1,734 / 1,903
人数が多い程女性のお風呂は長いのかも
しおりを挟む「ふい~、なのだわ」
「はふ~。お風呂に浸かると、ついつい大きく息が漏れるよね~」
エルサを洗い終わって湯船にプカプカ浮かんでご満悦な様子を眺めながら、俺自身も浸かって大きく息を吐く。
今回、エルサは直接魔物と戦わず空を飛んでいるだけだったから、特に汚れている程ではないんだけど、お風呂はお気に入りの一つみたいだからね。
毎日しっかり洗っても大丈夫なのかと、少し心配になった事もあったけど……問題ないどころからむしろモフモフ度が増している気もするので、今日も最高で至高のモフモフを維持するために頑張ろう。
エルサを洗うのは苦労と言う程ではなく、頑張らないといけない事でもないけど。
しばらくお風呂に浸かっていると、遅れてワイバーンに乗って魔物と戦った兵士さん達も入って来た。
さっき話した兵士さんもだ。
そりゃ、戦闘を終えた後だし体が汚れちゃっててもおかしくないよね。
返り血とかは鎧がカバーしてくれるとしても、中は汗をかくだろうし……パレードの時全身鎧を着させてもらったけど、動くとかなり暑いんだよね。
兵士さんも大浴場に来るのは、王城にいる人なら誰でも使えるから不思議じゃないけど、俺よりかなり後だったのは、ワイバーン達を労ったりお世話したり……あとは、戦闘の報告などをしていたためらしい。
報告とかは当然として、ワイバーンとも仲良くやれているようで良かった。
「はぁ、いいお湯でした……ってところかな」
「気持ち良かったのだわー」
「おかえりなさいませ、リク様」
大浴場を出て、満足そうなエルサと一緒に部屋に戻る。
先に大浴場に行ったモニカさん達がいる……と思ったけど、迎えてくれたのはヒルダさんとくつろぎながらお茶をズズズ……と音を立てて飲んでいるエアラハールさんだけだった。
皆はまだお風呂から出てきていないのか。
兵士さんと話したり、エルサを洗ったりもして結構時間が経っていたし、俺自身カラスの行水みたいに入浴時間が短いわけでもないはずなんだけど……女性のお風呂は長いものだから、仕方ないのかな。
長い髪とか、洗うの大変そうだし。
「モニカ様方は、一度この部屋に戻って来られましたが、その際ちょうどリリーフラワーでしたか。リク様が連れて来られた冒険者の方々が訪ねて来られまして。ついでにと大浴場へ行かれました」
「あぁ、ルギネさん達も」
大人数になったから、さらに時間がかかっているのかもしれないね。
ちなみにルギネさん達は俺が連れてきたとはいえ、一応部外者となっているから王城までは来れてもこの部屋までは来れなかったらしい。
まぁ俺の知り合いだからと、誰でも通していたらお城としてのセキュリティーが心配になるから仕方ない。
訪ねてきているという話を聞いて、モニカさん達が迎えに行ったついでに許可を取って大浴場へ、という事らしい。
「リリフラワーの皆は、城下町で宿を取っているんでしたよね?」
「はい、そのように聞いております。モニカ様方と同じ宿をマティルデ様が紹介したようですが、別の宿を選んだと。なんでも、自分達には合わないからとか」
「急に豪奢な宿を用意されたら、躊躇する気持ちもわかるのう。ワシも同じじゃて」
「……エアラハールさんは、気にせず王城に泊っているみたいですけど」
モニカさん達がこれまで泊っていた宿は、城下町の中でも王城近くで貴族御用達の高級宿……センテで俺達に用意されたような宿だから、なれないルギネさん達は遠慮したんだろう。
王城の部屋を宛がわれた俺や、同じ高級宿を用意されたモニカさん達も、最初は遠慮していたけどあの時は断ろうなんて余裕はなかったからなぁ。
俺の場合は特に、姉さんと再会して気付いたら今の部屋を使わせてもらう事になっていたし……。
それに対して、エアラハールさんはヴェンツェルさんに呼ばれて王城に来た時から、特に躊躇したり遠慮したりするような様子はなかった。
「ワシだって図太く、当然とばかりに王城の部屋を使っているわけではないぞ? ただ伊達に年は食っておらんというだけの事じゃ。Aランクの冒険者としても長かったからの、それなりの経験もあったのもある」
Aランクとなると、貴族からの指名依頼もあったりして、それなりにいい宿を使う機会とかもあったんだろう。
危険は当然高まるけど、報酬も高い依頼も受けられるようになるしね。
ヴェンツェルさんとの関係があるかはわからないけど、王城に入る事ももしかしたら過去にあったのかも。
「リク様、エルサ様をお預かりします」
「あぁ、はい。よろしくお願いします」
「良きにはからえなのだわー」
「こらこら、お世話してくれるんだからそんなに偉そうにするんじゃないぞエルサ」
お風呂上りでまだ完全に毛が乾いていないエルサに気付いたのか、抱いていた俺からヒルダさんが率先して引き受けてくれる。
どこのお貴族様だよと思いながら、一応エルサに注意……気分良さそうだから、冗談を言っているだけだろう。
水気はしっかり拭き取っているけど、やっぱりそれだけでは完全に乾かせないからね。
ドライヤーもどきの魔法が使えないから、今はなんらかの方法で風を送るもしくは、風がない状態で乾くまで櫛などで毛が乾くまで梳かすんだけど、それをヒルダさんがやってくれるってわけだ。
ヒルダさんも、俺と同じくエルサのモフモフが損なわれないように……というわけではなく、お世話してくれるってだけだと思う。
とりあえずエルサの方はいいとして、俺の方も風邪を引かないように気を付けながらヒルダさんが淹れてくれていた、温かいお茶を飲んでくつろぐ。
エアラハールさんとも、ちょっとした話をしながら過ごしていると、エルサがヒルダさんのテクニックでモッフモフの毛になってテーブルの上で「そろそろお腹が空いたのだわ……」なんて言いながらゴロゴロしていたくらいに、モニカさん達がお風呂から上がったようだった。
ルギネさん達は宿に戻ったらしく、モニカさん達だけだったけど……お風呂に入りに王城に来たわけじゃないと思うけど、ルギネさん達はどんな用があったんだろう?
それはともかく、お風呂上りで上気した頬や少しだけ湿っている髪など、妙な色気を感じて視線が自然とモニカさんにばかり向かってしまう。
センテでは食堂で食事しながら話す事が多かったし、お風呂はその後で別々の部屋で就寝だったため、久々にお風呂上がりのモニカさんを見たけど……。
意識するようになったのもあってか、視線を無理矢理外しても気付いたら追いかけるようにモニカさんを見ていたり……本人や皆に気付かれてしまうんじゃないかとドキドキした。
……ドキドキしたのは、それだけじゃないかもしれないけど――。
「はぁ~、満足満足なのだわ~。このまま寝たいのだわ~」
「食べてすぐゴロゴロ……というか寝ると、牛になるぞエルサ」
「牛は美味しいのだわー」
満足するくらい食べたのに、牛と聞いてすぐ食べる発想が出て来るとは……。
それはともかく、皆がお風呂から上がった後は夕食の時間。
会議やら何やらで、日中は忙しい姉さんも加わっての夕食を終えてのひと時、満腹感からかテーブルの上でゴロゴロしているエルサだけでなく、なんとなく部屋の皆が緩んだ空気を醸し出していた――。
0
お気に入りに追加
2,153
あなたにおすすめの小説
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる