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焦っている様子の破壊神

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「力を吸収したのは、俺の魔力弾だったっけ。そういえば、あれってなんで吸収するんだろう?」
「わからずに力を行使していたの!?」
「いやだって、あの時は必死だったし……」
「はぁ……知らない効果を持つ力でも、躊躇なく使うのね。これはさらに私の身が危ないわ……」
「俺は狙っていたりしないんだけど……むしろ好みとは違うし」
「変な事を考えないで! 私が言っているのは、命がとかそう言う意味よ! なんで私が断られる流れになっているの!?」
「そっちが言い出した事だからだよ!?」
「……どっちも、落ち着くのだわ。なんなのこれはだわ? むしろ冷静になれたのだけどだわ、話が逸れ過ぎているのだわー」

 破壊神の言い方に反応して、こちらも言い返す。
 自分の体を抱き締めるようにして身震いした破壊神や、その言葉を聞いて、兵士さん達がさらに多く俺の方をドン引きする目で見ていたから、思わず言い返してしまうのも無理はないと思う。
 さっき、不意にモニカさんの事が思い浮かんだ気恥ずかしさもあって、妙に反応して叫んでしまった。
 エルサに言われて、破壊神と共にハッとなってようやく落ち着く事ができた。

 さっきエルサに落ち着くよう注意しておきながら、今度は俺が言われる事になるとは。
 周囲の兵士さん達に誤解されてそうだったから……あれ? なんだかさっきよりも兵士さん達との距離が遠いような?
 き、気のせいだよね、きっと。

「とにかく、今のままじゃ私自身が危険で危ないの」
「ちょっと言葉の使い方が間違っているんじゃ……?」
「そんな細かい事はどうでもいいのよ。私は別にリクや人間に味方したいから、魔物と戦っているわけじゃないの。自分を守るために動いているのよ。そもそも、どうしてあんたは戦っていないのよ。もう趨勢も決まるくらいで、あんただったらさっさと終わらせられるでしょ?」
「いや、それが……ちょっと止められててね。まぁ、絶対だめってわけじゃないんだけど」

 言い募る破壊神に、ちょっと気圧される。
 シュットラウルさんにお願いされているだけだから、断れなかったわけじゃないし、絶対やめてくれと言う程ではないんだけどね。
 ただ、先の事を考えたり、マルクスさんとの話を考えたりした時に、確かに俺一人で全てを片付けるのは得策じゃないなと、納得もしているから。
 破壊神に、皆が折れに頼りきりにならないため……と言っても、多分通用しないしむしろそこから変な事を考えそうだから、話さないけど。

「ちっ! まぁいいわ。リクがどうしても戦いたくない腰抜けなら、私がやるしかないんだもの」
「酷い言われようだ……」

 戦いたくないわけじゃないんだけどなぁ……いや、積極的に戦いたいとか、常に戦場に身を置きたいとかって言うような、戦闘狂でもないけどね。

「いいから、とにかく戦わないのならさっさとどっかに行きなさいよ。私だって暇じゃないんだから……できる事なら、この街周辺から離れて遠くに行くのが一番ね」
「そんなに嫌わなくてもなぁ。はぁ……」

 つっけんどんに言われて、頬をポリポリとかきながら溜め息を吐く。
 破壊神としては戦いもしたし、隔離されてセンテの人達を助けるのが遅れたりもしたけど……今はほぼ人間になっている状態だし、魔物と戦ってくれて人間の味方に付いていると言える。
 まぁ、ユノのように仲良くとまでは言わないけど、そこまで邪険にする事はないんじゃないかなと思う。

 以前はユノと同じ見た目で戦いにくい部分もあったけど、今はさらに幼いロジーナの姿で、さらにやりにくいというかなんというかだ。
 中身はどうあれ、幼い女の子に嫌がられるっていうのは結構、辛いなぁ。

「こう言っているのだから、駄神はこのまま戦わせておいて私達は街に戻ってのんびりするのだわ。駄神が迷惑を掛けないなら、どうでもいいのだわー」
「一気に興味を失くしたね、エルサ」

 エルサにとっては駄ドラゴンと呼ばれているだけでなく、創造神であるユノに創られた……いわばユノが母親と言っても過言ではないはず。
 だから、その創造神の裏というかなんというかな破壊神との相性は、最初から良くないんだろう。
 ソリが合わない……というのとはちょっと違うか。
 とにかく、俺やエルサ自身に被害が出るような事がなければ、興味を抱かない対象って事だと思う……いや、関わりたくないっていう方が正しいかな?

「駄神って呼ぶなと言っているでしょう、この駄ドラゴンが。まったく……誰のせいでこんな事をしていると思っているのかしら。私もできる事なら……」
「うん?」
「……なんでもないわ。とにかく、さっさとどこへなりとも消え去りなさい」

 何かを言いかけた破壊神だけど、俺が首尾傾げるとすぐに誤魔化した。
 気になるけど……聞いても教えてくれそうにないね。
 しっしっと手で払う仕草をしている破壊神を見て、もうこれ以上話せる事はないといった感じだ。
 魔物との戦いはまだ続いているようだし、さっきの話のせいで兵士さん達からの妙な視線を感じなくもないので、邪魔しないようにここは退散した方が良さそうだね。

「はぁ、仕方ないか。それじゃ、またそのうち様子を見に来るから……一応、気を付けて」
「リクに心配される程、落ちぶれていないわ。来なくてもいいから、さっさと遠くへ行きなさい」
「……さすがに、街からは離れないけど」
「ちっ!」

 ロジーナの姿なので、思わず心配するような事を言ったら凄く嫌そうな顔をされた……むぅ。
 ともあれ、今はまだセンテから離れるわけにはいかないので、苦笑しながら言うとこれ見よがしに舌打ちをする破壊神。
 ……わかっていた事だけど、嫌われているなぁ。

「それじゃ、こうすれば近付かなくなるかしら?」
「え?」

 何やら、しかめていた顔をニヤリとさせて、悪い事を思いついたという感じの破壊神。
 嫌な予感がする……。

「お兄ちゃん、今度来た時は私をお持ち帰りしてね? ロジーナ、お兄ちゃんなら……」
「待った待った! ちょっと、それは誤解しか招かないから! わかった、わかったから……できるだけ様子見に来ないようにするから……あーっと……それじゃ!」
「二度と来ないでねお兄ちゃーん!」

 頬を引きつらせながらだけど、無理矢理笑みを浮かべさせた表情になった破壊神が、ロジーナとしての幼い声音でとんでもない事を言いそうだったので、途中で遮って全力でその場を離れた。
 お持ち帰り……の辺りから、周囲にいた兵士さん達がさらに距離を取って、「うわぁ……」とでも言いそうな視線を俺に向けていたからね。
 これ以上変な誤解を広められないためにも、迅速に離れる必要があった。
 しばらくは、破壊神……もといロジーナの所に様子を見に来るのは、止めておいた方がいいのかもしれない。


 ロジーナがおおよそ言いそうにない言葉を背に受け、東門から街の中へ逃げ込んだ俺。
 マックスさんに挨拶をした後、他に予定がなかったので街の様子を見て回る事にした。
 やっぱり、街中は活気のあった以前とは違って、一部を除いて閑散としているのが少し悲しく感じつつも、歩きながらエルサと話していた――。


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