1,352 / 1,897
植物を維持し成長させている力の源
しおりを挟む「えぇ。開けた門は一つだけじゃない。一つだけでも、私やユノの干渉力を全て使うくらいなのにね……リクは二つ開けたのよ」
「高まっていた魔力と、流れて行った感情……それだけでできるとは思えないけどなの。でも、実際に目の前にあるから、信じないわけにはいかないの」
「えっと……つまり?」
ユノちゃんとロジーナちゃんのやり取りを、私は理解する事ができず思わず声を出した。
ちらりと見れば、フィネさんだけでなくアマリーラさんやリネルトさんも、よくわからないといった表情をしていたわ。
「魔物を全て消滅させた赤い光は皆見たの。この植物は、あの赤い光と同様の力……と言えばいいの?」
「なんで私に聞くのよ。むしろこっちはユノの方が詳しいでしょうに。まぁ、厳密には違うけど、人間から見ると同じと言ってもいいんじゃないかしら」
「赤い光と……っ!」
ユノちゃんとロジーナちゃんの言葉を聞き、頭に浮かぶ魔物達を消滅させた赤い光。
アマリーラさん達も同じだったのか、私と同時に植物の方を驚愕の表情や目で見て、体を離すような動きをした。
だって、今まで知らなかったから近寄って攻撃していたけど、あの赤い光と同じだと言うのならこれは、私達を消滅させるような物に見えてしまったから。
「今更気付いて驚いているようだけど、特に害はないわ。いえ、中に入らなければ害はない、といったところかしら。中にいればどうなるかは……まぁ、私を助け出した事でわかっているでしょうけど。とにかく、これには近寄ったり触れた程度で何かが起こるような物じゃないわ」
「中に入らなければ……」
ロジーナちゃんが茎に絡め捕られていたのは皆見ている。
幸いながら無事だったけど、身動きが取れないくらい茎が絡んでいたあの様子から、害はないとは言えないんじゃないかしら?
まぁ、確かに触れたくらいでは何もないんでしょうけど……私達が斬っても、ただ伸びて再生するだけだったから。
でも中に入るのは危険って事は……もしかして!
「っ! リクさん、リクさんはどうなの!? この中にリクさんがいるのに……!」
「あぁ、リクは無事よ。というか、これがまだここにこうしてある。それだけじゃなく、力の吸収と生長を繰り返しているのはリクがいるからよ」
得体のしれない植物、そしてそれにリクさんの力が使われている。
それはロジーナちゃんのように、力を吸われているのかと一瞬思ったけれど、それとは少し違ったみたい。
「……それじゃあ、これはリクさんが……」
「さっきからそう言っているじゃない」
「簡単に言うと、これは内部に入った異物を絡め捕り、その異物から力を吸収するの。だからロジーナはさっきあぁだったんだけどなの。そして、吸収する事だけでなく斬っても伸びるのは、吸収した力だけでなくリクが力を注いでいるからなの。それがリクの意思かどうかはともかくとして、門を開いて現出させた存在の力でもって、ここにあるの」
「数千や万の生き物をならともかく、私の力を吸収したくらいじゃほとんど意味はないから、結局はリク一人の力ね」
「それはつまり……」
「これがこうして生きている限り、リク自身は間違いなく無事って事なの」
「そうなのね……良かった」
リクさんが無事……すべてを理解する事はできなかったけれど、私にはそれがわかっただけでも十分。
ロジーナちゃんが落ちないように片手で支えながら、もう片方の手でホッと胸を撫で下ろしたわ。
「そう安心してもいられないわよ? 現状あれが吸い取る力は限られている……そうなると使われるのはリクの力」
「リクさんの……それって」
私が少しでも安心した様子を見せたのに気付いたロジーナちゃんだけど、それを否定するように首を振った。
使われているのがリクさんの力、それを補うように誰かから力を吸い取ったりはできていないわけで。
ロジーナちゃんを助け出したから、もう完全にリクさんの力のみって事になるのでしょうね。
「どれだけリクが馬鹿魔力を持っていようと、上限を越えて魔力や力を与えられようと、限界はあるわ」
上限を越えた魔力や力っていうのは、センテ周囲に渦巻いていた負の感情……というものなんだろうと思うわ。
けどそれにだって、そしてリクさん自信にだって限界はあるっていうのは当然ね。
これまでにも、魔力を使い過ぎて何度か倒れてしまった事があるくらいだし。
「私やロジーナもそうだけど、限界はあるからリクにも当然あるの。今は人間に近いけど、本来の状態でもそうなの」
「本来の……そうなのね」
リクさんから聞いた話では、ユノちゃんは創造神様……らしい。
嘘だとは思っていないけど、無邪気に笑っているユノちゃんを見ていると、正直なところ信じられないというの本音だけど。
これまでの活躍やリクさんの言う事だから、一応は納得しているわ。
そしてそんなユノちゃんと関係がありそうなロジーナちゃんも、はっきりとは聞いていないけど、多分相応の存在なんだと思う。
じゃないと、二人でヒュドラーの足止めやリクさんと協力して、レムレースとヒュドラーの討伐なんてできるものじゃないから。
そんなユノちゃん達にも、今ではなく本来の創造神様の状態だったとしても限界があるらしい。
まぁ、比べる相手が神様っている時点でリクさんのおかしさを感じるけれど、それはとても納得できる話でもあるわね。
「だから、すぐにどうこうという事はないと思うけど、もしリクを止めるのならこのまま見ているわけにもいかないわ。いえ、今のこれを止めるだけなら、放っておいてもいずれ力が尽きてなくなるのでしょうけど」
「放っておくって、そうしたらリクさんは……?」
「当然、力を使い果たすわよ。力の源がなくなってしまえば、維持はできなくなる。道理よね」
力を使い果たすって事は、つまりリクさん自身が死んでしまうって事。
そんな事、絶対に受け入れるわけにはいかないわ。
ロジーナちゃんの話を聞いて、焦りと共に植物を見る私……フィネさん達も同じく、植物を睨むようにして見ているみたいね。
特にアマリーラさんなんて、今にも剣を振りかざして向かおうとするのを、リネルトさんに止められているわ。
単純に剣を振り回してもどうにもならないのは、ロジーナちゃんを助け出す前にやってわかっている事。
だから、今はむやみやたらに飛び込むんじゃなくて、どうやってリクさんを助ければいいのかを考えるべきね。
「焦る気持ちは……私としてはわからないけど。このままリクが自滅してくれた方が都合がいいし。けどまぁ、もうしばらく猶予はあるわ」
私達の様子を見て、呆れたような声をだすロジーナちゃん。
あまりユノちゃんと仲が良くないのはわかっていたけど、リクさんをどうしても助けたい……と思うような子ではないみたい。
まぁ、あくまで一時的な協力関係なだけらしいから、それも仕方ないわね。
「猶予があるのは、リクの力がまだまだ尽きないからって事なの?」
「それもあるけど……それだけじゃないわ。今もだろうけど、リク以外の力を吸い取って使っているのだろうから」
0
お気に入りに追加
2,142
あなたにおすすめの小説
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
ゆったりおじさんの魔導具作り~召喚に巻き込んどいて王国を救え? 勇者に言えよ!~
ぬこまる
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれ異世界の食堂と道具屋で働くおじさん・ヤマザキは、武装したお姫様ハニィとともに、腐敗する王国の統治をすることとなる。
ゆったり魔導具作り! 悪者をざまぁ!! 可愛い女の子たちとのラブコメ♡ でおくる痛快感動ファンタジー爆誕!!
※表紙・挿絵の画像はAI生成ツールを使用して作成したものです。
頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。
音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。
その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。
16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。
後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。
婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?
名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」
「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」
「それは貴様が無能だからだ!」
「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」
「黙れ、とっととここから消えるがいい!」
それは突然の出来事だった。
SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。
そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。
「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」
「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」
「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」
ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。
その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。
「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる