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空でモニカさんとの話
しおりを挟む「こうして、エルサちゃんに乗るのも久しぶりね……」
「あ、そういえば俺はそんなに間を開けずに乗っているけど、モニカさん達は少し違うんだったっけ」
エルサに乗り、ボスワイバーンと一緒に空を移動して東南へ向かっている時、空からの景色に目を細めながら、ふと呟くモニカさん。
考えて見れば、俺はほとんどエルサと一緒だったし昨日も乗ったけど……モニカさん達は俺達が破壊神に隔離されていた時、こちらで二十日以上待っていたんだった。
だから、モニカさんがエルサに乗るのは約一カ月ぶりくらいになるね。
「……ごめん、モニカさん。もっと早く戻る事ができなくて」
「何を言っているの、リクさん。リクさんはこうして戻って来てくれたじゃない。それだけで十分よ」
「うん、ありがとう」
ずっと待たせていた気がして、隣に座るモニカさんに謝った。
でもモニカさんは、微笑んで許してくれる……破壊神が原因なので、俺が悪いわけじゃないけど……待たせたまま、皆が頑張っていた事を考えたら、どうしてももっと早く戻れたんじゃないかと考えてしまっていたから。
全部たらればなんだけど、それでも笑って許してくれるモニカさんを見ると、頑張って少しでも早く破壊神の隔離から抜けだそうと頑張って、良かったと思う。
「モニカさんには、先に話しておこうかな。俺が、しばらく戻ってこれなかった理由」
「え? うん……リクさんがどうしていなくなったのかとか、気になるけど……あ、リクさんの事だから、理由があって戻ってこれないっていうのは、疑っていないわよ? それは私やソフィー達もそうだけど……でも、全部が落ち着いてから、話してくれるんじゃなかったの?」
「そうなんだけど、モニカさんにはなんとなく先に話しておきたいんだ」
特に理由があるわけじゃない。
モニカさんに知ってもらいたいと思ったから、俺が自分の意志で戻ってこなかったわけじゃない……と言い訳したいのかもしれないけど。
それに、破壊神の思惑通りに進まなかったのは、モニカさんのおかげでもあるわけだからね。
センテにしても、隔離されていた俺にしても。
「そう……わかったわ。リクさんがそう言うなら、聞かせてもらうわね」
「うん。えっと、最初はアマリーラさん達と北の洞窟にワイバーンを探しに行った時の事なんだけど……」
順を追って破壊神と出会った事、ユノとそっくりの姿だった事、よくわからない空間にエルサと閉じ込められていた事などを話す。
「破壊神……って、エルフの集落でユノちゃんも話していた、あれよね?」
「うん。かなり加減していたけど、破壊神の名に恥じない強さだったよ。正直、最初は手も足も出ないと思ったくらい」
「リクさんが手も足もって、私じゃ想像もつかないわね……」
常に対処法を考えていたけど、実際のところ綱渡りな事が多かった。
閃光に対して反射鏡結界で光を屈折させるのも、衝撃に対して曲面結界で威力を弱めて、さらに多重で受け止めるなんて事も、全てその場の思いつき。
一か八かの賭けだったし、うまく行く保証は何もなかったからね。
まぁ、破壊神自体が手加減というか、干渉力の事を気にして全力じゃなかったからなんとかなったんだろうと思う。
本気で、破壊神が俺を排除しようとしていたら、今頃俺はここにいなかった。
破壊神の攻撃が閃光と衝撃だけなわけがないし、実際向こうも本来の力じゃないみたいな事を言っていたからね。
モニカさんじゃないけど、直接戦った俺も破壊神がどれだけの力を持っているのか、想像もつかないのが本音だ。
「あの駄神、次に会ったら許さないのだわー!」
「ははは、エルサはあの破壊神に駄ドラゴンとか言われていたからね」
「駄ドラゴンじゃないのだわ!」
「わかっているよ。エルサのおかげで助かった事もいっぱいある。俺の頼りになる相棒だよ」
「リクはわかっているのだわ~」
「ふふふ、エルサちゃんとリクさんの絆は、深まったみたいね。これまでと、少し違う感じがするわ」
俺とエルサのやり取りに、目を細めて微笑むモニカさん。
破壊神に隔離された状況で、始めてエルサと協力というか連携したからってのもあるんだろう。
これまでは協力してもらう事はあっても、一つの目標に対して連携する事はなかったように思うから……いや、空を飛ぶ時に結界の分担とか多少はしていたけどね。
それでも、はっきりと俺とエルサが相棒として連携したのは、あれが初めてだった気がする。
だからだろう、エルサの事が以前よりも頼もしく思えるし、これまでよりも強い繋がりを感じる……契約で実際に繋がっているんだけどね。
「……少し、羨ましいわ」
「モニカさん?」
「いえ、私じゃエルサちゃんの代わりはできないわ。それはそもそも存在が違うからっていうのもわかっているんだけど……いつもリクさんに助けられてばかりよ」
「んー、そんな事はないんだけどなぁ。俺の方が、色んな人に助けられているし、モニカさんには特に助けられているから」
少し悔しそうに、うつむき気味になりながら呟くモニカさん。
俺とエルサの関係を、羨ましく思っているらしいけど……俺がいつもモニカさんにお世話になっているし、助けてもらっていると思っているくらいだ。
「でも……私じゃ、リクさんやエルサちゃんの隣に立って、大量の魔物と戦うなんてできないわ」
「まぁそれは……」
モニカさんは槍を使うから、武器のリーチの関係もあって剣よりは多数と戦う事に長けている。
けど、それにしたって四方八方を囲まれている状況でっていのとは違う。
多分エルサに言わせたら、いつも無茶をとか言われてしまうんだろうけど、それは俺が魔物の大群に飛び込んでいく事が多いせいでもある。
「リクがいつも無茶をし過ぎなだけなのだわ。通常の人間は、視界を埋め尽くす程の魔物に囲まれて、むしろ殲滅しようとはしないのだわ」
考えていたら、本当に無茶って言われてしまった……俺の考えが流れて行ったのかもしれない。
「と、ともかく、それはモニカさんが気にする必要はないんだよ」
「でも……それでも、私は……。今回、リクさんはちゃんと戻って来てくれたけど……いつか本当に私達を置いて、どこかへ行ってしまいそうで。だから私、リクさんと一緒に冒険者にと思ったの。でもそれでも、リクさんは常に先を行っていて……」
モニカさん、そういった理由もあって俺が冒険者になる時、一緒に試験を受けたんだ……。
なんとなく、心の中から温かいものが沸き上がってくるような感覚……モニカさんにとっては、重要な決心だったのかもしれないけど、俺にとってはなんだか嬉しく思えた。
「モニカさん、大丈夫。俺はモニカさん達……いや、モニカさんを置いてどこかへ行ったりはしないよ?」
「でも……でも! 私じゃリクさんの役に立てない。いつか、リクさんの足手まといになるかもしれないわ。そうした時、私を置いて行くんじゃないかって……リクさんは優しいから、もし私が足手まといで危険な目に遭うと考えたら……」
「うーん、これまで足手まといとか、役に立っていないって思った事はないんだけどなぁ」
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