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外部からより内部で固める考えを

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 ヒルダさんから視線を向けられたミラルカさんは、それに気づいて体をビクッと大きく震わせていたけど、それはともかく。
 ミラルカさんを冒険者としてスカウトした事までは、さすがにヒルダさんや姉さんの思惑通りではなかったみたいだね。
 本来なら、三人くらいを事務員みたいな形で雇う事を想定していたのかもしれない。
 当初の予想より、クランの規模が大きくなりそうだから三人でも足りないくらいだろうし、それこそ場合によっては、ここにいる八人全員をって事も考えていたりした可能性もあるか。

「さっきヒルダさんも言っていたように、本人が一番望む形で……望んでいるかな? と思う範囲で考えましたから」
「さすがはリク様です。陛下は八人全員をそちらに、と予想していましたが外れましたね」
「ははは……さすがにそれは」

 もしかしたらそうかも? と考えていたら本当にそんな予想をしていたのか姉さん……。
 いくら俺でも、王城で雇った形の八人全員を引き抜くなんて豪胆な事はできないよ。
 ちなみに、後で聞いた話だけどヒルダさんは三人と予想していたみたいで、そのままズバリに近いんだけど、ミラルカさんが冒険者としてという事なのでちょっとズレていたとの事だ。

 少しズルいけど、だからこそヒルダさんは俺やモニカさんに、ミラルカさんとナラテリアさん、カヤさんの三人に付いて詳しく教えてくれたんだろう。
 結構な策略家かもしれない。

「それとですが……少々お耳を拝借」
「はい?」

 再び、ミラルカさん達をそのままに、俺とモニカさんに内緒話を持ち掛けるヒルダさん。
 さっきみたいに場所を移動してという程ではない。
 また八人の女性に関して何かあるのかな? と思ったけど今度は違う内容だった。

「統括ギルドマスターのマティルデ様も、そちらの事は考えていたようで。ギルド職員を貸し出すよう考えているみたいです。ですが、マティルデ様は信頼できる人物と考えますが、その貸し出す職員まで全てが信頼できるとはわかりません」
「まぁ、それは確かに……」

 俺達が考えていなかった事を、マティルデさんは考えていたのか……さすがに、冒険者ギルドのしかも統括ギルドマスターという大きめの組織をまとめている人なだけはあるってところかな。
 マティルデさんの事だから、信頼のおけない人を貸し出したりはしないだろうけど、俺達が信頼できるか、本当に信頼に足る人物かはまた別だからね。
 あくまで貸し出された人達は、俺が作るクランの所属ではなく冒険者ギルドの職員さんだし。

「あくまで別組織の人物ですので、それだけで内部を固めるのはまずいとの考えもあります。ですので、リク様の近くにはできる限り信頼できる者を置いた方がいいと、陛下はお考えです」
「成る程……」

 帝国との事で、少し内通者に対して敏感になっているのかもしれないけど……国と冒険者ギルドとの協力関係がそれなりに上手くいっているとはいっても、全幅の信頼を置いているというわけでもないのかもしれない。
 ともかく、貸し出された職員さんと自分で選んで雇った人員では、色々と違うって事だね。
 まぁ今回選んで雇う可能性のある人達は、まだクランの目的などを話して承諾してくれるか、というのもあるけど、そもそもに姉さんやヒルダさんが送り込んだとも考えられる……。
 内通や監視するためにとかではないとは思う。

 基本的に俺が王城にいる時は、姉さんが部屋に来、皆と一緒に雑談するくらいだし。
 今回は助けた女性八人の希望と、姉さんやヒルダさんの心配から、俺達に気付かせるためというタイミングがあってそう仕向けたんだろうね。
 何はともあれ、まだ二人だし人数は足りないだろうから、他の人を雇う事など俺が探す事なんかも考えないとなぁ……。

「ではとりあえず、リク様からお話のあった三人は後々詳細を。また残りの五人に関してはある程度希望に沿える形でという事でよろしいでしょうか?」
「はい。まぁ五人がそのまま希望して、それからモニカさん達のお世話係が増えすぎ、という事にならなければですけど」
「そちらは問題ありません。リク様方の人数も順調に増えておりますので……では」

 そう言って、ヒルダさんは八人の女性に一言二言伝えた後解散になる。
 この後色々と話し合いたいだろうと思われる八人の女性を残して、俺達はもとの部屋に戻る……その前に。

「ミラルカさん、ナラテリアさん、カヤさん。それからえーっと、ヴァルニアさん、エッダさん、オクアファさん、テレジーヌさん、エレアさん。もう一度、皆さんを助けられた良かったです。これから、よろしくお願いしますね」

 と、改めて八人に向き直ってお辞儀をする俺。
 こういうのは、なんとなくちゃんと伝えておかないとなって思う。
 横柄にじゃあよろしく、というだけで済ませられないのは性分なのかな?

「は、はい! リク様のお近くにいられるだけで光栄です!! また、助けて頂いてありがとうございました!!」 
「「「「「ありがとうございました!!」」」」」
「はい、それじゃあまた……」

 俺以上に深々と、この部屋に入った時と同じように頭を下げる八人の女性達に苦笑して、モニカさんやヒルダさんと部屋を出る。
 廊下に出て、パタンと扉が閉まった瞬間……中から黄色い歓声みたいなのが少し聞こえた。

「……少し、扉というか壁が薄いのかもしれませんね」

 いや、王城の壁は分厚く、本来ならちょっとした声くらいは外に漏れる事はないんだけど……さすがに八人全員が大きく歓声を上げたっぽいから、廊下にまで聞こえてしまったんだろう。
 
「お恥ずかしい……後日、改めてあの者達には厳しく言っておきましょう」
「あーいえいえ。怒ったり叱ったりはしなくても……我慢できなかったんでしょうし」

 この程度の事であの人達がヒルダさんに厳しく言われるのは、なんだかかわいそうだからね。
 王城の使用人として教育されていたんだろうし、そういう意味ではヒルダさんくらい厳しくても、当然なのかもしれないけど……。

「まぁ、憧れのリク様にあんな事を言われてしまったらねぇ」
「モニカさんまで、様付けなんて止めてよ……」
「あらそう? でも少し疲れたわ。勝手に警戒して、気を張っていただけなんだけど……」
「警戒はともかく、俺もちょっと疲れたね。考えていなかったのが悪いんだけど、ものすごく頭を使った気がするよ」

 あの場で急に考えた事だったからね……実際は、時間をもらってゆっくり考える事も出来たのかもしれないけど。
 でも、自分の今後がどうなるのかとやきもきさせるよりは、良かったんじゃないかと思う。

「それにしても、リクさんは本当にリクさんよね?」
「えっと、それは一体どういう……? 俺は俺で当たり前だと思うけど……」

 廊下を歩きながら、なんとなくホッとしているような複雑なような、よくわからない表情のモニカさんの言葉の意味がよくわからず、どういう事かと聞き返す。
 センテの時みたいに意識が乗っ取られたわけではないし、そもそもこれまでの話からの脈絡があまりないような……?


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