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作戦会議ひとまず終了

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「構いません。それに……こういった時にこそ、若い者達に任せるのではなく老兵も全力を尽くすべきだと、考えておりますので。まだまだ、リクやモニカ達若いやつらに任せたきりにするには、早いですからな」

 ちらりと俺を見て、シュットラウルさんに答えるマックスさん。

「老兵という程、老いてはいないだろうに。……わかった、マックス殿の心意気受け取った。すまないが、リク殿に協力してヒュドラーを倒してくれ。だが、くれぐれもむりはするな? 老兵だからとて、命を散らしていいものでもない」
「もちろん、わかっております。無駄に命を粗末にする事は致しません。獅子亭の方も、まだまだこれからですから!」

 実直に、貴族であるシュットラウルさんがマックスさんに頭を下げる。
 こういう部分があるから、センテを守る人達も死力を尽くすんだろうか……? マックスさんも同様だったみたいで、深く頷いて請け負ってくれた。
 あと、ギリギリフラグ的な発言も回避しているのはさすがだ、意識しているわけじゃないだろうけど。
 これで「この戦いが終わった後も、腹をすかせた奴らに料理を食べさせなければ」とか、マックスさんが言いそうな事をそのまま発言していたら、危険だったかもしれない。

「……それでマックスさん。何故私を魔法鎧の候補に? いえ、実力という意味では、私自身も適任だと思いますが」 
「ヤンは、俺とパーティを組んでいただろう? お前は状況を見て動くのが上手いからな、やりやすいと思っただけだ。それに、俺を盾部隊に推薦したのはお前だからな。ちょうどいいから巻き込んでみた」
「はぁ……わかりました。若い者たちに負けないよう、衰えた体に鞭を打つ事にしますよ」

 お互い気心が知れた仲だからか、ヤンさんにしては珍しくジト目でマックスさんを問い詰める。
 マックスさんの方はあっけらかんとした反応で、溜め息を吐いたヤンさんが折れ、魔法鎧を身に付ける候補になる事を頷いた。
 でも確かに、マックスさんとヤンさんは元冒険者で同じパーティだから、チームワークという点では申し分ないだろう。
 ヤンさんの体型的にも、マルクスさんに近い細身ではあるけど、まだ鍛えているのかそれなりにがっしりしているし、マックスさんよりは魔法鎧が合いそうだ。

「冒険者達への指揮は、ベリエスさんに任せますよ」
「あぁ、任せろ。なに、なりたてのヘルサルギルドマスターよりは、上手くやって見せるさ。少々数が多いがな」

 ヤンさんはヘルサル支部のギルドマスターだから、一応冒険者さん達の指揮権のようなものを持っている。
 とは言っても、ほとんど自由に動いて兵士さん達みたいに、全員で固まるって事はないんだけど。
 ともあれ、もう一人のギルドマスターがいるから、ベリエスさんに任せればなんとかなるだろう。
 ヘルサルとセンテ両方を拠点にしている冒険者が混在しているため、数も含めて大変そうだけど。

「あとは、元ギルドマスターにも話しておかなければいけませんね。あの人の気性から、断る事はないと思いますが」
「だろうな。むしろまた魔物が迫っていると聞いたら、単独で行きそうな気配だ。リクが戻って来てから、戦いの激しさがなくなって残念そうだったくらいだからな」
「元ギルドマスターさん、そんな人だったんだ」

 いや確かに、鍛錬のためにヘルサル農園を耕す農夫として働き始めるとか、ルギネさん達に訓練を付けるとかもやっていたけど……。
 とにかく、自分が動いて何かしていないと落ち着かない人なのかもしれない。
 ……マックスさんと同じく筋肉に傾倒しているのも含めて、イメージ通りか。

「ここにヴェンツェルがいればな……ヤンではなくヴェンツェルの名を出したんだが」
「ヴェンツェル殿ですか、冒険者時代に何度もマックスさんを通して会った事がありますが、あの方ならむしろ先にマックスさんの名を出していたと思いますね。まぁ、向こうは軍を指揮する立場なので、止めざるを得ませんが」

 ヴェンツェルさんだったら、マックスさんとは違って最初からこの場にいただろうし、シュットラウルさんと同じく自分がと考えそうだ。
 その時一緒に、同好の士というか昔地味なのもあってマックスさんを指名していたのは、簡単に想像できるね。

「ふむ、ヴェンツェル殿を知っているのか?」
「知っているも何も、若い頃から切磋琢磨して筋肉を鍛え合った仲ですよ、侯爵様」
「ほぉ!」

 ヴェンツェルさんの名に反応したシュットラウルさん。
 何故切磋琢磨して、筋肉を鍛え合う事になるのかは謎だけど、興味を惹かれた様子。
 とりあえず長くなりそうだったので、マックスさんとシュットラウルさんは置いておく事に。
 マルクスさんや大隊長さん、ベリエスさんとヤンさんリネルトさんを交えて、ユノへのロジーナと協力する頼みや、細々とした軍の展開などを話し合った。

 総大将が筋肉談義をしていて大丈夫なのか? とは思ったけど、大隊長さんと残っていた執事さんが後でなんとでもすると請け負ってくれたから、多分大丈夫なんだろう、きっと。
 ここ最近、魔物との戦闘に関する事ばかりだから、シュットラウルさんも心置きなく話せる機会が必要だろう、とは執事さん。
 まぁ、魔物に囲まれて絶望的にも思える状況をなんとか打破しそうな時、さらに大きな絶望が迫っているとなったら、興味のある楽しい話をして気分を変えるのもいいかもね。
 もちろん、その後はちゃんと全員の上に立って、立派に務めを果たしてもらいます……と、これも執事さんが言っていたから、束の間の筋肉談義を楽しんでもらった――。


「ぶぅ……なんで私があれと仲良く戦わないといけないの?」
「ま、まぁまぁユノ。確実にヒュドラーと戦うためだから」
「よっぽど不満なのね、ユノちゃん。ロジーナちゃんは、確かにとっつきにくい子だったけど」
「ユノみたいだと言ったら、むきにはなっていたがな。だが確かに、ユノと同等のように私にも見えた」
「見た目通りじゃないとわかっていても、あんなに小さい女の子が、軽々と魔物を蹴散らすのを見るのは、驚きしかありません」
「リクー、お腹減ったのだわー」

 会議後、ある程度大まかな事を決めてまずは、今いる魔物の掃討を急ぎ明日中に準備を整えて迎え撃つ、となり解散。
 庁舎に後から来たモニカさん達も合流し、今は宿に戻って食堂でむくれるユノのご機嫌を取っている。
 他の皆はそれぞれ、ロジーナの事を話していたり、エルサはただ空腹を訴えていたりと……ちょっとだけわちゃわちゃしているけど。

「お待たせしました……」
「ほらほらユノ、料理が来たから。お腹を満たして、機嫌を直そう?」
「むぅ、むぅ、なの……」
「キューをいただくのだわー!」

 そんな中、宿のメイドさんに頼んでいた食事の準備が終わり、運び込まれる。
 お腹が膨れれば、もう少しユノの機嫌も良くなるだろうと、美味しそうな料理を勧める。
 不満そうにしながらも、美味しい物には目がないユノ……むぅむぅ言いつつ料理をかき込み始めた。
 エルサも、キューのお皿に飛びついて食べ始める、これで少し静かになってくれるだろう――。

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