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ついつい逸れてしまう話
しおりを挟むカイツさんとモニカさんの話を聞いて納得。
次善の一手を使えるようになり、使い続けるのが良かったわけか。
内部か外部か、流す、纏わせるなど多少の違いはあるけど、次善の一手も魔法具の魔法発動も、物に魔力を流すのに変わりはないから、感覚的に似ているんだろう。
俺も、次善の一手は使っていないけど、ヒュドラー戦の中で何度も白い剣のモードを切り替えていて、吸収と放出の切り替えや魔力の流れの判断が早くなっていた気もするからね。
扱う魔力量が違うから、俺のはかなり大雑把ではあるけども。
「それじゃ、次善の一手が使えるようにした方が、魔法具の扱い……熟練度みたいなものも、上がるって考えれば……」
「様々な事ができそうではあります。ただ魔力量がエルフと違うので……あぁ、それならクォンツァイタを使うのはどうでしょうか?」
「クォンツァイタを。成る程……それなら、魔力が不足する事もなくなりますね」
これまで俺はほとんど使う事がなかったけど、魔法具は武器に限らずいろんな用途で使われている。
まぁ、エルフの皆が作ってくれているのも多いんだけど。
それらがもっと使いやすくなると考えれば、次善の一手を習得するのも悪くないのかもと考える。
使えるようになるのは難しい事じゃないからね……使いこなす、となれば別だろうけど。
ただそうして、広く魔法具が使われるようになった場合問題になるのが、人間の魔力量。
エルフより少ないうえ、魔力が枯渇すると障害が起こってしまうわけで……使いすぎると精米活動さえ危ぶまれるからね。
その問題解決のために、クォンツァイタを使えばとカイツさんは思いついたようだ。
クォンツァイタをそのまま使うのではなく、アルネが魔力蓄積と放出を調整して、フィリーナとカイツさんが人への魔力供給もできるようにした物であれば、枯渇の心配はしなくて良さそうだ。
「クォンツァイタは、魔力の保管用として非常に優秀です。あれがあれば、もっと別の魔法具開発すらできるでしょう。それこそ、人が魔力供給をする回数を減らす事も」
「そうですね……」
「魔法具に革命が起きてもおかしくありません」
これまでの魔法具は、魔力蓄積ができる素材を使ってはいたけど、その量は多くない。
そのうえ、ずっと蓄積させていることも難しいらしいため、魔法具を使う時に都度魔力供給する必要がある。
武具など、その蓄積できる素材の重量が問題になる場合には、蓄積する素材すら使われない事もあるけど
モニカさんソフィーがいつも使っている武器や、急造の魔法具なんかは、それらの素材は使われず、魔法が発動するための回路を組み込み、魔力を供給して発動させる。
だから全ての魔法具にクォンツァイタを、というわけにはいかないかもしれないけど……軽量の鉱物であるクォンツァイタなら色々と用途はありそうだ。
ちょっとした重量の加算なら、むしろ長所を伸ばすようになる武器とかね。
フィネさんの使う斧とか、アマリーラさんの大剣とかもその類だろう。
ちなみに、回路というのは俺が勝手にそう考えているだけだったりする。
以前アルネとフィリーナが、モニカさんたちの魔法具武器を調整するのを見ていた時、浮かび上がったのが集積回路のように見えたからってだけの話。
電気を流してではなく、魔力を流して動作させるのが見た目だけでなく、似ていると感じたから、勝手に回路としている。
まぁ、頭の中で考える時くらいだけど。
「もう、リクさんもカイツさんも、二人とも今はそんな話をしている状況じゃないでしょう? 早く森の中に入らないと」
「おっと、そうだった。ごめん、モニカさん……つい」
モニカさんに注意されて、クォンツァイタや魔法具の話を中断させて謝る。
そうだった、今優先すべきなのは森を見て回る事で、魔法具の事じゃない。
カイツさんやアルネみたいに、研究に夢中になる程じゃないけど……男としては、こういったモノ作りはちょっとしたロマンみたいなものを感じてしまって深く考えすぎちゃうよね。
俺だけかもしれないけど。
「研究者としての血が騒いでしまいました。申し訳ありません。ですが、これは持ち帰ってじっくり考えたいですね」
「クォンツァイタの事もあるから、フィリーナと……王都に行ったら、アルネと相談するといいかもしれませんね」
研究者としての血、というのはわからないけどとりあえず触れないようにしておく。
「早く王都に行きたいものです。もっと、いろんな研究ができそうですから」
「まぁ、アルネが環境を整えているようでもあるから、カイツさんにとってもいい所になっているのかもしれません」
呆れるような表情で俺達を見るモニカさんと一緒に、森へ足を向ける。
まぁカイツさんとしては早く王都に行きたいみたいだけど、そもそも方向音痴じゃなかったり、ほかに誰かと一緒にエルフの村を出ていたら、今頃王都にいたんだよね。
カイツさんが迷って、方向が逆のセンテに来た事で、かなり助かっているから結果的には良かったんだけど。
ともあれ、王都に戻るのはもう少し先かなぁ……森の魔物掃討と、解氷作業ももう少し進めないとね。
最低限、アイシクルアイネウムが出てこないくらいにならないと、離れられないと思うから。
予想では、あと数日ってところだろうか。
「では、しばしお待ち下さい」
「はい」
「お願いします」
センテやヘルサルを離れるのはいつになるか……などを考えている間に、森の入り口に到着。
入り口と言っても、道があるわけでもなくうっそうと生い茂った木々があるだけだけどね。
その木々の中から、比較的大きめな木に手を付けて、カイツさんが目を閉じて集中、森の中の様子を木を通じて調べるためだろう。
木は土、土から別の木へという具合に、森は繋がっているから詳細はともかく大まかな森内部の事がわかるという、エルフならではの特徴だ。
ちなみに、倒したフォレストウルフは俺とカイツさんが話している間に、モニカさんが討伐証明部位を採取している。
残った死骸は、兵士さん達による回収班にお任せだ。
回収班は俺達のチームと、アマリーラさん達の後から森に入る事になっているけど、他の冒険者さん達にはなしだ。
ソフィーとフィネさんも冒険者として入っているから、同じくだね。
それは、俺やアマリーラさん達が倒す魔物の数が多くなると予想される事以外にも、冒険者さん達は自分たちで処理をする事で森の出入りをして、無理をしないためだとか。
まぁ、回収班が他の冒険者さんが倒して放置された魔物を発見したら、持ち帰る事になっているし、冒険者と魔物の戦いを参考にするため、一部の兵士さんたちは一緒に行っているから、運ぶ人手は多くて厳密にと言う程ではないんだけどね。
「うぅむ……リク様、昨日リク様がレムレースと戦ったのは、ここから北東の辺り、で合っていますか?」
木に手を当てていたカイツさんが、難しい表情でこちらを見る。
「え、あ、はい。そうですね、正確な場所までは覚えていませんけど、北東なのは間違いありません」
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