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見込みで新しいギルドカードの授与

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 確認した内容で細かい事は色々書かれていたけど、大まかには俺が預けた口座のお金をエレノールさん達が、モフモフ商品、便宜上俺が言ったぬいぐるみという名称になったけど、それに関わる資金としてのみ出金できる。
 また、出金した場合には必ず理由と金額を記述した物を別途用意し、厳重に保管する事。
 もし紛失や流出をした場合には、責任の所在を必ず突き止めてその人に補償させる。
 さらにそれら全ては、俺が拠点にしている冒険者ギルドへと報せて、俺本人に報告する義務を負う事などだ。

 今だと、マティルデさんがいる王都の中央ギルドだね。
 ただ現状では他国に俺が行った場合は扱いが複雑で難しくなるらしく、その場合はこの国に戻って来た時にまとめて報告されるらしい。
 とりあえずは、この国の冒険者ギルド内での連携って事らしい。
 というかこの国の冒険者ギルドのトップであるマティルデさんならともかく、支部の副ギルドマスターにはそこまでの権限はないとか。

 とりあえず、重要なのはこんなところかな。
 あ、あと監視と言うと聞こえが悪いけど、不正しないように見張る役目として、ヤンさんとセンテのギルドマスターのベリエスさん、さらに部外の第三者としてヘルサル代官のクラウスさんが任命されていた。
 ヤンさんはともかく、ベリエスさんとかクラウスさんにもって、昨日の今日作ったはずの内容なのにいつの間に承諾してもらっていたのかと……。
 とにかく、そこまで厳重に監視されて管理される事になるだろうってわけだ。

 お金の事はいえ、そこまで大きな話になるとは……と呟いたら、リクさんに関する事だから向こうも真剣に、それと慎重にならざるを得ないんでしょ、絶対に裏切れないから――と苦笑したモニカさんに言われた。
 そういうものなのかな……?

「お待たせいたしました」

 そうこうしているうちに、エレノールさんが戻って来た。

「こちら、印を付けた新しいギルドカードになります」
「はい……って、これまでと違います、よね?」

 エレノールさんから受け取った冒険者のギルドカード。
 これまで文字通り金ピカのカードだったんだけど、それが銀色に近くなっていた。
 けど、銀のような鈍い輝きとはまた違うような……? ちょっと大袈裟だけど、カードその物が発光しているようにすら見える程、輝いて見える。

「それは、後々リク様のランクがSになるだろうと見越してのカードとなります」
「えっと、つまり本来はSランク用のカードって事ですか?」
「はい、そうなります。見込みですが、リク様の実績を考えればSランクに昇格するのは確実でしょう。そのため、先んじてそちらのカードをお渡しする事になりました」

 カードの輝き……金の上という事だろうから、もしかすると銀じゃなく白金。
 つまりプラチナとかそういう物なのかもしれない。
 カードに書かれている内容などは、俺の名や現在のランクなどこれまでと変わらないんだけど、一部隅の方に星形の金箔を張り付けたようなのがあった。
 これまでなかったから、おそらくこれがエレノールさんの言っていた印なんだろう。

 でも、それ以上に俺が既に見込みとしてSランクって方が気になって、印がどうでもいい物のようにすら見えてしまう。
 というかこれ本当に金箔をはったとかじゃないみたいだね、触ってみたけど引っ掛かりとかもなかったし……多分、これ用に混ぜてこの形、印になるように作ったとかだろうか?

「さすがに、まだSランクにもなっていないのに、この支部だけで決めてしまうのはいけないんじゃないでしょうか?」

 ギルドマスターと副ギルドマスターとはいえ、あくまで支部。
 会社で言えば支社、お店だと支店長とその部下ってところだろう。
 それなりに権限がるのは間違いないとしても、冒険者ギルド全体で考えれば単独でSランクカードを渡せるとは思えない。
 そもそも、Sランク昇格には冒険者ギルドの本部による審査が――とか、以前ベリエスさんとヤンさんが話していたし。

「この事はセンテ支部、ヘルサル支部が了承しています。また、王都にある中央冒険者ギルドの統括ギルドマスターからの指示でもありますので」
「マティルデさんが?」

 統括ギルドマスター、つまりアテトリア王国における冒険者ギルドのトップはマティルデさんだ。

「はい。本日追って中央冒険者ギルドより連絡があり、そのようにと。本部の審査に関しては問題なく通るからとも。そもそも、リク様ほどの実績、街の者達に慕われている様子、私達がそれぞれリク様と接して確認した人となりも問題ない事から、審査を通らないようなら冒険者ギルドの信頼すら損なわれるでしょうから」
「そ、そういうものですか」
「……まぁ、リクさんは討伐不可のレムレースすら何体も倒しているし、本来なら大量の冒険者や戦力を投入して、多大な被害をもたらしながら討伐するようなヒュドラーも、単独で複数討伐しているものね」
「そういう事です、モニカさん。これでリク様をSランクに認めなければ、それこそ冒険者ギルドのランク制自体の存在意義すら問われるか、意味をなさなくなってしまいます。それ程の事をリク様は成し遂げたのですから。レムレースなどは、Sランク冒険者であっても討伐は不可なのですし」

 ま、まぁ、そうか……。
 AランクやBランクが大量に、もしくは少ないSランクの冒険者も投入して、それでも被害を出してまでようやく討伐できるヒュドラーだからね。
 討伐不可のレムレースのと合わせると、実力的にSランクと認められる、昇格するのは当然って事か。
 人となりに関しては自分では何とも言えないところだけど、認めてもらえているのは面映ゆいながらも嬉しくはある。

「とりあえず、そういう事なら受け取っておきます」
「はい。リク様にはそれでも足りないくらいの実績がありますから。それと、これで手続きは全て終わりましたが……」
「はい?」

 そうだった、口座に関する手続きが主目的だった……思わぬカードが出されて、ちょっと頭の中からすっぽ抜けていたよ。
 ただ、続く話をしようとするエレノールさんは、真剣な表情。
 部屋の空気もちょっとだけピリッと重くなったような気がするけど、どうしたんだろう?
 クランに関する冒険者さん達への説明会や、意思確認の方で何かあったとか? いや、それだとここまで真剣になる必要はないかな。

「統括ギルドマスターからリク様に、できるだけ早く王都に戻って来るように願うとの事です」
「マティルデさんからですか? クランの関係で何かあるのかな……」

 王都にか……まぁ、明日出発する予定だし、今日出発してもどうせ途中で野宿なり、深夜か朝方に到着とかになりそうだから、予定自体は変わらないかな。

「クランの方は、リク様の意思やこちらでの動きなどを伝えてありますので、向こうで準備を進めているようです。できるだけ、リク様の手を煩わせないように迅速に行うともありました」
「迅速に……」

 マティルデさんとの話では、ゆっくり考えてとか余裕がありそうだったから、戻ってから話を詰めていこうと考えていたんだけど……。


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