上 下
1,511 / 1,903

番号を与えられる成功例

しおりを挟む


 レッタさんから、魔力を他人に貸し与える実験の話を聞く。
 実験としてエルフから人間、獣人など異なる種族などから貸与できるかもやっていたらしい。
 結果はほぼ同じで成功する事もあれば失敗する事もあるが、元になった人の魔力が多ければ多ければ多い程、レッタさんの能力で誘導できる魔力量が増え、成功した時に貸与された側の魔力総量も増えるのだとか。
 ただし、失敗した時に貸与された人は必ず同じように、魔力が反発して死んでしまうらしい。

 そしてその中で、成功例として名前を与えられたのがツヴァイやクラウリアさんと。
 クラウリアさんが与えられたのは、フィーアだったかな。

「私は向こうではフュンフと呼ばれていたわね」
「フュンフ……」

 ツヴァイ、フィーア、フュンフ……二、四、五ってところかな。
 名前を与えるとはいっても、番号を割り振っているといった感じだ。
 クズ皇帝からすると、実験動物とかそういう感じに見ていたのかもしれない。

 ともかく、そうして魔力総量が異常に増えた人を使って、組織を作りアテトリア王国などへの妨害工作というか、戦力を削ぐための計画をしていったみたいだ。
 ただし魔力貸与の成功例は少なく、一応ツヴァイと一緒に捕まえた研究者はもう少し耐えられれば定着し、八人目になれたかもしれないらしいけど。
 八人か……研究者は亡くなったし、ツヴァイとクラウリアさんは捕まえたわけで、レッタさんは今目の前にいる。
 残り四人、同じように魔力が異常に多い人がいるってわけだね。

「ドライとゼクスは、本人達に組織やゴミクズに対する忠誠心なんてないから、数に入れなくていいと思うわよ? 多分、帝国にもいないだろうし……あいつが自由にさせておくわけないから、追手くらいは出しているんでしょうけど。

 俺が他に四人……と呟いたら、レッタさんから補足が入った。
 ドライとズィーベン、つまり三と六は何処かに行って何をしているかわからないって事か。
 忠誠心がないらしいから、クラウリアさんみたいに組織から逃げ出したのかもしれない……さすが、クズな皇帝は人望がない。
 他人を信じない性質らしいクズ皇帝だから、追手は放っているみたいだけど。

「ただこの国には来ていないのは間違いないわ。標的にしている国に、わざわざ逃げるなんて馬鹿な真似するのは、そんなにいるわけがないわ」
「……」

 クラウリアさん……いやまぁ、クラウリアさんの場合は、この国で活動するよう命令されてその通りにしていて、というところからの逃亡だから、他の国にはいけなかったのかもしれないけど。
 ちなみに、八人の名前を与えられた人達、ツァーレンと呼ばれていたらしいけど……訳すとナンバーズだから、結局番号だね。
 ともかくそのツァーレンは、どうなるかを知らずに魔力を貸与されたみたいだけど、レッタさんだけは違う。
 そもそも、レッタさんの能力で魔力貸与をしているんだから、知らないはずがないんだけどね。

「レッタさんも、魔力を与えられているけど……危険じゃなかったんですか? もし失敗したら、復讐するどころじゃなくなりますけど」
「私は、自分の事だから。誘導した魔力がどう作用して、自分が無事かどうかというのはなんとなくわかったのよ。それに、ロジーナ様もいたから」
「魔力が体内で反発したくらいで、どうにかなるようになんて作り変えていないわよ」
「成る程……」

 レッタさんの能力と、ロジーナの能力で絶対失敗しなかったわけだ。
 ちなみに、ツァーレンになった人の中でレッタさん以外、魔力貸与をする際元々の魔力の提供者を隠されているので、正体がクズ皇帝だという事を知らないのだとか。
 なんとなく、組織や帝国内で重要な人物くらいには察しているかもしれないけど。
 というより、帝国のトップになったのは最近だけど、組織を作ったのは結構前、だけどクズ皇帝が作ったのだと組織内の人もほぼ知らない事らしい。

 自分につながる情報は、できる限り多くの人に知られないようにする徹底ぶり。
 それだけ、秘密裏に行うため以外にも、他人を信用していないのかもね。
 人を完全に見下しているらしいから、そんな相手を信じるなんて事もできないんだろうね。

「その、魔力量に関してなんですけど……」

 クズ皇帝の魔力量、レッタさんとロジーナが言うには俺よりは少ないらしいけど、実際のところどれくらいかを聞いてみたい。
 あんまり、自分と他人を比べるような事は、したくはないけど一応ね。

「私の能力で、多少は魔力を見る事ができるとはいっても、詳細まではわからないわ。でもそうね……」

 少しだけ、考える素振りを見せるレッタさん。
 その目は俺をジッと見ているようで、少しだけ体が硬くなる。
 今、俺とクズ皇帝の魔力量を頭の中で比べているんだろう。
 詳細まではわからないという事は、フィリーナの目程の見通す力はないんだろうけど……まぁ、特殊能力に付随した能力と、神様から与えられた目じゃ、差が出て当然か。

「……ほんと、意味がわからないわ。初めて会った時にこれだったら、なんとかロジーナ様を説得してリクの方に付いたのに」
「私を説得する必要はないわよ。私だって、今のリクを見たらそうするもの。まぁ、大体は私達が原因なところもあるけど……あれだけの事があっても、全て切り抜けるなんて神でもわからないわよ」
「私はわかってたの! リクならどんな事でも切り抜けるの!」
「はいはい」

 こめかみを押さえ首を振るレッタさん、ロジーナも溜め息交じりだ。
 何故か自慢げなユノは、信じてくれているのがわかって嬉しいけど、リネルトさんに横から抱き着いたままじゃ、あまり説得力とかはない。
 ロジーナも、いちいち言い返していたら話が進まないからか、軽くあしらっているし。

「なんにせよ、あの生きる価値がゴミよりない奴より、リクの方が断然魔力量が多い、というのは間違いないわ」
「そうなんですか」
「初めて会った時は、こうじゃなかったとは思うけど……」
「まぁ、色々ありましたから」

 エルサとの契約で、ドラゴンの魔法が使えるようになったのと一緒に、多分魔力も自由に使えるようになったんだと思う、俺の想像だけど。
 そのせいで、ありあまる魔力が滲み出るようになったんだろう……一部、エルサに流れる魔力もあるあから、まだそれがなかった時に初対面したレッタさんやロジーナには、そこまでわからなかったんだろうね。
 フィリーナだったら別だろうけど、ロジーナも人間の体になっていた以上、魔力量の詳細を知る術まではないみたいだし。
 ユノは最初から知っていたみたいだけど、神様だった時に直接会っていて、しかもその影響で人間の体に入っているから。

「……下手なちょっかいを出したのが、裏目に出ていたみたいね」

 なんとなく、ロジーナは察したみたいだけど……俺の魔力量は、これまでの経験を経てこの世界に来てすぐの頃よりもかなり増えているというのを、最近体内の魔力がよくわかるようになってわかった。
 魔力量が増えないとわからないというのも、自分の鈍さを自覚して微妙ではあるけど――。


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

森だった 確かに自宅近くで犬のお散歩してたのに。。ここ  どこーーーー

ポチ
ファンタジー
何か 私的には好きな場所だけど 安全が確保されてたらの話だよそれは 犬のお散歩してたはずなのに 何故か寝ていた。。おばちゃんはどうすれば良いのか。。 何だか10歳になったっぽいし あらら 初めて書くので拙いですがよろしくお願いします あと、こうだったら良いなー だらけなので、ご都合主義でしかありません。。

転生最強ゴリラの異世界生活 娘も出来て子育てに忙しいです

ライカ
ファンタジー
高校生の青年は三年の始業式に遅刻し、慌てて通学路を走っているとフラフラと女性が赤信号の交差点に侵入するのが見え、慌てて女性を突き飛ばしたがトラックが青年に追突した しかし青年が気がつけば周りは森、そして自分はゴリラ!? この物語は不運にも異世界に転生した青年が何故かゴリラになり、そして娘も出来て子育てに忙しいが異世界を充実に過ごす物語である

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...