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全員集まっての報告会
しおりを挟む「成る程ね、そんな事が……」
大きなお風呂で体も心も選択した後は、部屋に戻りモニカさん達の帰りを待つ。
全員が揃ってから、夕食中とその食後に今日の出来事を皆と共有……まぁ主に、俺からララさんとのやり取りや、不審者の発見、爆発からの火事騒動、さらに姉さんの所に連行されて報告をした事などだったけど。
俺から話す事多過ぎない? と思ったけど、望んだわけではないのに色んな事が起きすぎで遭遇しすぎだよね。
ララさんとアメリさんに関しては、最初から予定にあった事だけど。
ともあれ、俺から不審者や爆発などの話を聞いて、深刻な表情になる皆。
規模に対して死者は少なかったとしても、犠牲者は出ているし建物の被害も深刻だから、そうなるのも無理はないか。
「レッタさん。レッタさんがいた頃の帝国はまだ人間を爆発させる研究を、完成させていなかったからわかる事は多くないかもしれませんけど……俺達が見つけた不審者みたいになるものなんですか?」
アルネにも確認してもらっていて、外部からの魔力が云々かんぬんでというのは聞いているけど、一応の確認だ。
レッタさんが知っていて、まだ判明していない事もあるかもしれないし。
「……おそらく、という事しか言えないわね。私は直接関わっていないから……でも、話に聞いた限りでは制御が難しいという事だったから、おそらくリクの発見した人物と、そう変わらないのだと思うわ」
「そうですか……制御というのは?」
「外から、魔物の核に魔力を注ぎ込んで復元するのと同じように、魔力を人間の体に注ぎ込むからよく反発が起こっていたらしいわ。まぁあのゴミクズがやっていた事と大きく変わらないわね、定着するかどうかってところよ」
「つまり、バランスを保つために苦労したと」
確かアルネとエルサが調べた限りでは、本来の魔力と外部の魔力がせめぎ合って、微妙なバランスで常に臨界点に近い状態を維持しているらしい。
そこに、多分だけど外からさらに魔力の刺激を与える事でバランスを崩し、大きな爆発を起こすと。
まぁ、例えるなら火薬の詰まった爆弾が魔力を注いだ人間で、導火線に火を付けるのが外からの魔力の刺激ってわけだね。
「あとはそうね……変に適合されても問題だから、ギリギリ魔力が自力で生成できる状態の人間を利用する、という話もあったかしら」
「それはどういう?」
「通常の人間だと、私が魔力誘導をしたように外部からの魔力が適合して、魔力量の増えた人間ができ上るわ。魔力誘導がなければ、成功例は数千人に一人とかそれくらいの低確率だけれど。でも、研究をするならそういった不確定の要因は避けたいでしょう?」
「まぁ……多分?」
研究して、ちゃんとした成果として示すには限りなく低いとはいえ、確率に頼る事を考えていてはいけない、というのでいいだろうか。
「それと、さっきも言ったけど制御のもう一つの側面として、狙った場所で意図的に爆発させる必要があった。だから、生きているかどうか怪しい状態の人間を使うといいらしいわ。まぁ、意図せず爆発するようなら、研究としては完成したとは言えないし使えないでしょう」
「それは確かに」
いつ爆発するかわからない状態だと、目的の場所に配置するまでに爆発してしまうかもしれないし、下手をしたら自分達の目の前でドカン! なんて事もあり得るからね。
危険すぎる。
「だからそれもあって、死んでいる状態に近い人間を使っている……とは聞いた事があるわ。私が知っているのはそれくらいね」
「そうですか……ありがとうございます」
アルネはほとんど死んでいるような状態と言っていたけど、間違っていなかったんだろう。
そして、そんな状態の人を探すだけでなく、帝国はおそらくどこかから連れて来た人をそのような状態にして使っている可能性もある。
ますます、帝国を野放しにできない理由ができた。
「私からもいい、リクさん?」
「うん、大丈夫だけど、どうしたのモニカさん?」
モニカさんが手を挙げて主張、何か聞きたい事か言いたい事があるみたいだ。
「その、リクさんが駆け付けたっていう大きな爆発の前に、小さな爆発があったのよね?」
「うん、そうだね」
小さな爆発は、不審者を連れて行った隔離場所の家で、ほんの少しだけ揺れたような気がした瞬間の事だろう。
それがきっかけで、大きな爆発を引き起こしたんだと思う……エルサが外から魔力が不審者に、と言って結界を張ったタイミングを考えるとほぼ間違いないはずだ。
「話を聞いていると、扱いづらいようだから……大きな爆発と小さな爆発で、使い分ける事ってできるのかしら?」
「言われてみると……」
微妙なバランスでせめぎ合っている魔力、爆発の規模とかって細かく調整ができるようには思えない。
外部からの魔力が弱ければ、本来の魔力に取り込まれてしまい、逆に外部の魔力が強ければ爆発する事なく魔力を注ぎ込まれた人が……言い方はあれだけど、壊れてしまうだけのはず。
だったらもしかして、爆発の規模というか威力は調整できない?
「魔力を注ぎ込まれた人間の、本来持てる魔力によって威力が変わる……というような事は聞いた覚えがあるわ。ただそれでも、大きく差はないみたいな話だったけど」
モニカさんの疑問を受けて、レッタさんが答えてくれる。
やっぱり、爆発の調整とかはほぼできないと考えて良さそうだ。
「って事は、小さな爆発の方は人がってわけじゃないんですかね?」
「確かな事はわからないわ。ただそれをきっかけにするのであれば、調整して操作した魔力でなければ不可能だと思うわ」
「魔力を操作、ですか……」
確かにただ爆発するだけでは、魔力を撒き散らす事はできるだろうけど、確実に離れた場所の人間を爆発させる事なんてできないか。
だとすると、小さな爆発の方は別の何かである可能性はある、と。
「まぁまだ調べている途中なんでしょ? はっきりした事はわからなくても、仕方ないわ」
「そう、ですね。――ヒルダさん、とりあえず爆発現場の調査をする際には、別件というか大きな爆発と小さな爆発では別の何かがあるかも、というのを念頭に入れて調べて欲しい、と伝えてくれますか?」
「はい、畏まりました」
部屋にいるヒルダさんにお願いすると、すぐに退室して伝えに行ってくれた。
少なくとも小さな爆発の方には何かがあるかもしれないし、これで入念に調べてくれるはずだ。
なんとなく、離れた場所で起こった事や、爆発の規模が違う事に理由がある気がする。
それに、今は少しでも情報が欲しいからね。
対処法、という程ではないけど爆発する人を、アルネやカイツさんが開発した魔法具で判別できるようになっても、あの不審者の状態を考えればまともに話はできそうにないし。
別で調べて情報を得た方がいいと思う。
というより、痕跡を調べて得られる情報という意味では、小さな爆発をした現場の方が色々と情報が得られる可能性はありそうだし。
まぁ、爆発して一つとはいえ建物が吹っ飛んでいるのだから、何も残っていない可能性もあるかもしれないけど――。
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