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マリーさんとも合流して結界の外へ
しおりを挟む「トレジウスさん達はいいとして、とりあえず俺達が使っている宿に戻ってリーバー……ワイバーンと合流。その後、街の外から飛んでヘルサルへ行こうと思います。けど、そう言えばマリーさんは?」
「あぁ、マリーは結界の出入り口の方で、手伝いをすると言っていたぞ。軍の兵士を指揮していたのもあるし、魔法も使えるからな」
「あれ、そうなんですか……?」
俺達も、一度結界の外に出て来たのに、出入り口付近ではマリーさんを見かけなかったんだけど。
と思っていたら、どうやら今は資材運搬の方をやっているだろうとの事だ。
魔法部隊の指揮を任されていた事もあるマリーさんは、頼られたけど外の寒さでちゃんと活動できるのがワイバーンの鎧を着た人達だから、後方支援に回ったみたいだね。
絶対不可能ではないし、モニカさんやフィリーナは今も頑張っているんだろうけど、体は震えていたからね。
相当我慢しないと、あの状況でまともに魔法を連続して使う事はできそうにない。
今は、焚き火が完成してある程度暖を取れるようになったから、多少はマシになっているだろうけども。
「だったら、先に宿でワイバーンと合流して、それからマリーさんの所ですね」
「あぁ、わかった」
納得して、とりあえずリーバーと合流するために宿へマックスさん達と一緒に向かう。
道中、リーバーというボスワイバーンの名前をモニカさんが付けた、という事などを話しておいた。
マックスさんもヤンさんも、魔物に名前を付けるというのに苦笑してはいたけど、確かに呼び名があった方が便利だと言っていたね。
ボスワイバーンのリーバーは、見た目で判別できるけど、他のワイバーンは難しいから……何か呼び名とかを考えておいた方がいいのかもしれない。
その後、宿でリーバー達と合流、結界の出入り口から少し離れた場所で、兵士さん達を鼓舞していたマリーさんを発見する。
マリーさん、鼓舞すると言えば聞こえはいいけど、どこぞの鬼軍曹のようにもなっていた。
兵士さん達は大丈夫かと思ったけど、意外と受け入れられている様子だね……なんとなく、理不尽すぎない見極めがちゃんとしているからかもしれない、と思った。
俺も参考にしよう、生かせるかは微妙だけど。
「お前達、私がいなくてもちゃんとやるんだよ!」
「「「はっ!」」」
ヘルサルに戻ると言うマックスさんに頷き、魔法部隊だったんだろう兵士さん達に声を掛けるマリーさん。
一糸乱れず、敬礼をする兵士さん達……よく訓練されているなぁ。
「あら、父さんに母さん? リクさんと一緒に、どうしたの?」
「モニカさん、お疲れ様。えっと……」
結界の外に出ると、フィリーナや兵士さん達と一緒に、地面の氷に向かって魔法を放っていたモニカさんが俺達に気付いた。
そんなモニカさんに答えつつ、マックスさん達とヘルサルに行く事を説明、その間に周囲を見渡して進捗も見ておく。
氷を解かす作業は……体感で俺が街に戻ってから二時間くらいだったと思うけど、想像より進んでいないかな。
解けてぬかるんだ地面が、出入り口から二、三メートル進んだかどうかといったくらい。
やっぱり、硬くて解けにくい氷が魔法でも容易に解かす事ができなくて、苦労しているようだ……手伝えないのが申し訳ない。
相変わらず、ユノとロジーナは騒ぎながら氷を割っているから、作業そのものはちゃんと進行しているみたいだけど。
ちなみにフィリーナは、俺達に気付いている様子だけど何やら文句を言って、逃げ出そうとするカイツさんを捕まえて魔法を使うので手一杯なようだった。
ちゃんと宿の人達はカイツさんを連れて来てくれていたみたいだね……ただカイツさん、逃げようとした方向、街ではなくてまだ氷が解けていない東だったから、フィリーナがいなければ本当に遭難しそうでちょっと怖い。
「そうなのね。父さんも母さんもヘルサルに……」
「まぁ何はともあれ、俺達もだが、ここまでモニカもよく頑張った。かなり危険な場面もあったが……娘が頑張っている姿が見られて、良かったぞ」
「そろそろ、私達に追い付いて……いえ、追い抜かれるんじゃないかと思うくらいには。これからも頑張るのよモニカ」
頷くモニカさんを、マックスさんとマリーさんが左右から挟んで声を掛ける。
二人共、娘のモニカさんの成長を、今回の事で強く感じられるだけでなく、近くで見れて満足しているんだろう。
大変な事がいっぱいあったからね。
ちなみにマックスさんとマリーさんはモニカさんの前だからだろう、寒さを気合で我慢しているようだった。
二人共、隔離結界を出た瞬間に体を震わせて「本当に寒いな……うぅ」とか、「やっぱり、寒いわね……」なんて言っていたのに。
娘の前では、少しは親らしくしっかりした姿を見せたいのかもしれないと、微笑ましく見えた。
「もう、父さんも母さんもやめてよね。そんな長い別れみたいに。まぁ、王都に戻ったらしばらく会う機会がないかもしれないけど、この作業が終わったら、王都に帰る前に獅子亭に寄るわ」
「そうですね……多分、ソフィーとかも獅子亭の、マックスさんの料理が食べたいでしょうし、必ず寄りますよ」
皆の前で両親に褒められて、恥ずかしそうにしているモニカさんに頷いて、また獅子亭に行く事を約束する。
王都に戻る方角にヘルサルがあるから、簡単に寄る事がができるし獅子亭のファンでもあるソフィーが、料理を食べたいだろうからね。
「あぁ、そうだな。その時は必ず寄ってくれ。腕によりをかけて御馳走するからな」
「モニカも、しっかりやるのよ」
「えぇ、父さん母さん。リクさん、二人をお願いね」
「うん。って言ってもまぁ、エルサやワイバーンに乗って行くだけなんだけどね。――エルサ、頼むよ」
「了解したのだわー」
頭にくっ付いたままのエルサに頼み、大きくなってもらう。
エルサに乗るのは俺だけで、マックスさん達はそれぞれワイバーンに。
合計四人なら、エルサだけでも全員乗れるんだけど、今回はヘルサルにワイバーンが人を乗せて運べることを周知する目的もある。
だから、連れてきたワイバーン……リーバーともう二体にそれぞれ一人がのって出発だ。
リーバーにはマックスさん、フィネさんは隔離結界を脱出して俺の所に来る際乗っていたワイバーンらしく、仲良さそうにしている。
マリーさんは初めてワイバーンに乗るので、おっかなびっくりだったけど姿勢を低くしたワイバーンに乗って、意外な安定感に驚いていた。
「……なんか、エルサに乗るのも久しぶりな気がするなぁ」
「私はそうでもないのだわ。でも、ようやく何も気にせず空を飛べるのだわー」
大きくなったエルサの背中に乗って、モフモフした毛に座ると途端に懐かしい気持ちが溢れた。
前エルサに乗ったのは、ヒュドラーが来る前だから……隔離結界内にいたエルサにとっては数日の事でも、俺にとってはそれ以上だからね。
ヒュドラー戦の時は離れて別々に行動していたし、隔離結界の外では意識が飲み込まれていたとはいえ、十日程その状態だったから、懐かしく感じるのかもしれない――。
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