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知らず知らずに漏れ出す魔力

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「これまで関わって来た人達にも関係しているんですけど……」

 そう前置きして、俺がこの世界に来てから撒かれている種のようなもの、戦争を有利に進めるための方法を話していく。
 話していく中で、段々と姉さん以外の人達の震えが大きくなって行っている気がするけど……多分気のせいだろう、うん。

「た、確かにリクの言う通りになれば、我が国に有利……どころではなく、多少帝国が想定を上回る手段があろうと、圧倒できるだろう。そうか……リクはそこまでの決意をしているのだな」
「はい。人が爆発する。さらにそれによって多くの人が巻き込まれる……あれを見て、ただ対処するように動いているだけじゃいけないんだって、思わされました」

 実際には決心や決意を固めるきっかけにはなったけど、考え自体はレッタさんに言われた事が大きい。
 センテで俺が意識を乗っ取られる直前、レッタさんはロジーナが俺に捕まったとか、色々と勘違いしての言葉だったんだろうけど、これまでずっと加減する事などを考えていた俺には大きな衝撃を与えたんだ。
 本人は多分、俺に突き刺さる言葉だとは思っていないだろうし、なんなら覚えていないだろうけど。

「わかった。リクがそうまで言うのであれば、我々も協力する事を約束する。そもそもが、我が国を有利にしてくれる事でもあるし、戦争で被る被害は頭が痛い事ばかりだ。それを減らそうとしているのだから、こちらに断る考えはない」
「ありがとうございます」

 俺が考えている事の一部は、国の協力も必要だから、姉さんが頷いてくれるのはありがたい。
 俺一人でどう頑張ろうと、有利にする方法をどれだけ考えても、国が受け入れてくれなければどうしようもないからね。

「ふぅ……とりあえずは、話は終わりだな。いや、終わりにしよう」
「そうですね。俺も、口に出す事で色々まとまりましたし」

 疲れた様子で、大きく息を吐く姉さん。
 あれ? 俺が決意を話しただけで、どうしてそこまで濃い疲労が見えるのだろう?
 確かに色々と話したけど……話をしている時間そのものは、爆発や火事の報告より短いくらいだったのになぁ。

「この場でまとめながら、決意を口に出すのはとんでもない度胸だと思うが……はぁ、少し疲れたな。リクはもう少し、自分を抑えるようにする方がいいかもしれんぞ?」
「え?」

 自分を抑える、と不思議な事を言われて首を傾げる俺に、ずっと頭にくっ付いたままおとなしくしていたエルサの前足が、ビタンビタンと額を叩く。
 痛いから止めて欲しいなぁ。

「リク、さっきからずっと魔力が渦巻いているのだわ。よく自分の周りを見てみるのだわ」
「魔力が……? って、ほんとだ……」

 そのエルサから注意されて、ふと自分の体の周りを見てみると……。
 可視化した魔力が、俺を包んでいた。
 循環するように俺の体の周囲を回っているから、確かにエルサが言った通り渦巻いているように見えるかもしれない。

「いつからこんな……?」
「リクが、決意だとかを話し始めたくらいからなのだわ。ズズズって音が聞こえそうなくらい、はっきりと見える魔力がリクの体から押し出されていたのだわ。こう、ニュニュッと」

 何そのところてんみたいな魔力の出方……ズズズなのかニュニュッとなのかはっきりして欲しい。
 ともかく、滲み出ていた魔力が可視化されていた、いや最初から可視化されているくらい濃く大量の魔力が、体からにじみ出ていたって事か。
 ……ゲームのラスボスみたいだ、俺自身の事だけど。
 というかまさか、そうだったから姉さんはともかく、宰相さんや大臣さんの顔色が悪かったり、体震えていたりしたのかな? 俺が怯えさせちゃってたんだ。

「えーっと、なんかすみません……?」

 気が抜けたというか、決意などを話し終えて張っていた気が緩んだのだろう、自分でもちょっと驚く程気の抜けた謝罪をしてしまった。

「はぁ……それだけ、リクの中で許しがたい事だったのだろう。この場での事だが、不問にする……というかあれを見せられて何かするなんてこっちにできるわけないでしょ……」
「……陛下?」
「んんっ! なんでもない、気にするな」
「え、あ、はぁ……」

 溜め息を吐いた姉さんが、後半小声で何かを呟いた気がするけど……まぁいいか。

「ともかくだ、リクの話はわかった。今後頼む事が増えそうだが……全面的に協力してくれるという事で良いのだな?」
「はい。できる事とできない事はあると思いますけど、帝国に対するためだったら全力で」
「リクが協力を約束してくれるだけでも、心強い。なら早速で悪いが……先程のリクの話を聞いていて、帝国に対して一つ有効な案があるのだ。聞いてくれるか? なに、頼み事というより意見を聞きたい、という方が近い事柄だ」
「なんでしょうか?」

 姉さんの方でも、帝国に対して有利になるような案が何かあるらしい。
 当然ながら、帝国と同じような方向性の企みは断るつもりだけど、姉さんがそんな事をしない、考えないというのはわかっている。

「正確には、リクにというよりもその後ろにいる者達に、なのだがな」
「後ろ……アマリーラさんとリネルトさんですか?」
「うむ」

 姉さんに言われてチラリと後ろを見ると、尻尾や耳をピンと立てて毛を逆立てているアマリーラさんとリネルトさん。
 ……もしかして、さっきの俺の話の途中で漏れていた魔力を見てそうなってる……とかかな?
 姉さん達に対して警戒をしている風でもないし……大臣さん達よりも俺に近くて目の前で見ていたようなものだし。
 ずっと姉さん達の方を見て話していたから気付かなかった、悪い事しちゃったかな?

「……アマリーラとリネルト。獣人でありながら、我が国の事情に巻き込んで済まないとは思うが……あと、そろそろこちらを見て欲しいのだが?」
「はっ!? も、申し訳ありません、リク様!」
「……魔物の大群を見るよりも、明確な恐怖を感じた気がしましてぇ。申し訳ありません」
「いやまぁ、俺もちょっとやりすぎちゃったというか、自分でも気づかなかった事ですけど、すみません」

 姉さんに声をかけられて、ようやく戻って来るアマリーラさんとリネルトさん。
 二人共、尻尾や耳を立てたまま目を見開いて、虚空を見ていたからね……話を全部聞いていたのかも怪しいかもしれない。
 あと、リネルトさんは姉さん達に向かって頭を下げていたけど、アマリーラさん、謝るなら俺にではなく姉さん達にした方がいいと思いますよ?

 姉さん達は気にしていない様子で、苦笑しているけど……いつの間にか、アマリーラさんの性格などは把握されていて皆に浸透しているのかも。
 リネルトさんの言った、魔物の大群よりというのは気にしないでおく。

「魔物の大群よりもか。我々もそれをよく実感しているが……いいか?」
「アマリーラさん達に意見を聞きたいそうです」
「私達に……? なんでしょうか?」

 やっぱり、姉さんが案があると言った事はほぼ聞いていなかったみたいで、訝し気にしていたので、小声で教えておいた――。


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