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魔物討伐後は荷物が増える
しおりを挟む「誰かが仕組んでいるとしても、まったく理由や目的がわからんな」
悩む俺に、ソフィーが呟く。
死骸が置かれているだけで危険がない。
まぁ、他の魔物が寄って来る危険はあるにせよ、それだけじゃね……誰かが発見したら、片付けられてしまう事でもあるし。
「やっぱり、空かなぁ?」
「……だが、空を移動する方法なんてあるのか? エルサといるリクくらいだろう」
「そうなんだけどね……」
もちろん、この世界に飛行機なんて物がないのはわかっている。
けど、状況を見るに空から落としたとか、それくらいしか思いつかないんだよね。
「とりあえず、まだまだ考えなきゃいけないし、調べないといけないのはわかるけど……一旦街に戻らない?」
「討伐証明部位だけの魔物ならまだしも、オークもありますから」
「うん、そうだね。一度冒険者ギルドに持って行こう」
倒した魔物の数はそれなりで、討伐したらちゃんと討伐証明部位を切り取っている。
まぁ、魔物の体の一部でそこまでかさばる物じゃないし、残った体は埋めたりして処置をしているけど、数が増えるとそれなりの荷物になるからね。
ただオークは、食料になるためほぼ捨てるところがないと言われる魔物……少しでも報酬を得るために持って帰る事にした。
魔物だけど、大きめの豚を二体ほど運ばないといけないから、他の荷物も合わさってそろそろ持てる限界だ。
近くにいた冒険者さん達のグループに譲ろうかとも考えたんだけど、それはあまり歓迎される行為じゃないと言われた。
譲られる冒険者さんは、労せずして報酬が得られるから喜ぶとは思うけど、他の冒険者から見たらやっかみの原因にもなるかららしい。
「しかし、討伐した魔物を全て報酬に変える必要はないんじゃないのか? 依頼や褒賞で金に困っているわけでもない」
「駄目よ、正当な報酬は受け取れるなら受け取っておくに限るわ。いつどんな時、お金が必要になるかわからないんだから」
「うーむ、そういうものか? 私は、武具や腹いっぱいに食べられるくらいでいいのだが……」
「ソフィーさんは、冒険者ならではの考えですね」
一旦調査を切り上げ、荷物を処理しようとセンテへ向かう。
その途中で、ソフィーがモニカさんと一緒に一体のオークを運びながら、首を傾げていた。
ちなみにもう一体は俺が持っている……こういう討伐した魔物を運ぶのは、倒した本人ができるだけ運ぶ事にしているから。
ソフィーに対してモニカさんが注意し、フィネさんが何やら納得。
まぁ、現状ではちょっと使い道に困るくらいあるから、俺もソフィーの考えはわかるけど……獅子亭を手伝って金勘定を経験したモニカさんは、その辺りの考えが少しシビアみたいだ。
パーティのお金の分配や、報酬の確認などを任せているからかもしれないけど。
ともあれ、保険とかがない国……世界だし、何かがあって大金が必要になるって事も考えられるから、俺もモニカさんに賛成かな。
何せ……
「もしクランを作る事になったら、何かと物入りだと思うからね。少しでも多くお金を貯めておくに越した事はないと思うよ」
「なんだ、リクはクランを作るのに乗り気なのか? 私は乗り気ではないように思ってたんだが」
「そう? 私は乗り気だと思っていたわよ? だから話が合った時、私は真っ先に集める人員に関して中央ギルドマスターと交渉したんだし。……なんだかんだと、リクさん面倒見がいいから。表面上はそうは見えなかったのかもしれないわね」
「……どちらかと言うと、乗り気じゃないんだけどね」
結果的にマティルデさんに押し切られて、クランを作る事になっても、俺自身が自分に対して冒険者さん達をまとめるとか、人の上に立つようになるのに向いていないと考えている。
だから、乗り気かどうかと聞かれると乗り気じゃないと言えるんだけど……まぁ、モニカさんの評価はともかく、これからの事を考えると必要かなと思っていたりもするからね。
「断られる覚悟だった、私の同行も許可して下さいましたから。リク様が集まって来る人を拒否する事はないのでしょう」
「いや……さすがに誰でもウェルカムなんて事はないんですけどね?」
「ウェルカム?」
「あー、歓迎とかそういう意味かな」
フィネさんからは、俺が来るもの拒まずのような評価をされたので、さすがに否定しておいた。
その際、ウェルカムという単語に引っかかっていた……この世界、地球で使われていた言葉が、日本語以外にも色々あるようだし、俺も魔法名で適当にそれっぽいのを使っていたりするけど、本当にその言語があるわけじゃないからなぁ。
俺は特殊で、ユノがこの世界に来させる時に、見聞きした言語は自動で翻訳されるようにしたとかなんとか……以前コッソリ聞いた際に言っていた。
だから文字も読めるし書く事もできる、らしい。
姉さんの場合は、日本での記憶とは別にちゃんとこの世界で教育され、勉強してきたからだね……王女として生まれて来たから、勉強をいっぱいさせられたと言っていたっけ。
読み書きができない人も国内には結構いるらしく、学校を作って自分と同じように勉強漬けにさせたい、なんて悪い顔をして言ってもいたけどね。
まぁ、多くの人が読み書きできる事は悪くないし、最低限の勉学をさせるのは後々に国のためになるだろうから、本当に悪い考えじゃないんだろうとは思う。
なんて、関係のない方向へ思考がズレつつ、センテへ向かいながら話を続ける。
「もし本当にクランを作るとしたら、こちらで用意しないといけない事もあるし、お金も必要だからね」
「まぁ、それはわかるんだが……集まるのは冒険者だ。それも、モニカの交渉でCランク以上の冒険者を集める事になっている。それぞれ、自分達である程度の事はできる者達だから、リクが気にする必要はないんじゃないか?」
「うーん、そうかもしれないけどね。多分、マティルデさん達が考えているクランや、他の場所で作られているクランとは、違う方向になるのかなって」
俺にクランを勧めているマティルデさんの目的は、戦争になった場合に帝国側の冒険者を抑える役目。
冒険者ギルドが表だって帝国と協力し、しかも他国に影響を及ぼす犯罪にまで協力している可能性が高いため、冒険者ギルドとしての立場を守るためだ。
クランを作った際のやり方とかってのは、一切言われていないからある程度自由が利きそうなので、ちょっと考えている事があったりする。
多分、他のクランとは違うものになるんだろうなって、思っている。
「あれから少し調べたけど、クランは創設者によって大きく違うみたいね。冒険者を集めるんだから、その考えなんかに賛同した人が集まって、それぞれの特色になるみたい」
あ、そうなんだ。
まぁ、自由業みたいな冒険者だし、集まった人たちは全て同一の国出身というわけでもないから、自然とそうなるのかな。
さすがに、冒険者ギルドや国や街、人々に迷惑を掛けたり犯罪的な特色や決まりは許されないだろうけど、クランを作ろうと考えた人によって、全体の考えがそれぞれ違うってのは納得だね――。
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