上 下
1,020 / 1,897

エルサも別行動に

しおりを挟む
「もしもの時は、逃げる事だってできるだろう……相手を見定めて、敵うかどうかの判断くらいはできるつもりだしな。それに、フィリーナがいる」
「リク程じゃなくても、見晴らしのいい場所なら私の目で、強力な魔物が近付いて来ているかどうか、ある程度わかるわ。それに、ルジナウムとかとは違って、大量の魔物がってわけでもないし、他にも冒険者は近くにいるんだから、そこまで心配する必要ないわよ?」
「……うん、そうだね。ちょっと心配し過ぎかな? 皆の事をもっと信頼するように気を付けるよ」
「まぁ、心配されて悪い気はしないのだけど……」

 心配だと言っても、報告されたように今のところ弱い魔物としか遭遇していない。
 ある程度強い魔物がいたとしても、エアラハールさんから教えを受けて、次善の一手も使えるようになっているモニカさん達なら、なんとかなるはずだ。
 フィリーナがいれば、探知魔法程じゃなくても通常より広い警戒範囲にできるわけだし……やっぱり、心配し過ぎだったみたいだ。
 もっと皆を信頼して、任せる事も覚えなきゃなぁ……クランを作ったら、全員を心配して回るわけにもいかないんだからね。

 フラグ……って言うんだったっけ、こういう時心配をし過ぎたり話題を続ければ続ける程、大変な事が起きてしまったりするような気がするし、この話はここまでにしよう。
 ……変な事、起きないよね?

「多少どころか、どんな魔物が来ても大丈夫なのだわー。私がいるのだわ」
「え、エルサ……モニカさん達と一緒に行くの?」

 心の中で反省していたら、モキュモキュとキューを齧っているエルサが声を上げた。
 おかずにしていた料理を食べる手を止めて、今はキューを食べる事に集中しているみたいだけど……話を聞いていたのか。

「どうせ空を飛んで移動する事もないのだわ? それにリクに付いて行っても、訓練なのだから特に面白い事がないのだわ。それに、モニカ達とならおやつにキューをねだり放題なのだわー。リクはケチだから、あんまりもらえないのだわ」
「……結構、俺もキューを上げているはずだけど。というか、お小遣いあげているんだから、自分が食べるおやつくらいは自分で買おうよ」
「自分で買うキューと、もらえるキューは違うのだわ。これがきっと本当の別腹なのだわー」

 いや、違うと思うけど……。
 確かに、エルサが言うように訓練に付いて来てもやる事がなくて、退屈なのは間違いないだろうけどね。
 多分だけど、エルサが俺と来たとしても頭にくっ付いたまま、ただ寝ているだけとかになりそうだ。
 農地からの帰りに、訓練は街の外で行うと聞いたからエルサに飛んでもらう必要がないから、モニカさん達の方に行っても問題はない。

「むぅ……」
「まぁまぁリク、エルサがいてくれれば私達も安心できるし、リクが心配するような事も起こらないだろう?」

 エルサが離れると考えて、不満が顔に出てしまう俺。
 それを宥めるように、ソフィーが声をかけてくる。
 ソフィーは、エルサのモフモフと一緒になるから歓迎だろうけど……いつもくっ付いている頭に、エルサのお腹のモフモフがなくなるのは寂しい。
 ブハギムノングの鉱山内でも、同じく離れた事があったから、あれと同じではあるんだけど……。

「まぁ、そうなんだけどね……はぁ、仕方ない。それじゃエルサ、明日はモニカさん達の事を頼んだよ」
「頼まれたのだわー」
「……モニカさん、エルサが要求するままにキューを上げたりしなくてもいいからね?」
「ふふふ、私だってエルサちゃんとの付き合いは、リクさんとあまり変わらないのよ? わかっているわ」
「はっ! そういえばリクと会って間もない頃、食事を管理していたのはモニカなのだわ!」

 今更と言えば今更、エルサが俺以上にそういった管理に厳しいのがモニカさんだと気付く。
 エルサと契約して、まだ獅子亭にいた頃にキューだけでなく食事に関しては、モニカさんやマリーさんの権限が強かったのだ……作っているのはマックスさんなんだけどね。
 権限が強いと言っても、食べさせない取り上げるなんて事をするわけじゃなく、いつ食べてどれだけの量をエルサにあげるかを決めていたってくらい。
 エルサ、あげればそれこそ無限にキューを食べ続けるから……満腹になっても少し休憩しただけでまた食べ始めるとか、最終手段として体の大きさを調節して、多くのキューを食べられるようにしたりとかね。

 今は、モニカさん達の管理や俺から散々注意したのもあって、小さいからだの状態で入る限界で止めるようにしているみたいだけど。
 というか、おやつで満腹になるまで食べ続けるってのも、どうかと思う……。
 放っておいたら、増産したキューをエルサが全部食べてしまうんじゃないかって心配もあったり……これはさすがに、勝手な妄想だけども。

「話は決まったな。では、明日私はリク殿を迎えに来よう。リク殿は朝食後、準備をしてこの宿で待っていてくれ」
「え、俺がシュットラウルさんの所に行きますよ? それか、兵士さんと訓練する場所に一人でもいけますし……」
「リク殿は賓客だからな。私と別々に行って、兵士達が迎えるのに疲れてしまうだろうし、これくらいは当然の事だ。それに、私が泊まっている宿はすぐ隣だ。手間でもないさ」

 わざわざシュットラウルさんが迎えにと思ったけど、よく考えれば建物が繋がっているくらい近い、隣なので時間を取るような事でもなかったね。

「わかりました。それでは明日、朝食後は宿で待っています」
「うむ。まぁこれからやる事もあるのでな……あまり遅くならないうちに来るつもりだが」
「ははは、大変ですね……」

 シュットラウルさんは、今日農地に俺達と一緒に行ったのもあって、滞っている仕事などがあるらしい。
 庁舎じゃなくて宿でやるんだ……と思った俺に、早く目を通さなくてはいけない報告などなどは、場所を選んでいられないのだとか。
 なので、遅くまで仕事をしているうえに、明日は明日でまた新たな仕事がある可能性もあり、俺がシュットラウルさんの所へ行くよりも、待っている方が都合がいいとの事だ。
 俺が行った時に、まだ準備ができていないとか、食事中だったり寝ていたり……という事を避けるためでもあるか。

「それじゃ、私はお風呂に入ってさっさと寝るわね。はぁ~、それなりに集中したし、歩き回ったから少し疲れたわ」
「うん。フィリーナが出たら、俺もエルサとお風呂に入るよ。――モニカさん達は?」
「私達は、先に入ったわ」

 フィリーナがお風呂に入るため、食堂を退室するのを見送り、俺も部屋で待つ事にする。
 モニカさん達は、先に入ったらしいのでフィリーナを待つだけでいいみたいだ。
 シュットラウルさんにも挨拶して、食事会というか報告会も解散し、それぞれが部屋に戻って行った。
 ユノは食べ過ぎたのか、すぐに動けなさそうだったのでモニカさん達に運ばれて行ったけど……エルサも同じく、俺が抱いている。

「たまには、こうやって運ぶのも悪くないかな」
「満腹の私を捕まえて、変なところを触らないように気を付けるのだわ~」
「人聞きの悪い。俺はただ、エルサの毛を撫でているだけだよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

ゆったりおじさんの魔導具作り~召喚に巻き込んどいて王国を救え? 勇者に言えよ!~

ぬこまる
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれ異世界の食堂と道具屋で働くおじさん・ヤマザキは、武装したお姫様ハニィとともに、腐敗する王国の統治をすることとなる。 ゆったり魔導具作り! 悪者をざまぁ!! 可愛い女の子たちとのラブコメ♡ でおくる痛快感動ファンタジー爆誕!! ※表紙・挿絵の画像はAI生成ツールを使用して作成したものです。

頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。

音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。 その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。 16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。 後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

処理中です...