1,232 / 1,903
ロジーナの計画と隠し事
しおりを挟む「破壊神というか、邪神?」
「誰が邪神よ。それは、人の考え方で見た時害を成すからそう思えるだけでしょうに。私達からすると、ただその神としての性質に従っているだけで、正義も悪もないわ。もちろん、邪な神なんてのもね。あるとしたら、神の理に背く神……とかかしら。大抵は他の神に消滅させられるけど」
確かに人間から見たら邪悪と感じるだけで、神の立場からするとそうではないのかもしれないか。
「とにかく、そうしてリクを絶望させてたところに負の感情を流し込んで支配させ、心の赴くままに破壊をさせようって計画だったのよ」
戻って来たら、街は壊滅……悲惨な状況でさらなる絶望を味わえば、周辺を取り巻いている負の感情にも支配されやすいって事か。
人間だけでなく魔物の感情も混じっているようだから、支配されれば周辺に破壊をまき散らすようになっていただろうってのは、なんとなく想像が付く。
少しだけ、エルサが引き戻してくれたおかげでなんともなかったけど、隔離されている時に絶望しかけて、破壊の方に傾きかけたからだろうか、少しだけ支配された時のい自分を思い浮かべて、背筋を冷たい汗が流れた。
「魔力溜まりも、私の隔離から抜け出してサクッと対処したみたいだし……あの時言うんじゃなかったわ。ま、でも、アルセイスの力の片鱗を持ったエルフがいたから、私が何も言わなくても変わらなかったのでしょうけど」
「魔力溜まり……? それもロジーナの計画に関係していたの?」
俺がセンテに戻って来て、すぐに魔力溜まりの対処を提案したのは確かだけど……アルセイス様の力の片鱗、フィリーナが特別な目で見てある程度察していたからね。
魔力溜まりを発生させないように、というのはヘルサルで学んだからロジーナから言われていなくても、すぐ対処するよう考えていたと思う。
「負の感情……感情はいずれ魔力になるわ。魔力溜まりは感情をも増幅させ、さらに大きな魔力になる。破壊をまき散らすリクにを覆いつくし、埋め尽くすように取り巻くの。魔力溜まりそのものが、魔力も発生させるから、神ですら対処ができない程の存在になる……予定だったのよ。私の目的である世界の破壊、その先鋒……いえ、私の代わりにね」
「そんな事を……」
俺が、一歩間違えば破壊神の代わりにこの世界をだなんて……幸いにもセンテは無事だったし、負の感情は流れ込んできているけど、ある程度はスピリット達が対処してくれているらしい。
だから今は、そんな心配をする事はないんだろうけど、それでも自分がそうなっていた可能性や、計画されていたというのは怖くもある。
絶対にやらないしやろうとは思わないけど、街一つなんて簡単に魔法でどうにかできる……というのを、俺は既に自覚しているから。
「まぁそもそも、私の隔離を予定より早く抜け出しても、ある程度は魔物による蹂躙が進んでいると思ったら、全く進んでいなかったわね。その時点で既に誤算だったのだけど」
「……皆、頑張ってくれたみたいだからね」
「その頑張りも、リクの影響が濃いように思うわ。結局、私の計画は全てなくなったに等しいってわけ。まだ微々たる可能性は残っているけど、今そうなると私が危ないから、こうして協力しているんだけどね。……まさか、私まで人間にならなきゃいけない状況なんて、神でも想像できないわよ」
「それなんだけど、なんでロジーナが危ないんだ? ユノもそうだけど、そこらの人間には絶対負けないような実力だし、何か危険があっても振り払えるんじゃないか?」
それこそ、ヒュドラーが襲って来るなんて状況でも、確実に逃げ延びて生存できるくらいには。
逃げる、という選択肢を選ばないと考えて、協力を頼んだけど……ロジーナ一人なら逃げようとすればいくらでも逃げられるし、無理して留まる理由もない。
街の人達を守るため、なんて事は考えていないだろうし。
まぁ、レッテさんに対する怒りがあるからってだけの理由かもしれないけども。
「まだ微々たる可能性が残っているって言ったでしょ? 本当はもっと可能性が高いと思っていたけど、私はリクが、スピリット達を召喚できるって知らなかったもの。魔力溜まりへの対処は、人間になってここに来てからすぐに調べたからわかったけど、私が来る前に召喚してたのなんて、わからないわよ」
「そ、そうなんだ……」
「それでもし、微々たる可能性……それを不運にもリクが掴んでしまったら、もう手遅れなの。魔力溜まりはなくても……いえ、その後にどれだけ対処しても発生しそうだけど、それは今はいいわね。手遅れになる、つまり残っている負の感情が膨れ上がって、もしリクが支配されたら……?」
「俺が、周囲を破壊し始めるって事か? ロジーナの計画通りに」
「絶望に次ぐ絶望後というわけじゃないから、どこまでの破壊衝動が襲うかはわからないけど……少なくとも負の感情が渦巻いているここら一帯は、草木も生えない更地というのも優しく思える状況になるでしょうね。……そうね、ゴブリン達と戦った時の事を思い出して。あの時の魔法が、ただの破壊衝動に突き動かされて、そこら中に放たれるの」
「……」
「……地獄だわ」
ロジーナの話を想像して、言葉を飲み込んだ俺の代わりに、エルサが呟く。
もし俺がヘルサル防衛戦の時のようにゴブリン達の大群に放った魔法、熱量をひたすらに上げる事に集中したあの、白い光の魔法を放てば、周辺は溶けてなくなるだろう。
地面はあの時と同じようにガラスになるのか、それとも別の何かに変質するかはわからないけど、人は住めなくなるしそもそも、住んでいた人達は全て……。
それこそ、いつも一緒にいるエルサだけでなく、モニカさんやお世話になった人達も巻き込んで……。
「そんな事になったら、間違いなく人間になった私も巻き込まれるわ。その瞬間は無事でも、いずれどこかで必ず……逃げ場がないのと同じよ。だから私は、自分の身を守るためにものすごく嫌だけど、人間に協力してさっさと負の感情を肥大化させる原因の排除をしようと協力しているの」
「それで、前はロジーナ自身が危険とか言っていたんだね」
「えぇ、そうよ」
ほとんど人間と同じ存在になったから、もし俺が破壊に取りつかれた場合逃げられない。
破壊神の時とは違って、人間の体じゃ対処もできないしもし死んだら、それは神としても存在の消滅を意味するわけで……。
あぁ、だからロジーナとして再開した時、俺に早くここから離れろって言っていたのか。
隠し事をしている気がしていたのは、この事なんだろ。
まぁ、破壊神が自分で計画した事を失敗したうえ、その計画の残りで自分がまき込まれて危機に陥るかもしれない、なんて言えないよね。
ロジーナ、プライドも高そうだし。
「結局リクはどこかに行かないし、今の状況で安全な場所に行くなんて考えは、ないでしょ?」
「まぁ、ね。話を聞いていたら確かに自分が皆に危険な目に合わせる可能性もあるんだろうけど、それでも今迫っている危機を見逃すなんて事はできないよ」
0
お気に入りに追加
2,153
あなたにおすすめの小説
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
目覚めれば異世界!ところ変われば!
秋吉美寿
ファンタジー
体育会系、武闘派女子高生の美羽は空手、柔道、弓道の有段者!女子からは頼られ男子たちからは男扱い!そんなたくましくもちょっぴり残念な彼女もじつはキラキラふわふわなお姫様に憧れる隠れ乙女だった。
ある日体調不良から歩道橋の階段を上から下までまっさかさま!
目覚めると自分はふわふわキラキラな憧れのお姫様…なにこれ!なんて素敵な夢かしら!と思っていたが何やらどうも夢ではないようで…。
公爵家の一人娘ルミアーナそれが目覚めた異なる世界でのもう一人の自分。
命を狙われてたり鬼将軍に恋をしたり、王太子に襲われそうになったり、この世界でもやっぱり大人しくなんてしてられそうにありません。
身体を鍛えて自分の身は自分で守ります!
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~
暇人太一
ファンタジー
大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。
白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。
勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。
転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。
それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。
魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。
小説家になろう様でも投稿始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる