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魔力弾はかなり目立つ
しおりを挟む「ワイバーン……アイシクルアイネウムを探索している人達かな? 人が二人乗っているのが見えるし。どうしたんだろう……おーい!」
空からの影はワイバーンの物で、二体のワイバーンがそれぞれ人を乗せて低空からこちらを見下ろしているようだった。
徹底していた二人乗りだし、ワイバーンが何も吊るして……というか持っていないので、輸送班ではなくアイシクルアイネウムを探すため、凍っている大地上空を哨戒している人達だろう。
センテ西側、ヘルサル方面も当然調べているので、近くに来たついでに様子を見に来たのかもしれない。
「やはりリク様でしたか……」
手を振りながら呼びかける俺に向かって、一体のワイバーンがゆっくりと降下して来て降り立つ。
もう一体のワイバーンは、周辺を見るためか空に留まっている。
「まぁ、ははは……」
ワイバーンから降りつつ、周囲を見渡して驚いている様子の兵士さんに苦笑。
「我々がアイシクルアイネウムの哨戒をしている際、とんでもない光のような何かが、センテに向かって放たれたので……その調査です。ですがリク様なら、納得ですね」
「あー、確かに俺がやりました」
空から広い視点で見渡しているんだから、森……というか荒野だけど、そこから放たれた魔力弾も観測できるよね。
若干、兵士さんが溜め息混じりなのが気になるけど、ともかくそんな異変が起きたんだから、近くにいて機動力もあるワイバーンで様子を窺いに来たんだろう。
「しかし、派手にやったのですね……」
「いや、これをやったの……一部は俺ですけど、ほとんどはレムレースがやったんですよね」
剣魔空斬とかで、レムレースや飛んで来る魔法と一緒に木を斬り倒すとか、魔力弾によって深くえぐれ散る地面とかあるけど……。
でも、無数の穴が開いていたり、木だけでなく植物が完全になくなって広場どころか荒野みたいになっているのは、レムレースのせいだと主張したい。
まぁ近い事をこれまで魔法でやった事があるから、俺がと考える兵士さんの言葉もわかるんだけど。
九割……いや八割……多く見積もって六割から七割くらいはレムレースのせいだと言っておきたい。
「レムレースですか!?」
レムレース、という部分に大きく反応する兵士さん。
もう一人の兵士さんも、周囲を確認するのを忘れて大きく目を見開き、俺を見た。
討伐不可とも言われるレムレースは、センテでの戦いに参加した兵士さん達なら遠目でも見た事があるし、そんなのが森にいると言われれば、驚くのも無理はないか。
「はい。まぁレムレースがいるとは思っていなかったんですけど……」
とりあえず、兵士さん達にレムレースと遭遇して討伐した事を簡単に話す。
ヘルサル側にいる、ヴェンツェルさん指揮の王軍から森の魔物に関する情報は、多少共有されているみたいだけど、さすがに怪しい影がなどの話は伝わっておらず、そこからだけどね。
まぁ不確定な情報を、森に入るわけでもない兵士さん達には共有されないのは仕方ない、管轄が違うようなものだ。
ともあれ、話を聞いた兵士さん達は、レムレースを俺が倒した事に少しの驚きと大いに納得していた。
それから、俺以外が遭遇しなくて良かったと安堵もしている。
ヒュドラー戦で俺が倒しているのも知っているからこその反応だろうね。
これがヘルサル側の王軍の兵士さん達だったら、もっと驚いていたとは思う。
「しかし、なぜこんな所にレムレースが……」
「それはわかりません。ただ、センテでの戦いの終盤に、こちら側にもレムレースが出たみたいですから……」
残党、というより改めて新しいレムレースが発生したような気がするけど、とにかく理由としてはセンテでの戦いが原因だろう。
赤い光で消滅させられた魔物達、その魔物の魔力の一部が固まってレムレースになりかけていたところに、俺も含めて周囲の魔力を吸収して完成、とかね。
はっきりとはわからないけど、そんなところだろうと当たりを付けている。
実際は、レムレースにも指示をしていたレッタさんや、エルサやユノ、ロジーナの意見を聞いてみないと判明はしないだろうけど。
討伐不可だし、珍しく本来は洞窟などの奥底に凝り固まった魔物の魔力を集めて発生するらしいから、冒険者ギルドなどでもあまり詳しい事はわからないと思う。
まぁ予想くらいはできるだろうけど。
とりあえず、レムレースに関する事はできるだけ共有しておく必要があるかもね。
「では、我々はこれで」
「はい、よろしくお願いします」
ある程度事情を話して、追加のお願いもして空へと戻る兵士さんとワイバーンを見送る。
お願いというのは、ヘルサル側の兵士さん達にレムレースがいた事も含め、ここの状況を報せて事。
あと、俺が倒した魔物の回収班の人達にも、様子を見つつ戻るように伝える事などだ。
まぁ回収班の人達には、別で伝令を森に向かわせる事になりそうだけど、ともかくこれで一つの懸念事項が解消されるってわけだね。
ちなみに、俺が放った魔力弾だけでなくレムレースとの戦いの余波、というわけではないけど、戦闘の様子が森の外からでもある程度観測できたらしい。
俺の魔力弾もそうだけど、それらが収まったので哨戒班の人が様子見に来たみたいだ。
その魔力弾、ここだけでなく凍てついた大地を抉りながら、センテの近くまで到達していたらしい……やっぱりやり過ぎていたみたいだ。
ただ、センテには隔離結界があるためそれに防がれて街は無事だとの事。
これからは、魔力弾を地面に平行になるように放たない方がいい気がする。
隔離結界の表面も、抉れて薄くなってたみたいだし。
ワイバーンに乗っていた兵士さんは、マルクスさん指揮の王軍でセンテでの戦いに参加していた人だけど、その時に皆で隔離結界を破ろうとしていた時の事を思い出し、「あれだけ苦労したのが、一瞬で……」なんて愕然としていたけど。
ま、まぁ隔離結界を破ったわけじゃないからね、薄くなっただけだし……それに元々俺の魔力で作っている物だから、魔力弾の魔力との親和性とかなんとかであれがそうなってこうなって、薄くなっちゃんだと思うよ、多分、きっと。
「それじゃ、俺達も戻ろうかリーバー」
「ガァゥ」
魔力弾の威力から目を逸らすため、ではなく報告のためヘルサルに戻ると決めてリーバーに乗る。
レムレースの事や、その際に怒った戦闘の事などを、できるだけ早く冒険者ギルドに報告して欲しい、と兵士さんに言われたからだ。
魔物を減らす事よりもそちらの方が重要だから、との事だ。
まぁ、森の魔物はできるだけ減らしたいけど、結局明日以降に入る冒険者さん達が担当するわけで、俺がここで無理をする必要はないと考えて、すぐに戻る事にしたってわけだ。
そんなこんなで、疲労により少しだけ重く感じるのを自覚しながら、リーバーに乗って上昇、真っ直ぐヘルサルへと向かった。
……動き続けたからか、ちょっと遅めの昼食だったのに、お腹が減ったなぁなんて考えつつ――。
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