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第51話 準決勝ユウヤ対リッちゃん

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「カリナさんがよく見てたアニメや、漫画だと……」

 この世界に来るまでにアニメや漫画、ゲームなんかで見た魔法を思い出す。
 大体が、爆発を起こしたり、色んな属性を使って相手を攻撃するという物が多かった記憶だ。

「さすがに、生身で受ける気にはならないなぁ……」

 身体強化(極限)があるから、ある程度は大丈夫だろうけど、相手は四天王のリッちゃん。
 強力な魔法を使うのは間違いないだろう。
 それをそのまま受ける、というのはちょっと気が引ける……というより危険な気がする。

「お、あれは……使えそうだ」

 どうしたものかと考え、テントを見回して目についたのは、木で作られた盾。
 確かラウンドシールド……って呼ばれてたかな。
 その丸い形に作られた木の盾を見て、良い事を思いついた。
 まぁ、魔法に対して必ずしも有効とは限らないけど、多少は対策になるだろう。

「フェイスツリー……ジンメンさん、使わせてもらいます」

 テントには、出場者が自由に使えるよう、剣や盾、槍や斧がそれぞれ置かれている。
 全て、フェイスツリーから作られた木製の物だ。
 フェイスツリーそのものを使って作られたからか、丈夫そうで、今までの戦いで色んな出場者が使っていたのを見たけど、傷一つ付く様子が無い。
 これなら、魔法にもある程度耐えられるだろう。

「おぉっと! アムド様、バハムー様の前に沈みました! さすがにこの体格差は覆せませんでした!」
「準決勝、勝ったのはバハムーさんか……」

 予想通り、と言えばそうなんだが……アムドさんも強そうだったから、どちらが勝ってもおかしくは無かったと思う。
 アムドさんの方は木剣だから、バハムーさんの硬そうな皮膚を貫けなかったのかもしれない。
 武器を使わなくとも、バハムーさんの方は力でねじ伏せられそうだしなぁ。
 ルールからして、アムドさんに不利だったのは否めないが、それでも準決勝まで進めたのは凄いと思う。
 ……ルール無しの全力で戦ったら、アムドさんとバハムーさん、どちらが強いんだろう……技でアムドさんなのかな?


「ユウヤ様、申し訳ありません。決勝で相まみえる事、かないませんでした」
「アムドさん……。相手はバハムーさんですからね……」

 控室に帰って来たアムドさんは申し訳なさそうに俺に謝って来るが、その姿を見ると、激戦だった事が窺える。
 鎧が本体のアムドさんなのだが、ところどころへこんだり、無くなったりしてるからな……大丈夫なんだろうか?

「それよりも、その体……大丈夫なんですか?」
「予想以上のダメージである事は間違いありませんが、問題ありません。夜にでもほとんど再生している事でしょう」

 へこんでいたり、無くなっている鎧の部分を撫でながら、アムドさんがなんて事の無いように言った。
 そんなにすぐに再生できるんだ……便利なんだなぁ……。

「準決勝第二試合、ユウヤさん、ステージへ……」
「わかりました」
「相手はリッちゃんですね。魔法が得意な種族です、お気をつけて……」
「はい、ありがとうございます」

 アムドさんにお礼を言って、控室を出てステージへと向かう。
 魔法……避けられるくらいのものだったらいいなぁ。


「さぁ、やって参りました準決勝第2試合! 先程の準決勝は四天王対四天王! 四天王の名に恥じぬ素晴らしい戦いを見せてくれました! そして第2試合は人間対四天王! 今回はどのような戦いを見せてくれるのでしょうか!?」

 アナウンさんの実況に煽られ、観客が盛り上がる。
 その盛り上がりを聞きながら、ステージへと上がる俺。
 向かいには、ふよふよと浮かんでるリッちゃんがいる。
 ……考えたら、浮いてるリッちゃんを場外に、なんてできそうにないから、ちょっと不利かもしれないな……。

「今大会唯一の人間、ユウヤ様! その快進撃は留まる事を知らず、遂に準決勝まで来ました! 対するは、我らが四天王! リッちゃん! リッチという種族を生かし、多彩な魔法で相手を追い詰め、勝ち進んで来ました! ユウヤ様は今まで魔法を使っておらず、おそらく使えないものとみます! 大してリッちゃんは豊富な魔法を使える猛者! これはユウヤ様に不利か!?」
「ここまで勝ち上がって来たのは見事ねぇ。でも、ここで私が勝ちを貰って行くわよぉ?」
「魔法を使う相手は初めてですが、何とか勝ってみせますよ」
「魔法を使うリッちゃん……ユウヤパパには不利か……」

 浮かんで俺を見るリッちゃんに、不敵な笑みを見せておく。
 魔法を主に使う相手だからって、気概では負けたくないからな。
 マリーちゃんもアナウンさんも、そして観客の皆も俺が不利だと思ってるようだ。
 事実、そうなんだけどな。

 まぁ、俺は素手だから、近付いて一撃しかできないだろう。
 リッちゃんの方は、俺を近寄らせないようにしながら、魔法を撃っていれば良い、と……。
 どう考えても不利だよなぁ……?

「さぁ、この試合がどうなるか……決勝に進むのはどちらなのか!?」
「準決勝第2試合、開始!」

 マリーちゃんの宣言で、俺とリッちゃんの対戦が始まる。

「先手必勝よ! アイスランス!」
「うぉ!」

 開始早々、リッちゃんが手をかざして放って来た氷の槍。
 これは魔界竜巻の時見たな。
 何とか、横に大きく飛ぶ事で避けられた。
 あ、観客席に……。

「おぉっと、リッちゃんが放った魔法を避けたユウヤ様! しかしその魔法は観客席に飛び……込まなかったぁ! 同じくマリー様の親として、ユウヤ様の奥様であるカリナ様が上空へと弾いたぁ!」
「こっちは任せて。観客には被害を出させないわよ」
「カリナさん……」

 俺が避けた氷の槍は、真っ直ぐ観客席へと飛び込もうとしていた。
 けど、その間にカリナさんが割り込んで、手で上空へと弾いてくれた。
 カリナさんも魔界竜巻へ行く途中、散々魔法を弾いていたから、慣れたんだろう。
 闘技大会が始まって、場外へ飛び出す魔法への対処を経験したのもあるんだろうけどな。

「さすがユウヤ様……この程度は楽に避けるわね。でも、これならどうかしら? アイスランス! ファイアランス!」
「2本!? それも氷と炎!」

 リッちゃんは、今度こそとばかりに俺へと連続で魔法を放つ。
 それは、青い氷の槍と、赤い炎の槍。
 左右から俺に迫って来るので、横へと避ける事ができない。
 ……それなら!

「ふっ! ぐぅ!」
「へぇー、そうやって防ぐのね……」
「盾が丈夫で助かった……」

 リッちゃんの放った魔法のうち、炎の槍を避けてやり過ごし、もう片方の氷の槍を持って来ていた木の盾で防いだ。
 盾に氷が張り付いているけど、俺自身には当たってないから無事だ。
 避けた炎の槍は、カリナさんが対処してくれるから、観客に被害も出ないだろうし、安心だな。

「おぉっと、ユウヤ様! 片方の魔法を避け、もう片方の魔法を盾でガード! 今まで盾を持たず、素手のみで戦って来たのに対し、今回は盾を持って来ています! これも、対魔法の作戦でしょうか!?」
「盾ねぇ……それでいつまでも防げるものじゃないわよぉ?」
「それはわかってるんですけどね。それでも、多少は役に立つでしょう?」
「そうね。でも、それもいつまでもつかしら……?」

 俺の体に当たるよりはマシだが、いつまでも盾で防いでばかりでもいられない。
 丈夫だからといっても、このままだといつかは押し切られてしまうかもしれないしな。
 さて、どうしたもんか……。

「ふふふ、いくわよぉ……アイシクル!」
「これは……くそっ!」

 リッちゃんが放って来た魔法はこれまでと違い、ステージの床を這うような氷。
 氷がこちらに向かいながら、各所で鋭い柱が突き出している……これは盾で防ぐわけにもいかないか。
 たまらず俺はジャンプして避け、即座にその場を離れた。
 しかし、リッちゃんはさらに魔法で追撃を加えて来た!


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