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誕生日のお仕置き

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今日はわたしの誕生日。
遂に二桁の年齢となるが、わたしは毎年の“この日”が大嫌いだった。

その理由は…。

「ひなのっ!何やってんのっ!!」

耳がキンキンとする声で、廊下に居たわたしの名前が呼ばれる。

嫌々振り返ると、そこには“ケイン”を手に持った母が立っていた。

「今年も“誕生日のお仕置き”を始めるから、早くリビングに来なさいっ!」

言うが早いか、母はわたしの腕を握ると、強制的にリビングへ連行していく。

…我が家では毎年の誕生日に、わたしがお仕置きを受けるルールがある。

「年齢が上がったという自覚を身体に刻むため」という理不尽な理由で、毎年何も悪いことをしていないのに、お仕置きが与えられていた。

そして今日もその例外ではないらしい。

連行された先でわたしは手を離され、母と向かい合う形となった。

「早くお尻出しなさいっ!」

「今年も、年の数×10回ペンペンだからねっ!」

『…いやぁ』

心は嫌がっているが、身体は勝手に動き出す。

パンツを膝まで下ろし、ゆっくりと下着もそれに続いた。

5歳になった日から始まったこのルールは、今日もわたしから涙を搾り取るだろうと、他人事のように考えてしまう。

とうとう今年は「100回」もぶたれるとを思うと、無意識に心が現実を認めないようにしているのかもしれない。

「遅いっ!お尻を出すだけでどれだけお母さんを待たせるのっ!?」

「ご、ごめんなさいっ!?」

「早く四つん這いになって、お尻を突き出しなさいっ!…これ以上時間を掛けるなら、今年からは“年の数×100回”にするからねっ!!」

「ひっ、…ひいっ!?」

途方もない数を頭で理解した瞬間、身体は素早く動き、お仕置きを受けるための姿勢を取る。

「お、お母さんっ!今年の“誕生日のお仕置き”をお願いしますっ!!」

恐怖で震えた口が、心にも無いことを吐き出し、身体はお尻を高く突き出す。

この5年間で染み込まれた恐怖の集大成が、形となって現れていた。

「まあいいわ。今回は“年の数×10回ペンペン”で許してあげます。…ただし、ちょっとでも姿勢を崩したら……わかってるわね?」

ペンッ ペンッ

「ひっ…は、はいっ!ありがとうございますっ!!」

ケインがお尻に当てられた冷たさに、わたしの思考は一瞬止まってしまう。
この冷たいものが力いっぱいお尻に当てられる痛みを思い出し、わたし全身が震え出した。

ビュッ ビッヂィィンッ!!

「んぎゃぁぁぁっ!?いっ、いっかいっ!!」

悲鳴と共に数を数える音が、部屋の中にこだまする。
数は毎回自分で数えるよう叩き込まれているため、もはや意識しなくても出来るようになっていた。

お尻には、縦に焼けたような線の痛みが残り、その一発で、わたしの目からは涙が溢れ出していた。

ビュッ ビッヂィィンッ!!

「あ゛ぁぁぁぁっ!!にがいっ!!」

ビュッ ビッヂィィンッ!!

「いだぁぁぁぁっ!!ざ、ざんがぁいぃっ!!」

立て続けに痛みが広がり、わたしの意識が飛びかける。
姿勢を崩さないのは、もはや奇跡と思える状況だった。

ぶたれるたびに赤黒い線がお尻に広がり、その痛々しさを物語っている。

この痛みが後97回も残っているなど、考えたくもなかった。

ビュッ ビュッ

わたしに恐怖を与えるためか、母がケインを素振りする音が耳に届き、全身が震え出す。

ビュッ… ビュッ ビッヂィィンッ!!

「あぎぃぃぃっ!?よんがぁぁいっ!!」

何度かの素振りを終え、またお尻に激痛が走る。

喉が潰れるのでは無いかというくらいの悲鳴が、わたしの頭に響き渡った。
涙の他に、めまいや頭痛から、視界がぼやけているのがわかる。

ビュッ ビュッ

「あ、…あぁ」

またも素振りする音が届き、わたしの心臓からバクバクと焦る音が聞こえ出す。

ビュッ ビッヂィィンッ!!

「いだいぃぃぃっ!?ご、ごがいぃぃぃっ!?」

もはやお尻全体が燃えている感覚が、わたしの意識を奪っていく。

…。

……その後も百叩きは続き、奇跡的に姿勢を崩さなかったわたしは、“塩辛い味がするケーキ”を食べることになるのだった。

「完」
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感想 3

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