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冒険者ギルドでそれぞれ相談事
しおりを挟む「では、ヴェンツェルさん。また」
「あぁ、また後でな」
後? というようにヴェンツェルさんの言い方は少し気になったけど、とりあえず長くなってしまったワイバーン運用の話を打ち切って、改めて挨拶をして天幕を出る。
外では、多くの兵士さん達が天幕の周囲に集まっており、俺達を再び最敬礼で見送ってくれた。
ちょっとだけ、兵士さん達暇なのかな? と思ったのは内緒だ。
開票作業も進んで、アイシクルアイネウムも出ないし周囲の魔物もほぼいなくなっているから、手隙の人が偶然多かっただけだろうな、うん――。
「いつもより人が少ない?」
「そうみたいね。まぁ、依頼も落ち着いているらしいし、あってもこれくらいなら皆外に出ている頃合いじゃないかしら?」
「確かにそうかもね」
ヴェンツェルさんの天幕を辞し、駐屯地を離れた後はヘルサルに入って冒険者ギルドへ。
次はヤンさんへの挨拶だ。
そう思って、モニカさん達と冒険者ギルドに入ると、人が少なくいつも感じていた活気のようなものが薄い気がした。
まぁ昼過ぎだし、依頼が多くても大体の冒険者さんは何かしらの依頼を受けて、そのために動いている頃合いか。
冒険者ギルドの依頼は、日帰りの場合朝受けて夕方報告に来る、というのがセオリーらしいし。
朝めぼしい依頼がなかったり、早く依頼を達成した場合などは、このくらいの時間にも冒険者ギルドに来る人はいるらしいけど。
俺、あまりそういうことを意識して依頼を受けたり、活動したりする事がなかったなぁ……と今更ながらに思う。
色々と、冒険者のセオリーを無視してここまで来ているのは、気にしない方がいいのだろうか。
「リク様、こちらはいかがでしょうか?」
「うーん、かなり良くなってはいると思いますが……緒と物足りないような? ちょっと、ほんのちょっとだと思うんですけど」
「ですよね。やはりこの至高で究極のモフモフに触れた後だと、物足りなく……」
勝手知ったる、と言う程ではないと思うけど、ともかくギルド職員さんに挨拶をして奥にいるヤンさんのいる部屋へ。
そろそろ王都にという話をしたところで、マルクスさん達やヴェンツェルさん達と同じように、職員さんとヤンさん、エレノールさんから最大限の感謝を受ける。
その後は、エレノールさんとモフモフ制作会議だ……王都に戻ったら、こうして簡単に話し合う事ができなくなるからね。
今は、新しい素材らしい物を、俺の投資によって買い集めて使用した、エルサに似ているぬいぐるみを試している最中。
かなり素晴らしいモフモフになっているとは思うけど、エルサを知っている俺からするとほんの少しだけ物足りなく感じてしまう。
それはエレノールさんも同じだったようで、エルサを抱きしめ、頬擦りしながら神妙な声を出して考えている……表情はとろけかけているけど、女性だし、見なかった事にしておこう。
「モニカさん、こちらのパーティが……」
「ランクはBとCで、珍しい男女混合パーティですか。トラブルとかはこれまでに?」
「外部とではあったようですが、ギルド側で把握している限りパーティ内ではなかったようです」
「トラブルをリク様の下へ持ち込むのは、あまりよろしくないが……これなら」
「アマリーラさぁん、あまり私たちが口を出すのもどうかと思いますよぉ?」
モフモフ会議を開いている俺とエレノールさんをよそに、ヤンさんからクランに所属してもらえそうなパーティについて相談しているモニカさん。
アマリーラさんとリネルトさんもそっちだ。
なんでも、今回のセンテでの戦いから森の魔物掃討依頼を経て、現在センテとヘルサルにいる冒険者パーティにある程度目途を付けて選んだらという話だ。
まぁ、今センテとヘルサルにいる冒険者パーティは、リリーフラワーを筆頭に帝国との関わりなども全て調べられており、比較的安心して所属してもらえるだろうというのもあるからね。
人事的な事だけど、パーティの金庫番も兼ねているモニカさんが意欲的で、俺がエレノールさんと話す間にある程度決めておくと請け負ってくれた。
ちなみに、クランに加入するための条件などは特にこれといった決まりは設けていないんだけど、最低限帝国と通じていない事、信頼できる人間性を持ったパーティである事などはぼんやりと考えているし、モニカさんもそれは同様なようだ。
冒険者ギルドもそれは承知らしく、マティルデさんとも最初に話してはいたんだけど、何かとトラブルが付きものな冒険者だから、できる限りそう言ったのは排除できるなら排除する人やパーティをという事らしい。
あとは、モニカさんが最低限Cランク以上と言っていたかな。
これは、クランとしての戦力的な意味合いが大きく、帝国との戦争を見据えた事。
それから、基本的にはクランの話を持ち掛けられた時にマティルデさんからも頼まれた、帝国側の冒険者……裏ギルドに加担している冒険者と戦う事を想定しての事だ。
ある程度のランクがないと、実力的にも人間性的にも信頼がおけないから……というのはヤンさんがモニカさんお話を聞いて言っていた言葉だね。
まぁ、いざ戦う段階になって、人と戦いなれていることが想定できる帝国の冒険者に、こちらがあっさりやられたんじゃ意味がないからなぁ。
「だ……だわ……た、助けてなのだわ……」
「おっと。エレノールさん、エルサが嫌がっているみたいです」
「あ……これは失礼しました、エルサ様」
「はぁ、ふぅだわ……ようやく抜け出せたのだわ……」
モニカさん達の様子を窺いつつ、試作のモフモフぬいぐるみを撫でて考えごとをしていると、エレノールさんに捕まったままのエルサがもがいて助けを求めていたので、一応止めておく。
エレノールさん、エルサが抜け出せないようガッチリとロックしているとは……侮れない。
それだけ、モフモフ愛が強いという事なんだろうけど。
「ぜぇ、はぁ……リクからも注意しておくのだわ~」
「はいはい。――エレノールさん、エルサはここをこうして……ゆっくり撫でまわすのが気持ちいいです。だから……」
「ふむふむ、成る程こうですか……さすがです。生きているモフモフを堪能できる機会が少なく、ついつい自分本位に撫でておりました。反省いたします」
とりあえず、息も絶え絶えなエルサに注意するよう言われたので、撫で方をエレノールさんにレクチャー。
モフモフを持っている魔物、というのもいるけれど……フォレストウルフみたいなね。
でもモフモフな生き物に触れる機会というのは少ないんだろう、反省すると口に出しつつ、俺の言ったとおりにエルサを撫でるエレノールさん。
身近にいるとしたら獣人くらいだけど、尻尾は当然ながら耳も触るのは失礼にあたるらしいから、エルサがいてくれる俺と違って、慣れていないんだろうね。
だからこそ、モフモフなぬいぐるみとかそれに近い物を作り出そう、と考えたのかもしれないけど。
「そ、そういう注意じゃないのだわ。あ、あ~、声が、声が漏れちゃうのだわ~」
「おぉ、エルサ様が喜びの声を……」
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