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森の探索再び

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「こちら側は、魔物が少ないみたいだね」
「そりゃ、あれだけ派手にレムレースとリクさんが暴れたら、魔物も逃げるんじゃないかしら?」
「まぁそうかも」

 森に入って、昨日と同じくカイツさんが木々から情報を得て、冒険者さん達が近くに来るまで周辺の魔物を探し、倒して回る。
 ただ、いなくはないけど数が少ないといった感じだ。
 モニカさんの言う通り、レムレースと戦った事で近くから魔物が逃げ出したんだろう。

 レムレースが魔法を連発していたし、広い荒野ができるくらい森を切り取る戦闘だったんだ、それも当然と言えば当然かな。
 数が多いのもあるけど、ラミアウネに追い立てられて森の外側に行くような魔物ばかりだから、レムレースの危険性を察知して離れた、とかもあるかもしれない。

「ふむ、近くに冒険者らしき人の集団が来ているようですね」
「もう近くまでですか? 東側の魔物が少ないから、移動も早かったのかもしれませんね」

 木に手を付いて、周辺を探っていたカイツさんの言葉に、少し考える。
 魔物が少ないから、探索も順調にいって俺達の近くまで来ていると考えられそうだ……今日は、目印に木々を斬り倒していないのもある。
 昨日ヘルサルに戻った時点で、俺とアマリーラさんが木を斬り倒して轟音を響かせる、などの事は通達してもらったけど、それでも念のため今日はやらないようにしていたから。
 だから、冒険者さん達が俺達から離れて行くような事はなく、今日はスムーズに発見できそうだ。

「リクさんが通った道もあるからじゃない? あの道を通る冒険者もいるだろうし」
「そういえば……」

 木々が密集して移動しづらい森だけど、レムレースと戦った日は途中から東に向かって気を斬り倒しながら進んだからね。
 完全な道と言う程にはなっていないけど、それを通れば少しは移動も早くなるか。

「それじゃ、昨日と同じように」
「えぇ」
「はい」

 モニカさんとカイツさんが頷くのを見てから、冒険者さん達がいる方へと向かう。
 周辺には他の魔物はほぼいないようだし、今日は冒険者さんを発見して見守る方が多くなりそうだね――。


「うん、ほとんど危険に陥るような冒険者さんはいないかな」
「そうね。戦っている場面も見たけど、大丈夫そうだったわ。全てが、ではないけれど」

 しばらく……昼を少し過ぎたくらいまで冒険者さん達を見て回って、昼食がてら適当な場所を作って休憩しつつ、先程までの感想を言う。
 昼食用の場所は、俺が前に魔物と戦って数人は座れそうなほんの少し開けた場所。
 魔物の残骸などは、回収班の兵士さんがちゃんと回収してくれたみたいで、痕跡とかはほとんどなかった……さすがに、全くないわけじゃないけど。
 ちなみに昼食は、今日も出発前に獅子亭に寄って受け取って来た、マックスさん特性のお弁当だ。

「我々エルフと違い、人間は視界の悪い森では警戒にも限界がありますから。先程の冒険者達は仕方ないと言えるでしょうね」
「そうですね。それでもまぁ、乱入しなくてもなんとかできていたでしょうし。怪我はしてたでしょうし、俺達が行く前の怪我もしていましたが」

 カイツさんが言っているのは、休憩に入る前に発見した冒険者パーティの事。
 他の冒険者さん達は、基本的に危なげなく魔物を討伐できていたんだけど、そのパーティだけは奇襲を受けて劣勢だった。
 魔物の数が多めだったのもあるかもしれないけど。
 話を聞くに、警戒を怠ったわけではないみたいで、木々の隙間、さらに木の上からフォレストウルフから奇襲されたのが一番の原因みたいだ。

 人の視点より高い場所、木の上から数体のフォレストウルフが襲って来たらしいから、多少は仕方ない部分もあるかな……ただでさえ視界が悪い森の中だし、頭上の警戒はどうしたって難しいから。
 それで劣勢になりつつも戦っていた冒険者さんを発見した俺達が、乱入して助けたってわけだね。
 まぁ、俺達がいなくても多少怪我が増えたくらいで、酷い被害と言う程にはならなかったとは思うけど。
 冒険者さん達には、すごく感謝された。

 それと、この先の森の探索に支障が出るような怪我もしていなかったので、魔物の掃討は続けてくれるみたいだ。
 助けになったのなら良かったと思う。

「ん……やっぱりマックスさんの料理は美味しいし、量も含めて満足度が高いね」

 話は変わってマックスさんが作ってくれたお弁当……まぁ、パンに料理された物を挟んでといった、サンドイッチ的な物ではあるけど。
 それでも調理された具は変わらず美味しいし、今日はパンがローストされていて香ばしくなるような工夫もされていた。

「私は食べ慣れた味だけど、だからこそ安心するのもあるわね」
「研究に集中すると、寝食を忘れる事が多々ありますが……この味であれば、忘れずに食べたいと思わされるでしょうね。それでも、気が付くと空腹な事も忘れている可能性はありますが」
「それじゃ、あまり意味はないような……?」

 作ってくれたマックスさんに心の中で感謝をしつつ、食べ終えて片づけを進める中モニカさんやカイツさんと話す。
 ただカイツさん、結局忘れるのなら美味しさはあまり関係ないんじゃないかな?
 でもサンドイッチのような食事は、片手でも食べられるように作られている……というより、地球だとそのために作られたっていう説があるくらいだし、研究をしながらでも食べられるなら、カイツさんやアルネのような研究熱心な人にも需要はあるのかもしれない。
 そもそも、食べる事を忘れてしまわなければという問題があるけども。

「これでよしっと。それじゃ、引き続き森を見て回ろうか」
「そうね」

 スープなどを温めるためなどの小さな焚き火を完全に消火して、再び冒険者さん達を探す旅……と言う程の事じゃないけど、森の探索を再開させる。
 基本的に、カイツさんが木々から情報を得て危険そうな魔物の集団に向かって討伐したり、冒険者さん達がいる場所へ向かって無事を確かめたりだ。
 探知魔法が使えない今、エルフのカイツさんがこうして同行してくれるのは、すごく助かる。
 アマリーラさん達の方も、フィリーナがいてくれるから同じように順調にやっているだろうね。

 大まかではあっても、魔物の位置がわかるおかげで奇襲をされる心配はほぼないし……それでも油断しないよう警戒はするけど。
 そうして、森の探索を続けて日が傾いて完全に暗くなる前に引き上げる。
 昼食前に発見した冒険者のようなのはいるにはいたけど多くはなく、森で魔物との戦いにある程度慣れている人がいるのもあって、大きな怪我をするような冒険者はいないようだ。
 それと、昨日のように戻って来ない冒険者が出る事もなく、全員無事でいてくれたのも良かった。

 昨日の事を教訓としていたのか、出発前に再三注意されたからか、少し早めに皆戻って来ていたらしい。
 あと、「華麗なる一輪の花」パーティのように、行方不明になると俺が捜索するという話が広がったのも理由だと後で聞いた。
 なんでも、俺が捜索に参加すると直接話せる代わりに、評価が下がるという噂が広まっているとか――。


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