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使用許可の到着

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「とりあえずはエルサの結界で安全が確保されたのは安心だね。あ、でも……完全に覆っているって事は、内部の空気が……」

 魔力の波動とエルサは言っていた。
 外部からの魔力なら、それを遮断するには空気穴すら結界には空けられていないはずだ。
 何をしても反応を返さないけど、一応小さく呼吸はしているから空気がないと危険だけど……。

「外からの魔力を完全に遮断する必要があったのだわ。それも徐々に弱まっているようだからだわ。しばらくは持つから大丈夫なのだわ。多分、このまま維持をせずに自然と結界が解かれるくらいでちょうど良さそうなのだわ」
「ちゃんと考えているなら、大丈夫そうだね」
「そんな事より、来たのだわ。外に出るのだわー」
「ん?」

 結界の内部にいる不審者が、酸欠になる事はないとわかって安心していると、エルサが前足で額を軽く叩く。
 何が来たのか、と聞きながらとりあえず家の外へと向かう。
 アマリーラさんや、兵士さんの一人も一緒だ。

 外に出るまでにエルサに聞いたけど、リネルトさんが戻って来たらしい……多分、探知魔法を使い続けていたから、家に近付いて来るのがわかったんだろう。
 広げた魔力は、自然の魔力と同じように空気が通れる場所があれば、家の外などの事もわかるからね。

「リク様、お待たせいたしました! 陛下よりのお言葉を預かって参りました、隊長!」
「お待たせしましたぁ」

 外に出ると、リネルトさんが一人の兵士さんを連れていた。
 その兵士さんが俺の前で敬礼し、横にいた今まで話をしてくれていた兵士さんにも敬礼……リネルトさんがちょっと間延びした声で続く。
 ……って、隊長?

「あぁ、お前が来たのか。リク様、この者は私の部下で……」

 俺を案内してくれた方の兵士さんによると、リネルトさんが連れて来たのは王軍の兵士さん……なのは見ればわかるけど。
 隊長と呼ばれた、俺の横にいて話をしていた兵士さんは中隊長だとか。
 マルクスさんが前まで中隊長だったけど、その人はマルクスさんが大隊長に出世してから繰り上げで中隊長になったらしい。
 まぁ他にも中隊長さんというのはいるみたいだけどね。

 帝国の破壊工作と思われる爆発騒ぎがあってから、城下町に巡回を欠かさず行っていて、偶然俺達というか不審者を発見した後、リネルトさんとアメリさんに呼びに行ってもらった時、近くにいたらしい。
 地下通路の事を知っていたし、家を封鎖している鎖の鍵も持っていたうえ、俺を見ても特に驚かなかったからそれなりの地位にいる人かなとは思っていたけど……中隊長さんだったのか。
 ちなみに、軍部でもある程度昇格すると王城への出入りが多くなるため、王城内で俺を見かける事が増えるから驚かれる事なく、話しをしてくれるようになるんだよね。
 訓練場にいる兵士さんでも、あまり俺を見かける事がない人には、結構緊張されたり驚かれたりする事も多々あって……って、これは今どうでもいいかな。

「それで、地下の使用許可はどうなった?」
「はっ、女王陛下のお言葉をそのままお伝えいたします! 『リクが関わっているのなら、問題ない。自由に使え』との事です!」
「……俺の事、信用しすぎじゃないかなぁ?」

 伝言を受けた兵士さんの言葉を聞いて、思わず呟く。
 姉さんからの信頼は嬉しいと思うけどね。
 俺ではなく、エルサのおかげで爆発する可能性は減ったわけだし、問題を起こさないように気を付けよう。

「それから……」
「ん?」

 何やら伝言はまだ終わっていなかったらしく、俺に向き直った兵士さんが緊張気味に敬礼。

「『リクは、戻ってきたら詳細を必ず伝えるように』との事でした」
「あー、はい。わかりました」

 ある程度、アメリさんやリネルトさんから事情を聞いているとは思うけど、近くで見てエルサとも話しているのは俺だからね。
 許可を求めたのもそうだし、直接話しはしておかないといけないだろう。
 話しだけなら、いつも部屋でリラックスモードの姉さんとしているし、そこに問題は何もないので、頷いておく。

「そういえば、アメリさんはどうしたんですか?」

 兵士さんからの伝言を受けた後、一緒に許可を求めに行ったはずのアメリさんがいない事を聞いた。

「アメリさんは、危険もあるかもなので王城に残りましたぁ。これ以上何かあるとは思えないですけどぉ、足手まといになりたくないって言っていましたよぉ」

 間延びした声で教えてくれるリネルトさん。

「確かに、アメリさんを危険から守るとか、ちょっと気を遣うかもしれませんからね」

 足手まといとは思わないけど、何かがあった時に非戦闘員のアメリさんがいたら、危険に晒してしまう可能性があるから。

「それとぉ、これが地下に入るための鍵でぇ……」 

 そう言って、リネルトさんが取りだしたのは輪っかにジャラジャラと付いた鍵の束。
 それら全てが、地下に入る扉を開けるための鍵らしい。
 全部で……いくつだろう。
 十は軽く超えていると思うけど、それだけ厳重に多くの強固な扉があるのなら、脱走不可能な地下牢というのもさらに納得だ。

「あと、もう少しで来ると思いますけどぉ……」
「ん?」
「はぁ、はぁ……久しぶりに外に出たから、なまっているな……リク!」
「アルネ!?」

 リネルトさんが通りの方を振り返って何か気にしている様子に首を傾げていると、遠くからアルネが駆けて来た。
 ずっと研究室にこもって、研究に没頭していると思っていたけど……なんでこんなところに……?

「ふぅ……はぁ。たまには外に出ないといけないな。っと、久しぶりだなリク」
「うん、久しぶり」

 アルネと会うのは、センテに行く前だったからもう二か月以上顔を合わせていなかったっけ。
 俺が王城に戻っても、研究のために出て来なかったし……まぁ、体を壊さない程度に熱中できているのなら、アルネも楽しいだろうしそれで良かったんだけどね。
 久しぶりに会えて嬉しいのは、友人だから当然として。

「しばらく体を動かしていなかったから、ここに来るまででも結構だったな……」

 走ってきて、乱れていた息を整えるアルネ。
 研究室にこもっていて、運動を全然していなかったから多少走っただけでも、疲れてしまうんだろう……以前はそんな事なかったのに。
 俺がセンテにいた間、ずっと研究室にこもっていたなんて事はさすがにないとは思うけど、でもあるねならありそうなんだよねぇ。

「ははは、まぁずっと研究室にこもりっきりだったからね。カイツさんとは?」
「あぁ、新しい研究を持ってきて、よくやっているよ。まぁあいつは王城内でも迷ってしまうので、誰かが近くにいて見ていないといけないが……」
「相変わらずだなぁ……」

 カイツさんのとんでもない方向音痴は、王城内でも健在のようだ。
 まぁ王城内には人が多いし、それなりにエルフが来てはいても目立つから、困ったことにはならないとは思うけどね。

「それにしても、アルネまでなんでここに?」
「ここ最近、カイツが持ち込んだ研究でかかりきりでな。なんでも、爆発を起こす人間を調べるための魔法具を作ると言うじゃないか。そのための方策、助言も携えて来た」


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