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序章・対の戦い編
1-21 21 夏希視点 勝敗の行方
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精神世界に入った夜、夏希は夢を見た。
「ねえ…何で私を知ろうとしているの?」
緋色がそこにいた。
「もう…構わないでよ…来ないで…!」
緋色が泣き始めた。
「私なんて見ても面白くないって。こんな醜態を晒すような事はしないで。」
緋色は自分自身を嘲笑った。
「私は、強い人間でいたいだけなの。」
緋色は今までの醜態を隠すように強がっている。
「何回も言ったのに!なんで聞いてくれないの!そんなに私を舐めてるの!?」
緋色は突如怒りだした。
「本当に…こんなにも哀れを晒す私達の身にもなってみろ。」
緋色は偉そうに言った。
「何で、本物の緋色に聞かないの?直接言えない人間に、人の本心を知ろうとしている自体間違ってるんじゃないの?」
緋色は不思議そうに言った。
夏希は何も言えずに立つしかなかった。
七人の緋色が夏希を取り囲む。
すると、その七人の緋色は煙のように消えて目の前にもう一人の緋色が現れた。
「私を助けて。助ける覚悟と力があれば。私が信用に足る人間であれば。」
緋色は背中を向き、歩き始めた。
「何も無ければ…二度と私達に干渉してこないで。」
最後にそう言い煙のように消えていった。
「…………はっきりとする夢だなぁ…」
一人呟き、夏希はベッドから起き上がる。
(助ける覚悟と力…)
信用に足る…それが一番難しい気がする。
しかし、助ける覚悟と力ならば簡単だと思う。
「先ずは力か。団体戦の試験…をやらなくちゃね。」
緋色が助けを求めている。助けを求められたのならば助けるしかない。
(でも…私は無能力者レベルで弱いんだよね。)
それは、不良三人組と決闘した時によく分かっている。
しかし、ブレインダイブの能力を使わなければの話だ。
不良三人組に洗脳を使えば、勝手に自滅する。
しかし罪悪感を感じてしまい、どうしても非道な事が出来ない。
「それでも…………………腹を括るタイミングかも。」
緋色は外に行く。そこで助けろと言っているならば、資格を持っていない夏希が助ける事は出来ない。
ブレインダイブという能力を開眼した夏希だからこそ出来る事があるに違いない。
今日は、三人で作戦会議だ。
香露音が椿の事を見つけてくれたお陰で団体戦は何とかなりそうだ。
放課後、三人は集まった。
「取り敢えずー…能力について知ろう。私はアーチャーだって事は知ってるでしょ?それとね…基礎能力は輪廻と閃律以外は使えるよ。」
「私は夜の騎士で…基礎能力全部使える。」
香露音と椿は小学園から開眼しているので能力者としてちゃんと完成されている気がする。
「ブレインダイブで…基礎能力は、武器生成、鎌鼬、隼と…閃律、縮地。」
「あれ?2つ増えた?」
「緋色に軽くだけど教えて貰ったの。団体戦やるんだったら覚えておきなって。」
緋色は団体戦の話を聞いていて、今のままでは夏希は戦力になれない。
そう思ったのだろう。
「少なくとも…縮地さえ覚えておけば死ぬ確率は大分下がる。団体戦は生きておくだけで戦況は大きく変わるからさ。あとは…閃律は覚えた方がいいね。最悪道連れで縮地と閃律を同時に使って突っ込むってこともできるし。余程の事以外はオススメしないけど。」
との事。心の中をその時読んでみると、真剣に考えて心配してくれていた。
それだけではなく、香露音の実力を認めていて、安心しているようだった。
その後、違和感に気付き始めたので、心の中をを読むのは止めた。
夏希は覚悟を決め、作戦を提案する。
「私は、あんまり強くない。だから、敵を一人洗脳して…そこから勝手に敵のグループは崩れていく。私はブレインダイブだから。ブレインダイブの戦い方をしようと思うの。」
こう言うと二人とも驚いている。
夏希はブレインダイブの能力を普段あまり使わないからだ。
勿論、洗脳した事は一度もない。
魂の情報の上書きなど、簡単にやってはいけない夏希は思っていた。
「本当にするの?」
椿が問う。
「確かに、ブレインダイブを開眼した夏希だから出来る作戦だけど…」
不良三人組との決闘でも開眼した能力は1つも使わなかった。
「私は、資格を取りたいの。………本気で取ろうって思ってる。」
強くならなければ、見ない場所で緋色が倒れる。
そうして、決闘でこの作戦になった。
最初は、初めての割に上手くいった。ちゃんと洗脳も解けていた。
しかし、慣れない洗脳は身体的に負担がかかる。
二人のそばで休んでいると、
「貴方…死ぬわよ。」
誰かが耳打ちするように言った。
「だ、誰!?」
反射的に夏希は起き上がる。しかし、そこに声の主は居ない。
「寝ぼけてたかも。ちょっと、顔を洗ってくる。」
少し無理を言い、声の主を探しに行く。
「ねえ…誰?」
誰も居ない場所で話しかける。
きっと…大地の涙が、ブレインダイブの能力の一つである精神感応を使って夏希に話しかけている。
「聞かずともわかる癖に。」
そう言い、目の前に大地の涙が現れた。
「あらあら~目の前に現れるとは思わなかったかしら~?……先に本題ね。緋色ちゃん、貴方達の応援に来てたわよ~その時にあの子に言ったんだけど…あの子…魂に干渉出来るのよ~」
緋色がここに来ている事は初めて知った。しかし、それどころではない。
「緋色が魂に…干渉出来る?私達みたいに…?」
「貴方だって…若干気付いてたんじゃない?精神世界の人間と繋がれて…その力を引き出せるって。」
「はい。」
「若干じゃなくて、完全に知ってる感じね~」
「…それのどこが、私が死ぬ事に繋がるんですか?」
「あの子は異常よ。本当に異常。私でも簡単に洗脳出来ないなんて。洗脳出来ないどころじゃない。洗脳を解除出来るのもおかしいくらいね~」
「洗脳は…ブレインダイブの人しか解除出来ないですよね…?」
「そうよ~魂に干渉出来る位の人、しかも他人にも可能…少し、危険を感じない?」
「…………」
「じゃあ…ここで質問よ~私が緋色ちゃんに初めて洗脳した時…あの子はどうやって私を追い出したと思う~?」
「大地の涙の魂に…干渉?」
「魂に干渉までは合ってるけど違うわ~本人に干渉したのよ~魂の奥に眠る、その人の限界の力。それを無理矢理引っ張ってきて私に放った。」
「だから…吐血した…?」
「そうね。相当な負担よ~これで分かると思うけど…魂というのは…有り得ないくらい強いわ。この力を使えば負ける事は無いでしょうね。」
「でも…使ったら…?」
「間違いなく死ぬわね。魂の情報の世界である、精神世界だったから吐血程度で済んだの。使った大きさもだいぶ小さいものではあったからそれも関係してるけどね。」
「現実世界で緋色が使うって事?」
「あの子は今現在、精神世界の緋色としか意図的に繋がってないわ。」
精神世界に意図的に繋がれる時点で普通ではないが、本題ではない。
「でも…魂の力の引き出し方を分かれば…でもね。本人ならいいのよ~」
「自業自得………ってことですか?」
「そうね~本人ならね~問題なのは他人の場合よ~」
「他人の魂に干渉して、その人を殺すかもしれないってことですか…?」
「そういう事よ~」
「…でも…何で大地の涙はそれを…知ってるんですか…?魂の力みたいな事。」
「………」
一瞬だが、悍ましい憎悪を感じた。
「……っ…」
「そうね~…二つ名の持ってる人なら誰だって知ってるわ~」
「二つ名…」
もしかしたら、二つ名とはただの名声だけでは無いかもしれない。
「緋色ちゃん本人にも言ったけど、気を付けなさいね~何も無い事を祈っとくわ~」
「待って…!」
夏希が止めようとすると、二人が追いかけてきた。
「夏希!もう時間だよ!」
椿が頬を膨らませる。
後ろを振り返っても大地の涙は既に居ない。
「ごめんごめん。行こう。」
直ぐに2回戦が始まる。世界が、森林に変化した。
(一人はブレイカー。一人は守護者。……もう一人が分からない!)
隠されている。香露音も無理なようだ。
「夏希!……多分無理!」
無理…というのは洗脳の事だろう。
「分かった!武器生成(小)!」
「夏希!私が援護する!」
椿が叫ぶ。相手が強いという事を感じ取っている。
「挑発の加護(中)…!」
守護者はやはり挑発を使ってくる。
香露音は守護者に向かって、攻撃を仕掛ける。
「縮地(中)…隼(中)!」
高速で相手の懐に刃を入れる。やはり、盾と本人の頑丈さで弾き飛ばされる。
挑発のせいでブレイカーと、もう一人に攻撃出来ない。
ブレイカーが、夏希に攻撃を仕掛ける。
「破壊の突(中)!」
「唐傘(小)!」
咄嗟に防御するが直ぐに壊れてしまった。
(流すように!刃を…!失敗したら、致命傷をくらう!)
相手の剣先を自分の刃の剣先と合わせて、受け流す。
「ぐっ……!」
(角度がちょっと悪かった…!そのせいで、手が痺れる!)
夏希の足が縺れる。
「破壊の剛(中)!」
ブレイカーはその隙を見逃さない。
「騎士の喝采(大)!」
香露音が挑発してくれたお陰で夏希はブレイカーの攻撃を回避出来た。
今度は椿がブレイカーに反撃する。
「閃光矢・五月雨(大)!」
数で挑発を押し切り、ブレイカーの心臓を狙う。
守護者と夜の騎士の挑発は少し違う。
守護者の挑発は人の意識を発動者に向ける。
しかし夜の騎士は能力だけを発動者に向ける。
こういう能力の違いが守護者と夜の騎士にはよくある。
「輪廻(中)!」
ブレイカーは簡単に椿の矢を消し去った。
守護者を先に倒さないといけない。
「正義の神罰(大)!」
香露音が守護者に襲いかかる。
「くっ…!唐傘(中)…!」
すると、守護者の背後から夏希が構えている。
「隼(小)……!」
「グハッ……!」
守護者を守ろうとブレイカーが夏希を襲う。
「破壊の突(大)!」
「させないよ…誘導撃ち(大)…」
正確な射撃でブレイカーを射抜いた。
挑発がかけられているのにも関わらず、関係なく違う人に攻撃出来るのは神業だ。
矢はブレイカーの首に刺さり、ブレイカーは消えた。
守護者を香露音がトドメを刺す。
「輪廻(小)!」
美しい軌跡を辿り守護者を斬りつけた。
(最後はこの人だけ…!さっきから特に何もして来なかったけど…!)
「電光石火(中)…」
急に、椿を襲い掛かってきた。
「五月雨撃ち(中)…!」
綺麗に全て避け、椿の首を狙う。
「武器生成(小)…!」
間一髪、椿は剣を生成し、攻撃を受け止める。
「鎌鼬(中)…」
このまま、鎌鼬を繰り出した。
「騎士の激励(中)!」
香露音が何とか防御を貼ったので攻撃が通らなかった。
「この…!閃律(小)!」
椿はこのまま攻撃した。相手は後ろに下がる。
今度は香露音が突撃する。椿は直ぐに助けに入った。
「隼(中)…!」
「誘導撃ち(中)……!」
しかし、相手は何もせずじっとしている。
夏希は察し二人を止めた。
「待って………!この人は…!」
しかし、もう遅い。
「黒煙(大)…」
辺りが黒い煙に覆われる。何も見えない。
黒煙は発動者の気配を隠蔽し、相手の気配察知を受け付けない。
そして何も見えなくなるが、発動者は全員の居場所の把握が可能だ。
そんな恐ろしい能力使える能力はただ一つ。
「この人は…!暗殺者だ…!」
何も出来ない。動けば暗殺される。
「………!」
一人の声が聞こえなくなった。その瞬間、光の矢が飛んだ。
(椿だ…!誰が死んだか教えてくれた……!)
すると、高い金属音が鳴り響く。しかし、直ぐに気配と共に消えた。
(香露音……?まさか…死んだの…?)
「私しか………居ない…やらなきゃ…………」
深く深呼吸をする。閉じていた扉を開き心の中を読み取る。
(後ろ………取った!)
声が聞こえて夏希は後ろを振り向く。
ギリギリのタイミングで、相手の攻撃を受け止める。
心の中を必死に読み取り攻撃を防ぐ。
「今だ…!」
夏希は暗殺者の腕を掴んだ。振りほどかれる前に攻撃する。
「隼(小)………!」
ギリギリで防がれる。しかし相手は怯んでいる。
「閃律(小)!」
夏希は心臓を貫いた。世界が元に戻っていく。
夏希は急いで心の中を聞くのをやめた。
相手の三人は放心状態だ。
「勝った……」
椿が一人呟く。そして、夏希に抱きついた。
「うわぁ…!?」
「凄いよ!凄いよ夏希!流石夏希!」
香露音も夏希の元に来た。
「強くなったね。夏希。さあ、行こう。」
今日の試験はこれだけで終わった。
明日は………自分達の事だけでは無い。
緋色が外に行く。
傷が完全に癒えてはいないだろう。それでも無理して行くつもりだ。
(何も無かったよ。)
緋色がそういえば、何も無かった訳が有り得ない。
だから不安だ。あの子は嘘を吐く。自身の苦痛を他人に見せないから。
「ねえ…何で私を知ろうとしているの?」
緋色がそこにいた。
「もう…構わないでよ…来ないで…!」
緋色が泣き始めた。
「私なんて見ても面白くないって。こんな醜態を晒すような事はしないで。」
緋色は自分自身を嘲笑った。
「私は、強い人間でいたいだけなの。」
緋色は今までの醜態を隠すように強がっている。
「何回も言ったのに!なんで聞いてくれないの!そんなに私を舐めてるの!?」
緋色は突如怒りだした。
「本当に…こんなにも哀れを晒す私達の身にもなってみろ。」
緋色は偉そうに言った。
「何で、本物の緋色に聞かないの?直接言えない人間に、人の本心を知ろうとしている自体間違ってるんじゃないの?」
緋色は不思議そうに言った。
夏希は何も言えずに立つしかなかった。
七人の緋色が夏希を取り囲む。
すると、その七人の緋色は煙のように消えて目の前にもう一人の緋色が現れた。
「私を助けて。助ける覚悟と力があれば。私が信用に足る人間であれば。」
緋色は背中を向き、歩き始めた。
「何も無ければ…二度と私達に干渉してこないで。」
最後にそう言い煙のように消えていった。
「…………はっきりとする夢だなぁ…」
一人呟き、夏希はベッドから起き上がる。
(助ける覚悟と力…)
信用に足る…それが一番難しい気がする。
しかし、助ける覚悟と力ならば簡単だと思う。
「先ずは力か。団体戦の試験…をやらなくちゃね。」
緋色が助けを求めている。助けを求められたのならば助けるしかない。
(でも…私は無能力者レベルで弱いんだよね。)
それは、不良三人組と決闘した時によく分かっている。
しかし、ブレインダイブの能力を使わなければの話だ。
不良三人組に洗脳を使えば、勝手に自滅する。
しかし罪悪感を感じてしまい、どうしても非道な事が出来ない。
「それでも…………………腹を括るタイミングかも。」
緋色は外に行く。そこで助けろと言っているならば、資格を持っていない夏希が助ける事は出来ない。
ブレインダイブという能力を開眼した夏希だからこそ出来る事があるに違いない。
今日は、三人で作戦会議だ。
香露音が椿の事を見つけてくれたお陰で団体戦は何とかなりそうだ。
放課後、三人は集まった。
「取り敢えずー…能力について知ろう。私はアーチャーだって事は知ってるでしょ?それとね…基礎能力は輪廻と閃律以外は使えるよ。」
「私は夜の騎士で…基礎能力全部使える。」
香露音と椿は小学園から開眼しているので能力者としてちゃんと完成されている気がする。
「ブレインダイブで…基礎能力は、武器生成、鎌鼬、隼と…閃律、縮地。」
「あれ?2つ増えた?」
「緋色に軽くだけど教えて貰ったの。団体戦やるんだったら覚えておきなって。」
緋色は団体戦の話を聞いていて、今のままでは夏希は戦力になれない。
そう思ったのだろう。
「少なくとも…縮地さえ覚えておけば死ぬ確率は大分下がる。団体戦は生きておくだけで戦況は大きく変わるからさ。あとは…閃律は覚えた方がいいね。最悪道連れで縮地と閃律を同時に使って突っ込むってこともできるし。余程の事以外はオススメしないけど。」
との事。心の中をその時読んでみると、真剣に考えて心配してくれていた。
それだけではなく、香露音の実力を認めていて、安心しているようだった。
その後、違和感に気付き始めたので、心の中をを読むのは止めた。
夏希は覚悟を決め、作戦を提案する。
「私は、あんまり強くない。だから、敵を一人洗脳して…そこから勝手に敵のグループは崩れていく。私はブレインダイブだから。ブレインダイブの戦い方をしようと思うの。」
こう言うと二人とも驚いている。
夏希はブレインダイブの能力を普段あまり使わないからだ。
勿論、洗脳した事は一度もない。
魂の情報の上書きなど、簡単にやってはいけない夏希は思っていた。
「本当にするの?」
椿が問う。
「確かに、ブレインダイブを開眼した夏希だから出来る作戦だけど…」
不良三人組との決闘でも開眼した能力は1つも使わなかった。
「私は、資格を取りたいの。………本気で取ろうって思ってる。」
強くならなければ、見ない場所で緋色が倒れる。
そうして、決闘でこの作戦になった。
最初は、初めての割に上手くいった。ちゃんと洗脳も解けていた。
しかし、慣れない洗脳は身体的に負担がかかる。
二人のそばで休んでいると、
「貴方…死ぬわよ。」
誰かが耳打ちするように言った。
「だ、誰!?」
反射的に夏希は起き上がる。しかし、そこに声の主は居ない。
「寝ぼけてたかも。ちょっと、顔を洗ってくる。」
少し無理を言い、声の主を探しに行く。
「ねえ…誰?」
誰も居ない場所で話しかける。
きっと…大地の涙が、ブレインダイブの能力の一つである精神感応を使って夏希に話しかけている。
「聞かずともわかる癖に。」
そう言い、目の前に大地の涙が現れた。
「あらあら~目の前に現れるとは思わなかったかしら~?……先に本題ね。緋色ちゃん、貴方達の応援に来てたわよ~その時にあの子に言ったんだけど…あの子…魂に干渉出来るのよ~」
緋色がここに来ている事は初めて知った。しかし、それどころではない。
「緋色が魂に…干渉出来る?私達みたいに…?」
「貴方だって…若干気付いてたんじゃない?精神世界の人間と繋がれて…その力を引き出せるって。」
「はい。」
「若干じゃなくて、完全に知ってる感じね~」
「…それのどこが、私が死ぬ事に繋がるんですか?」
「あの子は異常よ。本当に異常。私でも簡単に洗脳出来ないなんて。洗脳出来ないどころじゃない。洗脳を解除出来るのもおかしいくらいね~」
「洗脳は…ブレインダイブの人しか解除出来ないですよね…?」
「そうよ~魂に干渉出来る位の人、しかも他人にも可能…少し、危険を感じない?」
「…………」
「じゃあ…ここで質問よ~私が緋色ちゃんに初めて洗脳した時…あの子はどうやって私を追い出したと思う~?」
「大地の涙の魂に…干渉?」
「魂に干渉までは合ってるけど違うわ~本人に干渉したのよ~魂の奥に眠る、その人の限界の力。それを無理矢理引っ張ってきて私に放った。」
「だから…吐血した…?」
「そうね。相当な負担よ~これで分かると思うけど…魂というのは…有り得ないくらい強いわ。この力を使えば負ける事は無いでしょうね。」
「でも…使ったら…?」
「間違いなく死ぬわね。魂の情報の世界である、精神世界だったから吐血程度で済んだの。使った大きさもだいぶ小さいものではあったからそれも関係してるけどね。」
「現実世界で緋色が使うって事?」
「あの子は今現在、精神世界の緋色としか意図的に繋がってないわ。」
精神世界に意図的に繋がれる時点で普通ではないが、本題ではない。
「でも…魂の力の引き出し方を分かれば…でもね。本人ならいいのよ~」
「自業自得………ってことですか?」
「そうね~本人ならね~問題なのは他人の場合よ~」
「他人の魂に干渉して、その人を殺すかもしれないってことですか…?」
「そういう事よ~」
「…でも…何で大地の涙はそれを…知ってるんですか…?魂の力みたいな事。」
「………」
一瞬だが、悍ましい憎悪を感じた。
「……っ…」
「そうね~…二つ名の持ってる人なら誰だって知ってるわ~」
「二つ名…」
もしかしたら、二つ名とはただの名声だけでは無いかもしれない。
「緋色ちゃん本人にも言ったけど、気を付けなさいね~何も無い事を祈っとくわ~」
「待って…!」
夏希が止めようとすると、二人が追いかけてきた。
「夏希!もう時間だよ!」
椿が頬を膨らませる。
後ろを振り返っても大地の涙は既に居ない。
「ごめんごめん。行こう。」
直ぐに2回戦が始まる。世界が、森林に変化した。
(一人はブレイカー。一人は守護者。……もう一人が分からない!)
隠されている。香露音も無理なようだ。
「夏希!……多分無理!」
無理…というのは洗脳の事だろう。
「分かった!武器生成(小)!」
「夏希!私が援護する!」
椿が叫ぶ。相手が強いという事を感じ取っている。
「挑発の加護(中)…!」
守護者はやはり挑発を使ってくる。
香露音は守護者に向かって、攻撃を仕掛ける。
「縮地(中)…隼(中)!」
高速で相手の懐に刃を入れる。やはり、盾と本人の頑丈さで弾き飛ばされる。
挑発のせいでブレイカーと、もう一人に攻撃出来ない。
ブレイカーが、夏希に攻撃を仕掛ける。
「破壊の突(中)!」
「唐傘(小)!」
咄嗟に防御するが直ぐに壊れてしまった。
(流すように!刃を…!失敗したら、致命傷をくらう!)
相手の剣先を自分の刃の剣先と合わせて、受け流す。
「ぐっ……!」
(角度がちょっと悪かった…!そのせいで、手が痺れる!)
夏希の足が縺れる。
「破壊の剛(中)!」
ブレイカーはその隙を見逃さない。
「騎士の喝采(大)!」
香露音が挑発してくれたお陰で夏希はブレイカーの攻撃を回避出来た。
今度は椿がブレイカーに反撃する。
「閃光矢・五月雨(大)!」
数で挑発を押し切り、ブレイカーの心臓を狙う。
守護者と夜の騎士の挑発は少し違う。
守護者の挑発は人の意識を発動者に向ける。
しかし夜の騎士は能力だけを発動者に向ける。
こういう能力の違いが守護者と夜の騎士にはよくある。
「輪廻(中)!」
ブレイカーは簡単に椿の矢を消し去った。
守護者を先に倒さないといけない。
「正義の神罰(大)!」
香露音が守護者に襲いかかる。
「くっ…!唐傘(中)…!」
すると、守護者の背後から夏希が構えている。
「隼(小)……!」
「グハッ……!」
守護者を守ろうとブレイカーが夏希を襲う。
「破壊の突(大)!」
「させないよ…誘導撃ち(大)…」
正確な射撃でブレイカーを射抜いた。
挑発がかけられているのにも関わらず、関係なく違う人に攻撃出来るのは神業だ。
矢はブレイカーの首に刺さり、ブレイカーは消えた。
守護者を香露音がトドメを刺す。
「輪廻(小)!」
美しい軌跡を辿り守護者を斬りつけた。
(最後はこの人だけ…!さっきから特に何もして来なかったけど…!)
「電光石火(中)…」
急に、椿を襲い掛かってきた。
「五月雨撃ち(中)…!」
綺麗に全て避け、椿の首を狙う。
「武器生成(小)…!」
間一髪、椿は剣を生成し、攻撃を受け止める。
「鎌鼬(中)…」
このまま、鎌鼬を繰り出した。
「騎士の激励(中)!」
香露音が何とか防御を貼ったので攻撃が通らなかった。
「この…!閃律(小)!」
椿はこのまま攻撃した。相手は後ろに下がる。
今度は香露音が突撃する。椿は直ぐに助けに入った。
「隼(中)…!」
「誘導撃ち(中)……!」
しかし、相手は何もせずじっとしている。
夏希は察し二人を止めた。
「待って………!この人は…!」
しかし、もう遅い。
「黒煙(大)…」
辺りが黒い煙に覆われる。何も見えない。
黒煙は発動者の気配を隠蔽し、相手の気配察知を受け付けない。
そして何も見えなくなるが、発動者は全員の居場所の把握が可能だ。
そんな恐ろしい能力使える能力はただ一つ。
「この人は…!暗殺者だ…!」
何も出来ない。動けば暗殺される。
「………!」
一人の声が聞こえなくなった。その瞬間、光の矢が飛んだ。
(椿だ…!誰が死んだか教えてくれた……!)
すると、高い金属音が鳴り響く。しかし、直ぐに気配と共に消えた。
(香露音……?まさか…死んだの…?)
「私しか………居ない…やらなきゃ…………」
深く深呼吸をする。閉じていた扉を開き心の中を読み取る。
(後ろ………取った!)
声が聞こえて夏希は後ろを振り向く。
ギリギリのタイミングで、相手の攻撃を受け止める。
心の中を必死に読み取り攻撃を防ぐ。
「今だ…!」
夏希は暗殺者の腕を掴んだ。振りほどかれる前に攻撃する。
「隼(小)………!」
ギリギリで防がれる。しかし相手は怯んでいる。
「閃律(小)!」
夏希は心臓を貫いた。世界が元に戻っていく。
夏希は急いで心の中を聞くのをやめた。
相手の三人は放心状態だ。
「勝った……」
椿が一人呟く。そして、夏希に抱きついた。
「うわぁ…!?」
「凄いよ!凄いよ夏希!流石夏希!」
香露音も夏希の元に来た。
「強くなったね。夏希。さあ、行こう。」
今日の試験はこれだけで終わった。
明日は………自分達の事だけでは無い。
緋色が外に行く。
傷が完全に癒えてはいないだろう。それでも無理して行くつもりだ。
(何も無かったよ。)
緋色がそういえば、何も無かった訳が有り得ない。
だから不安だ。あの子は嘘を吐く。自身の苦痛を他人に見せないから。
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ゆるゆる設定です。
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