1,171 / 1,903
モニカさんに気持ちを伝える
しおりを挟む真剣に俺のためにと訴えるモニカさんだけど……そもそも、俺は仲間をそんな自分の役に立つかどうかで見たりしない。
そりゃ、モニカさんに危険が及ぶ可能性っていうのも、今後あるだろうし……でもそもそもに、モニカさんは気付いていないようだけど、これまでもよっぽど危険があったと思うんだよね。
ヘルサル、エルフの村、王都、ルジナウム……他にも色々。
むしろ、そんな危険な目に遭わせていると考えたら、俺の方がろくでなしに思えてきてしまうくらいだ……。
「モニカさん、えっとね……俺が破壊神によくわからない空間に隔離されて、戦っていた時の事なんだけどね?」
「え、うん……」
モニカさんを置いてどこかへ行くなんてない、それをわかってもらうために、できるだけ声音を穏やかにするように意識しながら、話して伝える。
急にまた破壊神との話に戻ったから、モニカさんはキョトンとしていたけど……でも、あの時の戦いはモニカさんのおかげで切り抜けたと言っても過言じゃないからね。
それを伝えて、決してモニカさんを置いて行くなんて事がないと、わかってもらわないと。
そうして、俺は隔離されていた空間での事を事細かに……はちょっと長くなるから、多少省略しつつ語って聞かせて行った。
空間とこちらでは時間の流れが違う事などもだね、そのせいで、戻ってくるのが遅くなったから。
ちなみに、長話になっているので本当ならもうワイバーンの所に到着しているはずなんだけど、エルサが高度を上げて広く地上を見下ろせる状態で、ゆっくりとセンテ付近を飛んでくれている。
さすが相棒、気が利くじゃないか……なんて考えたら、エルサからリクは気が利かなさすぎなのだわーと、返されたような気がした。
ボスワイバーンの方は、速度を緩めたからのんびりと空を飛べるようになって、楽しそうに満喫している様子だった。
センテ出発直後は、エルサの速度について来るのに必死だったみたいだからね。
「まぁ、そんなこんなで……圧倒的な差、という程じゃないけど俺にはどうしようもないかなって、諦めかけたんだ」
破壊神が加減をしていたのもあって、結果的にはなんとか対処できたとはいえ、最初はどうしようもないように感じられた。
ただの結界ならほぼ素通りする閃光に、結界が破壊されてしまう衝撃。
こちらから思いっ切り剣を当てても、傷一つ付かないし……冷静に考えたら、勝てる要素はほぼないよね。
「でも、なんとかエルサを先に外に出して、俺も脱出できた」
「そう、なのね……」
あの時諦めてしまっていたら、破壊神は俺を殺すつもりはなかったみたいなので、生きてはいただろう。
けど、干渉力を消費させずにいた場合、こちらではもっと長い時間が経っていたのは間違いない。
それこそ数十日どころではなく、一年以上であってもおかしくない。
まぁ、破壊神が途中で出してくれそうではあったけど……少なくとも数カ月は経っていただろうし、破壊神の干渉力を残したままでは、この先も不安がある。
それに頑張ってエルサを先に脱出させ、俺も出てきたからこそセンテに魔物が侵入する前に間に合った。
エルサも外に出ていなければ、多分センテはほぼ壊滅に近い状態になっていたかもしれない……破壊神の言っていた予想より、持ち堪えていたみたいだから、避難して助かる人は多かっただろうけど。
でも、犠牲者は少なくできた。
それもこれも……。
「全部モニカさんのおかげなんだよ」
「私の……?」
「うん。破壊神の前で、諦めそうになった時とかにね……その、ちょっと言うのは恥ずかしいんだけど……」
「え?」
モニカさんから視線を外して、頬を指先でポリポリとかきながら言葉を躊躇う。
破壊神の事など、出来事を話すだけならともかく、これから先は俺の考え……心情を話す事になるから、やっぱり恥ずかしい。
しかも、空の上で他に人のいない状況だ。
……周囲に人がいても恥ずかしいだろうけど、それはそれ。
「えっと……モニカさんの笑顔がね、頭の中に浮かんだんだ」
「わ、私!?」
「うん。それでね、絶対にもう一度モニカさんの笑顔を見たいなって。そう思ったら、絶対にここから息て出てやるぞ! って、そう持ったんだ……」
「……」
思い切って、あの時考えていた事をモニカさんに話す。
破壊神の企みがわかってからは、俺自身の生死はあまり関係なくなったけど、それでもできるだけ早く戻りたい。
センテで魔物と戦っているはずの皆、特にモニカさんを助けに行きたい……って考えていた。
実際外に出てみると、マックスさん達が来ていて驚いたし、緊急の助けはいらなかったわけだけど……俺も、魔力が少なくてすぐに休まなきゃいけなかったし。
「だから、魔物がセンテに侵入する前に戻れたのも、エルサが先に外に出られたのも、全部モニカさんのおかげなんだよ。モニカさんは自分が置いて行かれるって思っているかもしれないけど、俺はモニカさんを置いてどこかに行ったりはしないよ」
一時的に、役割を別けて別の場所にいるって事はあるだろうけど、ルジナウムとブハギムノングの時みたいに。
でも、二度とモニカさんと会わないような、そんな離れ方は決してしない。
「少なくとも、モニカさんが俺を嫌ったりしない限りは、ね……」
気恥ずかしさに、誤魔化そうとする気持ちがもたげて来るけど、それを振り切ってモニカさんをしっかりと見る。
そうして、視線を外したい衝動を自制して笑いかけた。
「そ、そんな! 私はリクさんを嫌ったりは! それどころか……っ!」
「そうだね、モニカさんは理由もなく俺を嫌ったりはしない。それくらいは俺にもわかるよ」
俺は真っ直ぐ見ていたのに、今度はモニカさんの方が勢いよく顔を背けて叫んだ。
うん、モニカさんは俺を嫌ったりしない……それは、右も左もわからず無一文で獅子亭に飛び込んだ、そこで出会った時からの付き合いでわかっている。
それこそ、俺がろくでもない事をしたり、悪党にでもなれば別だろうけど。
あ、エアラハールさんみたいに、隙あらば女性に触ってトラブルを起こすとかだと、さすがに嫌われちゃうかな?
「だから、モニカさんが俺の役に立っていないとか、俺がモニカさんを置いてどこかに行くとか、そんな心配をする必要はないんだよ」
「そ、そう……」
「俺がセンテに戻って来た時、宿の前で倒れそうになったでしょ? あの時、モニカさんが支えてくれて、すっごく安心したんだ。あぁ、戻ってきたんだ、戻ってこれたんだ……ってね」
「う、うん」
そっぽを向いているモニカさんに、この際だからと俺の心情をぶちまける。
置いて行かれるかもなんて心配をしているモニカさんには、知っていて欲しかったから。
「だから、モニカさんにとっては迷惑かもしれないけど……俺にとって、そうだね。モニカさんのいる場所が帰る場所っていうのかな? そんな風に思っているんだ」
「え、えぇ……そう、そうなのね。うん、もうわかったから……リクさん、これ以上は私がもたないわ……」
0
お気に入りに追加
2,153
あなたにおすすめの小説
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
目覚めれば異世界!ところ変われば!
秋吉美寿
ファンタジー
体育会系、武闘派女子高生の美羽は空手、柔道、弓道の有段者!女子からは頼られ男子たちからは男扱い!そんなたくましくもちょっぴり残念な彼女もじつはキラキラふわふわなお姫様に憧れる隠れ乙女だった。
ある日体調不良から歩道橋の階段を上から下までまっさかさま!
目覚めると自分はふわふわキラキラな憧れのお姫様…なにこれ!なんて素敵な夢かしら!と思っていたが何やらどうも夢ではないようで…。
公爵家の一人娘ルミアーナそれが目覚めた異なる世界でのもう一人の自分。
命を狙われてたり鬼将軍に恋をしたり、王太子に襲われそうになったり、この世界でもやっぱり大人しくなんてしてられそうにありません。
身体を鍛えて自分の身は自分で守ります!
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~
暇人太一
ファンタジー
大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。
白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。
勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。
転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。
それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。
魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。
小説家になろう様でも投稿始めました。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる