1,254 / 1,903
モニカ達の戦いも開始
しおりを挟む「最後の一撃だ、思う存分魔力を使え!! くぉぉぉぉのぉぉぉぉぉぉぉ!! 」
最後の結界が壊れた瞬間、五首が吐き出し続けていた火炎ブレスを突き抜け、顎の下……切るべき首へと辿り着く。
力の限り叫び、手に魔力を込めていくらでも剣が吸える状態にし、全身全霊の力を込めて、両手で持った剣を右から横薙ぎに振るう……!
「ギャギ!!」
「くぬ……うぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁ!!」
頭上にで響く五首の悲鳴、食い込む剣が首の三分の一程を斬り進んだ辺りで止まる。
そろそろ、他の首も再生しそうな頃合い……ここで止まるわけにはいかない!
ほとんど無意識に足元へと結界を発動させ、それを踏みしめてさらに力を込める……。
ジワリ、ジワリと斬り進む剣……次の瞬間。
「あっ……」
音はしなかった……唐突になくなった抵抗と共に、剣が『割れた』。
折れた、のではなく割れた。
俺の力や、五首の堅さに耐久力の限界を迎えたのだろう……剣身は割れたガラスのようにバラバラになり、撒き散らされる。
五首を斬り落とすまで保てなかった……!
胸中に沸き上がる悔しさ、脳内に浮かぶ失敗の文字。
「……え!?」
だが次の瞬間、俺は希望とも言える光をその目に捉え、全身で感じた――。
――――――――――
「リクさん、魔物の勢いを少し削ぐわ! 行って! フレイムブラスト!!」
「リク、頼んだよ! アイスニードル!!」
「ありがとう、モニカさん、マリーさん。……っ!!」
駆けながら、最近使うようになった魔法を放ち、すり抜けていくリクさんを見送る。
「行ったわね……」
「うん……リクさん、私と母さんの魔法を追いかけて行っちゃった」
魔法を放って少し魔物に近付いた所で止まり、走って巨大なヒュドラーに向かうリクさんの背中を見送る。
母さんの呟きに頷き、少しの寂寥感を持たせて私も呟く。
もうあんなに遠くへ……私や母さんの放った魔法と一緒に、リクさんがどこか遠くへ行ってしまうのではないか、という不安が沸き上がる。
……いいえ、リクさんは少し前にどこへも行かないって言ってくれたじゃない! リクさんが安心して戻って来られるよう、ヒュドラーとの戦いに集中できるよう、私も頑張らなきゃ。
「追いつくんじゃないのか?」
「それはさすがにリク様でも……いえ、やれるやれないではなく、魔法が先に魔物に到達するのを待つでしょう……ほら」
同じくリクさんを見送ったソフィーとフィネさんが、私の隣に来て話している。
フィネさんの言葉が示す通り、リクさんより先にヒュドラー近くの魔物に到達した私の魔法が炸裂、母さんの魔法も、狙い通り魔物達の足止めをしてくれているみたい。
あの魔法、センテでリクさんがいない間の戦いの最中、ちょっと苦労して覚えたのに……リクさん、ほとんど反応してくれなかったな。
まぁ、リクさんはエルサちゃんとの契約で、思い浮かべた魔法を使えるから私が新しい魔法を使っても、特段驚く事じゃないのかもしれないわね……リクさんを驚かせるのって、難しいわ。
「……私達の魔法、いらなかったんじゃないかね? リク、ほとんど走る速度を緩めずに、そのまま魔物達の中を突き進んでいるように見えるわ」
「リクさんの事だから、いらないなんて言わないし思わないだろうけど……詳細が見えるわけじゃない分、こちらからだと魔法が余計だったようにも見えるわね」
「まぁ、リクだからな……なければないで、なんとかしてヒュドラーまで辿り着いたんだろう」
「リク様の前では、Aランクの魔物が群がったところで……ですね」
呆れたような母さんの言葉に、私も同意だけど……リクさんが私達の協力を邪魔だとか、いらないだなんて思う人じゃないのは間違いない。
でもソフィーの言う通り、なんとかしただろうというのは間違いないわね。
でもまぁ、ほんの少しだけでもリクさんが楽になってくれたなら、それでいい。
私にとっては、それが一番重要な事だから。
「さぁ、私達もうかうかしていられないわ! 多くの魔物はリクさんに向かっているけど、ヒュドラーと離れている魔物は、こちらに向かっているわ!」
「モニカも、大分頼もしくなって来たねぇ……」
信念という程大袈裟ではないけれど、リクさんへの想いを胸に気持ちを切り替えて、ソフィー達に檄を飛ばす。
母さんが少しだけ感心している様子だけど……引退したとはいえ今の私達の指揮をするのは母さんなんだから、本来檄を飛ばすのは私の役目じゃないんだからね!
「リクのように、周囲の魔物を集めて全てを相手にするって事はできないが……それでも後ろに抜ける魔物は、減らさなければな」
「足止めだけでも、後ろからの援護で数を減らす事ができます。兵士達への被害を少なくする最善の方法でしょう」
前を見据えて剣を構えるソフィー、続いて斧を握りしめるフィネさん……二人共本当に頼もしいわ。
「……準備はできているわね?」
「もちろん!」
「剣を抜いた時から、既に!」
「はい!」
母さんの確認に、私やソフィー、フィネさんが頼もしく頷く。
「それじゃ、少しずつ進んで近付きながら、リクに向かおうとしている魔物の注意を引き付けるのよ。モニカ、私と一緒にちょっかいをかけるわ。ソフィーとフィネは、向かってきた魔物の攻撃を凌ぐのよ、いいわね!」
一同で頷き、それぞれの武器を握りしめて動き出す。
先程まで駆けて距離を詰めていたのが嘘のように、今は歩くよりも遅いくらいの速度で前進しつつ、魔法の発動に備える。
私達の役目は、一番にリクさんへと向かう魔物を引き付け、少しでも邪魔をさせないようにする事。
それと同時に、余裕があれば他の魔物の足止めをする事……少人数だから、できる事は限られているけど、要は戦場を掻きまわす役目といったところね。
さっきフィネさんが言ったように、少しでも魔物の進行速度を遅める事ができれば大成功といったところだろう。
「モニカ、あのキマイラを狙って!」
「わかったわ! フレイムランス!!」
母さんの指示に従って、リクさんのいると思われる場所に向かうキマイラに、炎の槍を放つ。
リクさん自身は、もう魔物達に埋もれてしまってこちらから姿は見えないけど……ヒュドラーの進行が止まり、長くいくつもの首を動かしているため、ヒュドラーとの戦闘をしているんだと思うわ。
……遠くから見ても、恐ろしさを感じて足がすくみそうになるのに、そんなヒュドラーに単独で挑もう、しかも倒そうとしているなんて……ほんと、リクさんは凄いわ。
なんて事を考えているうちに、キマイラに私の魔法がぶつかる。
蛇になっているキマイラの尻尾、それが炎の槍によって抉られ、燃え落ちた。
キマイラを相手にする時、厄介なのは体の動きとは独立して蛇による咬み付きや、巻きつき。
その尻尾を失わせたのは、私にしては上出来なんじゃなかと思う……不意打ちだからこそだろうけどね。
「来るわよ! ソフィー、フィネ、前へ!」
「承知した!」
「はっ!」
母さんの号令で私の前に出るソフィーとフィネさん……二人は剣と斧を武器に、魔法を使わず戦うため魔物を迎え撃つ役目。
私の魔法によって、尻尾を失ったキマイラはこちらを睨み、ものすごい勢いで迫ってきていた――。
0
お気に入りに追加
2,153
あなたにおすすめの小説
森だった 確かに自宅近くで犬のお散歩してたのに。。ここ どこーーーー
ポチ
ファンタジー
何か 私的には好きな場所だけど
安全が確保されてたらの話だよそれは
犬のお散歩してたはずなのに
何故か寝ていた。。おばちゃんはどうすれば良いのか。。
何だか10歳になったっぽいし
あらら
初めて書くので拙いですがよろしくお願いします
あと、こうだったら良いなー
だらけなので、ご都合主義でしかありません。。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
目覚めれば異世界!ところ変われば!
秋吉美寿
ファンタジー
体育会系、武闘派女子高生の美羽は空手、柔道、弓道の有段者!女子からは頼られ男子たちからは男扱い!そんなたくましくもちょっぴり残念な彼女もじつはキラキラふわふわなお姫様に憧れる隠れ乙女だった。
ある日体調不良から歩道橋の階段を上から下までまっさかさま!
目覚めると自分はふわふわキラキラな憧れのお姫様…なにこれ!なんて素敵な夢かしら!と思っていたが何やらどうも夢ではないようで…。
公爵家の一人娘ルミアーナそれが目覚めた異なる世界でのもう一人の自分。
命を狙われてたり鬼将軍に恋をしたり、王太子に襲われそうになったり、この世界でもやっぱり大人しくなんてしてられそうにありません。
身体を鍛えて自分の身は自分で守ります!
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
喜んだらレベルとステータス引き継いで最初から~あなたの異世界召喚物語~
中島健一
ファンタジー
[ルールその1]喜んだら最初に召喚されたところまで戻る
[ルールその2]レベルとステータス、習得したスキル・魔法、アイテムは引き継いだ状態で戻る
[ルールその3]一度経験した喜びをもう一度経験しても戻ることはない
17歳高校生の南野ハルは突然、異世界へと召喚されてしまった。
剣と魔法のファンタジーが広がる世界
そこで懸命に生きようとするも喜びを満たすことで、初めに召喚された場所に戻ってしまう…レベルとステータスはそのままに
そんな中、敵対する勢力の魔の手がハルを襲う。力を持たなかったハルは次第に魔法やスキルを習得しレベルを上げ始める。初めは倒せなかった相手を前回の世界線で得た知識と魔法で倒していく。
すると世界は新たな顔を覗かせる。
この世界は何なのか、何故ステータスウィンドウがあるのか、何故自分は喜ぶと戻ってしまうのか、神ディータとは、或いは自分自身とは何者なのか。
これは主人公、南野ハルが自分自身を見つけ、どうすれば人は成長していくのか、どうすれば今の自分を越えることができるのかを学んでいく物語である。
なろうとカクヨムでも掲載してまぁす
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる