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レッタの重要性は爪の先

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「リク以外? って事は、誰かがさっきのロジーナみたいに無様に絡め捕られているって事なの?」
「誰が無様よ……言い訳はあまりできないけれど。はぁ……リク以外にも多少話したかしら? レッタがいるのよ」

 レッタ……? 聞き馴染みのない名に一瞬はて? と思うけど、そういえば以前ロジーナちゃんと一緒にいる女性とか、そういう話を聞いた気がするわね。
 そういえば、ヒュドラーを始めとした魔物達をセンテにけしかけたのも、その人が関係しているとか言っていたような。
 え、て事はそのレッタって人が、植物の内部にロジーナちゃんと同じように絡め捕られているの?

「レッタは、人間やエルフとは比べ物にならない魔力を持っているわ。まぁ他人の魔力だし、それでもリクには遠く及ばない魔力量だけど。それでも、そこらの人間が数十人力を吸い取られるよりも、長持ちするでしょう」
「他人の魔力で、多い魔力量……それってつまり……」

 ツヴァイやクラウリアさんと同じって事かしら?
 あの人達も、誰かから魔力を与えられて私やフィリーナ達よりも魔力量が増大していたらしいし。
 つまり帝国の……いえ、今はそこを探ったり考えたりしている場合じゃないわね。
 
「あぁ、そういえば何人か失敗して掴まっているんだったかしら? エルフの男とか。まぁ私は何をするかまでは直接関係していないから、どうでもいいのだけど」
「エルフの男……ツヴァイの事ね。やっぱり」

 私が訝し気にしていたからだろう、ロジーナちゃんがそれに気付いて教えてくれた。
 直接指示していないくても、何かしら関係しているのは間違いないみたいね。
 ともあれ、話しに出たレッタという人は、ツヴァイやクラウリアさんと同じって考えて良さそうだわ。

「ともかく、レッタは魔力だけなら他の奴らよりも多いわ。これは適応が良かっただけでなく、ちょっと特殊な能力を持っていたからなんだけど……」
「特殊?」
「簡単に言うと、魔力誘導と言えるかしら? 自分の魔力を使って、他人の魔力を操作するのよ。今回の魔物への指示や、リクへ負の感情を誘導したのもレッタね。それを利用して、誰かの魔力を誰かに与えて適合させる、なんて事ができたのだけれど」

 魔力誘導……そんな能力があったのね。
 聞いた事がないけど、レッタという人が持っている特別な能力なのだと、今は考えておく事にするわ。

「つまりそのレッタがいるから、まだ大丈夫だって事なの?」
「まぁ、多少時間が稼げる程度よ。リクを助けるなら、もし生きていればだけどレッタも助けるのなら私も協力するわ」
「珍しいの。ロジーナが誰かを助けようとするなんて、なの」
「……レッタは便利なのよ。ちょっと……いえかなり性格や考え方が極端で、相手をするのは面倒だけどね」

 ロジーナちゃんは、リクさんというよりその人を助けたいのね。
 少し視線を外しながら話すロジーナちゃんからは、レッタって人を大切にしているという気持ちが……全然伝わらないけど、助けたいのは本音みたい。
 ……言葉通り、利用するには便利な人だからって事なのかもしれないわ。

「結果的に、リクを助けたらそのレッタを助ける事にも繋がるの。だからロジーナも協力するの。二人でなんとかするの」
「リクを助ける以上に、猶予が少なくなるけど……どちらが先に力を使い果たすかだと、確実にレッタだし。私が言い出した事だから、協力するわ。けどどうするの? 簡単にどうにかできる物じゃないわよ? お互い元に戻ればなんとでもなるかもしれないけれど、しばらく動けなくなるくらいには干渉力を使ってしまうもの」

 いくらレッタという人の魔力量が、他人の魔力を与えられているからと言っても、リクさんには及ばない。
 ツヴァイもクラウリアさんもリクさんには全くかなわなかったみたいだし。
 私は直接見ていないからわからないけど、フィリーナ達エルフよりも比べ物にならないくらいの魔力、ってだけで相当なのだけどね。
 けどユノちゃん、ロジーナちゃんと二人でってあの植物をなんとかできるのかしら? 自信満々の表情をしているから、何か方策があるとは思うのだけれど……。

「私とロジーナで協力して、アレを使うの。そうすれば、全てどうにかする事はできなくても、リクの所へは誰かが辿り着く事ができるの」
「アレって……アレ!? そんな事をしたら……!」

 ユノちゃんが言うアレ、というのがわからないけれどロジーナちゃんはかなり驚いたみたい。
 またリーバーから落ちそうになってしまっていたから、慌てて両手で支えたわ。

「わかっているの。本来はこの体で使うようなものじゃないの。でも、アレしかないの」
「それは確かにそうかもしれないけど……私もあなたも無事じゃ済まないわよ?」
「大丈夫なの。多少力を失うかもしれないけど、私もロジーナもリクの影響を受けているの。だから、体は無事だと思うの」
「体はって、それはユノちゃん達にとって危険な事なの?」

 リクさんを助けたい。
 でも話を聞いている限り、ユノちゃんとロジーナちゃんが犠牲になるような事は、とてもじゃないけど賛成できないわ。
 だからといって代案などはないし、どうしてもリクさんを助けるために必要なのであれば、仕方ないと思う気持ちもあるのだけれど。
 でも、リクさんは二人が犠牲になって自分が助かる事を、喜べる人じゃないと思うから……。

「こうでもしないとリクを助け出せないの。でも大丈夫なのモニカ。私もロジーナも、リクの力があったから今ここでこうしていられるの。だから、リクの力で発生したあれをどうにかするだけなら、なんとかなるの。まぁ、多少? かなり? 力が削がれる事にはなると思うけど……」
「しばらくの間は、満足に動けなくなるかもしれないわ。ユノの言う通り、リクの影響と考えれば……アレにもリクの力が混ざるのでしょうし、他の事ならまだしもリクの力で引き出されている物に対してなら、かなり加減しても良さそうね」
「そうなの。壊すとかそういう事じゃないから、こちらにリクの力が混じれば私達が犠牲になる程の力を込めなくていいの」
「でもだからって……」

 相当危険なんだろう、というのはわかるわ。
 加減しても力を削がれるとか、満足に動けなくなるっていうのはそういう事なんだと思う。

「隔離結界を抜けるのに、モニカ達も精一杯無理をしたの。だから、今度は私達も無理をする番なの」
「勝手に私を巻き込まないでよ。無理をする気はあまりないわよ?」
「でも、消滅する事なく、安全は確保されているの。それに、レッタっていうのを助けたいのもロジーナなの」
「まぁ、そりゃそうだけど……はぁ、わかったわ。自分自身がなくなる程っていうのはさすがに嫌だけれど、今回はある程度保証されている事だから、特別よ。便利なレッタをこれで失うのは……指先、いえ爪の先くらいは惜しいわ」

 それ、本当に思っているのか怪しいのだけど?
 でもリクさんだけでなく、レッタっていう人を助けるために仕方なくといった感じで、ロジーナちゃんは承諾した。
 はっきりとした事はわからないけれど、無理をしなきゃいけない場面で、でも無事である事は保証されているから大丈夫って事らしいわ。
 正直なところ、本来の存在がどうあれ見た目は人間の小さな女の子にしか見えない二人に、無茶はして欲しくないしあまり賛成はできないけど、今はそれに頼るしかないのね――。


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