17 / 104
序章・対の戦い編
1-16 16 香露音視点 知らない君
しおりを挟む
鶴ちゃんと棚見君が帰り、二人きりになる。緋色は不思議そうに香露音を見つめていた。
「どうしたの?香露音もそろそろ帰った方が良いんじゃない?」
香露音は緋色の眼を見て、思った事を言う。
「私さ…私の開眼した能力ってね…アナライズをするとね別の物が見れる。」
「…?何が見えるの?」
「耐性。」
「…………。耐性ね…」
既に緋色は察している。
「周りは、一つや二つくらいはよく居る。私でも睡眠耐性があった。でもさ緋色。そっちは…数え切れない程ある。その中でも、催眠耐性、毒物耐性とかあったんだよね。」
緋色は何が言いたいのかと言う目で香露音を見ている。
香露音はそのまま続けた。
「ナイフで刺された傷、激痛なんじゃないの?麻酔もどうせあんまり効いてないんでしょう?」
「…………。」
「私には気を配る必要は無いよ。」
「はぁ…バレると思わなかったよ…夜の騎士ってそんな能力があるなんて初めて知った。」
気の抜けた声でそう言った。
よく見れば汗がにじんでいる。
「最初から耐性持ちなんて有り得ない。ⅠとかⅡは最初からあったりするけど、緋色はほぼ全ての耐性がⅣとかⅤ。………どうやってそんな数の耐性を持ってるの?」
「色々…あったんだよ。」
緋色は決して自分の過去を言わない。
「その色々を聞いてるの。」
「…………今日は私の話を聞きたがるね。いつも私に興味なさげなのにさ。」
ハハハ…と乾いた声で笑う。実際緋色の言う通りだ。
「そうだね。でも、この際聞いとこうと思って。」
能力によって見える情報が増えると以前説明したが、その情報を見られる側が教えられる限り分かる筈がない。
緋色本人が以前、夜の騎士と会うのは初めてだ…と言っていたので、隠蔽しようが無かった。
だから、香露音でもその情報が分かった。
「耐性ってさ。どうやって付くか知ってるでしょ?」
「何回も受け続ける事で体が慣れたり、拒否する事で付く。」
「そうそう。私が色々ケチつけられてかららずっと能力を受け続けた。」
「…毒耐性がⅤになる程?普通はあってもⅠだよ。数回受けただけでⅠ位はつく。でも…」
「毒に関しては…単純計算で、合計…36時間?位。ああ、勿論決闘の時だよ。」
「嘘…………でしょ…」
普通は毒を受けるのは(小)が3分程度。それ以降普通に消滅する。
そして、(大)位をかけなければ全くライフを削れない。
それに、毒霧なので使用者本人に毒を食らう場合も勿論ある。
言ってしまえば一回の決闘のうちどれだけ長い決闘だとしても15分~30分が相場といった所だ。
「一回の内に何回毒霧かけられたの?」
「…1時間?位だよ、いつも。月一、一決闘、一時間。それを三年間。」
「…………!」
(そんなものまるで…!イジメじゃない!?いや…寧ろ、その言葉すら生温い…!)
「それレベルな事を…選り取り見取り…ってね。」
「だから、麻酔も…Ⅴなんだね…」
「流石にさ…能力を受けるだけだから、最初は能力だけ効かなかったんだけど~途中から物理的な麻酔も効かなくなってきて~」
「そんなノリノリで言う事じゃ…」
「もう、過ぎた事だし。」
その言葉がただの楽観的な言葉では無い。きっと思い出したくないのだろう。
だったら…もう深く聞いては緋色にとって辛いことだ。
「…そう。わかったよ。教えてくれてありがとう。もう遅いし帰るね。」
「気を付けてねー」
「うん。お大事に。」
そう言い香露音は帰る。
(緋色は……どんな理不尽を背負ってきたのだろう…)
三人がまだ第一学年の時、緋色が言っていた言葉を思い出す。
「小学園の時より今の方が100000000倍マシだよ~」
あんな酷い目に逢い続けたのだから、そう言うのも過言じゃなかった。
決して大袈裟なんてことは無かったのだと思う。
「…マシ…か。良いとは言ってないもんね。」
それでも、やはり不満はあるだろう。
やっと開眼した能力を、今まで渇望したに違いない能力を。
ただの糸を張るだけの能力と言われ、無能力者では無いが無能なのは変わらないと言われたあの屈辱を。
緋色は何でこんなにも周りから評価されないのだろう。
誰よりも努力をしていた筈だ。しかし、能力者の方が評価される。
…だから、棚見君と緋色は強く不思議な繋がりがあった。
「あの二人は同じなんだろうね…同じ無能力者だったからこその絆…同じ境遇だからこそ…」
緋色はイジメを受け続けた。それも拷問ともいえるレベルの。
(毒だけじゃない…催眠、苦痛…少なくとも10個位はある。しかも、普段見ない言葉もあった…)
香露音は家に到着し、急いで端末を開く。
最新の情報端末だ。父親が知識者という能力を持っていて、母親が創造者という能力を開眼した。
二人の共同開発により生み出されたらしい。
これはどうやら機密情報らしく、政府に許可された者しか設置すら許されないらしい。
(悪用されたら、政府の情報がだだ漏れね…まぁ…私も悪用するようなものだけど。)
調べる為にパスワードを入力する。両親は香露音を信用してくれているので教えてくれた。
勿論、政府の情報を売るような真似はしないが。
「調べるのは…緋色の小学園。えっと…」
ほぼ覚えてない。
香露音自身が今までどれ程緋色に興味を向けなかった今日ようやく自覚する。
香露音もまた、緋色の事を評価しなかった。
「夏希…なら分かるかな。」
夏希に直ぐに連絡した。するとすぐに返信が来た。
どうやら、夏希も知らないらしい。正確に言えば聞いたけど忘れたようだ。
興味が無かったのは夏希も同じだった。
もう一度返信が来た。どうやら精神世界にもう一度入るつもりだ。
なので、夏希を香露音の家に誘う。直接聞いてからその場で検索する。
出来ることなら全て聞いた方がいいが、多分無理だ。
絶対に殺される。
予定は明日。学園が終わり次第、香露音の家に行き、そこで緋色を知る。
「ご飯よー」
母親が香露音を呼んでいる。香露音は直ぐに向かった。
「どうしたの?香露音もそろそろ帰った方が良いんじゃない?」
香露音は緋色の眼を見て、思った事を言う。
「私さ…私の開眼した能力ってね…アナライズをするとね別の物が見れる。」
「…?何が見えるの?」
「耐性。」
「…………。耐性ね…」
既に緋色は察している。
「周りは、一つや二つくらいはよく居る。私でも睡眠耐性があった。でもさ緋色。そっちは…数え切れない程ある。その中でも、催眠耐性、毒物耐性とかあったんだよね。」
緋色は何が言いたいのかと言う目で香露音を見ている。
香露音はそのまま続けた。
「ナイフで刺された傷、激痛なんじゃないの?麻酔もどうせあんまり効いてないんでしょう?」
「…………。」
「私には気を配る必要は無いよ。」
「はぁ…バレると思わなかったよ…夜の騎士ってそんな能力があるなんて初めて知った。」
気の抜けた声でそう言った。
よく見れば汗がにじんでいる。
「最初から耐性持ちなんて有り得ない。ⅠとかⅡは最初からあったりするけど、緋色はほぼ全ての耐性がⅣとかⅤ。………どうやってそんな数の耐性を持ってるの?」
「色々…あったんだよ。」
緋色は決して自分の過去を言わない。
「その色々を聞いてるの。」
「…………今日は私の話を聞きたがるね。いつも私に興味なさげなのにさ。」
ハハハ…と乾いた声で笑う。実際緋色の言う通りだ。
「そうだね。でも、この際聞いとこうと思って。」
能力によって見える情報が増えると以前説明したが、その情報を見られる側が教えられる限り分かる筈がない。
緋色本人が以前、夜の騎士と会うのは初めてだ…と言っていたので、隠蔽しようが無かった。
だから、香露音でもその情報が分かった。
「耐性ってさ。どうやって付くか知ってるでしょ?」
「何回も受け続ける事で体が慣れたり、拒否する事で付く。」
「そうそう。私が色々ケチつけられてかららずっと能力を受け続けた。」
「…毒耐性がⅤになる程?普通はあってもⅠだよ。数回受けただけでⅠ位はつく。でも…」
「毒に関しては…単純計算で、合計…36時間?位。ああ、勿論決闘の時だよ。」
「嘘…………でしょ…」
普通は毒を受けるのは(小)が3分程度。それ以降普通に消滅する。
そして、(大)位をかけなければ全くライフを削れない。
それに、毒霧なので使用者本人に毒を食らう場合も勿論ある。
言ってしまえば一回の決闘のうちどれだけ長い決闘だとしても15分~30分が相場といった所だ。
「一回の内に何回毒霧かけられたの?」
「…1時間?位だよ、いつも。月一、一決闘、一時間。それを三年間。」
「…………!」
(そんなものまるで…!イジメじゃない!?いや…寧ろ、その言葉すら生温い…!)
「それレベルな事を…選り取り見取り…ってね。」
「だから、麻酔も…Ⅴなんだね…」
「流石にさ…能力を受けるだけだから、最初は能力だけ効かなかったんだけど~途中から物理的な麻酔も効かなくなってきて~」
「そんなノリノリで言う事じゃ…」
「もう、過ぎた事だし。」
その言葉がただの楽観的な言葉では無い。きっと思い出したくないのだろう。
だったら…もう深く聞いては緋色にとって辛いことだ。
「…そう。わかったよ。教えてくれてありがとう。もう遅いし帰るね。」
「気を付けてねー」
「うん。お大事に。」
そう言い香露音は帰る。
(緋色は……どんな理不尽を背負ってきたのだろう…)
三人がまだ第一学年の時、緋色が言っていた言葉を思い出す。
「小学園の時より今の方が100000000倍マシだよ~」
あんな酷い目に逢い続けたのだから、そう言うのも過言じゃなかった。
決して大袈裟なんてことは無かったのだと思う。
「…マシ…か。良いとは言ってないもんね。」
それでも、やはり不満はあるだろう。
やっと開眼した能力を、今まで渇望したに違いない能力を。
ただの糸を張るだけの能力と言われ、無能力者では無いが無能なのは変わらないと言われたあの屈辱を。
緋色は何でこんなにも周りから評価されないのだろう。
誰よりも努力をしていた筈だ。しかし、能力者の方が評価される。
…だから、棚見君と緋色は強く不思議な繋がりがあった。
「あの二人は同じなんだろうね…同じ無能力者だったからこその絆…同じ境遇だからこそ…」
緋色はイジメを受け続けた。それも拷問ともいえるレベルの。
(毒だけじゃない…催眠、苦痛…少なくとも10個位はある。しかも、普段見ない言葉もあった…)
香露音は家に到着し、急いで端末を開く。
最新の情報端末だ。父親が知識者という能力を持っていて、母親が創造者という能力を開眼した。
二人の共同開発により生み出されたらしい。
これはどうやら機密情報らしく、政府に許可された者しか設置すら許されないらしい。
(悪用されたら、政府の情報がだだ漏れね…まぁ…私も悪用するようなものだけど。)
調べる為にパスワードを入力する。両親は香露音を信用してくれているので教えてくれた。
勿論、政府の情報を売るような真似はしないが。
「調べるのは…緋色の小学園。えっと…」
ほぼ覚えてない。
香露音自身が今までどれ程緋色に興味を向けなかった今日ようやく自覚する。
香露音もまた、緋色の事を評価しなかった。
「夏希…なら分かるかな。」
夏希に直ぐに連絡した。するとすぐに返信が来た。
どうやら、夏希も知らないらしい。正確に言えば聞いたけど忘れたようだ。
興味が無かったのは夏希も同じだった。
もう一度返信が来た。どうやら精神世界にもう一度入るつもりだ。
なので、夏希を香露音の家に誘う。直接聞いてからその場で検索する。
出来ることなら全て聞いた方がいいが、多分無理だ。
絶対に殺される。
予定は明日。学園が終わり次第、香露音の家に行き、そこで緋色を知る。
「ご飯よー」
母親が香露音を呼んでいる。香露音は直ぐに向かった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる