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皆の様子を窺いながら休憩へ
しおりを挟む「最初はね。でもすぐに慣れたわ。体が沈み込むように受け止めてくれるエルサちゃんと、リクさんを信頼していたから。落とされる事はないだろうって」
そうだったのか……。
「そりゃまぁ、落とすなんて事は絶対しないけど……」
モニカさんの言葉に驚きつつ、座っているエルサの背中の毛……というかモフモフを撫でる。
ワイバーンと比べても一際どころか大分大きいエルサは、体の大きさに合わせるようにそのモフモフな毛も伸びているため、座った体の腰くらいまでは軽々と埋まるような包まれるような感じだ。
さらに、多少揺れたり落ちるかという不安があったとしても、エルサの毛を掴んでいれば抜ける事がないため安定もさせられる。
何度か乗れば、大体の人はそれで慣れてくれるのかもしれない。
今はさらに、固定化した荷物に体重を預けたりとかできるからさらにだね。
「私達エルフは、空に夢を見る事もある人間と違い、地上で暮らし、木や草を慈しむ種族だ。アルセイス様の加護もあり、おかげで植物と感覚の共有に近い対話ができるのだが……だからこそ、空を飛んで土に足が付いていない状態というのは、やはり落ち着かないな」
「そう? 私は平気だけど……。エルサ様はエルフの崇める自然の一つ……まぁ頂点とも考えるのもいるけど。だからこそ、そのエルサ様に乗って飛ぶのなら何も危険はないし、ありがたいくらいだけど」
俺達の話を聞いていたカイツさんが、ちょっと体を固くしながら言うのに対し、フィリーナが笑いながら反論している。
俺のイメージにあるエルフとしては、カイツさんの方に近いんだけど……神様に近い存在、創造神であるユノが創ったからこそ、アルセイス様を崇めるエルフには受け入れられる、というような事を言っているフィリーナにも納得できる部分はある。
アルセイス様、ユノの事大好きっぽかったからなぁ……。
神様に派閥があるのかどうか知らないけど、アルセイス様はユノ派というか創造神側で、だからこそその創造神が創ったドラゴンのエルサも受け入れられるのかもしれない。
実際、初めてエルフの村に行った時はものすごく歓迎されたからね。
創造神がとか、アルセイス様との関係とか、そういうのは多分詳しく知らなかったんだろうけど、それえでも神に近しい存在として考えられているんだろう。
拝んでいるエルフさんとかもいたし。
「まぁ人それぞれだけど、どちらかと言うと苦手な人の方が多い……ってところかなぁ。アマリーラさんとリネルトさんはワイバーンに何度も乗っていたし……って、えぇ!?」
すぐ慣れる人、慣れない人、それぞれ種族的な違いは多少あっても人それぞれだなぁ……と思って、アマリーラさん達の方を見て驚いた。
「うぅ……高い、高い……いやでも、リク様とエルサ様なのだから、危険な事は何もないはず……」
「わかっていても、つい震えてしまいますよぉ……でも、しばらくの我慢、我慢ですよぉアマリーラさぁん……」
と、二人で寄り添って体を固くし、震えていた。
両方共、尻尾を自分で掴んでいるのを見ると、言葉通り怖がっている様子だ。
通りで妙に静かだと思ったら……いつもなら、アマリーラさん辺りが色々言っているはずなのに
というか二人共、ワイバーンには何度も乗って偵察をしてくれたりもしていたのに……空を飛ぶのも慣れていると思っていたんだけど。
そう思って、落ち着いた頃……というか、休憩のため地上に降りた時に聞いてみると、ワイバーンは自分の意思を伝えてある程度自由に動いてくれたから大丈夫だったらしい。
エルサの場合は、ただ乗っているだけで高い場所にいるという事を強く意識してしまうから、なのだそうだ。
獣人だから人間より危険に対する本能が強いというか、無意識に反応してしまうのかもしれないね。
ただアマリーラさん達は、エルサよりもワイバーンに乗ってもらった方がいいかもしれない、と思ったんだけど二人共なんとか慣れる……とも言っていた。
護衛である以上、ワイバーンがいない時も一緒に行動する事があるだろうと、エルサに慣れないといけないと考えているとか。
確かにワイバーンがいるいないに関わらず、エルサに乗る事は結構あるけど……護衛と言うのは名目上の事なのになぁ。
「リク様、あちらの準備は整いました!」
「ありがとうございます」
何はともあれ、エルサで移動を開始してからしばらく……誰もいないのを空から確認して、一旦街道の外れに降りて休憩。
兵士さん達やワイバーンの休憩も兼ねての昼食だね。
エルサの背中は広いから、乗ったまま適当に食事を取る事もできるんだけど、ワイバーンに乗っている人達は無理だし、エルサもお腹が空くから。
地上に降りてからの兵士さん達は、一部慣れない飛行で休んでいる人もいるけど、多くが率先して動いて昼食の準備をしてくれた。
調理はモニカさんやカーリンさんなどが担当してくれるけど、そのためのいくつかの焚き火や、近くの川を空から発見していたので、そこから水を汲んできてくれたりとかだ。
俺や他の人達も手伝おうとしたんだけど、同行させてもらっているのだからこれくらいはさせて欲しいとの事だった。
何故か、地上に降りた途端元気になったアマリーラさんが指揮していたから、さもあらん。
というかアマリーラさん、軍の指揮官とかじゃないんだけどなぁ……なんだか、アマリーラさんとリネルトさんがまとめ役みたいになっている。
まぁ、俺じゃ難しいだろうから助かるんだけど。
「こういった野営は、むしろ私達冒険者の領分のような気はしていたのだが……軍の兵士というのも中々……」
「ヘルサルやセンテへの行軍、駐屯経験からくるのだろうな。元々訓練はしているだろうが」
ルギネさんとソフィーが、てきぱきと動く兵士さん達をぼんやり見ながら話していた。
王都からの行軍も含めて、大勢で動くことに慣れているだろうから、こういう時は冒険者よりも兵士さん達の方が動ける事だってあるのかもしれない。
冒険者は基本的に十人に満たない少数で動く事が多いから。
商隊の護衛とか大所帯で動く事もあるけどね。
「……小さくなれないのは不便なのだわ」
「まぁまぁ、まだ背中に荷物がいっぱい乗っているんだから、もう少し我慢して。王都に着いたら、いっぱいキューを食べさせてあげるから」
「仕方ないのだわ。我慢してやるのだわ」
ルギネさん達はともかくとして、地上に降りても大きなままのエルサがぼやく。
荷物を載せたままだから小さくなれないんだよね……なったら、多分に持つが全て放り出されるし、休憩とはいえ地上に降りるたびに全て降ろしてまた出発時に載せるのは手間だし。
大きいままだと食事の量も増えるんだけど、とりあえずキューは少しで我慢してもらって、荷物と一緒に持ってきた大量の食料で我慢してもらいつつ、王都に行ったら満足するまでキューを食べてもらう事で話はついているんだけどね。
そうこうしつつ、約一時間で休憩と食事を準備から片付けまで済ませ、そろそろ出発をしようとしていた頃……。
「リク、近くに魔物が来ているのだわ」
と、エルサが教えてくれた。
魔法が使えない俺と違って、エルサは探知魔法が使えるし大きくなっているから、さらに遠くまで見渡せるから魔物の察知も優れているんだろう――。
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