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近所で評判の“明るい女の子”

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「ママ、いこっ!」

夏休みの朝。
わたしはママと近所の公園で遊ぶため、手を繋いで歩いていた。

外は朝からすでに暑く、34度を超えている。
ジリジリとしたアスファルトからの照り返しが、わたしの背中を汗で濡らしていた。

そんな中でも、わたしは常に“笑顔”でいなければならない。

…本当はエアコンの効いたお家で、ゆっくり寝てたいのに。

……でも、そんなことを言ったら“どうなる”か。

ママも暑いのか、わたしと繋ぐ手に手汗をかいているが、それを理由に手を離すことはない。

どこに行くにもおしゃれな服を着て、“笑顔”をわたしに向けて来た。

『はやくお家、かえりたいなぁ…』

笑顔の下にそんなことを考えながら、火傷しそうな足を一歩ずつ進めて行った。



しばらく歩いていると、目的地である公園が見えて来た。

…予想どおり、この暑さでは他の子供は1人もおらず、貸切状態だ。

公園に着いて早々、ママは木の屋根のあるベンチに座り、バックに入れていたミニ扇風機を顔に当て始める。

「ママはしばらくここで涼んでいるから、遊んで来なさい」

わたしはチラッと後ろを振り返る。

太陽の光をたっぷり浴びた遊具達。
…どう考えても、ここで涼んでいる方がまだマシだ。

「ママ…、わ、わたしも一緒に…」

「…遊んできなさい」

言いかけたところで、ママの声のトーンが下がる。

「…はい」

このトーンになった時、わたしに許された返事は一つしかない。

わたしはしぶしぶと誰もいない遊具の方へ歩き出した。

「…あつっ!?」

キュッ ジョロロロ

せめてもの救いに公園の隅にある蛇口を捻り、水を出す。

ゴクゴクゴク

熱を溜め込んだ蛇口からは、ぬるい水しか出てこなかった。

それから、お尻が焼けそうになる滑り台を数回滑り、握った部分がヒリヒリと痛み出すのを我慢しながらブランコに乗った。

…もちろん、全て“笑顔”で。

ベンチの方からこちら側は丸見えなので、笑顔を絶やせばすぐにバレる。

すでに全身汗だくの中でも、ママが一緒に遊ぶ気配は全くなかった。

…さて、残る遊具は一つ、“砂場”だ。

暑い砂が溜まっている様子は、前にテレビで見た“砂漠”に似た絶望感を感じる。
気のせいか、砂場の上の景色はゆらゆらと揺れているようだった。

『行きたくないなぁ…』

「ここなちゃん、おはよう」

「っ…」

ブランコに座りながら考えごとをしてる最中、不意に後ろから話しかけられる。

驚きながら後ろを振り向くと、近所に住むおばあちゃんがわたしに笑顔を向けていた。

「あ、あの…お、おはようございますっ!」

突然のことにわたしの頭はパニックを起こし、条件反射で挨拶をする。

「ここなちゃん大丈夫?顔色が悪いみたいだけど。」

「…だ、大丈夫ですっ!今日も元気ですっ!」

…まずい。
考えごとに夢中で、つい“笑顔”を作り忘れていた。

「おはようございます」

身体中から“嫌な汗”を流れる。
声のした方を見ると、ママがこちらに来ておばあちゃんに挨拶をしていた。

「あら、今日も親子でお出かけ?仲がいいのね」

「ありがとうございます」

おばあちゃんに見せる優しい笑顔に、わたしは“このこと”が見過ごされることに願う。



「じゃあ暑くなって来たので、今日は帰りますね」

「あら、少し話し込んじゃったわね。…ここなちゃん、またね」

「はいっ!」

しばらくおばあちゃんとのお話が済んだ後、帰宅の合図が出される。

相変わらず暑い中で手を繋いでいるが、ママはずっと笑顔のままだ。

少しでも機嫌を取ろうと、わたしはスキップでお家に帰った。



ガチャンッ

…ガチャッ

「…ここな」

玄関のドアと鍵を閉めた途端、ママの“笑顔”が消えた。

わたしをキツく睨みつける顔には、先ほどの“優しさ”は残っていなかった。

「…わかってるわね?」

「…はい」

「…じゃあ、部屋で“準備”しなさい」

「……わかりました」

…やっぱり、見過ごされてなかった。

わたしはそのままの足で自分の部屋に入ると、着ていた服を脱ぎ出す。

汗に濡れた服が肌に張り付き邪魔をする。
わたしだって本当は脱ぎたくないが、ママが部屋に来るまでに準備できなければ、もっと“恐ろしい目”に合うことはわかっていた。

急いでパンツも脱いで全裸になると、ベッドの上に四つん這いになる。

準備が間に合ったことにほっとした瞬間、部屋中に溜まった自分の汗の臭いに気づき、軽い不快感がわたしを襲った。

ガチャッ

それから10秒ほど経った後、怖い顔をしたママが、わたしの部屋に入ってくる。

汗に濡れたためか、おしゃれな服を脱ぎ、白いブラとパンツのみを着ていた。
スリムで透き通るような身体からは、汗が流れ出ている。

…その手には、お仕置きに使う“ケイン”が握られていた。

「…暑いわね」

ピッ

エアコンのスイッチを入れると、冷たい風がわたしのお尻に当たり、“ありえない部分”がスースーとする屈辱的な感覚を覚える。

2人分の汗の臭いが充満する室内には、エアコンの機械音が寂しく響いていた。

「…じゃあ、始めるわよ」

その合図を聞いた瞬間、わたしはギュッとベッドのシーツを握り締める。

バッヂィィンッ!!

「いっだぁぁいっ!?」

「さっき笑顔を崩していたでしょっ!ちゃんと見てたんだからねっ!」

太陽に当たった時とはまた違う“熱さ”が、わたしのお尻に浴びせられる。
1発で姿勢が崩れそうになるが、“追加罰”を恐れて必死に耐えた。

バッヂィィンッ!!

「ああ゛ぁぁっ!!」

「どうして“自分から”元気に挨拶ができないのっ!?」

バッヂィィンッ!!

「もっと“愛想よく”しなさいって、いつも言ってるでしょっ!?」

「ごめんなさ…」

バッヂィィンッ!!

「ごめんなざぃぃっ!!」

一切の手加減のない“ケイン打ち”に、わたしのお尻はすでに限界を迎えていた。



…昔のママはもっと優しかったのに。

……パパと別れてからは、周りの目ばっかり気にするようになり、その皺寄せでわたしのお尻が犠牲になっていた。

作り物の“笑顔”が日常になったのも、その日からだ。

『お願い、…“優しい”ママに戻って』

バッヂィィンッ!!

「っ…、ひぎいぃぃぃっ!?」

「聞いてるのっ!?“ここなのため”にお仕置きしてるのよっ!」

「ご、ごめんなさいっ!!はんせいじましたっ!ずっと“笑顔”でいますがらぁっ!?」

「当たり前でしょっ!今度笑顔を忘れたらどうなるか、このお尻でしっかりと勉強しなさいっ!!」

バッヂィィンッ!!バッヂィィンッ!!

「ああ゛ぁぁぁっ!?わがりまじだぁぁっ!!」

…。



…それからもわたしのケイン打ちは続いた。

……“笑顔”に取り憑かれたわたしの日常は、まだまだ始まったばかりだった。


「完」
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感想 3

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