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事情説明と居残りリク

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「とにかく、アマリーラさん。特別と言えば確かに特別なのかもしれませんけど……アマリーラさんが考えているような関係ではありませんから」
「そ、そうなのですか……? ですが、アテトリア王国の女王陛下は聡明で美しい女性という評判であり、ここ数年の発展を見れば将来は名君と称されるであろう方。この国のみならず、世界的な英雄と言えるリク様にも相応しいかと思ったのですが……それにお二人を見ていると、並々ならぬ関係性と感じられます」
「あらあら、随分と褒められているわね私。どうしましょうかしら……?」

 姉さんの評判ってそんなに高いんだ……国の発展とか名君とか、女王様としての政治に関して俺にはよくわからないけど、確かに悪い評判ってあまり聞かないかな。
 俺にとっては、ちょっと困る事もあるけどだいじな姉さん、というくらいなんだけどね……まぁそれが、並々ならぬ関係性をアマリーラさんに感じさせる一因かもしれないけど。
 ただ、アマリーラさんに持ち上げられて、口に手を当てておほほ笑いをしている姉さんがちょっとウザい。
 それはともかく……。

「世界的な英雄って……俺なんて、この国で英雄と呼ばれているだけで、他の国に行けばそこらの冒険者と変わらないですよ?」

 そう言った俺に対し、アマリーラさん以外の皆は首を振って何やら言いたげだけど、そちらは置いておく事にする。
 どうせ、リクはわかっていない的な話になるだけだからね。

「陛下と俺は、まぁ確かに特別な関係かもしれませんけど……アマリーラさんが考えているのとは違って、以前ユノ達の話をした際にも話した……」
「えー、もう種明かしするの?」

 アマリーラさんに事情を説明していく……俺が異世界から来た存在だって事は、ユノが創造神だって話をした時にしたけど、それも含めて姉さんとはそちらで姉弟だった事などだ。
 少し残念そうに口を尖らせる姉さんは放っておく。
 とりあえず、姉さんは後でみっちりヒルダさんに叱られるといいと思う。
 もう眉や瞼を動かす事なく、鉄面皮となったヒルダさんは、背後に何かゴゴゴゴゴ……という不穏な気配を背負っているから。

 リラックスしすぎというか、人が多くなったうえで女王としての体面的なものが、崩れすぎているからだろうなぁ……。
 あ、ちなみにだけど、エフライムの時みたいに俺がこの国の王族的な勘違いをしないように、姉さんが生まれ変わって記憶を引き継いでいるだけで、血筋は一般家庭でしかないというのも補足しておいた。
 今以上にアマリーラさんに畏まられるなんて御免だからね……今でも過剰なくらいなのに。
 あくまで姉さんの前世が、俺と血の繋がった姉だったというだけで、俺自身に特別な血が流れているわけではないからね。

「そ、そういう事だったのですか……いささか、私の理解が及ばない部分はありましたが……リク様、申し訳ありません。妙な勘繰りを……」
「いえ、まぁ場合によってはそう見られる事もあるって、教えられ気分ですし、謝る程の事ではありませんから」

 俺や姉さんの話を聞いて、恥じ入るようにしながら大きく頭を下げるアマリーラさん。
 とはいえ事情を知らない人からすると、俺の部屋にいる時の姉さんや俺との接し方を見る限りでは、親しすぎるように見えてしまうかもしれないなぁ。
 だからって、姉さんと事務的な会話で終始するなんて事はするつもりはないけど……そうしたら、姉さんが拗ねてもっと厄介になりそうだし、俺も嫌だからね。
 そんなこんなで、アマリーラさんやリネルトさんなど事情を知らない人への、姉さんと俺に関する説明を終えて、その後は今日倒した魔物の話などをして夜も更けて行った。

 モニカさん達も結構遅くまで部屋にいたけど、以前までなら宿に戻るために少し早めに部屋を出るんだけど、今は王城に部屋が用意されているため、そちらを使うから遅くまでいても問題ない。
 まぁ、高級宿以上の部屋になるため、さすがに一人一部屋は逆に落ち着かないと、モニカさん、ソフィー、フィネさんは一部屋を一緒に使う事にしたみたいだけどね。
 エルサと一緒で、前は時折ユノも一緒だったけど……ヒルダさんというお世話してくれる侍女さんがいて、ほぼ一人で部屋を使っている俺はと思ったのは内緒だ。
 ……もう少し遠慮とかした方がいいのかな?

 ちなみに料理人として連れて来たカーリンさんは、一晩客室に泊った後は腕が錆びないようにと言う意味もあり、修業がてら王城の料理人さんの所でお世話になる事が決まっている。
 さすがに一般の飲食店で出す料理と、女王である姉さんや貴族に出す事もある王城の料理では、色々と勝手が違うとは思うけど、これも勉強だと意気込んでいた。
 一応、クランができるまでは城下町のどこかのお店で働かせてもらえれば、と思っていたらしいし、ちょうどいいと俺や姉さんの紹介付きだ。

 寝泊まりに関しては、女性の料理人さんと親しくなって、その人としばらく一緒に過ごすようだ。
 料理に対する意気込みは、さすが実家のお店を飛び出してヘルサルに来ただけの事はあるってところだろうね――。


 ――翌日、午前は訓練場で兵士さんが訓練をする傍ら、俺やモニカさん達がエアラハールさんによる指導の下、訓練をこなす。
 昼食後の午後は、昨日と同じく実践訓練も兼ねて魔物の集団を討伐しに行く、となったんだけど……。

「俺が居残りなのは、なんでだろう?」

 俺とエルサ、ロジーナとユノ……それからレッタさんもロジーナに言われて王城に残り、訓練場に来ていた。
 レッタさんは、ロジーナがここにいるなら他には行かないというだけだけど。
 ちなみアマリーラさんもレッタさんと同じく、俺が残るならと王城に残ろうとしたんだけど、エアラハールさんとリネルトさんに連れて行かれた……一応、モニカさん達の訓練を手伝う事になっているからね。
 名目上とはいえ、アマリーラさん達は俺の護衛だけど、王城にいる限り必要はないし。

「昨日も言ったでしょ。ユノと話して、リクに伝えておくというか、これからの指針を言っておかないといけないから」
「これからの指針……って、俺の訓練の事でいいんだよね?」
「そうよ。単純な剣の技術なんかは、ちょっとした助言はできてもあの爺さんに任せておけば良さそうだけど、他の事はね。リクはちょっと……いえ、大分おかしいから。人間の枠に収まらないし」
「おかしいって言われると、ちょっと悲しいけど。でも少しは自覚しているから仕方ないか……はぁ」

 どうやら、魔力を意識させた理由なども含めて、俺に話があるかららしい。
 色々と自覚して来ているから、人間の枠に収まらないいうのは間違いないのはわかっているけど、面と向かっておかしいと言われるとちょっと傷付く。
 あるよね、自覚しているけど他人から言われると傷付くような事って。

「でも、エルサはモニカさん達と一緒で良かったんじゃない? その方がモニカさん達も助かるだろうし」

 ロジーナが、俺の頭にくっついたまま昼食後の満腹感でウトウトしているエルサにも、残るように言ったからここにいるんだけど……。
 でも、モニカさん達と一緒の方がもしもの時に安全で俺も安心だったんだけど、何かそれにも理由があるのだろうか?

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