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契約の例外

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「……創造の力の片鱗を持っているから、創造魔法なのね」
「本当に創造するわけじゃないの。魔力を使って、起り得る現象を引き出しているだけなの。現象そのものを創り出す事はできないし、それは神の所業なの。リクみたいに尋常じゃない魔力があっても、できないの。絶対なの」

 本当に起るかは別として、魔力で無理矢理現象を引き起こしているって事かもしれない。
 温度が下がれば物質は凍る、だから今センテは氷に閉ざされている状況になったし、それは新たな創造をしたわけじゃないと。
 本来なら起こりえないけれど、もしかしたらこういう現象が起こるかも、という想像をして魔力で作り出す、創造ではないけど想像の魔法ってところかな。

「ドラゴンの魔法というのは、そういう性質の魔法なの。人間と契約して、一心同体ではないけど近い存在になるから、人にも扱えるようになるの」

 契約者として、お互いが繋がるからこそ俺にもエルサが使えるドラゴンの魔法、というのが使えるって事でいいみたいだ。
 そのあたりはこれまでの認識と、大きく変わる事はないかな。
 レッタさんは、ドラゴンの魔法に関しての驚きよりも「伝説のドラゴンが複数……それも近くにいるなんて」と呟いていた。

 エルサ以外にもドラゴンがいる、というのははっきりと聞いた事はないけどなんとなくわかっていた事だ。
 世界を飛び回って魔力が切れるくらいだし、エルサだけしか存在しないとかだったら、ユノの言っていた世界を見張ったり見守ったり、という役目をこなす事は不可能だろうからね。

「ドラゴンは人間に限らず、エルフや獣人も含めた、人の守護者でもあるの。だから、人間と契約する事で人側の考えとかを反映して、守る側につくの」

 まさに、ヘルサル防衛戦で俺が街の人達を守るために戦ったように、って事か。
 人は創造神が創りし存在、創造の力の片鱗があるドラゴンだからこそ、協力しようってなるのかもね。

「だから、絶対に破壊に染まっている人とは自ら契約する事はないし、それが相手だと悟る事もないの」
「だったら、なんで創造どころか破壊しかもたらさないような、あいつと契約しているのよ」

 ロジーナはクズ皇帝とドラゴンが契約している者として話しているけど、実際にどうかはまだわからない。
 とはいえ、状況的に推論を立てると、ほぼ間違いなく契約しているだろうとなるので、間違ってもいないか。

「例外は二つあるの。その例外をもってして、契約していると考えられるの」

 え、二つもあるの? なんて思ったけど、またロジーナに睨まれそうなので口に出さないでおく。

「二つもあるの? 神が創った存在にしてはザルね」

 俺が思った事を、ロジーナが代弁してくれた。
 口に出さないで脳内で押し留めた意味は、あまりなかったのかもしれない。

「破壊するために創り出しておいて、未だに満足のいく破壊ができない魔物を創った駄神に言われたくないの」
「誰が駄神よ!」

 ユノの挑発に、ロジーナが叫ぶ。
 相変わらず平行線だなぁと思わなくもないけど、創造と破壊は表裏一体と考えると、平行線である事がつまりバランスを取る事でもあるのかと、勝手に納得。

「はぁ……それで、その例外っていうのは?」

 大きく溜め息を吐いて、ユノに対して言いたい事などを飲み込んだ……むしろ言外に吐き出したと言えるかもしれないけど、仕切り直すロジーナ。

「一つは、破壊に傾いた、染まった人間であっても生まれた直後はそうじゃなかった場合なの。人は創造の、魔物は破壊の産物だけれど、人が生まれた直後は創造にも破壊にも傾いていない性質を持って生まれて来るの。その時、ドラゴンが契約する相手だと認識すれば……」
「その後どうなろうと、契約するかもしれないって事ね」
「その人間を見て、どう判断するかはドラゴン次第。だけど、ほとんどの場合は嫌って契約せず、次の相手を待つの。これが一つ目の例外」

 難しくてわかりづらいけど、生まれた時は無垢な存在……と言っている感じかな。
 成長するにつれて、破壊の衝動だとかに駆られて傾いたり染まったりする可能性はあって、だからこそ生まれた直後に悟ったドラゴンが、そのまま契約する可能性があるかもしれないという例外らしい。
 ただ、その例外にクズ皇帝は当てはまらないような気がするね……周囲はどうあれ、前皇帝は聡明だから極端に破壊へと傾くような教育はしないだろうから。
 まぁ溺愛もしていたようなので、そこで性格がねじくれ曲がってという事もあるかもしれないけど。

「もう一つの例外が、その魔力なの」
「魔力……? それは、今はともかく以前のリクにも匹敵する、異常な魔力量の事ね?」

 匹敵というか、この世界に来た当初と比べたら多分俺の方が魔力量が低い気がするんだけど、まぁいいか。

「魔力はあらゆる存在、現象に干渉するの。それは神だろうと人だろうと、関係なくなの」
「まぁそれは、私もわかっているわ」

 へぇ~、そうなんだ……と言うように、よくわからずにとりあえずユノの言葉に頷いておく。
 本心では、魔力って何? と疑問符を浮かべているけど。
 魔法を使うために必要な力、というだけじゃないみたいなのはなんとなくわかる。
 じゃないと、ロジーナやユノがここでこうしている理由にはならないし……。

 ただ、今ここで聞くと話の腰を折ってしまう事になるし、長くなりそうだから胸のうちにしまっておこう。
 本題はそうじゃないからね。
 そう考えて、藩士を続けるユノの言葉に耳を傾けた。

「契約は魔力の繋がりも生まれるの。人間とドラゴン、それぞれ自分の魔力を意思を持って繋げる事で、契約が成立するの」

 ……俺、自分の意思で魔力を繋げて、契約したわけじゃないんだけど。
 キューを食べたエルサが飛び込んできて、気付いたら契約していたし、それまでドラゴンだとは思っていなかったのに。
 エルサはキュー欲しさと契約すべき人間っていうのをわかっていたから、そういう意思はあったんだろうけど。
 まぁ、俺の方はエルサのモフモフに見惚れていたというか、堪能したいとは考えていたからそれが、近い効果を発揮したんだと思えば納得できなくはないけど……無理矢理のこじつけに近いけどね。

「けど、リクとエルサのように、魔力のバランスが逆だと人間側から魔力を接続して、契約するようにできるの」
「魔力のバランスが逆、というのはドラゴンより人間の方が魔力量が多い状態……の事ね」
「そうなの。本来ドラゴンは、契約する事でドラゴンの魔法を人間に使えるようにすると共に、魔力も提供して不足しないようにする役割があるの。そうして、人間が破壊ではなく創造側として発展や窮地から抜け出すもの……という側面もあるの、一部だけどなの」

 もし人類が危機に瀕していたら、ドラゴンと契約した人が強力な力、ドラゴンの魔法と魔力で助ける。
 それか、特別な魔法で文化などの発展に寄与するようにって事か。

「だからドラゴンは、契約する相手の性質が破壊に傾いていれば、少なくとも染まっているようなのとは絶対に契約しないの。それは、人間に関わらず生き物の破壊や破滅の可能性につながるから、なの」

 ドラゴンの力を使って、契約者が悪い事をしないような安全弁みたいな働きって考えて良さそうだ――。

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