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とりあえず話はまとまった模様
しおりを挟むロジーナから危険と言われた段階でそれくらいは覚悟していたし、できれば避けたい危険であっても選ばない選択肢はない。
俺のせいで他の多くの人達に危険が及んでしまう、という方が俺にとってはよっぽど耐え難い……モニカさんとかね。
こういうの、虎穴に入らずんば虎子を得ずっていうんだっけ?
「うん、俺にはよくわからないけど……魂が消滅する可能性があるとしても、問題ないよ。いや、問題はあるかもしれないけど」
「……影響は多岐に渡るのだけど、まぁいいわ。脅すつもりじゃないけど、魂が消滅するかどうかはリク次第と言ったけれど、実際にそうなるかはかなり低い可能性だし」
「要は、俺が頑張ればいいって事だね」
俺次第であるなら、頑張れば頑張るだけその可能性を減らせると考えればいいはず。
なら、これまでと変わらない……とりあえず頑張ってみるってところかな。
「頑張ったくらいでどうにかなる事でも……いえ、リクはそういう人間よね。人間なのかどうか怪しいけど」
「いやいや待って、俺はれっきとした人間だよ?」
さすがに魔力量とかで色々言われて来たけど、それは疑惑の目を向けられると心外だ。
人間離れしている、とは俺も自覚しているところだけど、体の構造とかそういうのはちゃんと人間のはずだし、別の何かなんて事はないはず。
……ちゃんと人間、だよね俺?
「じゃあ、私はちょっとこの首を傾げてばかりの役立たずと話しがあるから。一応期待して待っていなさい、というのが私の性質としては正しいのかしら? ――レッタ、行くわよ」
「私は役立たずじゃないの! 訂正するの!」
「はい、ロジーナ様」
「は、はぁ……」
魂が消滅する可能性がある何かを期待して、というのはどうすればいいのかわからないけど……それは確かに破壊神らしい物言いなのかも? と思いつつ、レッタさんを連れてユノの抗議を聞き流すロジーナを見送った。
でもどこに行くんだろう? 何か話があるみたいだけど……この訓練場は兵士さんも含めて多くの人がいるし、あまり聞かれたくない話っぽいのに。
と思ってロジーナ達を見ていたら、訓練場を出て行った。
あ、城に用意された部屋に行くのかも……一応、レッタさんもいる事だしというわけで、城に部屋が用意されている。
レッタさんがいると言うのは、完全に信用したわけではない元帝国の人間というのもあって、城下町の宿などに止まらせたりする程の自由はさすがに与えられない、という判断からだ。
まぁ、これまで城にいる時は俺の部屋で寝ていたユノもそちらの部屋に行く事になって、一応の監視となっているけど。
あと、部屋の等級としてはあまり良くないとか姉さんは言っていたっけ。
俺は見ていないけど、ユノと一緒に行ったモニカさん達の話によると、高級宿と大差ないとか。
高級宿とほとんど同じくらいなら、十分過ぎるくらいの部屋だよね……王城にある寝泊まりできる部屋なんだから、それなりにいい部屋なのは当然か。
そう考えている俺の部屋は、高級宿よりいい部屋なんだろうけど。
十人前後の人が集まっても、全然狭くなった気がしないくらい大きな部屋で、センテで宛がわれた宿の部屋が二つくらい入りそうなくらい広い。
さらによくわからないけど調度品も整っている気がするし、そもそもお世話役のヒルダさん使う部屋が隣接されていたし、お風呂なんかもあるからね。
「まぁ、あっちはとりあえず待っておけばいいんだろうね。何を話すのかわからないけど……さて、モニカさん達の方は、と……お、ちょうど終わったところかな?」
一人で呟きながら、モニカさんやエアラハールさん達の方を見ると、ちょうど向こうも話しとかが終わったようだった。
そのまま訓練に入るのかな? と思っていたら、全員でこちらに向かっている……アマリーラさんやリネルトさんの尻尾が激しく振られているね。
「リクの方は、万事上手く話ができたかの?」
「上手く、かはわかりませんが協力はしてくれるようです。ただ、最初に考えていたのとは違う協力の仕方みたいで……」
俺のすぐ後ろに来て、何故か大きく鼻を鳴らして胸を張っているアマリーラさんと、それを牽制する意味合いもありそうで、すぐ隣に来たモニカさんはともかくとして、エアラハールさんにロジーナ達と話した事を説明。
ただ魂の消滅、とかの部分はとりあえず伏せておいた
なんとなく、近くにモニカさん達がいる時に話したいと思えなかったからね……何故かは、自分でもよくわからないけど。
心配をかけてしまうと思ったからだろうか?
「ふむ。ユノやロジーナとは、ワシから擦り合わせをしておいた方が良いかものう。どういう協力をするのか、いまいちリクもわかっていないようじゃし」
「すみません」
「なに、事情を知っていればロジーナが通常の方法で協力するわけではない、というのはわかるからの。ワシはどちらかと言うとモニカ達の方に重点を置くつもりじゃが、リクを放っておくわけでもない。そこらの話はする必要があるじゃろうて」
モニカさんあっちの方がメインとはいえ、俺の事もちゃんと見てくれると言ってくれるエアラハールさんは頼もしい。
これで、女性と見たらとりあえず手を伸ばす癖がなかったら、もっと尊敬できるのになぁ。
「……なんじゃ、何か変な事を考えておらんか?」
「い、いえ。何も……」
内心で考えていただけなのに、エアラハールさんからはジト目をされた。
さっきロジーナにも怪しまれたし、俺って結構考えている事が顔に出るタイプなのかな? 今更かもしれないけど。
ともあれ、一応俺やモニカさん達の話はそれぞれでまとまったので、昼食までの間に現状の俺達をエアラハールさんに見てもらうため、少しだけ訓練をした。
モニカさん、ソフィー、フィネさんは三人で交代しつつ模擬戦……に、アマリーラさんとリネルトさんが途中で参加しながら、同じく訓練場にいる兵士さん達を沸かせる。
モニカさんやソフィーは実力的にBランク相当はあるのは確実だろうと思っていたし、言われていたけど、さすがAランク相当の実力者と言うべきか、アマリーラさんもしくはリネルトさんは軽々といなしていた。
それも三人対アマリーラさんかリネルトさんのどちらか一人、というのでも変わらずだ。
リネルトさんは攻撃せず回避に専念していたけど、モニカさん達の攻撃は一切当たらないし、アマリーラさんは大剣で豪快に戦う姿が目に焼き付いているけど、それだけでなく細かい技術もしっかりしているようで、受け流したて軽く反撃をしたりと、三人がかりでも全然かなわなかったのが印象的だ。
エアラハールさんはそんなモニカさん達を見つつ、何やら考えている様子……多分、これから先の訓練内容などを考えていたんだろう。
それから俺は……そんなモニカさん達を見つつ、ひとりで寂しく剣の素振りをしていた。
こうなった理由は、ユノやロジーナがいないしモニカさん達はアマリーラさんと模擬戦をしているで、俺の相手をしてくれる人がいなかったからだ。
兵士さん達にはあちらでの訓練があるしね。
……ちょっとどころではない疎外感を感じたけど、時折エルサを撫でて癒された――。
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