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結界と同質の魔法

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「ドラゴンと契約したら、使えるようになる……えっと、頭の中でイメージを固めて、それを具現化すような、そんな魔法です」
「は? なんなのそれ? そんな魔法があったら、なんでもできるじゃない」
「いえ、結構なんでもはできないんですけど……」

 主に、俺の想像力が貧困なせいだとか、魔力の制御などなどが未熟なせいで、よく失敗するから。
 上手く使えば、本当にレッタさんが言う通りなんでもできるのかもしれないけど……。
 とにかく、レッタさんがドラゴンの魔法を知らないなら、聞き方を変えた方がいいな。

「その、現皇帝があり得ないような魔法を使ったり、とかは見た事がありませんか?」
「そう言われてもね……私はそもそも、魔法に詳しくないの。だから、見た事がないのが多くて当然よ」
「それもそうか……」

 人が使う魔法だって、全ての人が全ての魔法を知っているわけじゃない。
 見知らぬ魔法があって当然だし、一般的な魔法じゃない魔法を使ていても、それすなわちドラゴンの魔法、とは断定できない。

「それじゃ……うーん。その現皇帝の近くに、毛玉のような生き物はいませんでしたか?」
「毛玉? 一体何を言っているの?」

 エルサのいる所ではあまり考えないようにしているけど、エルサと言えば毛玉。
 まぁその毛玉が至高のモフモフ過ぎて、俺を虜にしているんだけどそれはともかく。
 エルサと同じドラゴンなら、同じようにモフモフで毛玉だと思ったんだけど。

「あ、そういえばレッタさんは、エルサを見た事がないんだった……」

 初めて会った時はエルサとの契約前、負の感情に支配される前はエルサを連れていなかった、そして今も連れてきていない。
 レッタさんは、エルサを見た事がないからドラゴンというものを知らないんだろう。
 となると、クズ皇帝はドラゴンとは一緒にいない可能性もあるのか。

「どうして、リクはドラゴンの魔法が使えるかもと考えたの?」

 もう少し確定情報が欲しいと、他に聞き方がないか考えている俺に、押し黙っていたロジーナから問いかけられた。

「……以前に、エルサに乗ってアテトリア王国の空を飛びまわった事があるんだよ。夜に、空を飛ぶだけだけどね」
「ユノも一緒だったの!」
「あんた達は何をしているのよ……」
「エルサが飛びたそうにしていたから。まぁそれで、帝国との国境近くまで行ったんだけど……」

 本当は、キューが品薄になった事で暴走しそうだったエルサの気を紛らわせるために、思いっきり空を飛んでみるという試みだったんだけど、まぁ詳細は省いておこう。
 エルサのあるかはわからない名誉のために。
 ともあれ、空を飛んで帝国との国境まで行った時の事を、レッタさんやロジーナに話す。
 その頃はロジーナも破壊神として存在していたし、俺達の動きとかをわかっているかと思ったけど、俺と会った後はいったん帝国に戻ってレッタさんの事に集中していたとの事。

 神様も、一部ならまだしも世界を見渡したり個人の動向を探る、というのは簡単じゃないらしい。
 ある意味、プライベートは守られているようなものか。
 まぁそれでも見ようと思えば、見れるらしいから本当に守られているかは微妙だけど。

「結界ねぇ……」
「それは、どんなものなの?」
「えーっと、ちょっと今は見本を見せられないので、言葉だけの説明になりますけど」

 帝国の国境、その上空に展開されていた結界の事を話すと、ロジーナは思案顔、レッタさんは結界を知らないので口頭で俺が教える事になった。
 俺が魔法を使えたら簡単に使って見せたんだけどね……エルサもいないし。

「透明な壁……」
「まぁイメージ次第で透明じゃないのもできますけど、やっぱり一番簡単なのは透明で目に見えない壁を作り出す事ですね」

 俺の場合、最初にエルサが使っていたのを見てそのまま、透明な壁として結界をイメージするようになったのもあるけど……なんとなく、色を付けたりして視認性を上げると、余計に魔力を使ったり、イメージが難しくなる感じだ。

「もしかして……」
「何か心当たりが?」
「そのリクが言っている結界と同じかはわからないけど、あの汚物はグロース・バリエーラって呼んでいたわ」

 グロース・バリエーラ……大障壁、と言ったところかな。

「私の目には、帝国全土を覆っている薄い魔力の膜のように見えたわ。そうね、布よりさらに薄い何かに覆われている感じかしら? 光を遮らず、けれど他国の空から魔物が入り込むのを防ぐ、と聞いているわね」
「成る程……」

 まぁ大体、俺やエルサ、ユノが見た時に考えた事と同じような理由だね。
 ……空からの侵入を防ぐ相手は、ワイバーンみたいな飛べる魔物じゃなくて、俺とエルサを想定していると考えていたけど。

「ユノとロジーナは、グロース・バリエーラっていう魔法、知らないかな?」
「わからないの!」
「私達が、全ての魔法を知っているわけじゃないわ。人が自分達にも使えるよう、勝手に魔法を開発しているからそんな細かい事を、全て把握するなんて面倒な事しないわよ」
「それもそうか」

 元気よく、何故か自信満々にわからない事を誇るユノに対し、ロジーナは知らない理由を説明してくれた。
 真面目な話の時は、ユノよりロジーナの方が話しやすいなぁ……絶対張り合って色々言われるから、ユノ達には言わないけど。
 それはともかく、人……特に人間の使う魔法は、魔力が少なく使える人も限られるため、一つ一つの魔法が限定的になっている。
 要は、この魔法はこれだけの魔力を使って、これくらいの効果があるよっていうわけだ。

 魔力の大小に関わらず、一定の効果と魔力使用になるからわかりやすい。
 その反面、対策しやすいんだけど……まぁこれは今関係ないか。
 例えば、モニカさんがフレイムという魔法を使うけど、あれは炎を放射状に撒き散らす魔法で、魔力量などに関わらず威力などは変わらない。
 その代わり、習熟すると呪文などを省略して動きながらでも発動できるようになったりするんだけど。

 まぁ、人の魔法に関して考えるのはここまでにして……そのグロース・バリエーラの事だ。
 それだけ大きな範囲、透明な壁というのはどう考えても人が扱える、扱う魔法じゃない。
 相応の魔力も必要なので、クズ皇帝しか使えないだろうし、エルフの魔力でも使えないのなら開発する事はないだろう。

「レッタさんも、そういった魔法を帝国で他に聞いた事はありませんか?」
「ないわね。魔力を誘導して貸与させたのは、多様な種族がいるけど……魔法に詳しいエルフですら、そんな魔法は使っていなかったわ」
「やっぱり……」

 念のため聞いてみると、レッタさんもグロース・バリエーラという魔法を知らないらしい。
 エルフでも知らないとなると、やっぱり人が扱う魔法じゃないという線が濃い。

「おそらくその、グロース・バリエーラという魔法はドラゴンの魔法なんでしょう。名前が違うだけで、結界と同じなんだと思います」

 そもそも、ユノやエルサが近くで見た時に結界と断定していたからね――。

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