1,859 / 1,903
まずは東村の方から様子見をする
しおりを挟む「とにかく、あれとは違って私は借り物の力で魔物を創るしかなかったの。だから、生物としての理を無理矢理ねじげる事はできないわ。やってもせいぜいが、特徴の一部を強化、増幅させるとかね」
「えーっと、それはどういう?」
「……あまり思い出したくないけど、昨日見たデュラホースがいるでしょ?」
「う、うん」
ちょっと視線を外しながら、デュラホースと口に出すロジーナ。
本多央にお酒を飲んでいたわけじゃないと思うけど、酔ったような状態で考えて創ったとも言っていたから、ロジーナにとっては汚点のようなものであまり考えたくないんだろう。
「あれは基本が馬なの。馬は人以前に、肉を食べないでしょ?」
「まぁ、草食だね」
「そう。元になった、という程ではないけど、姿が似ている生物と生態は大きく変える事ができないの。で、馬は走るわ。その走る部分を強化、増幅してひたすらまっすぐ進むようにしたのがデュラホースなの。ただただ真っ直ぐ突き進むのみよ。まぁ、色々問題があって、真っ直ぐ走り続けた結果いずれ力尽きるのだけど。そもそも何も食べられないし」
「口とかないからね」
デュラホースは、首がない以外の形は馬その物だった……まぁ、体は馬よりも大きめで屈強にはなっていたと思うけど。
だから体のどっかに異形の口があるとかはなく、経口摂取で栄養補給する事ができないのは見た目の通りだってわけなんだろう。
「……例として少し間違っていたけど、とにかくデュラホースが何かを食べられるとしても、人を食べる事はないわ。襲う事はあるでしょうけど」
「えーっとつまり、魔物のはそれぞれの生態があるから、絶対に人を襲って食べるってわけじゃない?」
「えぇそうよ。人を襲う本能は、ほぼ全ての魔物に刷り込ませてあるわ。まぁ一部、人がいじった事でおかしくなったのか、リクに協力したうえ人を襲う事もないワイバーンとかもいるけど」
「まぁ、リーバー達はちょっと特殊なんだろうね……」
魔物ではあるけど、帝国の研究と実験で生み出されたとも言えるし。
以前大量に王城を襲ったワイバーンは、他の魔物と同じく人を襲うので間違いないし、理性的な感じは一切なかった。
まぁそもそもに、リーバーと出会う前は他のワイバーン達も、敵と認知した俺達を襲おうとしていたんだけどね……エルサが遊び半分でやった空中機動に翻弄されてはいたけども。
「だから何が言いたいかっていうと、街の方ならそれなりの防衛力があるでしょ? だから魔物の集団が向かっていていても少しは耐えられる。けど村はそうじゃない可能性が高い。そして魔物によっては、集団である事も加味すると、食料の確保のために動く事もあるってわけ」
「作物を食い荒らすため……か」
要は、肉食だけでなく草食な魔物もいるんだから、農作物を目当てに村の方へ向かう魔物の方が多いもしれないって事か。
同じ人がいる場所でも、食べ物の匂いか何かがする方、そして人が少なく襲いやすい方が、合理性だけでなく本能的にも向かいやすいとかもあるかもね。
「基本的には、姿が似ている、または近い他の生物のような生態、食性だと思っていればいいはずよ。強化と増幅が行き過ぎて、反転したような例外もいるし、全てを破壊する観念から雑食性が前面に出ている魔物も多いけどね」
雑食性を強くしたって言っていたのは多分、どんな物でも食べるなりなんなりで、それが破壊につながるから……という事かもしれない。
ともあれ食性に関してだけでなく、ロジーナの話を聞く限りでは生態としても、似ている姿の何かに近いようでもあるので、魔物の対策を講じる手段にもなりそうだから、覚えておこう。
レムレースみたいな、定まった形のない魔物は別だろうけど……。
まぁでもそうか、リーバー達は別物だとしても魔物が必ず人を最優先で襲うのなら、もっと多くの場所で危険度が高くなり、魔物と人との衝突が起こっているか。
街道沿いなど、人の気配が濃い場所などでは魔物が出没する可能性が下がったりなど、魔物側でもこちらに近付かないようにしているのもいるみたいだしね。
それは、人に近付かないようにする一部の動物の生態にも似ている気がした――。
「それじゃまずは、南東の村を目指すよエルサ」
「了解したのだわー」
一応念のため、街の近くは通るようにしつつ、まずは地図上でも俺達のいる場所から近いと思われる、南東の村へと向かう事にする。
昼食を終えて後片付けや少しの準備の後、再び大きくなったエルサの背中に皆で乗り込み、魔物の集団捜索に再出発した――。
「やっぱり、地図をあまり過信しないようにしないといけないね……」
「そうね。もう少し街と村は近いと見ていたんだけど」
エルサに乗って村を目指す中、遠目にようやくそれらしき建物が見えるようになってから、モニカさんと話す。
地図では徒歩でもすぐ到着するだろう距離に書かれていたのに、実際はエルサでも数十分程……ヘルサルとセンテの距離とそう大差ないくらい離れているのがわかった。
まぁ、街の方は迂回したため遠目にも見えないから、実際はもう少し離れているかもしれないけど。
地図自体、正確な測量を元にして書かれたのではない物のようだったから、こういう事もあるか。
「とりあえずは、村の方に何事もなさそうだが……」
「そうですね。村の東には、畑が広がっていますが、そちらにも魔物らしき物は見られません」
「うん。エルサ、どうかな?」
「ちょっと待つのだわー」
ソフィーとフィネさんに頷いて、エルサに探知魔法で魔物が近くにいないかを探ってもらう。
空から見下ろしているから、結構遠くまで見えるんだけど、やっぱり探知魔法の方が遠くまでわかるからね。
「向こうから、ゴブリンの群れが近付いているのだわ」
空中で体ごと方向を変え、東北方面を示すエルサ。
近付いているのはゴブリンらしいけど、それなら移動速度はそう速いわけじゃないし、遠目にも見えないくらいならかなり離れているんだろう。
「やっぱり、こっちに魔物が来ていたみたいだね。まぁ緊急性はあまりないだろうけど、でもロジーナの忠告に従って良かったかな」
「典型的な雑食の魔物ね」
ゴブリンはずる賢いから、人が多そうな街よりも村の方を目指すくらいの事はしそうではある。
「エルサ、ゴブリンの進む方向は?」
「村よりも少しズレているようなのだわ。このまままっすぐ進むなら、畑に向かっているのだわ」
「やっぱり、か」
「あと、少し数が多そうなのだわ。小さいのがわらわらと面倒なのだわー」
「数が多い……?」
「可能性としてだけど、他のゴブリンの集団と合流した可能性がありそうね。同種族であれば、集団行動を好むし、数が多ければ多い程大胆に行動始めるのがゴブリンだから」
エルサと俺の話を聞いて、モニカさんがそう言った。
確かに、ヘルサル防衛線の時の事を考えたら、ゴブリンなら他の集団……というか群れを吸収して、村などを襲うなんていうのもあり得るか――。
0
お気に入りに追加
2,153
あなたにおすすめの小説
森だった 確かに自宅近くで犬のお散歩してたのに。。ここ どこーーーー
ポチ
ファンタジー
何か 私的には好きな場所だけど
安全が確保されてたらの話だよそれは
犬のお散歩してたはずなのに
何故か寝ていた。。おばちゃんはどうすれば良いのか。。
何だか10歳になったっぽいし
あらら
初めて書くので拙いですがよろしくお願いします
あと、こうだったら良いなー
だらけなので、ご都合主義でしかありません。。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
目覚めれば異世界!ところ変われば!
秋吉美寿
ファンタジー
体育会系、武闘派女子高生の美羽は空手、柔道、弓道の有段者!女子からは頼られ男子たちからは男扱い!そんなたくましくもちょっぴり残念な彼女もじつはキラキラふわふわなお姫様に憧れる隠れ乙女だった。
ある日体調不良から歩道橋の階段を上から下までまっさかさま!
目覚めると自分はふわふわキラキラな憧れのお姫様…なにこれ!なんて素敵な夢かしら!と思っていたが何やらどうも夢ではないようで…。
公爵家の一人娘ルミアーナそれが目覚めた異なる世界でのもう一人の自分。
命を狙われてたり鬼将軍に恋をしたり、王太子に襲われそうになったり、この世界でもやっぱり大人しくなんてしてられそうにありません。
身体を鍛えて自分の身は自分で守ります!
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
喜んだらレベルとステータス引き継いで最初から~あなたの異世界召喚物語~
中島健一
ファンタジー
[ルールその1]喜んだら最初に召喚されたところまで戻る
[ルールその2]レベルとステータス、習得したスキル・魔法、アイテムは引き継いだ状態で戻る
[ルールその3]一度経験した喜びをもう一度経験しても戻ることはない
17歳高校生の南野ハルは突然、異世界へと召喚されてしまった。
剣と魔法のファンタジーが広がる世界
そこで懸命に生きようとするも喜びを満たすことで、初めに召喚された場所に戻ってしまう…レベルとステータスはそのままに
そんな中、敵対する勢力の魔の手がハルを襲う。力を持たなかったハルは次第に魔法やスキルを習得しレベルを上げ始める。初めは倒せなかった相手を前回の世界線で得た知識と魔法で倒していく。
すると世界は新たな顔を覗かせる。
この世界は何なのか、何故ステータスウィンドウがあるのか、何故自分は喜ぶと戻ってしまうのか、神ディータとは、或いは自分自身とは何者なのか。
これは主人公、南野ハルが自分自身を見つけ、どうすれば人は成長していくのか、どうすれば今の自分を越えることができるのかを学んでいく物語である。
なろうとカクヨムでも掲載してまぁす
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる