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昼食後はエルサに乗って王都の外へ

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「訓練ばかりにもかまけていられないからの。まぁこれも訓練とも言えるが……」

 昼食後、大きくなったエルサに乗って王都の外を飛ぶ中、ぽつりと呟くエアラアハールさん。
 対帝国の準備、王都周辺に点在する魔物の集団、人間を使った爆破行為など、色々な事が重なっているため俺達も訓練だけをしていればいいというわけではない。
 全部対帝国と言えばそうなんだけどね。
 まずは手っ取り早く、王都周辺に点在する魔物の集団の殲滅をマティルデさんから依頼された。

 俺達もそうするつもりだったからちょうどいい。
 ちなみに食事中には、ルギネさん達リリーフラワーに関する話や、俺が作るクランなどの話をマティルデさんとしていたんだけどその流れでね。
 あと、丸投げと言われても仕方ないけどルギネさん達やクランに関する部分は、マティルデさんに任せている。
 クラン用の建物などは、今すぐに用意できないのはわかっているし、王都内での破壊工作のせいですぐには取り掛かれないから、やれる事がほとんどないからというのもあるけども。

「こうして見ると、こっちには結構な数の魔物がいるなぁ」
「そうね。でも、センテで見た魔物と比べたら……」
「あれは、遠くの地すら見えないくらい、魔物がひしめき合っていたからな。あれこそ悪夢と言えるだろう」
「リク様の功績が大きいとはいえ、結局なんとなかったのですからソフィーの言う悪夢は過言なのかもしれませんが……」

 王都から少しだけ離れた西南方面。
 そこの上空……百から二百メートルくらいの高さで見下ろしながら観察しながら、モニカさん達と話す。
 人がいたとしたら、何とか形がわかるくらいだろうか? 高さだけでなく距離もあるから魔物の集団を細かく見分ける事はできないけど、数多く点在しているのがわかった。
 十や二十ではきかない数だけど、それでもセンテの周囲をひしめき合っていた魔物と戦った経験がある俺達……というかモニカさん達は、冷静にそれらを見ているようだね。

 まぁ、広範囲に地面が見えない程魔物が密集している光景なんて、見ないで済むならその方がいいのかもしれないけど。
 ともあれ魔物の集団は、遠くからでははっきりと種族などが判別できるほどではないけど、俺達が王都に戻る際に遭遇した時と同じく、それぞれが単一の魔物で構成されているようだ。
 一つの集団に数十はいそうな大きなものから、数体程度の小さい集団もあるように見える。
 あと、全てが別の魔物ではなく、同じ種類の魔物も別の集団としてあるようだ。

 集団を群れとして考えると、同一種族だとしても別の群れになるのもわからなくもない。
 人間だって、国、街、村などさらに小さい集団だと数人程度の集団というか、班を作ったりするからね。
 特段それがおかしい事ではないだろう。

「でも、これまでの帝国に関連する魔物達は、同種族だけでなく別種族も一緒に行動していた……というか、標的に対して向かっていたと思うんだけど……」
「それだけ、向こうにも余裕がないのよ。私がいなくなったせい、と思う程自分が重宝されていたと思い上がるつもりはないけど、それも一つの要因でしょうね」
「あとナンバーズ……じゃなかった、ツァーレン隊だったかしら。あれが全ていなくなっているのも大きいわね。要は、管理する人間が少ないのよ。下っ端は無理やりにでも力で従わせられるし、それは国単位なら簡単にできるけど、信頼……しているかはともかく、任せられる能力のある人間は少ないってね」
「成る程……」

 つまり、まとめ役がいないって事で考えればいいのか。
 まぁ帝国内部まで行けば別だろうけど、アテトリア王国のそれも深い王都周辺とまでなると、帝国を離れてまで魔物をまとめられる人物がいないってところだろう。
 各地で行われている破壊工作は、魔物を使うのとはまた別の部署? でいいのかな、管轄とかだろうし。

 特にレッタさんは、多少離れていても魔力誘導ができるためそれが抜けた穴は大きいと思う。
 本人は手段だっただけで、帝国に貢献していたというのはあまり考えたくないだろうけど。
 
「要は、帝国はただ魔物を放っただけ……という事でいいの?」
「大体その認識でいいと思うわ。もしかしたら、何かしらの命令を出されている魔物もいるかもしれないけど、その余裕があるのは少数でしょうね。ある意味では、向こうも本気だとも取れるけど」
「アテトリア王国への侵略に対し、本腰を入れているってわけですね」

 モニカさんの問いに、ロジーナを撫でながら答えるレッタさん。
 人間そのものを使う破壊工作に、魔物の集団の放逐……と言っていいのか。
 ともかく、これまでもそうだったけど、今もこんな事をしていて侵略意思がないとは思えないし、本気でやり始めたという所なんだろう。
 これまでは、例のクズ皇帝が帝位についていなかったからできる事も限られていたんだろうし……それでもとんでもない事をやっていたわけだけども。

 でもまぁ、そのおかげと言っていいのか、ツァーレン隊と呼ばれるツヴァイなどの魔力貸与された人達がクズ皇帝の傍を離れ、強大な魔物を消費したりもしているから、戦力というか工作手段は削れているのは間違いないよね。
 これまであった事を、帝国との開戦後の正面衝突をしている時に起きたり、同時に足並みそろえて行動していれば、いかに大きなアテトリア王国だってひとたまりもなかっただろうし。
 俺もエルサも、体は一つで全てを同時に解決するなんて無理だしね。
 クズ皇帝は力で従わせるやり方みたいで、向こうではあまり信頼とかはされていないようだし、レッタさんやロジーナのように、勝手に行動したり想定外の事もあったんだろうけど。

「とにかく、さっさとあの魔物の集団をなんとかしないといけないね。西南方面、クレメン子爵領とかとの街道も分断されている状態だし」
「そうね」

 魔物の集団は、薄っすらと見えるような見えないような? くらいの遠くにある、以前クレメン子爵領に行くとき通った、ロータ君の父親の仇だった野盗のいた森近くまで及んでいる。
 森の中には、宿場町とまでは言わないけど休憩所のような物が作られていたはずだけど、魔物が集団で森の近くにいるため街道が分断されているような状況だ。
 まぁ、かなり遠回りをすれば王都とクレメン子爵領との行き来はできるだろうから、完全に隔離されたとまでは言い難いけど、不便な事には変わりない。

 このままだと、クレメン子爵領やその周辺との連携も取りづらいし、邪魔な魔物は全て駆逐するに限るよね。
 以前からいるような魔物はともかく、帝国が放ってほとんど本能に任せるままにしている魔物達は。

「そうじゃの。街道が分断されれば人も物も滞る。続けばこちらに不利になるばかりじゃ。ついでに、訓練に利用させてもらおうかの」
「魔物討伐を訓練に、というエアラハールさんもあれですよね……実戦じゃないですか」

 エアラハールさんの訓練、俺ではなく主にモニカさん達の方だけど。
 それはまず王都周辺にいる魔物の集団を討伐する事から始まるらしい。
 特に魔物の集団が多く点在する西南……つまり帝国方面でだ。
 集団の距離もあまり離れておらず、派手に戦うと別の集団を刺激して乱戦に突入しそうではあるけど、それもエアラハールさんは織り込み済みらしい――。


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