑張ります!」
可愛い。狂っている会話を聞いたせいで、すり減ったメンタルを癒やしてくれる。
「私は…………魔法剣を付与した人をアタック、ガード、スピードアップを付与する事ですね。」
「そういえば、アップ系全部使えるのか~魔法剣も使えるみたいだし、それが一番だね~」
緋色はワクワクしながら言う。何故そんなに楽しそうなのか。
「私は朧月ですね。」
「私は………基本、低燃費なので…」
「そういえば、鶴ちゃんは能力的にそうだもんね。」
「基礎能力の(中)のやつを順番にクルクルやっていったら?」
緋色は鬼畜な事を言った。同じ物をするのが、低燃費なやり方だ。
言い換えれば一つ一つ能力を発動するたびに違う能力に変えればそれ程燃費な悪くなる。
「じゃあ…それでやります。」
普通にし始めた。鶴ちゃんもこの二人と同じなにかを感じる。
「で、夏希は…」
「じゃあ…私とやろっか。」
緋色が夏希の手首を掴む。
「怪我しない程度に攻撃するから、全力で攻撃してきてね。」
「ちなみに…そっちが全力でしたら………?」
「死ぬ。多分。洗脳されないし。」
「えぇ…」
「大丈夫、大丈夫。精神掌握はちゃんとかかるから。」
「えぇ……」
「あ、それで香露音、良い?」
「うん。頑張れ…」
そのまま、ズルズルと連れて行かれた。
「あ、ついでに、春斗も。」
「え、ええ!?」
同じ様にズルズルと連れて行かれた。
「ああ…頑張れ…」
香露音は後輩達に教える事に徹した。
「うぐぅぇ~~~~……………………」
30分後に夏希を見ると、変な声を出して倒れていた。
「いやぁ~こんなにもスタミナが無いとは…やれやれ。」
「それでも、僕も疲れましたよ。」
「じゃあ、さっきのあとどれくらいできる?」
「このまま全力でやり続けたら……あと五時間?位ですかね?」
「ええ!!!!何でできるのぉ…?」
「出来るから出来るんです。」
理由にはなっていない。
「まぁまぁ…頑張れ。夏希。休憩もしたし、もう一回やろうか。」
やはり鬼畜だ。すると、香露音に気付いた。
「一緒に…する?」
迷わずに答えた。
「私は違う事しないといけないから。」
本当に嫌過ぎて、一瞬で答えた。
「そうとは言わずにちょっとだけでも!」
「あ、ちょっ………………」
緋色は楽しそうだ。そして香露音は地獄に引き摺られた。
1時間して、もうヘトヘトになってしまった。
チャイムが鳴り1日が終わる。
「良い運動だった~…あれくらいが丁度良い。」
意味分からない。緋色は血の海を温かいお風呂と言えるらしい。。
「そうですか…?僕は疲れるのでそう思いませんけどねぇ…」
やっと棚見君は常識的な事を言った。
「まあ…昔から樫妻先輩と遊ぶ様にしてたので、別に苦痛では無いですけどね。結局は楽しいですし。」
前言撤回だ。棚見君は真冬の持久走を楽しい運動会と言えるらしい。
「明日…筋肉痛………だよぉ…既に痛いよぉ…」
「夏希は脆すぎ…」
「じゃあ…お疲れ様でした~!」
光ちゃんはさっさと帰って行く。それにつられて後輩達が帰っていった。
「………………さようなら。」
「さようならー!」
「お疲れ様でしたー!」
可愛い。この世の可愛いを集めた可愛さだ。
「バイバーイ。」
「さよならぁ………」
「お疲れ!また明日ね!」
4人が残る。緋色を残し三人で少し会話をして、緋色に話しかける。
「???」
不思議そうに見つめる緋色に香露音が話す。
「次は…………外の世界はいつ行くの?」
あんな事が起きながらどうせこの人は行く。
楽しそうに喋るが、目の奥の闇は晴れない。ずっと、暗い。
「…………何で…そんな事を?」
「きになるなぁ…ってさ。武器は新調できた?」
「まだ素材は売ってない。だから分からないよ。」
「じゃあ、今行こう!さあ、行こ行こ!」
「その鞄の中の鞄に入ってるんでしょ!隠すならもっと上手く隠す事ねー」
「僕も知りたいですねぇ…」
「春斗まで…………」
警戒度がMAXの緋色の背中を押して、鍛冶屋に行った。
「………………ぁ…」
緋色は凄い小さい声で何かを言う。その後何も無かったかの様に、
「何か…良い物あります?」
と聞いていた。
「う~ん…良いのあるか言われても…これサルのモンスターじゃねぇか?」
「ああ…小型の四足の…」
「ああ。まぁ…こんだけありゃあ…全身装備に居る革は三人分くらいはあるなぁ…」
「やっぱり…それくらいですかねぇ…」
「大丈夫、大丈夫。あんた、これが最初の外の世界だったんだろう?十分だよ。」
「……………そうですか。」
「あ、あと…これは良いなぁ…イヌか。こいつの革とか、牙とか…割と丈夫なんだよ。クッソ扱いづらいけどな。……武器は…鋼糸か。いや、死線って言った方が良いか。…………作った事ねえが…出来ねぇことはねぇ。」
「…牙で?」
「ああ…鍛冶屋舐めんなよって話だな。普通は、粉末状にして、エビフライの衣みたいに纏わせて作る。まあ…俺はちょっと特殊だから違うが…」
鍛冶屋は更に中身を漁る。
「………!上等だな。これ…倒せたのか。」
「……筋肉痛と引き換えにね。まぁ…それだけじゃないけど。」
「そうか。これ位の大きさがありゃあ…軽装備一式作れるぞ。」
「本当!?」
「ちょいと待っといてくれ。30分で終わらせてやるよ。」
そう言って、鍛冶場に入って行った。見習いぽい人が代わりに出てきた。
「…見ない顔ですけど…お得意様ですか?」
「初めて来ましたけど…?」
「じゃあ、余程気に入られたんですかね。普通のお客様は順番通りにするんで。」
「……………へぇ…そんなんですね…」
ピッタリ30分後に終わらせて来た。
「ふぅ…仕事した感じがするぜ。」
とても、ピカピカな装備と切れ味の良さそうな鋼糸を渡された。
「…どうも。」
「金は大体このくらいだな。次も来てくれよ。」
緋色はどうやらプラスになっていたようで、微かだが金を貰っていた。
「……………一つ質問が。」
「じゃあ…俺もそれを答える代わりに、一ついいか?」
「勿論。………あの時と比べて、性格がびっくりするほど違うから、人違いかと思う程だったけど……初瀬?」
どうやら知り合いだったようだ。
「…………夕陽の約束を…守れない人だよ。俺は。」
意味が分からないが、分かる人だけには伝わっている。
「そう。じゃあ…そっちの質問は?」
「…俺の客に、赤色の花がいた。それと、俺のお得意様に、自由の旅人が居たんだ。……花はこれが花と呼べるのかって言いたくなるほどに醜い花だ。だから、お得意様にさせたくなかった。」
「間違ってないよ。」
「言うと思ったよ。俺もそう思う。……花と自由人は偶々、旅行の日がダブってた。花の方は更に醜くして、狼を馬鹿にしてたよ。仔犬だってさ。どっちも…本来ならもう……こっちに来てくるんだよ。今日の午前に来るって言ってたから。」
「…………それが来ないと。」
「ああ…………知らねぇのか?」
「…………………………花なら狼に踏まれた。……自由人は私の分までどっかに流離っていったよ。」
「…!そりゃあ…居ねぇよなぁ…花に水やりくらいすれば良かった。まぁ…あんたが誰かは、聞かずとも分かる。…値段も軽くまけといた。悪いな。次も待ってるから、ヘマすんなよ。」
「うん。分かったよ。じゃあ………どうも。」
そう言って、緋色の用事は終わった。
「あんまり稼げてないね。…ちゃんと最低限の装備はしっかり出来たけど。」
香露音は口を開く。
「次…次は私達も一緒に行く。」
「……………!何で。」
「このままじゃ…緋色が死ぬから。」
「……個人の資格を持ってるのに?」
「どうせ、無理したんでしょ。また、無理をするつもりで行こうとしてるんでしょ。」
「もう、僕達は弱くないですよ。今日一日使ってないので知らないと思いますが僕は英雄に開眼しましたし。」
そういえば、言ってなかった気がする。それにしても棚見君は淡々と言う。
「………マジ?」
「はい。マジです。」
「能力者?」
「はい。能力者です。」
「おめでとーーーーーーーー!!!!!!」
緋色は自分の時よりも嬉しそうにして、頭を撫でたくった。
「知らなかったよ…!!それにしても…英雄かぁ…!良かったね!」
「はい…そうです……ちょ………そんな…ガシガシしないで………僕のセットした髪が…」
「ああ…ごめんごめん。…で?私が死ぬの?」
また、本題に戻る。
「物凄い極端になってしまいますけどね。でも、樫妻先輩は無理するので。それに、僕達も外の世界に行くつもりなんですけど、僕達ほっとけますぅ?」
流石、付き合いの長い緋色の後輩だ。煽り慣れている。
「…………無理だね。」
「じゃあ、行こ!」
「…2週間。私は2週間後に行くから。それまで、ちゃんとした用意と、ちゃんとした実力。その2つがあるんだったら、私は何も反対しないよ。」
緋色は先に折れたようだ。
と言う事で、2週間後は4人で行く事になった。
「ついでに期間は?」
「私は基本日帰りだよ。先ず、家族は私が資格持ってる事どころか、私が能力者である事自体知らないから。外の世界は日帰りだけ。」
「ん~?お止まりに行く…とかは?」
「私の事友達なんて居ないと思ってるから。」
「じゃあ、作ろう。はい、私友達。じゃあ、友達だし家泊まる?」
「おぅ………早い……じゃあ、2週間後の…三日間。私、外の世界で探したい物があるから。」
「探したい物…?」
「正確に言えば建物。何か…オカルトチックなよく分からない建物があるらしく…」
「へぇ~…取り敢えず、親にお泊り会するって言っといて~」
「ぼ、僕すっごい…気まずいですが…?」
「大丈夫。私の彼氏を呼ぶって事にしとくね~建前上は仲良し五人でお泊り会ね~」
「…えぇ……」
色々問題はあるが、これで夏希が望んでいた通りになった。
あとは、この四人が強くなるだけだ。
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考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
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毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
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