1,513 / 1,903
結界と同質の魔法
しおりを挟む「ドラゴンと契約したら、使えるようになる……えっと、頭の中でイメージを固めて、それを具現化すような、そんな魔法です」
「は? なんなのそれ? そんな魔法があったら、なんでもできるじゃない」
「いえ、結構なんでもはできないんですけど……」
主に、俺の想像力が貧困なせいだとか、魔力の制御などなどが未熟なせいで、よく失敗するから。
上手く使えば、本当にレッタさんが言う通りなんでもできるのかもしれないけど……。
とにかく、レッタさんがドラゴンの魔法を知らないなら、聞き方を変えた方がいいな。
「その、現皇帝があり得ないような魔法を使ったり、とかは見た事がありませんか?」
「そう言われてもね……私はそもそも、魔法に詳しくないの。だから、見た事がないのが多くて当然よ」
「それもそうか……」
人が使う魔法だって、全ての人が全ての魔法を知っているわけじゃない。
見知らぬ魔法があって当然だし、一般的な魔法じゃない魔法を使ていても、それすなわちドラゴンの魔法、とは断定できない。
「それじゃ……うーん。その現皇帝の近くに、毛玉のような生き物はいませんでしたか?」
「毛玉? 一体何を言っているの?」
エルサのいる所ではあまり考えないようにしているけど、エルサと言えば毛玉。
まぁその毛玉が至高のモフモフ過ぎて、俺を虜にしているんだけどそれはともかく。
エルサと同じドラゴンなら、同じようにモフモフで毛玉だと思ったんだけど。
「あ、そういえばレッタさんは、エルサを見た事がないんだった……」
初めて会った時はエルサとの契約前、負の感情に支配される前はエルサを連れていなかった、そして今も連れてきていない。
レッタさんは、エルサを見た事がないからドラゴンというものを知らないんだろう。
となると、クズ皇帝はドラゴンとは一緒にいない可能性もあるのか。
「どうして、リクはドラゴンの魔法が使えるかもと考えたの?」
もう少し確定情報が欲しいと、他に聞き方がないか考えている俺に、押し黙っていたロジーナから問いかけられた。
「……以前に、エルサに乗ってアテトリア王国の空を飛びまわった事があるんだよ。夜に、空を飛ぶだけだけどね」
「ユノも一緒だったの!」
「あんた達は何をしているのよ……」
「エルサが飛びたそうにしていたから。まぁそれで、帝国との国境近くまで行ったんだけど……」
本当は、キューが品薄になった事で暴走しそうだったエルサの気を紛らわせるために、思いっきり空を飛んでみるという試みだったんだけど、まぁ詳細は省いておこう。
エルサのあるかはわからない名誉のために。
ともあれ、空を飛んで帝国との国境まで行った時の事を、レッタさんやロジーナに話す。
その頃はロジーナも破壊神として存在していたし、俺達の動きとかをわかっているかと思ったけど、俺と会った後はいったん帝国に戻ってレッタさんの事に集中していたとの事。
神様も、一部ならまだしも世界を見渡したり個人の動向を探る、というのは簡単じゃないらしい。
ある意味、プライベートは守られているようなものか。
まぁそれでも見ようと思えば、見れるらしいから本当に守られているかは微妙だけど。
「結界ねぇ……」
「それは、どんなものなの?」
「えーっと、ちょっと今は見本を見せられないので、言葉だけの説明になりますけど」
帝国の国境、その上空に展開されていた結界の事を話すと、ロジーナは思案顔、レッタさんは結界を知らないので口頭で俺が教える事になった。
俺が魔法を使えたら簡単に使って見せたんだけどね……エルサもいないし。
「透明な壁……」
「まぁイメージ次第で透明じゃないのもできますけど、やっぱり一番簡単なのは透明で目に見えない壁を作り出す事ですね」
俺の場合、最初にエルサが使っていたのを見てそのまま、透明な壁として結界をイメージするようになったのもあるけど……なんとなく、色を付けたりして視認性を上げると、余計に魔力を使ったり、イメージが難しくなる感じだ。
「もしかして……」
「何か心当たりが?」
「そのリクが言っている結界と同じかはわからないけど、あの汚物はグロース・バリエーラって呼んでいたわ」
グロース・バリエーラ……大障壁、と言ったところかな。
「私の目には、帝国全土を覆っている薄い魔力の膜のように見えたわ。そうね、布よりさらに薄い何かに覆われている感じかしら? 光を遮らず、けれど他国の空から魔物が入り込むのを防ぐ、と聞いているわね」
「成る程……」
まぁ大体、俺やエルサ、ユノが見た時に考えた事と同じような理由だね。
……空からの侵入を防ぐ相手は、ワイバーンみたいな飛べる魔物じゃなくて、俺とエルサを想定していると考えていたけど。
「ユノとロジーナは、グロース・バリエーラっていう魔法、知らないかな?」
「わからないの!」
「私達が、全ての魔法を知っているわけじゃないわ。人が自分達にも使えるよう、勝手に魔法を開発しているからそんな細かい事を、全て把握するなんて面倒な事しないわよ」
「それもそうか」
元気よく、何故か自信満々にわからない事を誇るユノに対し、ロジーナは知らない理由を説明してくれた。
真面目な話の時は、ユノよりロジーナの方が話しやすいなぁ……絶対張り合って色々言われるから、ユノ達には言わないけど。
それはともかく、人……特に人間の使う魔法は、魔力が少なく使える人も限られるため、一つ一つの魔法が限定的になっている。
要は、この魔法はこれだけの魔力を使って、これくらいの効果があるよっていうわけだ。
魔力の大小に関わらず、一定の効果と魔力使用になるからわかりやすい。
その反面、対策しやすいんだけど……まぁこれは今関係ないか。
例えば、モニカさんがフレイムという魔法を使うけど、あれは炎を放射状に撒き散らす魔法で、魔力量などに関わらず威力などは変わらない。
その代わり、習熟すると呪文などを省略して動きながらでも発動できるようになったりするんだけど。
まぁ、人の魔法に関して考えるのはここまでにして……そのグロース・バリエーラの事だ。
それだけ大きな範囲、透明な壁というのはどう考えても人が扱える、扱う魔法じゃない。
相応の魔力も必要なので、クズ皇帝しか使えないだろうし、エルフの魔力でも使えないのなら開発する事はないだろう。
「レッタさんも、そういった魔法を帝国で他に聞いた事はありませんか?」
「ないわね。魔力を誘導して貸与させたのは、多様な種族がいるけど……魔法に詳しいエルフですら、そんな魔法は使っていなかったわ」
「やっぱり……」
念のため聞いてみると、レッタさんもグロース・バリエーラという魔法を知らないらしい。
エルフでも知らないとなると、やっぱり人が扱う魔法じゃないという線が濃い。
「おそらくその、グロース・バリエーラという魔法はドラゴンの魔法なんでしょう。名前が違うだけで、結界と同じなんだと思います」
そもそも、ユノやエルサが近くで見た時に結界と断定していたからね――。
0
お気に入りに追加
2,153
あなたにおすすめの小説
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~
暇人太一
ファンタジー
大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。
白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。
勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。
転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。
それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。
魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。
小説家になろう様でも投稿始めました。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる