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番号を与えられる成功例
しおりを挟むレッタさんから、魔力を他人に貸し与える実験の話を聞く。
実験としてエルフから人間、獣人など異なる種族などから貸与できるかもやっていたらしい。
結果はほぼ同じで成功する事もあれば失敗する事もあるが、元になった人の魔力が多ければ多ければ多い程、レッタさんの能力で誘導できる魔力量が増え、成功した時に貸与された側の魔力総量も増えるのだとか。
ただし、失敗した時に貸与された人は必ず同じように、魔力が反発して死んでしまうらしい。
そしてその中で、成功例として名前を与えられたのがツヴァイやクラウリアさんと。
クラウリアさんが与えられたのは、フィーアだったかな。
「私は向こうではフュンフと呼ばれていたわね」
「フュンフ……」
ツヴァイ、フィーア、フュンフ……二、四、五ってところかな。
名前を与えるとはいっても、番号を割り振っているといった感じだ。
クズ皇帝からすると、実験動物とかそういう感じに見ていたのかもしれない。
ともかく、そうして魔力総量が異常に増えた人を使って、組織を作りアテトリア王国などへの妨害工作というか、戦力を削ぐための計画をしていったみたいだ。
ただし魔力貸与の成功例は少なく、一応ツヴァイと一緒に捕まえた研究者はもう少し耐えられれば定着し、八人目になれたかもしれないらしいけど。
八人か……研究者は亡くなったし、ツヴァイとクラウリアさんは捕まえたわけで、レッタさんは今目の前にいる。
残り四人、同じように魔力が異常に多い人がいるってわけだね。
「ドライとゼクスは、本人達に組織やゴミクズに対する忠誠心なんてないから、数に入れなくていいと思うわよ? 多分、帝国にもいないだろうし……あいつが自由にさせておくわけないから、追手くらいは出しているんでしょうけど。
俺が他に四人……と呟いたら、レッタさんから補足が入った。
ドライとズィーベン、つまり三と六は何処かに行って何をしているかわからないって事か。
忠誠心がないらしいから、クラウリアさんみたいに組織から逃げ出したのかもしれない……さすが、クズな皇帝は人望がない。
他人を信じない性質らしいクズ皇帝だから、追手は放っているみたいだけど。
「ただこの国には来ていないのは間違いないわ。標的にしている国に、わざわざ逃げるなんて馬鹿な真似するのは、そんなにいるわけがないわ」
「……」
クラウリアさん……いやまぁ、クラウリアさんの場合は、この国で活動するよう命令されてその通りにしていて、というところからの逃亡だから、他の国にはいけなかったのかもしれないけど。
ちなみに、八人の名前を与えられた人達、ツァーレンと呼ばれていたらしいけど……訳すとナンバーズだから、結局番号だね。
ともかくそのツァーレンは、どうなるかを知らずに魔力を貸与されたみたいだけど、レッタさんだけは違う。
そもそも、レッタさんの能力で魔力貸与をしているんだから、知らないはずがないんだけどね。
「レッタさんも、魔力を与えられているけど……危険じゃなかったんですか? もし失敗したら、復讐するどころじゃなくなりますけど」
「私は、自分の事だから。誘導した魔力がどう作用して、自分が無事かどうかというのはなんとなくわかったのよ。それに、ロジーナ様もいたから」
「魔力が体内で反発したくらいで、どうにかなるようになんて作り変えていないわよ」
「成る程……」
レッタさんの能力と、ロジーナの能力で絶対失敗しなかったわけだ。
ちなみに、ツァーレンになった人の中でレッタさん以外、魔力貸与をする際元々の魔力の提供者を隠されているので、正体がクズ皇帝だという事を知らないのだとか。
なんとなく、組織や帝国内で重要な人物くらいには察しているかもしれないけど。
というより、帝国のトップになったのは最近だけど、組織を作ったのは結構前、だけどクズ皇帝が作ったのだと組織内の人もほぼ知らない事らしい。
自分につながる情報は、できる限り多くの人に知られないようにする徹底ぶり。
それだけ、秘密裏に行うため以外にも、他人を信用していないのかもね。
人を完全に見下しているらしいから、そんな相手を信じるなんて事もできないんだろうね。
「その、魔力量に関してなんですけど……」
クズ皇帝の魔力量、レッタさんとロジーナが言うには俺よりは少ないらしいけど、実際のところどれくらいかを聞いてみたい。
あんまり、自分と他人を比べるような事は、したくはないけど一応ね。
「私の能力で、多少は魔力を見る事ができるとはいっても、詳細まではわからないわ。でもそうね……」
少しだけ、考える素振りを見せるレッタさん。
その目は俺をジッと見ているようで、少しだけ体が硬くなる。
今、俺とクズ皇帝の魔力量を頭の中で比べているんだろう。
詳細まではわからないという事は、フィリーナの目程の見通す力はないんだろうけど……まぁ、特殊能力に付随した能力と、神様から与えられた目じゃ、差が出て当然か。
「……ほんと、意味がわからないわ。初めて会った時にこれだったら、なんとかロジーナ様を説得してリクの方に付いたのに」
「私を説得する必要はないわよ。私だって、今のリクを見たらそうするもの。まぁ、大体は私達が原因なところもあるけど……あれだけの事があっても、全て切り抜けるなんて神でもわからないわよ」
「私はわかってたの! リクならどんな事でも切り抜けるの!」
「はいはい」
こめかみを押さえ首を振るレッタさん、ロジーナも溜め息交じりだ。
何故か自慢げなユノは、信じてくれているのがわかって嬉しいけど、リネルトさんに横から抱き着いたままじゃ、あまり説得力とかはない。
ロジーナも、いちいち言い返していたら話が進まないからか、軽くあしらっているし。
「なんにせよ、あの生きる価値がゴミよりない奴より、リクの方が断然魔力量が多い、というのは間違いないわ」
「そうなんですか」
「初めて会った時は、こうじゃなかったとは思うけど……」
「まぁ、色々ありましたから」
エルサとの契約で、ドラゴンの魔法が使えるようになったのと一緒に、多分魔力も自由に使えるようになったんだと思う、俺の想像だけど。
そのせいで、ありあまる魔力が滲み出るようになったんだろう……一部、エルサに流れる魔力もあるあから、まだそれがなかった時に初対面したレッタさんやロジーナには、そこまでわからなかったんだろうね。
フィリーナだったら別だろうけど、ロジーナも人間の体になっていた以上、魔力量の詳細を知る術まではないみたいだし。
ユノは最初から知っていたみたいだけど、神様だった時に直接会っていて、しかもその影響で人間の体に入っているから。
「……下手なちょっかいを出したのが、裏目に出ていたみたいね」
なんとなく、ロジーナは察したみたいだけど……俺の魔力量は、これまでの経験を経てこの世界に来てすぐの頃よりもかなり増えているというのを、最近体内の魔力がよくわかるようになってわかった。
魔力量が増えないとわからないというのも、自分の鈍さを自覚して微妙ではあるけど――。
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