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再び呼び出す四大精霊
しおりを挟む「それじゃ、他の……ウィンさんとウォーさん、それからアーちゃんを呼び出してから、一旦センテから離れる事にするよ。本当なら、全部解決してから離れたかったけど……」
「私が、リクさんの代わりに見ておくわ。父さん達もいるからね」
シュットラウルさんやマルクスさん、侯爵軍と王軍、そして魔物と戦っている人達……最低でも戦いが終わるまではもしもに備えて、待機しておきたかったんだけどね。
でも、ここまで言われたなら、俺は離れた方がいいんだろう。
モニカさん達がいてくれるなら、信頼して任せられるし、もうこれ以上のもしもはないだろうから。
「えっと、まずはスピリット達を……あ、モニカさん。アーちゃん……アーススピリットを呼び出すから」
「わかったわ。皆に報せておくわね、任せて」
王軍以外は俺が呼び出したのを見た事がある人達ばかりだろうけど、それでも急に出てきたら何事かと警戒しちゃうからね。
驚かせず、警戒させ過ぎたり刺激しないため、モニカさんに報せてもらうようお願いする。
「それじゃ、ウィンさん達を呼び出すから……少し離れてた方がいいかな」
「わかったの! エルサもこっちなの!」
「私は、リクにくっ付いておけばいいのにだわ……仕方ないのだわ」
「チチー!」
報せに向かうモニカさんを見送り、少し待ってウィンさん達他のスピリットを呼び出す準備。
アーちゃんは離れた場所に呼び出す事にして……一応、ユノとフレイちゃんには離れておくように伝える。
ユノがフレイちゃんに抱き着いていた名残なのか、エルサを呼んで抱き締めた。
「ぐ、ぎゅぎゅ……く、苦しいのだわ……」
「ふふふー。エルサも気持ちいいのー」
「チチー?」
強く抱きしめているからか、エルサから苦しそうな声が漏れているけど……まぁ、大丈夫だろう。
ユノはご満悦だし、フレイちゃんも興味を惹かれて燃える手を伸ばしている。
今からスピリットを呼び出す俺の事はお構いなしだ……大仰な事をするわけじゃないから、別にいいんだけど。
「さて……ん。来たれ! ウィンドスピリット、ウォータースピリット! アーススピリット……はこっちで!」
空に向かって手を広げ、イメージを魔力と一緒に開放する感じで発声する。
魔法を使う時の言葉は、イメージの固定を助けるだけだから、そこまで重要じゃない。
アーちゃんに関してだけは、ちょっと近くで実体化されたら困るから、離れた場所を指定するイメージでおざなりになってしまったんだけど。
「リクの呼び出しが段々適当になっているの」
「チチ」
「ま、まぁ、ちゃんとイメージできるのなら、発声する内容はそこまで重要じゃないのだわ。対象がはっきりしていればだけどだわ。それより、もう少し力を緩めて欲しいのだわ……」
ユノとフレイちゃんから、少し呆れているような言葉が届くけど……エルサが言っている通りだ。
いや、力を緩めるとかではなくて、言葉の内容の方ね。
呼び出す対象さえはっきりしていて、イメージさえしていればいいわけだから。
召喚じゃない場合は、それこそかけ離れた魔法名でもイメージできればいいからね。
アイスランス! とか言いながら、火の矢を出したりもできる……イメージを阻害して、威力が下がったするみたいだけども。
……効果が大きすぎる失敗をする事が多いから、むしろそっちの方がいいのかも?
「お、きたきた……」
なんて、余計な事を考えているうちに、俺から出て行った魔力が一部で固まり始めた。
段々と色合いも変わり、水色のウォーさん、緑色のウィンさん……そして十メートル以上離れた場所に、茶色の魔力の塊ができ、それぞれの形を作る。
「ご主人! 呼び出しに応じて、ただ今馳せ参じたぜ!」
「召喚主様、我々をお呼び頂き感謝致します」
「うん、ウォーさんもウィンさんも久しぶり……って程じゃないかな? とにかく、来てくれてありがとう」
水色の魔力から、透明な水が溢れて女性の体を作るウォーさん……相変わらずその見た目に反して、豪快な口調。
緑色の魔力から、風が渦巻き全身緑色の青年の姿を作るウィンさん……前回と同じく恭しく礼をしていて、礼儀正しい。
「我々には、時の概念があまりないので……久しぶりという感覚はわかりません」
「そうなんだ」
「俺達は世界にたゆたう存在だからなぁ。意識は未来に向かっているが、力は過去も現在も未来も関係ねぇ」
「えっと……?」
「要は、召喚主様に呼び出された記憶などは保持しておりますが、成長も衰退もなく、いつ呼び出されても同じ体という事です」
「な、成る程……」
ウォーさんの言っている意味がよくわからなかったので、首を傾げている俺にウィンさんが説明してくれた。
けど、こっちもこっちでよくわからなかった……多分、記憶などは新しく追加されて行くけど、能力的にはいつ呼び出しても変わらないって事だと思う。
「んで、本題だけどよ……」
「待ちなさいウォーター。アースがまだです」
本題というのは、フレイちゃんが言っていた事だろう。
だけど、ウォーさんが話し始めようとするのを、ウィンさんが止める。
離れた場所を見ると、茶色の魔力が集まって土を形成し、大きな男性の形になって行っている途中だった。
以前もそうだけど、体が大きい分完成するのに時間がかかるんだろう。
「まったく、相変わらずでかい図体をして、実体化が遅いな……なんとかならねぇのか?」
「アースは土の具現。その巨体で敵対するものを潰す事も、土の精霊としての役割のようですから、仕方ありません」
アーちゃんの巨体には、ちゃんと意味があったんだ。
確かに、土の精霊というイメージにはピッタリかもしれない……話し方とか性格は除いてだけど。
「あはぁ……この上質な魔力。可愛らしい主様に呼ばれて嬉しいわぁ……!」
「……はぁ」
「あの声を聞くと俺、力が抜けるんだけど」
「気持ちはわかりますが、我慢するしかないでしょう」
完成した、土の巨像……男性的なフォルムそのままの野太い声に反して、言葉そのものは女性的。
思わず出てしまった俺の溜め息に追随するように、ウォーさんとウィンさんも溜め息交じりだ。
ウォーさんが言っている、力が抜けるっていうのはよくわかる。
どうしてこの世界の、筋骨隆々とした体を持つ存在はどこか変わっている人が多いんだろうか?
元ギルドマスターやヴェンツェルさん、マックスさんやエルフのエヴァルトさんも含めて、筋肉偏重傾向だったり、ゲオルグさん改め、鞄屋のララさんやアーちゃんは言わずもがな。
あ、ブハギムノングのフォルガットさんとか鉱夫さん達や、ルジナウムのギルドマスターであるノイッシュさんはまともな方か。
……俺がそういう特殊な人と関わる、特殊な運に恵まれているのかもしれない……嬉しくないけど。
特殊な趣味を持ったワイバーンも、そのうちの一つか。
「えっと……んんっ! フレイちゃんから聞いたけど……」
思考が余所へと逸れ過ぎていたので、無理矢理戻して本題に入る。
フレイちゃんから聞いていた通り、ウォーさん達も同じ認識をしているようで、センテ周辺を取り巻く悪い力が俺に向かっていると――。
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