35 / 51
“身代わり”折檻(後編)
しおりを挟む
ビッヂィィンッ!!
「ごめんなざぁいっ!!」
ビッヂィンッ!
「いだいっ!」
次のお仕置きが始まり、しばらく時間が経つ。
現在は、夕日が部屋全体を照らし出し、お仕置きされている“大切なところ”が、更に赤く腫れているような感覚を得る。
ビッヂィィンッ!!
「んん゛っ!!」
ビヂンッ!
「い゛っ!」
相変わらず、わたし達のお仕置きは続いており、まだまだ終わる気配はない。
また、しばらくしてから気づいたが、わたしよりも、妹の方が強く叩かれている気がする。
その明らかに厳しい音は、わたしの身体を震え上がらせると同時に、ある“感情”が芽生えてくるのがわかった。
「…お、お母さん…。」
「なに?……まさか、“やめたい”なんていうんじゃないでしょうね?」
その考えに至った母が、きつくわたしを睨みつけてくる。
恐ろしさから、わたしは“ごくりっ”と唾を飲み、手汗の滲んだ妹の手を、再び、強く握った。
「違うのっ!…ただ、わたしよりも、りなの方が強く叩かれてる気がして…。」
「……お、お姉ちゃん?」
隣では、わたしが、“やめたい”と言い出すと思っていたであろう妹が、予想外の言葉に困惑している。
「なんだ、そんなこと?……当たり前でしょ?悪いのはりななんだから。…で、それがどうしたの?」
…“予想通り”の反応に、わたしの意思は決まる。
「なら、わたしの方を強く叩いてっ。…そして、もっとりなの方を弱くして欲しいのっ!」
「お、お姉ちゃんっ!?」
「……別にいいけど、…なんでそこまでするの?……お姉ちゃんが痛いだけでしょ?」
「それは、…ただ、りなが辛い顔を見たくないだけなのっ!……わたしはどれだけ痛くてもいいからっ!だから、お願いっ!!」
“理解できない”
そんな感じの反応をした母は、「はぁ…。」とため息をつく。
「わかった。じゃあ、お姉ちゃんのほうを強く叩いてあげる。……もっと脚を広げなさい。その分、りなの方を軽くしてあげるから。」
「……わかった。」
わたしは、“くいっと”さらに脚を広げる。
恥ずかしいという感情も湧き上がるが、それ以上に、厳しいお仕置きに対する“恐怖感”が、溢れ出しそうだった。
ビヂンッ!
「ん゛っ!」
先に、りなの方へ、定規が当たる。
これまでで、1番軽めの音が響き、“少し安心した”自分がいた気がした。
ビッヂィィンッ!!
「あ゛あんっ!!」
…代わりに、宣告通り、厳しい衝撃が、わたしに打ち付けられる。
当たった部分を確認すると、そこは青痣が浮かび上がっており、見ただけで痛々しさが伝わってくるものだった。
ビヂンッ!
「いだいっ!」
ビッヂィィィン!!!
「ぎゃぁぁぁっ!!!」
先程よりも、厳しい音が、部屋の中に鳴り響く。
さらに、濃い痣が浮かび上がったそこは、“ジグジグ”と痛み、わたしへ悲鳴を上げているようだった。
「…グスッ……。いだいよぉ…。」
再度、わたしの目からは、涙が決壊する。
「うぇぇーんっ!…お姉ちゃん、ごめんなざいぃっ!!」
その様子を見ていた妹は、大泣きで、“懺悔”するように、わたしの手を握りしめた。
「…グスッ…、大丈夫だよ。……“りなは悪くない”んだから、安心して。」
「お、お姉ちゃん……。」
少しでも妹を落ち着かせようと、必死に言葉を絞り出す。
ビッヂィィィン!!!
「あ゛あぁぁぁぁっ!!」
「おねえちゃんっ!?」
「………それ、どういうこと?」
わたしの“大切なところ”が再度、悲鳴を上げる。
いきなりのことで、状況がわからない妹は、“あわあわ”と、わたしの様子を伺いながら、心配してくれているようだった。
「“りなが悪くない”って、どういうことかって聞いてるのっ!?」
ビッヂィィィン!!!
「いっだぁぁぁいぃっ!!」
……余程、気に召さなかったのだろうか。
冷たい顔をした母は、これまでよりもきつく、わたしを睨みつけた。
「…だ、だってっ!…おトイレに行かせなかったのは、お母さんでしょっ!?……だから、りなは悪くないのっ!!」
「お仕置き中にトイレに行きたがる、りなが悪いんでしょっ!?」
ビッヂィィィン!!!
「い゛いぃっ!!……それでもっ!!…ちょ、長時間お仕置きしてたのは、お母さんでしょっ!?」
「ママが悪いって言いたいのっ!?」
ビッヂィィィン!!!
「だいぃぃっ!!」
…恐らく、初めてであろう。
自分のお仕置きでも、一度も反抗したことのないわたしが、りなへのお仕置きに対して、反抗してしまった。
『ここで“折れてはいけない”』
という謎の“意思”が働き、負けじと母を睨みつける。
「…なに、その目は?……はぁ…。
……わかったわ。りなは悪くないんでしょ?…なら、残りのお仕置きは、お姉ちゃん、あんたが全部受けなさい?」
「っ!?………わかった。じゃあ、もうりなは許して?」
「お姉ちゃんが“ちゃんと”受けられたら許すって最初に言ったでしょ?……りな、あんたはそのままの姿勢で反省してなさい。」
「は、はいぃっ!?」
母に睨まれ、“びくっと”なった妹が、姿勢を戻す。
そして母は、すぐにわたしの方へ向き直る。
「…そのまま待ってなさい。」
そういうと、母はキッチンへ行き、コップ一杯に“並々とついだ水”を持ってくる。
“バシャッ”
「…つめたぃっ!?」
「……知ってる?濡れた肌へのお仕置きは、さらに痛みを強く感じるのよ?…“ママへ反抗した罰”には、ちょうどいいでしょ?」
腫れた肌にかけられた水が、熱を少しずつ覚ましていく。
むしろ、『少し気持ちいい』と思ってしまったくらいだ。
「さあ、お姉ちゃん、覚悟しなさい?…あと100回くらい、どれだけ泣き叫んでも、ちゃんと受け終わるまではやめないからね。」
「……はい。」
ビッヂィィィン!!!
「いぎゃぁぁぁっ!!」
……嘘でしょ?
それまでのお仕置きとは、比べ物にならないほどの痛みだった。
濡れた肌に当たる衝撃は、痛みを吸収し、鋭いもので刺されたような感覚が響き渡る。
「お姉ちゃん、まだ1回目よ?…誰が脚を閉じていいって言ったの?」
「…グスッ……。」
気がつくと、わたしは脚を閉じ、空いている左手で、叩かれた部分を必死にさすってしまっていた。
「いますぐ、脚を広げてその手をどけなさい。……じゃないと、この罰をりなに与えるわよ?」
「…っ!?」
“りな”の名前を出され、わたしは恐る恐る脚を広げる。
そして、手を離すと、そこは青紫色の痣となり、目を背けたいほどの有様になっていた。
ビッヂィィィン!!!
「あ゛ぁぁぁぁっ!!」
「ん゛っ!!」
再度、振り下ろされる鋭い痛みに、わたしは妹と繋いだ腕に力が入ってしまう。
…だが、そんなことを気にする余裕がないほどに、わたしは痛みにのたうち回っていた。
「お姉ちゃん、いい加減にしなさいっ!ちゃんとお仕置きを受けられないのっ!?」
「ママァッ!ごめんなざいっ!!りなが悪いんですっ!!りなに……、りなにお仕置きをしてぐださいっ!!」
「りなっ!黙ってなさいっ!!いまはお姉ちゃんにお仕置きしてるのっ!!……あんたには後で“仕上げ”してあげるから、そのまま待ってなさいっ!」
妹が大泣きしながら母へ訴えるが、当然の如く、その意見が通ることはない。
無力な妹のせめてもの“償い”か、強く手を握ってきてくれるのがわかった。
そんな、心が完全に折れてしまったわたしに向けられたのは、“妹の心配する瞳”と、怒りが治らない母の、高々と振り上げられた“定規”だった…。
・
「……グス…。いだいぃ…。……いだいよぉ…。」
それから、何度かやり直しをされ、結局終わったのは、日が完全に沈み、月の光が辺りを照らすころだった。
“パチッ”
電気をつけられて、目が眩む。
少しずつ慣れていた視界で“その場所”を見ると、初めからその色だったかのように変色していた。
「お、おねえちゃん…。」
妹はまた泣きそうな目で“まじまじ”と、わたしのお仕置き跡を見つめる。
だが、“触れる”だけでも激痛が走りそうなそこを見てためらっているのか、ぎこちなく手を伸ばしは閉じを繰り返していた。
「りな。“お漏らしの罰”は、お姉ちゃんが代わりに受けてくれたから、許してあげるわ。……でも、あんたにはまだ罰が残ってるわよ?」
「……はい。」
そんな母の手には、お仕置きの際に使われる“洗濯バサミ”が握られていた。
妹は“お仕置きの内容”を察したのか、涙目になりながら、震えている。
…だが、これ以上はわたしに頼れないと思っているのか、わたしに助けは求めず、必死に母と向き合っていた。
「これからりなへ“仕上げのお仕置き”をするけど、……お姉ちゃんも受けるの?」
「……う、うげますっ!」
…もはや、“条件反射”というべきか、何かを考える前に言葉が出ていた。
そのわたしの言葉に、妹は驚いたような表情で振り返る。
「お、おねえちゃんっ!?もういいよぉっ!!りなが全部受けるからっ!…だから、もう休んでてっ!!………お願いだからぁ…。」
優しい妹は、わたしの心配をしてくれているのか、涙を流しながら、怒鳴るようにお願いをする。
…だが、“皮肉にも”その様子を見て、わたしの意思はさらに強いものとなる。
そして、自分の体に鞭打つように、必死にテーブルから降りると、お立たせの姿勢となった。
「…お姉ちゃんは、大丈夫だから。……だから、この罰も、“半分こ”にしよ?」
「……グスッ…ごめんなさい。」
妹からの返答は“謝罪”だった。
…きっと、妹も怖かったのだろう。
ぎこちなかった手は、わたしのことを抱きしめる手に変わっていた。
「その様子だと、どんな罰を受けるのか、わかってるみたいね。…じゃあ、りなもお姉ちゃんと同じ姿勢になりなさい。」
「……はい。」
妹は、わたしから離れると、震えながら言われた姿勢となる。
母は、その様子を確認すると、わたし達の“大切なところ”を開き、敏感な部分を洗濯バサミで挟んだ。
「ひぃっ!?」
「い゛っだぁぁいぃっ!?」
すでに限界を迎えている“そこ”へ加えられる痛みは、わたし達の悲鳴を上げさせるには十分なものだった。
特に、変色しているわたしの方では、常に“ズキッ”とした、突き刺すような痛みが与えられ続ける。
「さあ、仕上げとして、この“洗濯バサミの部分”をそれぞれ5回ずつ、定規で叩いてあげます。……かなり辛いだろうけど、我慢しなさい。」
そういうと、母はまず、妹の洗濯バサミへ、“パチッ”と軽く定規を当てた。
バッヂン!
「きゃぁぁぁっ!!」
思いっきり定規が振り下ろされ、洗濯バサミに命中する。
痛々しいその光景は、当たった後の洗濯バサミの衝撃が“振動となり”揺れ続けることで、より長く痛みを与え続けているようだった。
バッヂン!
「だいぃぃっ!!」
今度はわたしに罰が与えられる。
挟まれるだけでも痛む“そこ”は、衝撃を加えられることで、より強い痛みへと変わっていく…。
「次は連続よ。…まずはりなから。」
“パチッ”
「ひっ!?」
“連続”の宣言を受け、妹の表情が強張る。
…だが、母は“そんなこと”などお構いなしに、定規を振り上げた。
バッヂン!バッヂン!バッヂィン!
「い゛っ!ああっ!あ゛んっ!!」
容赦なく振り下ろされる一撃に、妹の姿勢は崩れかける。
なんとか、そのまま姿勢を保つと、目からは大粒の涙が溢れ出していた。
『つ、次はわたしだ…。』
恐怖で怯えるわたし方へ、母は向き直ると、その口元が“にやり”と釣り上がった感じがした。
バッヂン!バッヂン!バッヂィィンッ!!
「あ゛あぁぁっ!ちぎれるぅっ!!」
妹よりも大きな音が、静まり返った部屋中へと響き渡った。
こんな衝撃を加えられても、洗濯バサミはしつこく粘り、振動によってさらに痛みを増幅させる。
引きちぎられるような痛みは、気が狂いそうになるほどに、わたしへと襲いかかってきた。
「ほら、あとは1発ずつよ。」
妹の方へ向き直った母は、洗濯バサミを“ペンッペンッ”と当てる。
「んっ!いっ!」
…もはや、“それだけ”でも痛むのであろう。
妹は、フルフルと震えながら、必死に次の衝撃に備えていた。
バッヂィンッ!!
「いっだぁぁぁいぃっ!!」
これまでよりも強い音が、妹の下半身から鳴り響く。
「……うぇぇーんっ!!…いだいぃっ!」
ついに堪えきれなくなってしまったのか、妹の涙が決壊する。
唯一の救いは、姿勢が保たれていることだろうか。
……きっと、これが崩れていたら、“初めからやり直し”だったであろうから。
“ペンッペンッ”
「ひいっ!?」
そんな妹に構うことなく、母はわたしの洗濯バサミへ定規を当てる。
“ズキッ…ズキィッ”
たったそれだけで、わたしの“大切なところ”は悲鳴を上げるように、痛みで警告を送ってくるのだった。
バッヂィィィンッ!!!
“バヂッ”
「ぎゃぁぁぁぁっ!!」
衝撃に耐えきれなかった洗濯バサミが、床に虚しく“ボトッ”と落ちた。
ついに“ちぎれてしまったのではないか”、という痛みが下半身を駆け巡る感覚を得る。
姿勢を保っているのが“奇跡”なほどの衝撃だったが、“血は流れていない”という事実が、わたしの中の最悪を免れていた。
「よく頑張ったわね。…もう許してあげるわ。お仕置きはこれで終了よ。」
「ん゛っ!」
妹の下半身にまだ残る“洗濯バサミ”を取ると、母はリビングを出て行った。
「洗面器と薬はここに置いておくから、後は、自分達でやりなさい。」
戻ってきた母がそういうと、今度はキッチンへと向かって行った。
…恐らく、夕飯の準備を始めるのだろう。
・
「りな…こっちおいで。」
わたしは手招きでりなを呼ぶと、“トコトコ”とりながやってくる。
「ソファに座っておまた開いて、まずは冷やすから。」
「っ!?…う、うん。わかった。」
この“姿勢”に恐怖感を持っているのか、一瞬顔が強張り、すぐに元に戻った。
『言い方も気をつけなきゃ…。』
“優しい言葉”にしようと意識すると、真っ赤に腫れ上がった“大切なところ”に、ゆっくりと、絞ったタオルをのせた。
「ひゃあっ!!」
「ごめん、りな…。少し我慢してね。」
「…うん。我慢する。」
素直な妹を抱き寄せながら、頭を撫でてあげる。
少し冷えてきた身体へ熱を与え合うと、妹も背中へ手を回してきた。
「……ごめんなさい。お姉ちゃん。……りなのせいで、お姉ちゃんも痛くなって…。」
耳元でささやかれる妹の声に、わたしはそっと周りを見回し、“誰もいない”ことを確認する。
「大丈夫だよ。“りなは悪くない”から。……だから、またいつでもお姉ちゃんを頼ってね。」
「……グスッ…。……お姉ちゃん、だいすき。」
「わたしも、りなが大好きだよ。」
わたしの胸のあたりに寄せられた妹の顔が、また熱くなるのがわかった。
そして、このまましばらく過ごし、“料理が自慢”の母から、夕飯の合図が出されるのだった…。
「完」
「ごめんなざぁいっ!!」
ビッヂィンッ!
「いだいっ!」
次のお仕置きが始まり、しばらく時間が経つ。
現在は、夕日が部屋全体を照らし出し、お仕置きされている“大切なところ”が、更に赤く腫れているような感覚を得る。
ビッヂィィンッ!!
「んん゛っ!!」
ビヂンッ!
「い゛っ!」
相変わらず、わたし達のお仕置きは続いており、まだまだ終わる気配はない。
また、しばらくしてから気づいたが、わたしよりも、妹の方が強く叩かれている気がする。
その明らかに厳しい音は、わたしの身体を震え上がらせると同時に、ある“感情”が芽生えてくるのがわかった。
「…お、お母さん…。」
「なに?……まさか、“やめたい”なんていうんじゃないでしょうね?」
その考えに至った母が、きつくわたしを睨みつけてくる。
恐ろしさから、わたしは“ごくりっ”と唾を飲み、手汗の滲んだ妹の手を、再び、強く握った。
「違うのっ!…ただ、わたしよりも、りなの方が強く叩かれてる気がして…。」
「……お、お姉ちゃん?」
隣では、わたしが、“やめたい”と言い出すと思っていたであろう妹が、予想外の言葉に困惑している。
「なんだ、そんなこと?……当たり前でしょ?悪いのはりななんだから。…で、それがどうしたの?」
…“予想通り”の反応に、わたしの意思は決まる。
「なら、わたしの方を強く叩いてっ。…そして、もっとりなの方を弱くして欲しいのっ!」
「お、お姉ちゃんっ!?」
「……別にいいけど、…なんでそこまでするの?……お姉ちゃんが痛いだけでしょ?」
「それは、…ただ、りなが辛い顔を見たくないだけなのっ!……わたしはどれだけ痛くてもいいからっ!だから、お願いっ!!」
“理解できない”
そんな感じの反応をした母は、「はぁ…。」とため息をつく。
「わかった。じゃあ、お姉ちゃんのほうを強く叩いてあげる。……もっと脚を広げなさい。その分、りなの方を軽くしてあげるから。」
「……わかった。」
わたしは、“くいっと”さらに脚を広げる。
恥ずかしいという感情も湧き上がるが、それ以上に、厳しいお仕置きに対する“恐怖感”が、溢れ出しそうだった。
ビヂンッ!
「ん゛っ!」
先に、りなの方へ、定規が当たる。
これまでで、1番軽めの音が響き、“少し安心した”自分がいた気がした。
ビッヂィィンッ!!
「あ゛あんっ!!」
…代わりに、宣告通り、厳しい衝撃が、わたしに打ち付けられる。
当たった部分を確認すると、そこは青痣が浮かび上がっており、見ただけで痛々しさが伝わってくるものだった。
ビヂンッ!
「いだいっ!」
ビッヂィィィン!!!
「ぎゃぁぁぁっ!!!」
先程よりも、厳しい音が、部屋の中に鳴り響く。
さらに、濃い痣が浮かび上がったそこは、“ジグジグ”と痛み、わたしへ悲鳴を上げているようだった。
「…グスッ……。いだいよぉ…。」
再度、わたしの目からは、涙が決壊する。
「うぇぇーんっ!…お姉ちゃん、ごめんなざいぃっ!!」
その様子を見ていた妹は、大泣きで、“懺悔”するように、わたしの手を握りしめた。
「…グスッ…、大丈夫だよ。……“りなは悪くない”んだから、安心して。」
「お、お姉ちゃん……。」
少しでも妹を落ち着かせようと、必死に言葉を絞り出す。
ビッヂィィィン!!!
「あ゛あぁぁぁぁっ!!」
「おねえちゃんっ!?」
「………それ、どういうこと?」
わたしの“大切なところ”が再度、悲鳴を上げる。
いきなりのことで、状況がわからない妹は、“あわあわ”と、わたしの様子を伺いながら、心配してくれているようだった。
「“りなが悪くない”って、どういうことかって聞いてるのっ!?」
ビッヂィィィン!!!
「いっだぁぁぁいぃっ!!」
……余程、気に召さなかったのだろうか。
冷たい顔をした母は、これまでよりもきつく、わたしを睨みつけた。
「…だ、だってっ!…おトイレに行かせなかったのは、お母さんでしょっ!?……だから、りなは悪くないのっ!!」
「お仕置き中にトイレに行きたがる、りなが悪いんでしょっ!?」
ビッヂィィィン!!!
「い゛いぃっ!!……それでもっ!!…ちょ、長時間お仕置きしてたのは、お母さんでしょっ!?」
「ママが悪いって言いたいのっ!?」
ビッヂィィィン!!!
「だいぃぃっ!!」
…恐らく、初めてであろう。
自分のお仕置きでも、一度も反抗したことのないわたしが、りなへのお仕置きに対して、反抗してしまった。
『ここで“折れてはいけない”』
という謎の“意思”が働き、負けじと母を睨みつける。
「…なに、その目は?……はぁ…。
……わかったわ。りなは悪くないんでしょ?…なら、残りのお仕置きは、お姉ちゃん、あんたが全部受けなさい?」
「っ!?………わかった。じゃあ、もうりなは許して?」
「お姉ちゃんが“ちゃんと”受けられたら許すって最初に言ったでしょ?……りな、あんたはそのままの姿勢で反省してなさい。」
「は、はいぃっ!?」
母に睨まれ、“びくっと”なった妹が、姿勢を戻す。
そして母は、すぐにわたしの方へ向き直る。
「…そのまま待ってなさい。」
そういうと、母はキッチンへ行き、コップ一杯に“並々とついだ水”を持ってくる。
“バシャッ”
「…つめたぃっ!?」
「……知ってる?濡れた肌へのお仕置きは、さらに痛みを強く感じるのよ?…“ママへ反抗した罰”には、ちょうどいいでしょ?」
腫れた肌にかけられた水が、熱を少しずつ覚ましていく。
むしろ、『少し気持ちいい』と思ってしまったくらいだ。
「さあ、お姉ちゃん、覚悟しなさい?…あと100回くらい、どれだけ泣き叫んでも、ちゃんと受け終わるまではやめないからね。」
「……はい。」
ビッヂィィィン!!!
「いぎゃぁぁぁっ!!」
……嘘でしょ?
それまでのお仕置きとは、比べ物にならないほどの痛みだった。
濡れた肌に当たる衝撃は、痛みを吸収し、鋭いもので刺されたような感覚が響き渡る。
「お姉ちゃん、まだ1回目よ?…誰が脚を閉じていいって言ったの?」
「…グスッ……。」
気がつくと、わたしは脚を閉じ、空いている左手で、叩かれた部分を必死にさすってしまっていた。
「いますぐ、脚を広げてその手をどけなさい。……じゃないと、この罰をりなに与えるわよ?」
「…っ!?」
“りな”の名前を出され、わたしは恐る恐る脚を広げる。
そして、手を離すと、そこは青紫色の痣となり、目を背けたいほどの有様になっていた。
ビッヂィィィン!!!
「あ゛ぁぁぁぁっ!!」
「ん゛っ!!」
再度、振り下ろされる鋭い痛みに、わたしは妹と繋いだ腕に力が入ってしまう。
…だが、そんなことを気にする余裕がないほどに、わたしは痛みにのたうち回っていた。
「お姉ちゃん、いい加減にしなさいっ!ちゃんとお仕置きを受けられないのっ!?」
「ママァッ!ごめんなざいっ!!りなが悪いんですっ!!りなに……、りなにお仕置きをしてぐださいっ!!」
「りなっ!黙ってなさいっ!!いまはお姉ちゃんにお仕置きしてるのっ!!……あんたには後で“仕上げ”してあげるから、そのまま待ってなさいっ!」
妹が大泣きしながら母へ訴えるが、当然の如く、その意見が通ることはない。
無力な妹のせめてもの“償い”か、強く手を握ってきてくれるのがわかった。
そんな、心が完全に折れてしまったわたしに向けられたのは、“妹の心配する瞳”と、怒りが治らない母の、高々と振り上げられた“定規”だった…。
・
「……グス…。いだいぃ…。……いだいよぉ…。」
それから、何度かやり直しをされ、結局終わったのは、日が完全に沈み、月の光が辺りを照らすころだった。
“パチッ”
電気をつけられて、目が眩む。
少しずつ慣れていた視界で“その場所”を見ると、初めからその色だったかのように変色していた。
「お、おねえちゃん…。」
妹はまた泣きそうな目で“まじまじ”と、わたしのお仕置き跡を見つめる。
だが、“触れる”だけでも激痛が走りそうなそこを見てためらっているのか、ぎこちなく手を伸ばしは閉じを繰り返していた。
「りな。“お漏らしの罰”は、お姉ちゃんが代わりに受けてくれたから、許してあげるわ。……でも、あんたにはまだ罰が残ってるわよ?」
「……はい。」
そんな母の手には、お仕置きの際に使われる“洗濯バサミ”が握られていた。
妹は“お仕置きの内容”を察したのか、涙目になりながら、震えている。
…だが、これ以上はわたしに頼れないと思っているのか、わたしに助けは求めず、必死に母と向き合っていた。
「これからりなへ“仕上げのお仕置き”をするけど、……お姉ちゃんも受けるの?」
「……う、うげますっ!」
…もはや、“条件反射”というべきか、何かを考える前に言葉が出ていた。
そのわたしの言葉に、妹は驚いたような表情で振り返る。
「お、おねえちゃんっ!?もういいよぉっ!!りなが全部受けるからっ!…だから、もう休んでてっ!!………お願いだからぁ…。」
優しい妹は、わたしの心配をしてくれているのか、涙を流しながら、怒鳴るようにお願いをする。
…だが、“皮肉にも”その様子を見て、わたしの意思はさらに強いものとなる。
そして、自分の体に鞭打つように、必死にテーブルから降りると、お立たせの姿勢となった。
「…お姉ちゃんは、大丈夫だから。……だから、この罰も、“半分こ”にしよ?」
「……グスッ…ごめんなさい。」
妹からの返答は“謝罪”だった。
…きっと、妹も怖かったのだろう。
ぎこちなかった手は、わたしのことを抱きしめる手に変わっていた。
「その様子だと、どんな罰を受けるのか、わかってるみたいね。…じゃあ、りなもお姉ちゃんと同じ姿勢になりなさい。」
「……はい。」
妹は、わたしから離れると、震えながら言われた姿勢となる。
母は、その様子を確認すると、わたし達の“大切なところ”を開き、敏感な部分を洗濯バサミで挟んだ。
「ひぃっ!?」
「い゛っだぁぁいぃっ!?」
すでに限界を迎えている“そこ”へ加えられる痛みは、わたし達の悲鳴を上げさせるには十分なものだった。
特に、変色しているわたしの方では、常に“ズキッ”とした、突き刺すような痛みが与えられ続ける。
「さあ、仕上げとして、この“洗濯バサミの部分”をそれぞれ5回ずつ、定規で叩いてあげます。……かなり辛いだろうけど、我慢しなさい。」
そういうと、母はまず、妹の洗濯バサミへ、“パチッ”と軽く定規を当てた。
バッヂン!
「きゃぁぁぁっ!!」
思いっきり定規が振り下ろされ、洗濯バサミに命中する。
痛々しいその光景は、当たった後の洗濯バサミの衝撃が“振動となり”揺れ続けることで、より長く痛みを与え続けているようだった。
バッヂン!
「だいぃぃっ!!」
今度はわたしに罰が与えられる。
挟まれるだけでも痛む“そこ”は、衝撃を加えられることで、より強い痛みへと変わっていく…。
「次は連続よ。…まずはりなから。」
“パチッ”
「ひっ!?」
“連続”の宣言を受け、妹の表情が強張る。
…だが、母は“そんなこと”などお構いなしに、定規を振り上げた。
バッヂン!バッヂン!バッヂィン!
「い゛っ!ああっ!あ゛んっ!!」
容赦なく振り下ろされる一撃に、妹の姿勢は崩れかける。
なんとか、そのまま姿勢を保つと、目からは大粒の涙が溢れ出していた。
『つ、次はわたしだ…。』
恐怖で怯えるわたし方へ、母は向き直ると、その口元が“にやり”と釣り上がった感じがした。
バッヂン!バッヂン!バッヂィィンッ!!
「あ゛あぁぁっ!ちぎれるぅっ!!」
妹よりも大きな音が、静まり返った部屋中へと響き渡った。
こんな衝撃を加えられても、洗濯バサミはしつこく粘り、振動によってさらに痛みを増幅させる。
引きちぎられるような痛みは、気が狂いそうになるほどに、わたしへと襲いかかってきた。
「ほら、あとは1発ずつよ。」
妹の方へ向き直った母は、洗濯バサミを“ペンッペンッ”と当てる。
「んっ!いっ!」
…もはや、“それだけ”でも痛むのであろう。
妹は、フルフルと震えながら、必死に次の衝撃に備えていた。
バッヂィンッ!!
「いっだぁぁぁいぃっ!!」
これまでよりも強い音が、妹の下半身から鳴り響く。
「……うぇぇーんっ!!…いだいぃっ!」
ついに堪えきれなくなってしまったのか、妹の涙が決壊する。
唯一の救いは、姿勢が保たれていることだろうか。
……きっと、これが崩れていたら、“初めからやり直し”だったであろうから。
“ペンッペンッ”
「ひいっ!?」
そんな妹に構うことなく、母はわたしの洗濯バサミへ定規を当てる。
“ズキッ…ズキィッ”
たったそれだけで、わたしの“大切なところ”は悲鳴を上げるように、痛みで警告を送ってくるのだった。
バッヂィィィンッ!!!
“バヂッ”
「ぎゃぁぁぁぁっ!!」
衝撃に耐えきれなかった洗濯バサミが、床に虚しく“ボトッ”と落ちた。
ついに“ちぎれてしまったのではないか”、という痛みが下半身を駆け巡る感覚を得る。
姿勢を保っているのが“奇跡”なほどの衝撃だったが、“血は流れていない”という事実が、わたしの中の最悪を免れていた。
「よく頑張ったわね。…もう許してあげるわ。お仕置きはこれで終了よ。」
「ん゛っ!」
妹の下半身にまだ残る“洗濯バサミ”を取ると、母はリビングを出て行った。
「洗面器と薬はここに置いておくから、後は、自分達でやりなさい。」
戻ってきた母がそういうと、今度はキッチンへと向かって行った。
…恐らく、夕飯の準備を始めるのだろう。
・
「りな…こっちおいで。」
わたしは手招きでりなを呼ぶと、“トコトコ”とりながやってくる。
「ソファに座っておまた開いて、まずは冷やすから。」
「っ!?…う、うん。わかった。」
この“姿勢”に恐怖感を持っているのか、一瞬顔が強張り、すぐに元に戻った。
『言い方も気をつけなきゃ…。』
“優しい言葉”にしようと意識すると、真っ赤に腫れ上がった“大切なところ”に、ゆっくりと、絞ったタオルをのせた。
「ひゃあっ!!」
「ごめん、りな…。少し我慢してね。」
「…うん。我慢する。」
素直な妹を抱き寄せながら、頭を撫でてあげる。
少し冷えてきた身体へ熱を与え合うと、妹も背中へ手を回してきた。
「……ごめんなさい。お姉ちゃん。……りなのせいで、お姉ちゃんも痛くなって…。」
耳元でささやかれる妹の声に、わたしはそっと周りを見回し、“誰もいない”ことを確認する。
「大丈夫だよ。“りなは悪くない”から。……だから、またいつでもお姉ちゃんを頼ってね。」
「……グスッ…。……お姉ちゃん、だいすき。」
「わたしも、りなが大好きだよ。」
わたしの胸のあたりに寄せられた妹の顔が、また熱くなるのがわかった。
そして、このまましばらく過ごし、“料理が自慢”の母から、夕飯の合図が出されるのだった…。
「完」
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる