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リク達の所へ向かう冒険者達
しおりを挟む「それもあるとは思うけど……」
「ん? どうしたのモニカさん?」
「いえ、なんでもないわ……」
何やら、モニカさんがあらぬ方向を見ながら考えている様子。
気になったけど、首を振って何でもないというので、気にしない事にした。
うーん、モニカさんが見ていたのは……俺が目印のために斬った木の切り株?
どうして見ていたのかはわからないけど、冒険者さんと会えない理由とは違うと思ったので、とりあえずカイツさんを待つ。
「……冒険者が、別の方へと向かっているようですね。先程調べた時には、こちらへと真っ直ぐ向かっていたのですが」
「成る程。魔物と遭遇するなりなんなりで、方向を変えたのかもしれませんね。近くですか?」
「いえ、先程よりも離れています」
「……俺達より、急いで移動しているのかな? まぁ、とりあえずそちらに行ってみましょう」
「はい」
「はぁ……」
カイツさんの情報をもとに、冒険者さん達がいる方へと向かって歩き出す。
なぜか、モニカさんが呆れ混じりのような溜め息を漏らしていた気がするけど、森の中を歩いて疲れたのかな?
もしかすると、ラミアウネのなりかけを引き抜いた時の精神的な疲れが、まだ残っているのかもしれない。
さっさと第一村人ならぬ、第一冒険者さんを見つけて、休憩する時間を取った方がいいのかもしれないね。
「……全然、冒険者さんと会えない」
あれからさらにしばらく、今度はカイツさんに時折探ってもらいつつ、冒険者さんがいるらしき方へと向かって歩いていた。
だけど、それなりに移動し、魔物とも遭遇して戦っているのにもかかわらず、冒険者さんとは一度も会えていない。
いや、会う必要はないんだけど、このままじゃ様子を見る事もできなくて困る。
「うぅむ、我々が移動すると、そこから離れるように移動しているのかもしれません」
「俺達から離れる? でも、カイツさんやフィリーナとは違って、森の中で正確に離れた人や魔物の位置を探るなんてできないはずなんですけど……」
木の上とかに登って、少しだけ遠くを見る……というくらいはできるとは思うけど、遠くを見通すとか、誰かの所在地を知るなんて事は、できないはず。
それこそ、カイツさんやフィリーナのようなエルフが一緒にいるとかじゃなければ。
森に入る前に集合した人達は、ほとんどが人で時折アマリーラさんのような獣人さんが混じっているくらいで、エルフはいなかったはずだ。
獣人さんがいるとしても、多少鼻などで周囲を探れるとは思うけど、離れている俺達の位置を知る事はできないだろうし……。
というかそもそも、俺達の居場所がわかったとして、そこから離れる必要はないはずだ。
魔物と思われていたら別だろうけど……俺達が森に入って、他の人達の様子を見るというのはヤンさんが最初に言っていたから、知っているはず。
もしかして俺、実は冒険者さん達に嫌われているとか……!? いやいやまさか、悪い事をしたわけでもなし、交流をした事のない人達もいるわけで、そんな会いたくない程嫌われるってのはないはずだ。
「木々から得られる、ぼんやりとした情報なので判然とはしませんが、動きから我々を避けているように動いているように感じます」
なんて考えて、ちょっとネガティブになりかけた俺にそう言って、もう一度木に手を当てて周囲を探り始めるカイツさん。
とにかく、ネガティブな事を考えるより先に、本来の目的である冒険者さん達と会えるようにしないといけないか……。
「ねぇ、リクさん。もしかしてなんだけど……?」
「どうしたのモニカさん?」
何やら考えていた様子のモニカさんから声がかかる。
その視線は、じっと俺が目印代わりに斬り倒した木に向いていた。
「フィリーナならともかく、他の冒険者は私達の居場所はわからないはず……と思うのだけど、もしかすると原因は……」
「む? こちらに近づいて来るのがいるようです」
躊躇しながら、話し始めたモニカさんの言葉を遮り、何かの情報を得たカイツさんの言葉。
「え、カイツさん、それって魔物ですか?」
「いえ、人のようですね。数は少ないようです」
「じゃあ、二、三人のパーティってところですか。こちらに向かっているのなら、待っていると会えますかね?」
「このままであればおそらく。真っ直ぐこちらへ近づいているようですから」
「なら、このまま待っておきましょうか。向こうがこちらを認識しているかはともかく、動いてまた離れていかれたら困りますから」
「わかりました」
こちらに向かっている人がいるのなら、待っていれば確実に会えるはずだ。
森に入ってから、簡単に冒険者さんを見つける事ができると思っていたのに、ここまで一度も会っていないため、ここは確実に会っておきたい。
というか、真っ直ぐこっちに来ているという事は、俺達がここにいるとわかっているからだろうか?
いや、俺達の居場所を知る方法が冒険者さん達にはないはずだから、単純に真っ直ぐ東を目指している人達かもしれない。
それか、他に可能性があるとしたらフィリーナとアマリーラさん、リネルトさんの組かな。
まぁどちらにせよ、ようやく森の中で他の誰かと会えそうだ。
フィリーナ達なら、俺たちと違って他の冒険者さんを見ているだろうし、情報交換しておくのも悪くないだろうからね……こちらが出せる情報が、見つけて倒した魔物の事しかないけど。
「あ、そういえばモニカさん。さっき言いかけていたのは……」
「いえ、なんでもないわ。多分、こちらに来ている誰かと会えれば、わかる事だと思うから」
「そう? それならいいんだけど」
カイツさんに遮られたモニカさんの言葉、あれはなんだったんだろうと気になったけど、本人が首を振っていたので気にしない事にした。
どうせわかるなら、今聞かなくてもいいだろうからね。
モニカさんの様子から、危険な事とかではないみたいだし……とりあえず、こちらに向かっている誰かが来るまでの間、少し休憩させてもらうとしよう。
なんだかんだで、ラミアウネのなりかけの叫びで、俺も疲れている感じがするし。
「……やはり、リク達だったか」
「予想通りですね」
「ソフィーに、フィネさん?」
しばらくして、時折カイツさんに様子を窺ってもらいつつ、迷いなくこちらに来ている人を待っていると、木々の間から姿を現したのは、ソフィーとフィネさんだった。
二人も森の中に入っているのは知っていたから、どこかで会えればと思っていたけど……。
「やっぱりソフィー達だったわね。お疲れさまってところかしら」
「あぁ。まぁ疲れる程魔物とは戦えていないが」
「センテでの戦いを経験していると、魔物の数が少ないように思えてしまいますね。まぁ私達以外にも、多くの冒険者が森に入っているので、そちらの成果が上がっているからなのもあるのでしょうけど」
ソフィー達に微笑んで、話し始めるモニカさん。
二人とも、魔物と遭遇する事はあっても、多くは戦っていないようでまだまだ元気な様子が窺える。
特に怪我をした様子もないし、それはいいんだけど……。
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